便秘の時に座薬を使うメリットとは?便秘薬の重要な注意点3つ

つらい便秘で悩んでらっしゃる方の中には、便秘薬を使って症状を和らげる方もいらっしゃるかと思います。でも、便秘薬の使用には少し注意が必要ですし、とくに座薬は、使い方を間違えると、体を傷つけてしまうこともあります。

使い方や効果をしっかりと確認した上で、失敗なく使えるようになりたいですよね。そこで今回は、便秘時に座薬を使うときの注意点について考えたいと思います。

便秘薬について

位に薬が溜まっている事を表現した画像

便秘薬とは、慢性的な便秘の不快な症状を解消するための薬のこと。下剤や瀉下薬(しゃげやく)とも呼ばれています。便秘に悩んでらっしゃる方には薬による排便を考える方もいらっしゃるかと思いますが、いろいろな種類がありすぎて、どの薬を選んだらいいのかよくわかりませんよね。そこで、まずは便秘薬の分類から見てみたいと思います。

どんなものがある?便秘薬の5種類

便秘薬は、一般的に、機械性下剤、刺激性下剤、腸分泌促進剤、座薬、浣腸に分類されます。機械性下剤とは、腸を直接刺激しない便秘薬で、刺激性下剤は、腸に直接働きかける薬です。腸分泌促進剤は、腸液の分泌を促進する新しい薬で、座薬や浣腸は、肛門から入れる薬ですね。

機械性下剤

機械性下剤とは、便自体に作用し、腸を刺激するのではなく、便の水分量を増やして便を柔らかくするほか、便のカサを増やすことで排便を促す薬です。塩類下剤、糖類下剤、膨張性下剤の3種類があります。

塩類下剤は、古くから使われている便秘薬で、便に含まれる水量を増やし、便を軟化させて、排泄を促進させます。習慣性がないため、安心して使える薬のひとつです。ただ、酸化マグネシウムが含まれているため、腎障害を有している方や高齢者は高マグネシウム血症を起こしやすくなります。

市販で購入することができ、「3Aマグネシア」「スラ―リア」「酸化マグネシウムE便秘薬」などがあります。

糖類下剤も、塩類下剤と同じように、便に含まれる水量を増やし、便を軟化させます。高マグネシウム血症などの心配がなく、赤ちゃんの便秘薬で知られているマルツエキスの有効成分は麦芽糖、モニラックはラクツロースというオリゴ糖の一種です。

膨張性下剤は、食物繊維のような働きで、便のカサを増やし、腸の運動を活発にさせる効果があります。習慣性がなく、安全性が高く、より自然に排便を促してくれます。市販薬ではコーラックファイバー、新ウィズワンなどに刺激性下剤にプラスして食物繊維が配合されています。

刺激性下剤

刺激性下剤は、小腸や大腸に直接作用することで、腸の蠕動運動を促します。小腸刺激性下剤と大腸刺激性下剤があります。ともに継続して服用すると耐性ができてしまい、下剤がないと排便ができなくなりますので、長期服用は避けることが重要です。

小腸刺激性下剤は、小腸を刺激して排便を促し、食あたりや食中毒などの際に使われることの方が多いです。有効成分はヒマシ油で、市販薬では加香ヒマシ油などがあります。ヒマシ油に似たような効果が期待できる食品にオリーブオイルがあります。

大腸刺激性下剤は、よく使われる便秘薬です。大腸に直接刺激を与えることで、排便を促します。有効成分によってアントラキノン系、フェノールフタレイン系、ジェフェニルメタン化合物などに分類されますが、アントラキノン系の便秘薬は、長期服用すると、大腸が黒く色素沈着を起こす大腸メラノーシスを呈することがあります。

大腸刺激性下剤は、薬に慣れてしまうと効果が鈍くなるため、用量が増えることがあります。心配な方は医療機関に相談しながら服用するようにしましょう。市販薬では、コーラックハーブ、スルーラックS、ビオフェルミン便秘薬など、よく見かける便秘薬が多いです。

腸液分泌促進剤

腸液分泌促進薬は、小腸の腸液の分泌を増やすことで、便を柔らかくし、自然に排便するように働きます。比較的新しい便秘薬ですが、市販で購入することはできません。服用時に痛みを伴うことがなく、長期的に服用しても効き目が悪くなることはありません。薬品名はアミティーザです。

座薬

座薬は細長い形状で、尖った部分から肛門に入れます。座薬には、腸内で炭酸ガスを発生させることで便意を誘発するタイプと、直腸を刺激して蠕動運動を促すタイプがあります。前者の市販薬ではウィズワン座薬、後者の市販薬ではベンツナール座薬があります。

浣腸

浣腸は、注入器を使って液体を大腸に挿入する便秘薬です。肛門のそばで便がつまっているときなどに有効です。使用後5~10分後には効果が見られますが、頻繁に使用すると自然に排便できなくなる可能性があります。市販薬にはイチジク浣腸、コトブキ浣腸などがあります。

便秘薬の副作用

それぞれの便秘薬にはある程度の副作用が認められています。

機械性下剤の塩類下剤では、酸化マグネシウムが配合されていますが、長期間、服用した場合、血液中のマグネシウム値が高くなる「高マグネシウム血症」が引き起こされる可能性があります。この場合、吐き気、不整脈、意識障害などを引き起こすこともあります。

刺激性下剤は、常用すると耐性がついてしまうことがあります。便秘薬を飲んでも効果が見られないため、用量が増えていってしまうことがあります。このように便秘薬に依存してしまうと、自然に排便できなくなってしまいますので、注意が必要です。

座薬や浣腸は、効果が高いことから、下痢や軟便、それによる腹痛や嘔吐などの副作用が考えられます。いずれの場合も、すぐに使用をやめて、医療機関の診療を受けるようにしましょう。

便秘の種類にあった便秘薬

お腹を両手で抱えている女性

便秘の種類によって、選ぶべき薬は異なります。便秘の原因によって、必要とされる効果が異なるからです。だからといって、この便秘のタイプは必ずこの薬という定式はありません。

実際、便秘の原因はひとつではありませんよね。ですから、便秘薬を選ぶ目安として考えてください。

弛緩性便秘の場合

弛緩性便秘とは、大腸の動きが鈍くなることで、腸の滞在時間が伸びてしまい、内容物の水分が吸収されるために排便困難が起こる便秘です。排便の際にいきむ力が弱いことも原因とされているため、高齢者をはじめ、筋肉量の少ない方、運動不足の方などに見られます。

弛緩性便秘の場合、鈍くなっている大腸に働きかける大腸刺激性下剤、便の水分量を増やして便を柔らかくしたり、便のカサを増やしたりする機能性下剤の塩類下剤や膨張性下剤が有効です。

痙攣性便秘の場合

痙攣性便秘とは、精神的なストレスなどが原因で下行結腸に痙攣が起こり、その部分が狭くなって便が通れなくなってしまうために起こります。痙攣を起こした上部は水分量が増えるため、硬い排便の後に下痢の症状が現れることがあります。

痙攣性便秘では、便の水分量を増やして便を柔らかくする塩類下剤が有効です。また、便秘や下痢を繰り返す場合は、過敏性腸症候群の可能性もあります。過敏性腸症候群の腹痛や下痢と便秘の症状を和らげる市販の便秘薬にはセレキノンSがあります。

直腸性便秘の場合

直腸性便秘は、トイレを我慢するほか、便秘薬を乱用したため排便が困難な状態の便秘です。刺激性下剤や座薬・浣腸などで症状を一時的に改善し、便意を感じたらトイレに行くように心がけるほか、水分を多く摂る、運動を取り入れるなどの方法で便意を起こさせるようにします。

便秘薬を使用する際の重要な注意点

患者を診察している女性

便秘薬は、便秘の症状を改善するために使われる薬です。その症状に適した薬を服用しなければ、症状は改善しませんし、場合によっては悪化することもあります。使用の仕方は非常に大切ですので、正しい使い方をして副作用などを引き起こさないように気をつけましょう。

便秘の種類によっては使用できない

便秘の種類によっては、使っていい便秘薬と使ってはいけない便秘薬があります。いろいろなケースがありますので、便秘薬を使用する際は十分に注意が必要です。

たとえば、塩類下剤では、腎疾患のある方は高マグネシウム血症を引き起こす可能性がありますので注意が必要です。また、心臓に疾患がある方は、不整脈を起こす可能性があります。

膨張性下剤は、腸管が狭い場合、腸閉塞の症状が出る可能性があります。刺激性下剤は、服用後、おなかが痛くなることがあるほか、使い続けることで習慣化する可能性があります。

また、妊娠中は服用できません。痙攣性の便秘の方は、刺激性下剤を服用すると、腸の運動がさらに活発化することで、腸の収縮による痛みが生じることがあります。

座薬は、使用後に腹痛を呈するほか、ガスが出やすくなることがあります。また、座薬も使い続けることで習慣化する可能性があります。

浣腸も座薬と同じように、腹痛が起こるほか、習慣化するリスクがあります。

便秘薬を常用しすぎない

便秘薬を常用してしまうと、便秘薬がなければ便の排出ができなくなってしまいます。こうして便秘薬依存症になってしまうと、効果に対する耐性ができてしまうため、薬の量が増えていきます。

とくに大腸刺激性下剤に分類されるアントラキノン系下剤は、便秘薬依存症になりやすいと言われています。また、長期的に使用し続けると、大腸の粘膜に色素が沈着し、腸の機能が低下する大腸メラノーシスになってしまいます。

大腸メラノーシスは、便秘薬の服用を止めれば自然に色素沈着が消えていきますが、便秘薬の服用を突然やめるのは難しいため、依存症にならないように気をつけなければなりません。

まずは医師に相談

市販薬として購入しやすい便秘薬ですが、やはり医療機関に相談して使用するようにした方がいいでしょう。ご自身の便秘がどの種類なのか、薬を使わずに対処できることはないのか、依存症にならないようにするにはどうしたらいいのかなど、心配なことはすべて相談して、問題を引き起こさないようにしたいですね。

便秘薬の座薬はどんな時に使うもの?

赤ちゃんに座薬を入れようとしている親

慢性的に便秘に悩んでらっしゃる方は、便秘薬の中でも座薬について気になりますよね。即効性があると言われていますが、本当にそうなのでしょうか。どんなときに使ったらいいのでしょうか。同じように肛門に入れて使う浣腸とはどうちがうのでしょうか。

慢性的な便秘の場合(即効性あり)

座薬は、直腸の肛門に近い部分に働き、腸に刺激を与えて排便を促す作用があります。しかも、一般の便秘薬と比べると、効き目が強い薬としても知られています。

このため、直腸で便がつまっている状態や、慢性的な便秘の場合に効果を発揮します。ただし、即効性が強いため、頻繁に使用すると体に負担を与えてしまうことにもなります。

どうしても口から薬を飲めない場合

座薬を使用するメリットは、経口投与できない場合に使えることですよね。乳幼児に薬を与えるとき、経口投与では難しい際に使います。また、嘔吐やけいれんなど、口から薬が飲めない場合にも使用されます。うまく入らない、使用する際に違和感を覚えるなど、いろいろな問題はありますが、メリットもありますよね。

出産や手術、直腸検査の前

座薬は、手術のときなどにも使われます。出産時には、病院によって使用することもあります。また、大腸内視鏡検査などの際にも座薬を使って便を排出することがあります。効き目が強いため、こうした医療現場で使われることはよくあります。

座薬と浣腸の違い

座薬と浣腸は、肛門に挿入して使用するだけではなく、即効性があるという共通点がありますよね。でも、いくつか違いがあります。

まず、形状が異なります。座薬は、尖った形状で、体内に入ると溶けますが、固形です。一方、浣腸は、注入器を使って肛門から挿入する液体です。

また、作用が異なります。座薬には二種類あって、腸内で起こる炭酸ガスの刺激で便意を起こさせるタイプと、大腸を刺激して蠕動運動を促進するタイプです。浣腸も、直腸を刺激して蠕動運動を促しますが、さらに、便の滑りをよくすることで、排便しやすくするというメリットがあります。

便秘薬のことをしっかり知りましょう

便秘薬にはその働きによって分類することができます。また、便秘の種類によって使用する便秘薬は決まっています。便秘薬を使用する際には便秘の種類に合った薬を使用し、常用しないようにする必要があります。座薬には即効性があり、経口投与できない場合などに使いやすい便秘薬です。うまく使い分けるようにしたいですね。