もしかしてこの口臭って癌が原因だったの?病気による口臭

「最近、口臭が気になるのだけど、癌が原因となって口臭のすることもあると聞いた」…そんな情報で不安になっている方、いらっしゃいませんでしょうか。口臭の原因は実にさまざまですが、80%以上は口腔内にトラブルがあることで生じるとされています。今回の記事では、むしろレアなケースである癌やその他の内臓疾患が原因となって起こる口臭について紹介したいと思います。

柴田はるひ
この記事の監修者
歯科衛生士
歯科医師として、30年近く審美治療にかかわってきて、治療後に患者様の笑顔がより輝いてくることに大きな喜びを感じています。 ホワイトニングや矯正治療後に、「これまでコンプレックスだった箇所が自慢の個所に変わった!」「よく笑うようになった!」など「患者さまの人生を変えることに貢献できた!」と思える瞬間が歯科医師としての一番の喜びだと思っています。最近心に残った言葉は「幸せ」には「人から与えられる幸せ」「自分の力で何かを得る幸せ」「他人に与える幸せ」の3種類あり、「他人に与える幸せ」を知っている人が最高の幸せ者である、という言葉です。 私も人生の折り返し地点を過ぎてきましたので、これからは「他人に与える幸せ」を日々実 践していきたいと考えています。 座右の銘は全ての人を尊重する、日々感謝です。 趣味は格闘技観戦、読書です。
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口臭の原因

口臭を確認しようとしている女性

癌が原因となって現れる口臭の原因について解説する前に、そもそもなぜ口臭がしてしまうのかについて知っておきましょう。内臓疾患が原因で起こる口臭はむしろレアケースだと知ることで、不要な心配をせずに済みますよ。

1~2割が内臓原因の口臭

口臭の大半は、口腔内になんらかのトラブルが発生していることによって起こるとされています。残りの1割から2割が内臓に問題がある場合に生じる口臭であるとされています。どのような内臓疾患によって、どんな口臭がするのかについては、後ほど詳しく紹介したいと思います。

逆流してきているわけではない

内臓疾患が原因で起こる口臭ですが、問題となる臓器が直接臭いを発するという訳ではありません。タバコやアルコールの場合と同様、「ニオイ物質」が血液中に取りこまれて、それが結果として肺からはきだされることで口臭となるのです。

これはその他の口臭に関しても言えることです。例えば、にんにくのたくさん入った料理を食べたあとに口臭がきつくなることは、みなさんもご存知のことだと思います。

ただ、胃の中に入ったにんにくの臭いが、直接呼気から吐き出されている訳ではないのです。胃の中に入ったにんにくの成分(アリルメチルスルフィド)が血液中に吸収され、それが胃に戻って吐き出されることで口臭として現れるのです。

8割以上は口腔内が原因

口臭が見られる場合、その8割以上は口腔内になんらかのトラブルが生じているということです。では、どのようなトラブルの可能性があるのでしょうか。

唾液量の減少

口臭の中には「生理的口臭」と呼ばれるものがあります。朝起きたときに口の中がネバネバして嫌な臭いを発することがありますが、そのような「誰にでも起こりうる口臭」のことを生理的口臭と呼んでいるのです。

生理的口臭が見られる場合の特徴が、唾液量の分泌が低下して、口の中が乾燥しているということです。そのため、緊張によって口の中が乾燥した時にも、生理的口臭が見られることとなります。そのような場合の口臭を「緊張時口臭」と呼んでいます。

また、空腹時に唾液の量が減少することで生じる口臭もあり、そのような口臭のことを「飢餓口臭」と呼んでいます。

生理的口臭は病気が原因で起こる口臭(「病的口臭」)に比べればそれほど臭いがきつくないという特徴があります。半径30cm以内に近寄るようなことがなければ、他人に不快感を与えるようなことはありません。

また、起床時口臭であれば時間の経過や水分の摂取によって自然と臭いが和らぎますし、飢餓口臭であれば食事をすることで、緊張時口臭であれば緊張が解けることで、やはり臭いはしなくなっていきます。

生理的口臭はその他にも、ホルモンバランスの乱れによって現れることがあります。そのため、女性は生理中や妊娠・出産期、更年期などに生理的口臭の見られることがあるということです。

口腔内のトラブルによる口臭

口臭といえば、口腔内のトラブルによる口臭に触れないわけにはいきません。なぜなら、口臭のほとんどが口腔内のトラブルによってもたらされるものだからです。

口腔内のトラブルとしては、虫歯や歯の詰め物の劣化などがありますが、なんと言っても歯周病がその最たるものとしてあげられています。

歯周病というと、若い方は関係ないと思うかもしれませんが、実は20代の人であってもおよそ70%の人が歯周病に罹患しているとされています。30代になると、その数字は80%を超えるということです。

これだけ高いパーセンテージの歯周病になぜ気が付かないのかというと、歯周病の初期には特に症状が現れないからです。虫歯のように痛むこともなければ、冷たいものが歯にしみることもありません。

そのため、知らないうちに歯周病が徐々に進行してしまうのです。歯周病が進行する際には、歯石などに住んでいる歯周病菌が活発に働くこととなります。

歯周病菌によって歯茎に炎症がおきたり、歯茎から出血したりすることとなるのですが、その際にニオイ物質である「揮発性硫黄化合物」が産生されます。

揮発性硫黄化合物にはいろいろあって、例えば生理的口臭のときに産生される揮発性硫黄化合物は、「硫化水素」と呼ばれる物質です。

一方、歯周病のときに産生される揮発性硫黄化合物は、「ジメチルサルファイド」や「メチルメルカプタン」と呼ばれる物質で、硫化水素に比べるととても臭いがキツイという特徴があります。そのため、歯周病患者さんの息は臭いという訳なのです。

口腔内のトラブルによる口臭の原因としては、「舌苔(ぜったい)」の存在も無視できません。舌苔とは舌の真ん中あたりから奥の方にかけて見られる、白っぽいものを指します。

舌の表面には細かい襞があるのですが、その襞に食べカスや口内の表皮細胞などが詰まることによって、舌苔ができる訳なのです。舌苔は誰にでも見られるもので、特段珍しいものではありません。

 

ただ、舌苔の量が増え過ぎると、口内の細菌によって分解されるときに、やはり口臭の元である揮発性硫黄化合物が産生されるのです。

口腔外のトラブルによる口臭

口臭の原因としては、口腔外のトラブルもあげられています。口腔外のトラブルに関して、癌や内科系疾患による口臭については、後ほど詳しく紹介したいと思います。

その他にどのような口腔外のトラブルがあるかというと、例えば鼻の奥に膿が溜まってしまう副鼻腔炎があげられます。副鼻腔炎は蓄膿症とも言われることから分かるように、症状が悪化すると膿が溜まり悪臭を放つようになります。

その臭いが呼気に交じることによって、口臭として感じられるのです。あと、喉にある扁桃腺に炎症を起こすことによって膿が溜まり、それが臭いの元となるようなケースもあります。

癌による口臭

喉の炎症に苦しんでいる女性

口臭のほとんどは口腔内のトラブルによって起こるということでしたが、それでは次に、今回のメインテーマである癌による口臭について見ていきたいと思います。癌による口臭にはどのような原因があり、どんな臭いを発するのでしょうか。

癌が口臭の原因になる理由

口臭を発するような癌としては、口腔癌(舌癌(ぜつがん)や頬粘膜癌(きょうねんまくがん))といった口腔内の癌、咽頭癌や副鼻腔癌といった耳鼻科系の癌、肺癌や胃癌、肝臓癌などの内科系の癌があげられています。

癌になった場所はそれぞれ機能が低下します。例えば肝臓の機能が低下すると、人間の本来持っている「解毒機能」が低下します。そうすると、医薬品やアルコールの持つ毒素が体内に取り残されることとなるのです。

その毒素が血液中に混じることによって肺へともたらされ、結果としてそれが口臭となって現れるという訳なのです。心療内科系の薬を服用している人から、独特の口臭が漂っていることをご存知の方もいらっしゃるのではないでしょうか。

癌による口臭はどんなにおいなの?

癌による口臭は、どこの機能が低下しているかによって変わってきます。例えば、血液を浄化する器官である腎臓の機能が弱くなると、アンモニアの排出が追い付かなくなり、それによって口臭がアンモニア臭くなります。

肝臓に関しては、分解しきれなかった毒素によっていろいろな口臭を発するようになります。よく言われるのが「ドブのようなニオイ」「カビのようなニオイ」「ネズミのようなニオイ」などです。

その他、耳鼻科系の癌や消化器系の癌であれば「肉の腐ったようなニオイ」がしますし、糖尿病の場合にも特徴的な口臭がするということです。

癌による口臭を対策するには

癌が口臭の原因となっているのであれば、歯を磨いてもマウスウォッシュでうがいをしても意味がありません。すみやかに病院を受診して、口臭の元となる疾患の治療をおこなうことが先決です。

また、舌癌や頬粘膜癌、肺がんなどはタバコが危険因子(リスクファクター)となります。そのため、癌になりたくなければタバコを控えるべきですし、実際に癌を発症しているのであれば直ちに禁煙することが重要となります。

糖尿病による口臭

糖度を図る太っている人

糖尿病になると、特徴的な口臭がすることも知られています。では、糖尿病になるとどのような臭いがするのでしょうか。また、原因は何なのでしょう。

原因

糖尿病には1型の糖尿病と2型の糖尿病の2種類がありますが、1型の糖尿病は先天的なものが多く、インスリン欠乏型の糖尿病と呼ばれたりもします。

2型の糖尿病は生活習慣や食習慣など、後天的に罹患することで知られています。大部分は太りすぎや食べすぎ、運動不足やストレスなどが原因で起こるとされています。

糖尿病になった場合の口臭がなぜ起こるかというと、糖尿病患者さんはインスリンを必要なだけ分泌することができなくなるため、体内の糖分をうまくエネルギーに変えることができなくなります。

そのため、肝臓が代わりにアセトン(ケトン)を作りだし、それをエネルギーとして用いることになるのです。ただ、アセトンが血液中に溶け出して、肺から呼気として吐き出されると、独特のアセトン臭がすることとなるのです。

また、糖尿病になると歯周病が進行することも分かっています。歯周病菌によって揮発性硫黄化合物が産生されると、口臭にそのニオイも加わることになります。

糖尿病による口臭はどんなにおいなの?

糖尿病になると独特のアセトン臭がすることになるのですが、例えて言うなら「リンゴの腐ったようなすっぱい臭い」ということになります。

肝臓が弱っている口臭

肝臓のぬいぐるみをお腹に掲げている女性

肝臓は「沈黙の臓器」などといわれるように、肝臓に何らかの障害があっても、なかなか症状としてあらわれてくることはありません。ただ、肝機能障害が起こっているような場合、やはり特徴的な臭いがするということです。

原因

肝臓は人間の体内で「解毒」をつかさどっている臓器です。人間の身体にとっての毒とは、アルコールや体内で発生するアンモニア、また医薬品などもあげられます。

肝臓の機能が低下すると、さまざまな毒素が分解しきれなくなり、それが血液中に溶け出すことによってさまざまな口臭を発するようになります。

肝臓が弱っているとどんなにおいがするの?

肝臓が弱っているときの口臭はさまざまです。たとえば、体内で発生するアンモニアを分解しきれなくなった場合、アンモニアが血液中に溶け出して、肺から呼気として吐き出されることによって、口臭にアンモニア臭が混じることとなります。

肝機能障害の初期段階ではアンモニア臭がするようなことはなく、どぶのような臭いがしたり、ぼろ雑巾のような臭いがしたりするということです。

必ず病院を受診しましょう!

聴診器を当てようとしている男性医師

これまで見てきたように、癌や内科系の疾患によって特徴的な口臭を発することがあるということを理解して頂けたことと思います。ただ、癌や内科系の疾患によって起こる口臭は、口臭全体からみた場合それほど多いとは言えません。

口臭の8割以上は口腔内に原因があるからなのですが、とは言うものの、自己判断で決めつけるのは危険です。もし口臭が気になるようでしたら、まずは歯科医院や口臭外来を受診するようにしましょう。

歯周病や虫歯などを治療しても口臭が改善しないような場合、初めて内科系の疾患が疑われることとなります。いずれにせよ、早めの受診が早期回復につながります。

口臭と何か症状がないか考えてみて下さい

癌や内科系の疾患によって起こる口臭について見てきましたが、いかがだったでしょうか。口臭によって癌や内科系の疾患が分かるということでしたが、明らかに特徴的な口臭がする場合、それ以前に何らかの症状が出ていることでしょう。

また、そのような口臭が出る前に、定期的に健康診断を受けて、身体の状態を把握しておくように心がけましょう。もちろん、歯周病の治療をおこなったり、定期的に歯科健診を受けたりすることも重要ですよ。たかが口臭と軽く考えないようにしてくださいね。