「ある日ふと唾の臭いをかいでみたらとても臭かった」「もしかしたら口臭なの?」…そんな経験のある方、いらっしゃいませんでしょうか。鼻の下を舐めた後、変な臭いのすることってありますよね。あれは唾が臭っているのでしょうか。今回の記事では、唾とはどのようなものなのか、その性質について解説することで、唾が臭う原因について迫りたいと思います。
自分で唾が臭いと感じる時
唾が臭いと感じるのは以下の瞬間が多いです。
くしゃみをした時
「はっくしゅん!」ととっさに出たくしゃみを手で押さえたとき、「え!唾が臭い!」と自分で驚く方もいらっしゃいます。デート中やお出かけ中なら「口臭いのかな…」と気になってしまいますよね。マスクをした状態でくしゃみをした時も、同様に唾が臭いと感じる方が多いです。
キスをした時
キスは唾の臭いや口臭がもっとも気になる瞬間ですよね。相手の口臭がきついと気分も盛り下がってしまいますし、「今、私の唾臭くないかな?」と不安になることもあります。
キスでついた唾が蒸発すると、唾の臭いの元が気化してさらに唾が臭くなるのです。緊張している時は、唾の量が減り雑菌が繁殖してさらに唾の臭いがきつくなるので要注意です。
まくらに垂れた唾
寝ているときに、ついつい口を開けてまくらに唾がついてしまうこともあります。朝起きて「うわ、唾が臭い!」と自分の唾の臭いにショックを受けることもあります。原因は口呼吸で口内が乾燥していることが考えられますが、そうなると口臭もきつくなります。
歯科衛生士が感じた唾が臭い原因TOP3
現場で働いているとやはり一定数口臭が気になる方はいらっしゃいます。唾の臭いを感じる時お口の中を見ると主に以下の3つのような症状が挙げられます。
①口の中の清掃不良
本来唾に臭いはありません。それなのに唾が臭いということは、口内の掃除が足りていない可能性が高いです。悪臭の主な原因は雑菌の繁殖ですので、きちんと清掃すれば多くの唾の臭いや口臭が改善されます。
「歯磨きをしっかり行う」というと強い力でゴシゴシと歯を磨く人もいますが、それは間違った歯磨き方法です。正しい歯磨きは、軽い力で歯ブラシを小刻みに動かして歯と歯茎の間の汚れを落とすように磨きます。この「小刻みに」というのが大事なポイントで、食べかすなどの汚れは歯ブラシを小刻みに動かした方が落としやすいのです。
汚れが落ちて唾の臭いが改善されるだけではなく、歯茎もブラッシングするとで口内の血行がよくなり口内環境が改善されるのです。唾の臭いの元となる雑菌が減ると歯周病や虫歯の予防にもなるので、歯だけではなくぜひとも歯茎のブラッシングも行うようにしてください。
②歯周病
「まだ若いから歯周病は関係ない」なんて思っていないでしょうか。歯周病は成人の約8割がかかっていると言われており、「全世界でもっとも患者が多い感染症」としてギネスブックに認定されているほど身近な病気です。
口内に細菌が繁殖して炎症を起こすので、唾が臭くなったり口臭がきつくなったりします。虫歯のように神経を傷つけることがないので痛みがなく、本人が気づかずに悪臭を放っていることが多いのです。
感染症ですから、繁殖した雑菌はキスでパートナーにうつることもあります。歯磨き不足などで蓄積された口内の汚れが原因となって歯周病に発展しますので、早期発見・早期治療することで歯周病による唾の臭いは改善されます。
「毎日の歯磨きをしっかり行えばいい」と考えがちですが、その歯磨きの方法が間違っている可能性があります。しつこい唾の臭いに悩んでいるなら、ぜひ早めに歯医者さんに行って専門医に診てもらうことをおすすめします。
歯医者さんでは専用の器具を使って口の中をクリーニングしてくれますし、歯磨き方法の指導も行ってくれますよ。
③乾燥
唾には雑菌が繁殖しないようにする「浄化作用」があります。正常に唾が分泌されていれば問題ないのですが、緊張や口呼吸・タバコなどで口の中が乾燥すると雑菌が繁殖して唾が臭くなります。また生理中も唾の分泌量が下がるので、口の中が乾燥しやすくなります。
特に朝起きた時の口臭はきついとよく言われますが、その原因も乾燥によるものです。口の中の水分が蒸発しても雑菌は減ることがないので、乾いた唾の中に雑菌が凝縮されているのです。もちろん唾の臭いもきつくなっているので、これが枕につくと起きた時に「うわ!臭い!」となるのです。
ある実験で、寝る前と起きた時で口臭の元になる成分の量を測定すると、5倍も違っていたというデータもあります。ストレスで自律神経が乱れても唾の分泌量は低下しますが、正常な時に比べて約3割も減ってしまうことがわかっています。
乾燥による唾の臭いを改善するなら、水を飲んだりガムを噛んだりして唾の分泌を促すことが効果的です。特にキシリトールガムはキシリトールの成分自体に唾の分泌を促す効果があるので、口の中の乾燥予防に適しています。キシリトールガムを噛まずに舐めるほうが唾の分泌が促されます。
また、耳たぶの下の前のほうにある「耳下腺(じかせん)」を刺激すると唾が分泌され、唾の臭いが改善されやすくなります。緊張やストレスで唾の量が減っているな、と思ったら4本の指を使って優しく円を描くようにマッサージしてみましょう。
唾の性質
唾について考える機会ってあまりないのではないでしょうか。あたりまえといえばあたりまえですが、唾は無意味に出ている訳ではありません。では、唾にはどのようや性質、および役割があるのでしょう。
本来唾は無臭
唾は正式には唾液と呼ばれている体内からの分泌物のことを指します。唾液自体は本来無臭なのですが、口の中にある細菌や食べたもののカスによって、臭いが発生してしまいます。
育児経験のある方ならご存知かもしれませんが、赤ちゃんには大人のような口臭がありません。歯が生えていないことや、口の中の細菌が少ないことがその要因ではないかと考えられています。
唾の役割
そもそも唾は何のために分泌されているのでしょうか。よく知られているのは消化作用です。消化というと胃でおこなわれるようなイメージがあるかもしれませんが、実は胃の消化能力ってそれほど高くないそうです。
そのため、食事のときにしっかりと食べ物を噛むことで、食べ物と唾液とを混ぜ合わすことによって、消化を促進することが可能となるのです。それと、食べ物に唾液が加わることによって、食べ物を飲み込みやすくなります。
唾液には自浄作用もあります。自浄作用とは、簡単にいうと口の中をキレイに保つという働きのことです。唾液が口の中に絶えずあることによって、口の中が清潔に保たれるという訳なのです。唾液は99%以上が水分ですが、あとの残りが多数の有機物および無機物によって構成されています。
また、唾液には免疫機能もあるため、虫歯菌から歯を守ってくれる働きもあります。そのため、唾液の分泌量が低下すると、虫歯や歯周病になりやすくなってしまうのです。
あと、唾液には歯を再石灰化させる働きもあります。虫歯の原因となる虫歯菌は、歯のカルシウム分を溶かしてしまいますが、唾液に含まれている成分が失われたカルシウム分を補ってくれるのです。
虫歯になりやすい人の特徴として、糖分を取り過ぎることがあげられていますが、糖分を取り過ぎた場合、唾液による歯の再石灰化機能が追い付かないくらい、虫歯菌が繁殖してしまうという訳なのです。
唾は1日の間に1リットルから1.5リットルも分泌されているということです。歯を虫歯から守ったり、食事を円滑におこなったりするのに、唾液は欠かせない存在という訳なのです。
唾が臭い原因
唾の役割については理解して頂けたことと思いますが、では、その唾が臭ってしまうのにはどのような原因があるのでしょうか。
口の中の細菌
唾が臭ってしまう原因としては、口の中に存在している細菌が原因となっているという考え方があります。唾液には細菌の繁殖を抑える抗菌作用があります。
ところが、なんらかの原因によって唾液の分泌量が減少したり、細菌が異常に繁殖したりすると、唾液の抗菌作用が働かずに細菌が繁殖してしまい、結果として唾が臭くなるという訳なのです。
原因は様々
唾が臭くなるもっとも分かりやすい原因は、口中に細菌が繁殖してしまうことですが、その他にも以下のような理由で唾が臭くなると考えられています。
ストレス
「ストレスは万病の元」などと言われますが、唾の臭いとストレスにも密接な関係があるようです。なぜなら、人間はストレス状態になると唾液の分泌量が減少するからです。
緊張状態が続いて喉がカラカラになったという経験は、だれでも1度や2度は経験しているのではないでしょうか。
唾液は1日の間に1リットルから1.5リットル分泌されるということでしたが、緊張によって唾液の分泌が滞ってしまうと、古い唾液が口中に残ることとなり、それが臭いの原因となってしまうのです。
サプリメントの摂りすぎ
意外に思われるかもしれませんが、サプリメントを摂りすぎることによって唾が臭くなるケースもあるということです。
日本でもサプリメントを摂る習慣のある人が増えていますが、サプリメントや医薬品を常用していると、唾の臭くなるリスクが上昇してしまうということです。
口中の炎症
口の中を怪我したり、歯周病や虫歯が原因で炎症を起こしていたりすると、唾の臭くなる可能性が高くなるということです。
特に、歯周病や虫歯によって歯茎が化膿しているような場合、唾液にも悪臭が移ってしまいます。つまり、唾の臭いは口内環境を反映しているとも言えるのです。
唾のにおいチェック
普通に生活しているとあまり唾の臭いを意識することはないかもしれませんが、唾の臭いはどのようにしてチェックすることが可能なのでしょうか。また、唾の臭いが出ているときには、どのような兆候があるのでしょうか。
舌の上に汚れがついている
唾の臭いが気になっているような場合、もしかしたら舌の上に汚れが付着しているのかもしれません。食事をした後には歯磨きをするのが一般的ですが、舌を磨くことはあまりないのではないでしょうか。
食べたもののカスは歯にも付着しますが、舌にも付着します。それが唾の臭いの元となることがあります。また、唾が臭う原因として、舌苔(ぜったい)の存在もあげられています。
舌苔とはその名の通り、舌の表面に白や黄色っぽい色をした苔のようなもののことを指します。舌の表面は細かいひだ状になっているので、そこに食べカスや細菌、口腔粘膜のカスなどが付着するのです。
ただ、舌苔は誰にでも見られるものなので、常識の範囲内であればそれほど気にすることはありません。ただ、なんらかの原因で唾液の分泌量が減少すると、舌苔が増殖することとなり、それが唾の臭いの元となる可能性もあります。
とはいうものの、舌苔を取ろうとするあまり歯ブラシでゴシゴシと擦るのは逆効果です。舌苔を取ろうとすることで舌の表面に傷が付き、最近が繁殖したり唾液の分泌量が減少してしまうからです。舌苔が気になる場合は、専用のクリーナーやジェル又は歯科医院などで相談するとよいでしょう。
清潔な指で触りにおいを嗅ぐ
唾の臭いをチェックするもっとも簡単な方法は、指に唾をつけてその臭いを確認するということです。ただし、指先を清潔にした状態で臭いを嗅ぐようにしましょう。
なぜなら、指先が清潔でない場合、指先にある細菌と唾とが反応して臭いを生じる可能性があるからです。それでは正確な唾の臭いをチェックすることができません。
唾液量チェック
唾が臭っているかどうかを判断する目安として、唾液量をチェックするという方法があります。先にも述べたように、唾液は1日に1リットルから1.5リットルほど分泌されるということです。
とはいうものの、1日中唾を溜めるという訳にもいきませんよね。唾液量のチェックをおこなう場合、いつもに比べて口の中や喉が渇きやすくなっていないか、食べ物を飲み込みづらくないかなどを確認するとよいでしょう。
唾のにおいを改善する
唾の臭いが出る原因や唾の臭いのチェック法は分かりましたが、実際に唾の臭いが気になっているような場合、どのようなことに気をつければよいのでしょう。また、どのような改善法が考えられるのでしょうか。
水分をこまめにとる
唾の臭いが気になっているような場合、水分をこまめにとるという改善法があります。唾は1日に1リットルから1.5リットル分泌されるということですが、水分の摂取量が少ないと唾液の分泌量も低下してしまいます。
なぜなら、唾液は99%以上が水分で構成されているからです。一般的に、人間が1日に必要とする水分量は2リットルから2.5リットルとされています。
とはいうものの、2リットルから2.5リットル全てを水分補給によって賄う訳ではありません。ご飯や野菜などにも水分が含まれているので、1リットルから1.5リットル程度は食事によって賄えることとなります。
残りの1リットルから1.5リットルを水分補給によって補うとよいでしょう。現代人は忙しかったりデスクワークが多かったりで、水分補給の足りていないケースが多く見られます。
机の片隅に常にペットボトルを置いておいたり、食事のときに意識して水分補給をしたりすることによって体内の水分を確保し、唾液の分泌を促進し、唾の臭いを改善するとよいでしょう。
正しい歯磨き
唾の臭いが気になる場合には、正しい歯磨きをすることも重要です。毎日歯磨きをするという人はたくさんいますが、正しい歯磨きについて知っている人は少ないのではないでしょうか。
正しい歯磨き法もいろいろありますが、基本的には「歯茎もブラッシングすること」「強い力で磨き過ぎないこと」「歯ブラシを細かく動かすこと」をあげるケースが多いようです。
歯磨きというとあたりまえですが歯を磨くようなイメージがあると思います。ただ、歯茎のブラッシングをすることも、歯を磨くことと同じくらい重要なのです。
厳密にいうと歯と歯茎の境目をしっかりと磨くことで、歯と歯茎の境目にあるポケット部分に溜まる汚れを取り除くことができるということです。
また、歯を磨くときには強い力で磨き過ぎないことも重要です。キレイにしようとするあまり強い力で磨きたくなる気持ちは分かるのですが、磨き過ぎによってかえって歯の表面を傷つけてしまいます。歯と歯茎の境目に歯ブラシの毛先を入れるイメージで磨くと良いでしょう。
あと、歯を磨く際には歯ブラシを細かく動かすことも重要です。歯ブラシを大きく動かしていると、歯と歯の間に詰まった食べカスを取りきれない可能性が高くなります。
唾の臭いがきになっている方はハミガキの時に口臭を予防する歯磨き粉を使うことで普通の歯磨き粉で磨くよりもにおいを予防する効果が高いです。ぜひこちらの記事も参考にしてみて下さい。
舌の掃除
唾の臭いの原因として舌苔の存在があげられていました。舌苔は一般的に、朝起きた時がもっとも分厚くなるということなので、専用のクリーナーなどで掃除をすると良いです。
ただし、舌苔を取ろうとするあまり舌の表面に傷を付けてしまうと、かえって唾液の分泌量が低下してしまうので注意が必要です。
また、舌苔が溜まっているようなときは単に食べカスなどが溜まっているだけでなく、胃腸の機能が低下している可能性も考えられます。舌苔が気になるときは、自己判断せずにまずは内科を、次に歯科医院を受診するように心がけましょう。
舌磨きまでした後は、口臭を抑えるオーラルリンスを使うことでさらにしっかりとにおいの予防ができますし、虫歯や歯周病も防ぐことができます。自分に合ったリンスを選んでみて下さい。
唾液腺のマッサージ
唾の臭いが気になっていて、なおかつ唾液の分泌量が少なく感じるような場合、唾液腺をマッサージして、唾液の分泌を促すという方法があります。
唾液腺はその名の通り、唾液の分泌をおこなっていますが、唾液腺周囲の筋肉が緊張することによって、唾液の分泌量が減少するケースもあるということです。
唾液腺には耳下腺、顎舌腺、舌下腺の3つがあります。まずは耳下腺のマッサージのやり方から見ていきましょう。
耳下腺は耳介(耳たぶ)の下、外耳動(耳かきをする部分)の前方に位置しており、3つある唾液腺の中でもっとも大きいという特徴があります。漿液性のサラサラとした唾液がでてきます。
耳下腺をマッサージする際には、両手の人差し指から小指の4本の指で、両方の耳下腺を挟み込むようにして、クルクルと優しくマッサージします。場所の目安は、上の奥歯あたりです。上手にマッサージできていると、唾液の分泌が促進されるのを実感できると思いますよ。
続いて顎下腺のマッサージです。顎下腺は耳下腺に次いで2番目に大きい唾液腺となっています。場所は顎の骨の内側、いわゆる「エラ」の内側あたりです。マッサージをする際には、両方の親指を顎の下に差し込み、耳の下から顎の下まで移動しながら優しく刺激します。混合性の唾液が分泌されます。
舌下腺は舌の下部、顎の増したあたりに位置しています。やはり両手の親指を顎の下に差し込み、舌をつきあげるように優しくマッサージしましょう。ここからは粘液性の唾液が多く分泌されます。
唾でわかる体調の変化
唾の臭いの原因について見てきましたが、いかがだったでしょうか。唾自体の臭いはもちろんですが、口内環境の悪化や胃腸の機能低下が唾の臭いの原因になることを理解して頂けたことと思います。
もし唾の臭いが気になるような場合は自己判断をせず、まずは病院を受診して何が原因になっているのかを明らかにしましょう。その上で臭い対策を講じるとよいでしょう。