「口臭が原因で人と話すのも億劫」「長年口臭に悩んでいて辛い」…そんな方、いらっしゃいませんでしょうか。口臭には必ず原因があり、治療によって改善することも可能となっています。
ただし、間違った方法を選択すると、口臭を治すことはできません。今回の記事を読んで頂ければ、もう口臭に悩まされることはなくなります。どうか最後までお付き合いください。
口臭の原因8割は口の中に
口臭の原因はいろいろあります。口の中に原因がある口臭もあれば、口以外の場所に原因がある口臭もあります。とは言うものの、やはり口臭の原因の大部分が口の中にあるということです。では、どのような原因が考えられるのでしょう。
磨き残しの汚れ
口臭の原因としてまず考えられるのが、歯磨きの際の磨き残しによって歯に汚れが付着しているようなケースです。簡単に言うと歯垢(プラーク)が歯や、歯と歯の間にくっついているようなケースです。
磨き残しによって歯や、歯と歯の間に歯垢が付着すると、それをエサにする細菌が繁殖します。細菌は歯垢をエサとして分解する際に、揮発性硫黄化合物と呼ばれる「におい物質」を産生します。その結果、口臭がすることとなってしまうのです。
舌の上は細菌だらけ
成人の口の中には、300種類から700種類もの細菌が住んでいて、その数はよく歯を磨く人であっても1000億個から2000億個といわれています。歯をあまり磨かない人の場合、1兆を超えることもあるそうです。
このように、口の中には無数の細菌が存在しているのですが、特に舌の表面には多くの細菌が潜んでいることで有名です。なぜなら、歯の表面には細かな襞(ひだ)がたくさんあるためです。
舌の表面には食べたり飲んだりしたもののカスや、表皮細胞が剥がれ落ちた物などが詰まり、舌苔(ぜったい)と呼ばれるものができます。
舌苔は誰にでも見られるものなのですが、舌苔の量があまりにも増えすぎたり、口内が乾燥したりすることで口内の細菌が繁殖し、舌苔に詰まった食べカスなどを分解することで、やはり口臭の元となる揮発性硫黄化合物を産生するのです。
毎日歯を磨いているのに口臭がするというような場合、舌の掃除をおこなっていない可能性があります。舌を掃除するには、専用の舌クリーナーを用いるとよいでしょう。
一番厄介な歯周病による口臭
口臭の原因は8割方口の中にあるということですが、その中でももっとも厄介なのが、歯周病が原因となって発せられるタイプの口臭です。では、歯周病になるとなぜ口臭がきつくなるのでしょうか。
30歳超えると8割以上が歯周病あり
歯周病というと高齢者の病気だと思っている方もいらっしゃると思いますが、日本生活習慣病予防協会の調べによると、20歳の人のおよそ70%が歯周病を患っており、30歳を超えるとその割合は80%を超えることが分かっています。
つまり、歯周病は若者や壮年期の人にとっても珍しいものではないということです。なぜこれだけの人が歯周病になるかというと、歯周病の初期には特に自覚症状がないからなのです。
虫歯になると痛みをともなうことが普通ですが、歯周病の場合、通常は痛みを発するようなことはありません。そのため、気が付いたら歯周病が進行していた、などということがよくあるのです。
歯磨きで血がでませんか?
歯周病に気が付くきっかけとしては、歯を磨いたときに歯茎から出血する、ということがあげられます。歯周病の原因となる歯周病菌は嫌気性菌と言って、空気を嫌うという性質があります。
そのため、歯と歯茎との間にある「歯周ポケット」と呼ばれる部分に入りこんで、歯茎を少しずつ侵食していくのです。それによって歯茎が炎症を起こし、歯を磨いたときに出血するという訳なのです。
歯周病によってなぜ口臭がひどくなるかというと、歯周病のときに産生される揮発性硫黄化合物にその原因があります。
口臭には「生理的口臭」といって、誰にでも起こりうるタイプの口臭があります。たとえば、朝起きたときに、口の中が渇いたりネバネバしたりして、口臭を発するようなことがありますよね。
また、緊張して口の中がカラカラになったり、おなかが空いたりしたときに口臭がすることもあります。こういった生理的口臭が起こる原因として、口の中の唾液量減少があげられています。
唾液には口の中を洗浄したり、細菌の活動を妨げたりする働きがあるのですが、唾液量が減少することで細菌が活性化し、口臭の元となる揮発性硫黄化合物を産生してしまうのです。
ただ、生理的口臭のときに産生される揮発性硫黄化合物は「硫化水素」といって、揮発性硫黄化合物の中では比較的、臭いが弱いことで知られています。
一方、歯周病が原因で産生される揮発性硫黄化合物のは、「メチルメルカプタン」や「ジメチルサルファイド」と呼ばれるもので、硫化水素よりもはるかに臭いがきついことで知られています。
また、生理的口臭が時間の経過や食事、緊張の緩和などによって自然と和らいでいくのに対し、歯周病が原因の口臭は、歯周病の治療をしない限り緩和することがありません。
自分の口臭には気が付きにくいものですし、自分が歯周病になってしまっていることに気が付いていないのであればなおさらです。そのため、定期的に歯科医院を受診することが重要なのです。
予防歯科の「後進国」日本
日本は経済的には先進国だといわれていますが、予防歯科という点からみると後進国といわざるを得ません。そのことを示す根拠として、80歳時点での平均残存歯数を欧米諸国と比べたデータがあります。
予防歯科の先進国であるスウェーデンでは、80歳時点での平均残存歯数が25本とされています。アメリカでは80歳時点で17本の歯が、イギリスでも15本の歯が残っているとされています。
ところが、日本人の80歳時点での平均残存歯数は、たったの8.8本(6.6本とするデータも)しかないということです。これは、日本人の歯の定期健診を受ける回数の少なさに起因していると考えられています。
スウェーデンでは90%の人が、アメリカやイギリスでは70%から80%の人が歯の定期健診を受けているとされています。これに対して、日本人が歯の定期健診を受ける割合は、たったの2%ということです。
その結果、日本人は世界でも有数の歯周病大国となっているのです。加齢によって歯の抜ける原因の大半が歯周病である、という事実を知っておくべきでしょう。
口臭改善方法は?歯磨きだけでは取れない汚れ
口臭予防や虫歯予防、歯周病対策として毎日歯を磨いているという人はたくさんいます。それでも歯周病になったり、口臭に悩まされたりする人は後を絶ちません。その理由として、歯磨きだけでは取りきれない汚れのあることが指摘されています。
バイオフィルム
バイオフィルムとは微生物によって構成される構造体のことで、菌膜(きんまく)と呼ばれることもあります。歯科の領域でバイオフィルムという場合、それは主に歯の表面に付着した細菌の集合体を意味します。
歯医者さんでもバイオフィルムという言葉がよく使われるようになり、「歯垢(プラーク)とどう違うの?」という疑問もよく聞かれます。
バイオフィルムと歯垢(プラーク)はもともと同じものなのですが、微生物による形成される構造体のことで細菌が三角コーナーのヌルヌルと同じで、歯にヌルヌルした状態でつくことです。
様々な論文でも発表されていますが、バイオフィルムは現段階では歯科衛生士などによってメカニカルに取り除く方法が一番有効と言えます。薬剤での治療はあくまで補助的な役割を果たすものになりますので、つまりPMTC(歯科専門家による機械的なお口の清掃)が重要になります。
嫌気性菌ジンジバリス菌(pg菌)が悪臭の原因
私たちが歯垢(プラーク)と呼んでいるものには、1mgの中に10億個もの細菌が住みついているといわれており、その細菌の中に虫歯や歯周病を引き起こす細菌も含まれています。
なかでも、嫌気性菌と呼ばれる空気を嫌う性質を持つ細菌によって、歯周病になるリスクが高まるとされています。歯周病の原因となる細菌の代表として、ジンジバリス菌(ポルフィロモナス・ジンジバリス、pg菌とも)があげられています。
ジンジバリス菌は成人性歯周炎を引き起こす原因とされ、慢性的な歯周炎の人からもっとも多く検出される細菌であることが分かっています。
ジンジバリス菌は特に歯周病を進行させる働きが強く、そのため歯周病を重症化させる「レッドコンプレックス」に分類されています。また、ジンジバリス菌によって歯周病が進行すると、強烈な悪臭を放つことが分かっています。
口臭改善方法は自費のクリーニング!
口臭の原因がおおむね口の中にあることは分かりました。ただ、歯磨きでも完全に歯垢(プラーク)やバイオフィルムを取り除けないのであれば、どのように対処すればよいのでしょう。
バイオフィルムを除去するPMTC
口臭の元となる歯垢(プラーク)やバイオフィルムを取り除くためには、歯科医院を受診して、自費のクリーニングをおこなうとよいでしょう。
自費のクリーニングをおこなうと、歯科医や歯科衛生士といった歯のプロフェッショナルによって、歯の表面だけでなく、歯と歯の間や、歯と歯茎の間もキレイにしてもらうことができます。
バイオフィルムは厳密に言うと歯ブラシでも除去することができますが、それだけでは取り切れないためスケーラーや研磨で光沢にする専用の機器を用いて、歯石やステイン、バイオフィルムを取り除いていくこととなります。
最低3ヶ月に1回の頻度
歯科医院でおこなう歯のクリーニングの効果は、一般的に3ヶ月程度は持続するとされています。というのも、口腔内の細菌は3ヶ月経つと再び増殖し歯の表面に付着します。そのため、3ヶ月に1度は歯のクリーニングをおこなってもらうとよいでしょう。
3ヶ月に1度歯のクリーニングをおこなうと、年間でおよそ20,000円から40,000円程度の出費となります。ただ、1日に換算すればたったの50円から100円程度です。
1日に50円から100円の出費で、老人になっても自分の歯で美味しくごはんを食べられるとしたら、安い出費と言えるのではないでしょうか。
ホームケアも怠らない
3ヶ月に1度、歯のクリーニングをおこなってもらうことで、歯の健康寿命を延ばすことが可能です。だからと言って自宅でなんのケアもしなくていいという訳ではありません。
クリーニング効果を長持ちさせるためにも、歯周病になるリスクを下げるためにも、毎日の歯磨きは欠かさないようにしましょう。
また、歯磨きだけでは取りきれない歯垢に関しては、歯間ブラシやデンタルフロスを用いて掃除するとよいでしょう。
唾液の量も気にする
生理的口臭の原因として、唾液分泌量の減少があげられていましたが、唾液の分泌量が減少すれば、虫歯や歯周病に成るリスクが高くなります。また、虫歯や歯周病になったときの口臭は、生理的口臭の比ではありません。
そのため、普段から唾液が正常に分布されているかどうかを気にすることが重要です。とは言うものの、素人にとって、どれくらいの唾液分泌量が正常なのか判断するのは難しいですよね。
そこで、日頃から意識して水分補給をおこなうように心がけましょう。唾液が正常に分泌されるためには、水分補給をしっかりとおこなうことが重要です。それによって、唾液の分泌量も正常となります。
専門医院で検査する
「もしかしたら私、口臭があるかも?」と心配になった場合は、歯科医院や口臭外来などの専門医院で検査するようにしましょう。では、どのようにして口臭を測定するのでしょうか。
口臭測定器
口臭を専門にしている歯科医院や口臭外来には、専用の口臭測定器と呼ばれる機械があります。それによって、どのような種類のガス(におい物質)が出ているのかや、濃度がどれくらいなのかが分かります。
尿検査
口臭の原因が口腔内に見当たらない場合、尿検査をおこなって、内科系の疾患がないかどうかを検査することもあります。
3~4ヶ月の通院
口臭の原因が口腔内に見つかった場合、3ヶ月から4ヶ月の通院をおこなって治療するのが一般的です。また、治療が終わっても再発しないよう、3ヶ月に1回程度のメンテナンスをおこなうのが通常です。
口臭予防は健康につながる
口臭の原因や改善法について見てきましたが、いかがだったでしょうか。口臭がどうしても治らない場合は歯周病にかかっているかもしれません。そして毎日の歯磨きだけでは歯の汚れが取り切れないこともお分かりいただけたかと思います。
さらに水分が不足するだけでも、口臭を発するリスクがあるということでしたが、思い当たる節はありませんでしたか?口臭が気になる場合、まずは専門医による診断を受け、原因を特定しましょう。そのうえで根気よく治療を受けることが重要です。