便秘で下剤を使う時に知っておきたい種類から使用方法・副作用まで

便秘が続くとどうしても辛くなって下剤を服用したい気持ちになりますが、使いすぎるとお薬の副作用も心配になります。下剤は正しく使ってこそ効果が発揮されるもので、なんとなく使うことは適切とはいえません。下剤の正しい使用方法と副作用について詳しくご紹介致します。

便秘薬(下剤)の種類

薬局の中

便秘薬といっても、種類はさまざまで効き目も変わってきます。自分にあったタイプを選ぶことが、安全に効果的に下剤を使うためには大切です。まずは、便秘薬の種類について理解しておきましょう。

機械性(非刺激性)下剤

機械性下剤は別名非刺激性下剤とも呼ばれるタイプです。便秘薬の中ではコーラックのように腸を刺激するタイプがよく知られていますが、機械性下剤は腸を刺激しないマイルドなタイプです。

機械性下剤には大きく分けて次の3種類があります。

塩類性下剤

代表的な薬剤:酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム

これらは腸の中ではマグネシウムとなり腸で吸収されにくく、浸透圧の違いを利用してマグネシウムのある方へ水分を引き込む作用があります。

大腸を通過する消化液(食べ物と消化液がまざったもの)は大腸でどんどんと水分が吸収されて硬い便に変化していきます。便秘になると水分が吸い取られすぎて便がカチカチになってしまいがちです。

そこで、これらの塩類性下剤を使用すると、便の方へ水分が集まり便を柔らかくできます。大量の水と一緒に服用するのが効果的です。しかし、効果が出るのは少し時間がかかります。旅行中やどうしても苦しいときやすぐにでも出したい時には効果が不十分と言えるでしょう。

膨張性下剤

代表的な薬剤:カルメロース(カルボキシメチルセルロース)、プランタゴ・オバタ種子

腸の中で吸収されず、服用した水や腸管内の水分を吸収することで便のかさを増やす作用があります。便が膨らむことで、腸に物理的な刺激が伝わり、排便を促す作用があります。

即効性は低いですが、2,3日連続して使用すると自然に近いお通じが期待できます。市販薬でも膨張性下剤は手に入ります。ただし大腸刺激性下剤と共に配合されているタイプもあるため、種類によっては漫然と使いすぎないように気をつけましょう。

浸潤性下剤

代表的な薬剤:ジオクチルソジウムスルホサクシネート(DSS)

水と油を混ざりやすくする界面活性作用があります。便の表面張力を低下させることで、便に水を浸透させます。副作用が少なくて安全にしようしやすい成分ですが、他の下剤と比べて効果が弱いため基本的には単独では使われません。市販薬では刺激性成分との合剤となっていることがあります。

刺激性下剤

一般的に世間的に下剤と呼ばれるものは、この刺激性下剤です。大腸を刺激することで、腸の動きを促して、排便しやすくする効果があります。

刺激性下剤には小腸刺激性下剤と大腸刺激性下剤がありますが、一般的に使われているのは後者です。大腸刺激性下剤にはつぎのようなタイプがあります。

・アントラキノン系(センノシド・センナ・ダイオウ・アロエ)

・ジフェニルメタン化合物(ピコスルファートナトリウム・ビサコジル)

その他

他にも下剤としては、坐薬や浣腸が使われることもあります。坐薬としては、例えば新レシカルボン坐剤のように、腸管で炭酸ガスを発生させて腸のぜん動運動を促すタイプがあります。

また浣腸にはグリセリンという成分が使われているものが主流で、やはり粘膜を刺激することで腸のぜん動運動を促します。浣腸についてはこちらに詳しくのっていますのでぜひご覧ください。

下剤の場合は、効果が数分から30分以内で現れるため、自分で出すタイミングをコントロールしやすいのがメリットです。ただし、この薬も腸に刺激を与えるため、腸が刺激に慣れて効かなくなることがあります。どうしても出ないときの緊急時に使う薬と思っておきましょう。

下剤の正しい服用方法

聴診器と薬

下剤は病院から処方してもらうこともできますが、市販薬である程度は対処することが可能です。市販の下剤といっても種類は豊富なので、正しい選び方と使用法を知っておきましょう。

まずは効果がゆるやかな漢方や酸化マグネシウムを

下剤の中でも効果が穏やかなものから強いものまで種類はさまざまです。初めて使うときに最初から強いタイプを使ってしまうと副作用に苦しんだり、トイレに駆け込むことにもなりかねません。まずは効果が穏やかなタイプから使うことをおすすめします。

効果が穏やかなものとしては、漢方薬や酸化マグネシウム配合のタイプがあります。ただし、漢方の中でもセンナやダイオウを単独で配合しているような生薬製剤は天然成分だからといって効果が穏やかな訳ではないので注意してください。

また刺激性下剤でも選び方次第では安全に使えます。例えば、1錠あたりの含有量が少ないものは、調節しやすいので使いやすいでしょう。薬の飲み方に幅があるタイプを選びましょう。

一緒に整腸剤も服用すると効果的

便秘になっているときは、腸内で悪玉菌が繁殖しています。悪玉菌は腸の動きを鈍くして、ますます便秘を悪化させてしまいます。増えすぎた悪玉菌を減らして善玉菌のバランスを多く保つことが大事です。

しかし、下剤には腸を刺激したり、水分を与えることで便を出しやすくするもので、腸内細菌への働きはありません。そこで整腸剤を併用するのも効果的です。

整腸剤そのものにも便秘に対する効果はありますが、効果は穏やかです。下剤と併用することで、腸内環境を改善しながら便秘を改善できるので、便秘の再発を防ぐためにも有効だといえます。

刺激性下剤は最後の手段

飲み薬で最も効果が速やかに現れるのが刺激性下剤です。スッキリ感が得られやすいため、下剤といったら刺激性下剤を最初から使ってしまう方も少なくありません。

しかし、できれば刺激性下剤に頼りきりになることは避けた方が良い側面があります。刺激性下剤を使いすぎると腸が慣れてしまって効かなくなってしまうことがあるのです。

まずは腸に優しい効き方をする、酸化マグネシウム、整腸剤や膨張性下剤などから試してみて、それでも効果がない場合には刺激性下剤を使うようにすると良いでしょう。

ただし、便秘の状態や程度によっては緊急性が高いこともあります。刺激性下剤を我慢しすぎて、腸に便が詰まってしまうことも避けなければいけません。

メリットとデメリットのバランスを考えながら適切に下剤を使うには、できればお医者さんの指示の下で使った方が安全です。

下剤の副作用

お腹を抱えてる女性

先に少し触れましたが、下剤には副作用があり、適切に使わないと思わぬトラブルを起こすこともあります。下剤を安易に使うのではなく、副作用があることを理解しておきましょう。

下痢・腹痛

どのタイプの下剤でも、一番起こりやすいのが下痢や腹痛の副作用です。これらは作用が強すぎただけとも言えますが、効果のメリットを上回ってしまうのでは問題です。

特に、刺激性下剤では腸を刺激するため、お腹が痛くなりやすいと言えます。まだ、腸が動きすぎてしまい、腸の水分調節が不十分になることで、まだ柔らかい状態にある便が排泄されて下痢を起こすことがあります。

「お腹が痛くなりにくい」と書かれているタイプであったとしても、飲み過ぎれば腹痛や下痢を起こすことがあるので気をつけましょう。

下剤に対して耐性ができる

主に刺激性下剤のセンナやダイオウは使いすぎると良くないといわれます。これは、「耐性」といって薬に慣れてしまって効き目が出にくくなってしまう現象をいいます。

センナやダイオウなどのアントラキノン系は特に注意が必要です。これらは大腸メラノーシスという腸粘膜を黒くしてしまう副作用があり、これが耐性の発現に関係していると考えられています。

酸化マグネシウムなどの塩類性下剤については、耐性が出にくいという点では安全だと言えます。

精神的に依存してしまう可能性

また、刺激性下剤で注意したいのが、依存の副作用です。タバコのように身体的な依存は少ないですが、精神的に頼りきりになってしまうという依存性の問題があります。

下剤を使うとスッキリするのでやめられない、使わないと出ないのではないかという不安から連用してしまう、などが下剤依存の症状です。下剤を乱用して、その結果として下剤に耐性が出てしまうこともあります。

塩類性下剤では高マグネシウム血症に注意

塩類性下剤の酸化マグネシウムは、効果が穏やかで、妊娠中や授乳中でも使いやすいことから一般的に安全だと言われています。

しかし、この薬にも副作用はあります。大量に飲んだり、腎機能が低下している方や高齢者が使用することで、血液中のマグネシウム濃度が高くなりすぎることがあるのです。過剰に怖がることはありませんが、高マグネシウム血症になると、生命にも危険が及ぶこともあるため、適切に使うべき薬でもあります。

便秘の種類と適した下剤

薬

下剤は誰かに効いたからといって自分に同じように効くとは限らず、便秘のタイプによって使い分けることが必要です。自分の便秘タイプにあった下剤を使えるように、使い分けを知っておきましょう。

弛緩性便秘

腸の動きが鈍くなっていたり、周りの筋力が少ないことで起きる弛緩性便秘の場合には、基本的にどんなタイプの下剤でも効果が期待できます。ただし、使うとスッキリできるので、ついつい頼りがちにもなってしまいやすいので気をつけましょう。

弛緩性便秘の場合には、お腹の周りの筋力をつけたり、マッサージもおすすめです。薬以外にも食物繊維を食事で摂るなど、生活習慣の見直しも行っていきましょう。

直腸性便秘

直腸に便が停滞してしまっている直腸性便秘の場合には、まずは最後の方に詰まっている便を押し出すことが大事です。最初だけ刺激性下剤を使って詰まったものを出したら、その後は機械性下剤などに切り替えて、水分摂取なども意識して便が硬くならないようにしていきましょう。

また、直腸性便秘の場合は排便時の姿勢で、排便が改善されることもあります。前かがみになり、少しかかとを上げた状態で排便するようにしてみてください。

けいれん性便秘

けいれん性便秘は腸が緊張やけいれんして、過敏になっている状態です。このタイプでは刺激性下剤は原則使ってはいけません。逆にお腹が痛くなったりするばかりか、効果が得られないことも。

けいれん性便秘の場合には、整腸剤や乳酸菌サプリがおすすめです。けいれん性便秘はストレスが大きくかかわっていることも多いため男性もなりやすい便秘です。あわせてこちらも参考にして下さい。

また、ストレスを溜めないように心がけることも大事。もし改善が見られない場合には、過敏性腸症候群という可能性もあるため、医師に相談してみると良いでしょう。

食事性便秘

ダイエットや少食気味の女性に多いのが食事性便秘です。基本的には食事を改善したり、食べる量を増やすことで改善する可能性が高いと言えます。コロコロした便が出たり、お腹が張るといった一時的な症状を改善するには、根本的な食事の見直しが不可欠です。

下剤を使って一時的に対処することはできますが、食事を見直すことなく下剤に頼りすぎることはやめましょう。

器質性便秘

最後に紹介する器質性便秘は、腸そのものに病気や形態的な異常があるという場合の便秘のことです。例えば、大腸がん、腸閉塞、大腸憩室などの病気です。この場合には下剤を使って対処するよりも、根本的な病気や腸の形態そのものの治療をする必要があります。

例えば吐き気、激しい腹痛、発熱、血便などの症状がある場合はすみやかに受診することをおすすめします。

理想は下剤なしで自然なお通じ

便秘になったとき、下剤は簡単に市販でも手に入るので頼りになる存在です。しかし、お腹が痛くなったり、下痢を起こしたり、使いすぎにより効かなくなるといった問題も潜んでいます。

薬を飲めば大丈夫、また便秘になったら薬を飲めばいい、と考えて何も他に努力や工夫をしないのでは根本的な改善にはなりません。理想は下剤を使わなくても、自然なお通じがあることです。

日頃は食事や生活習慣について気を配っていき、どうしても出ない時や苦しいときに限って下剤を正しく使うことが大事です。あなたも下剤を適切に活用して、便秘知らずの体を目指していきましょう。