禁煙しても全然口臭が消えない!禁煙しても残る口臭の正体

タバコを吸っていたけど、口臭が気になり禁煙をするという方は少なくないです。ですが禁煙をしても一向に口臭が改善しなければやめた意味がありませんよね。

「タバコを辞めてから結構経つのにまだ口がくさい気がする…」そんなあなた、そこには意外な原因があることをご存知でしょうか。実はタバコはあなたの体に深く根を張っていて、タバコをやめただけでは解放してくれないかもしれません…!

柴田はるひ
この記事の監修者
歯科衛生士
歯科医師として、30年近く審美治療にかかわってきて、治療後に患者様の笑顔がより輝いてくることに大きな喜びを感じています。 ホワイトニングや矯正治療後に、「これまでコンプレックスだった箇所が自慢の個所に変わった!」「よく笑うようになった!」など「患者さまの人生を変えることに貢献できた!」と思える瞬間が歯科医師としての一番の喜びだと思っています。最近心に残った言葉は「幸せ」には「人から与えられる幸せ」「自分の力で何かを得る幸せ」「他人に与える幸せ」の3種類あり、「他人に与える幸せ」を知っている人が最高の幸せ者である、という言葉です。 私も人生の折り返し地点を過ぎてきましたので、これからは「他人に与える幸せ」を日々実 践していきたいと考えています。 座右の銘は全ての人を尊重する、日々感謝です。 趣味は格闘技観戦、読書です。
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タバコと口臭の関係性

タバコを吸う男性に対して最悪といった顔をする女性

「タバコ=くさい」というイメージは誰しも持っていますが、タバコのにおいには、①煙のにおいと②口の中のにおいの2種類があります。

今回は口臭のお話なので、口の中からするあの不快なにおいはどのようなメカニズムで生まれてしまうのかを見ていきましょう。タバコの中の成分が直接的に口臭としてにおう場合と、タバコが間接的に作用して別の要因から口臭になる場合、2つのケースがあります。

ニコチンやタールが原因

タバコにはニコチンとタールという物質が含まれていることは有名ですよね。タバコを吸う事によって、これらは口臭のもととなってしまいます。これはタバコの成分が直接的に口臭と関連しているケースです。

①ニコチン

タバコに含まれるニコチンには利尿作用があります。これは言い換えれば、体の水分を外に排出する力があるということです。体の中の水分が少なくなると喉が渇きますよね。同時に唾液の分泌も少なくなります。唾液の分泌が少なくなると舌が乾いて細菌や微生物が繁殖しやすくなるのですが、これが口臭の臭いの原因の一つです。

口の中には常に多くの細菌や微生物が棲みついているのですが、種類も様々で中にはくさいにおいを出したり、その手伝いをしてしまうような種類もいるのです。

②タール

タールはきつい口臭の元となる、アセトアルデヒド、アンモニア、酢酸という物質を発生させます。アセトアルデヒドは「車の排気口からするような刺激臭、息が詰まるようなにおい」、アンモニアは理科の実験で多くの人が学んだように「尿のようなにおい」、酢酸は「汗のような酸っぱいにおい」と表現されることが多いです。

タールはこの他にも「野菜が腐敗したにおい」や「便と同じにおい」がする物質も発生させますが、においのメインの原因はこの3つの物質です。

タバコによる歯周病の悪化

歯周病は歯の骨や歯ぐきが溶けて歯を支えることができなくなる病気です。歯周病は非喫煙者でも感染しやすい病気ですが、日常的にタバコを吸っていると歯周病にかかるリスクがより高まります。もしすでに歯周病にかかっている場合、悪化している、もしくは今後悪化する可能性は非常に高いです。歯周病になった場合はタバコの成分のにおいではなく、歯周病菌の発する臭気ガスや、血液や膿のにおいによってきつい口臭が発生します。

禁煙しても口臭が消えない原因①

タバコを止めたからすぐに口臭が止むと思っている方も多いと思いますが、タバコの健康への悪影響はあなたが思っているよりも根が深い問題かもしれません。

歯周病

歯周病のせいで黄ばんだ歯

歯周病は日本の国民病とも呼ばれていて、5人のうち4人が歯周病患者もしくは予備軍と言われています。先ほども述べたように喫煙者は歯周病になる可能性が非常に高いです。

歯周病は初期〜中程度の段階では自覚症状がないので気づきにくいのですが、実はあなたも歯周病にかかっていてその症状が進行しているかもしれません。

日本では長年「予防歯科」が軽視された背景もあり、「歯医者は痛くなったら行く場所」と思っている人が多いのですが、痛みを感じてやっと歯医者に来たときには既に手遅れで、歯を抜いて入れ歯で生活していかなければならなくなった…というようなことも起こりうるのです。

歯周病菌はくさいにおいのするガスを放ちます。実際に歯周病患者の呼気を調査するときついにおいのする成分「メチルメルカプタン」が健常者よりも多く検知されます。

また、歯周病にかかると歯茎が膿んでその膿のにおいが口臭に混ざるので遠くからでも分かるような激臭がすることもあります。

歯周病にかかっていたとしたら、気づかず放置している限りは禁煙をしていても口臭の原因を除去することはできません。これが、禁煙をしても口臭がする大きな理由の1つです。

逆に言えば、口臭の原因の9割は口腔内にあると言われているので、歯周病が治ると口臭もしなくなる可能性が高いのです。

ポルフィロモナスジンジバリス菌の強烈な臭い

歯周病になると、口腔内の環境が変わります。例えばジンジバリス菌のケース。腸と同じように口腔内にも善玉菌と悪玉菌が棲んでいるのですが、この菌もわたしたちの口腔内に存在する菌です。

ジンジバリス菌は血液を栄養とする悪玉菌ですが、健康であればなにもしない弱い菌です。しかし喫煙やその他の原因によって歯周病にかかり、歯肉炎などで出血をすると途端に暴れだすことで有名な菌なのです。

ジンジバリス菌は酸素を嫌うので歯肉を破壊しながらどんどん体内に潜って増殖していきます。さらにジンジバリス菌は肉が腐ったような悪臭を放つので、口臭のくささにも拍車がかかります。

ジンジバリス菌によって体が危機に立たされると、今度はジンジバリス菌を排除しようとする体の免疫によって骨が溶けてしまうこともあります。歯の骨が溶けると歯がぐらぐらになり自立できなくなる可能性があるので、放っておくと総入れ歯ということにもなりかねません。

全身疾患にもなりやすい

歯周病を引き起こす細菌の被害は「歯周」だけではすまないことをご存知でしょうか。歯周病菌によって口腔内のバリアが弱まると、歯周病菌はのどや歯肉から、全身のあらゆる場所に侵入し勢力を拡大しようとします。体の免疫力が弱いと、全身を歯周病菌に明け渡してしまうことになります。

そうなると具体的にどのような病気になるのでしょうか。例えば歯周病菌が血流に乗って体内で炎症を起こし、その炎症の部分に血栓を作ると心筋梗塞になります。

また、死産や低体重児を出産した母親の子宮の中に歯周病菌の毒素が発見されることがあります。その他にも骨粗しょう症や肺炎、糖尿病、関節リウマチやアルツハイマーになるリスクを増やしたり、悪化させます。

歯周病菌は体に栄養が行き渡るのを阻害したり、インフルエンザなどのウイルスを体内に招き入れたりと、色々な悪さをするので軽い病気だとしても、歯周病菌のパワーが組み合わさると重病化してしまうのです。

タバコによって弱くなってしまった口腔内はまず歯周病菌に攻略され、その状態を改善しない限りは全身さえも歯周病菌のターゲットになり続けるのです。

歯の健康は命には関わらないと軽視されがちですが、そこで放置した菌は体内を巡り巡ってあなたを殺す機会を伺っているかもしれません。歯周病菌の怖さは口臭だけではなかったのですね…!

禁煙しても口臭が消えない原因②

 

悪さをしていた歯周病菌を追放したら、口臭からは解放される…!と思いきや!?歯自体に付着・蓄積してしまったものを忘れていませんか?

歯にヤニがついている

ヤニが付いて汚れた歯

タバコを吸っている人の歯は黄ばんでいることが多いです。ひどいと黒く変色していることもあります。この色は何も対処をしていなければ禁煙したあとも多少は残ってしまいます。でも、このヤニには色だけではなくにおいも含まれているのです。つまりヤニによってあなたの歯は「イヤなにおいつきの歯」になってしまっているかもしれません…!

ヤニは歯磨きでは取れない

毎回喫煙をした直後に歯みがきをしていたのであれば、あなたの歯にはヤニはついていないかもしれません。でもいつもそのように行動できる人は少数だと思います。

喫煙後時間が経ってしまうと、もうヤニは歯みがきでは取れなくなります。ヤニがついた後にすぐに掃除をしなければそのヤニの色は歯の上からコーティング加工をされてしまうからです。

このコーティング剤は「ペリクル」とよばれるタンパク質で、唾液に含まれています。歯を守るために日々コーティングを繰り返しているのですが、残念ながらヤニ(タール)と結びつきやすい特徴があります。

つまりタバコのにおいと一緒にヤニが歯に付着するとそれに反応してペリクルがコーティングし、またタバコを吸ったらさらにその上からコーティングをして…とタバコによる汚れとニオイが何層にも重なってしまうのです。だから喫煙している人の歯は汚いケースが多いのです。

ヤニ付着の程度が軽ければ、市販のヤニ除去に適した成分が配合された歯磨き粉や、歯の消しゴムを使用することでヤニを落とすことができます。

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ただ、これらを軽い力で使っても取れないようであればプロ(歯医者)に任せましょう。強い力でゴシゴシとこすったり、あらすぎる研磨剤を使うと歯の汚れと一緒に歯の表面のエナメル質まで削れてしまう可能性があります。削れた部分はさらにヤニが付きやすくなってしまいます。

エナメル質は歯の表層を守るとても硬い部分ですが、一度削れてしまうと二度と再生はしません。あまりにも削りすぎてしまうと知覚過敏に悩まされることもあるので難しそうなら歯科医に任せるのが一番の近道です。

禁煙後の口臭を改善する

歯周病とヤニ、口臭の原因が分かったら次はどうするべきでしょうか。

まずは歯医者さんを受診しましょう

歯の施術を受ける女性

タバコを止めることができたら、まず一番最初に歯科医院に検診をしに行きましょう。汚れてしまった歯も、なかなか治らない口臭も、恥ずかしがらずにプロに相談しましょう。

基本的にどの歯科医院でも口臭の相談はできますが、口臭外来も行っている歯科医院ならより確実にあなたの悩みを解決する手助けをしてくれますし、敷居も低いでしょう。

歯科医は毎日多くの人の口の中を見たり口のにおいを嗅いだりしています。ミントタブレットや口臭サプリメントを買ってその場しのぎをするくらいなら、歯医者に行ったほうがはるかにコスパがいいということを覚えておいてくださいね。

歯のクリーニングをする

歯科医院では、歯についた黄ばみやヤニ、歯垢や歯石の除去をしてもらいましょう。さまざまな道具を使って自宅ではできない本格的なクリーニングをしてもらうことができます。ヤニを落とすことはもちろん軽度の歯周病であればクリーニングを繰り返すことによって改善、予防することができます。

クリーニングは1回行って終わりではなく、定期的(3ヶ月に1回)通うことが重要なポイントです。繰り返し通うことにより歯周病を高い確率で予防できますし、口の中が清潔になり口臭も予防することができるのです。

歯のクリーニングは基本的にどこの歯科医でも行っていますが、予防で行うクリーニングは基本的に保険適用外になります。1メニューとして料金とともにwebサイトに掲載をしている歯科医もあります。不安な方は事前にお近くの歯科医のクリーニングメニューを探してみてください。

歯周病の治療

歯周病で骨が溶けてしまった場合は、その骨を元通りにすることはできませんが、もとの健康な生活が送れるように治療することは可能です。

少し時間がかかるかもしれませんが、治療をすることで目に見えて口臭もなくなり、将来全身疾患にかかる確率もぐんと減るので、面倒でも将来の投資と考えましょう。

ただ、歯周病は生活習慣病とも呼ばれており、再発の可能性が高いのです。なので本気で歯周病を完治させてこれからも口臭や健康上の心配を抱えたくないのであれば、治療が終わった後も定期的に歯科医院に通う覚悟が必要です。

定期的に歯医者さんへ

歯の施術を行う女性歯科医

日本では予防歯科が重視されてこなかったという歴史から、歯医者は痛くなってから行くものだと考える人が多いですが、自覚症状がなかったとしても歯科医院には定期的に通うのがおすすめです。

口臭の原因となる歯石や歯垢を除去してもらえますし、もし虫歯や歯周病が見つかったら早期に治療ができます。

また、衛生観念の高まりから口臭のエチケットが重要視される昨今なので、たまにプロに見てもらっておいたほうが自身を持って毎日人と接することができそうですよね。

そしてもちろん、普段から歯科健診や歯磨き、うがい薬や健康な食事で歯周病にならないように努めましょう。フロスやうがい薬を導入してみるのもとてもいい方法ですし、食事のときによく噛み唾液がでるよう意識したり、何より定期的なクリーニングが重要です。

禁煙したら歯医者さんへ

禁煙のマークを持っている女性歯科医

禁煙をしても口臭がする原因は、歯周病と歯についたヤニでした。男性でもあまり好ましくはないですが、女性ならば口臭と汚い歯は避けたいですよね…。そして男女構わず差し歯や入れ歯は絶対に嫌ですよね。

禁煙ができたのであれば、歯周病の治療やクリーニングもできるはずです。せっかく大好きで止められなかったタバコをやめたのであれば、自分のその頑張りを認めて最後の最後まで今まで汚してしまった場所をきれいにしましょう!禁煙を機に、一人でも多くの人の自分の歯の健康への意識も変わることを願っています!