現代人はさまざまなストレスを抱えていますが、男性にみられる便秘にはストレスが大きく関わっているとされます。では、男性にみられる便秘の特徴について見ていきましょう。
便秘というと女性に多く見られるものというイメージがありますが、最近では男性の方でも便秘に悩まされている方がたくさんいらっしゃいます。では、女性の便秘と男性の便秘にはどのような違いがあるのでしょうか。また、なぜそのようなことが起こるのでしょうか。今回は、男性にみられる便秘とその対処法などについて紹介したいと思います。
男性でも便秘になる!
便秘というと女性の悩みだと考えられがちですが、男性であっても便秘になる人はいます。では、男性にはどのような便秘が見られるのでしょうか。また、なぜ便秘になってしまうのでしょう。
男性にみられる便秘の種類
まずは、男性にも起こりうる便秘の種類について見ていきたいと思います。「最近、排便回数が減ってきたな」という男性の方は参考にしてみてくださいね。
弛緩性便秘
私たちが一般的に「便秘」という言葉を使うとき、ほとんどが機能性便秘のことを指します。機能性便秘に対して器質性便秘がありますが、器質性便秘は、病気や腸管の形態異常などが原因で起こる便秘です。
弛緩性便秘は、筋力の低下などが原因で、腹圧が低下し、それによって腸の蠕動運動(ぜんどううんどう)が弱くなることで起こるタイプの便秘です。
一般的には高齢者や筋力の弱い女性にみられがちな便秘ですが、男性であっても筋力が弱ければ、弛緩性便秘を発症する可能性があります。
けいれん性便秘
けいれん性便秘は、おもにストレスが原因となって起こるタイプの便秘です。ストレスによって自律神経のバランスが乱れることが原因だと考えられています。
男性に見られる便秘に関しては、比較的、けいれん性便秘が多いようです。けいれん性便秘が起こるメカニズムについては、後ほど詳しく解説したいと思います。
直腸性便秘
直腸性便秘もどちらかというと女性にみられがちな便秘ですが、男性であっても起こる可能性はあります。直腸性便秘の原因は、排便を我慢することが主となっています。
便意を感じているのにトイレに行かなかったり、行けなかったりすると、便意を喪失してしまいます。それによって、次の便にまで時間が空いてしまい、さらに腸管内に便が蓄えれることとなるのです。
大腸には消化物の水分を吸収する働きがあるため、腸管内に長時間とどまっている便はさらにカチカチになります。そのため、ますます排便しにくくなるという悪循環に陥るのです。
直腸性便秘になる原因としては、アニスムスといって、排便協調運動障害もあげられています。通常、私たちは排便するとには、腹筋には力を入れますが、肛門は反対に緩むこととなります。
アニスムスも、一般的には骨盤底筋群の筋力が弱い女性に多くみられるのですが、男性であっても見られることがあります。
男性にみられる便秘の特徴
一般的に、便秘は女性に多くみられるものですが、男性に見られることもあります。では、男性に見られる便秘にはどのような特徴があるのでしょうか。
男性にみられる便秘の特徴その1・けいれん性便秘が多い
男性に見られる便秘の特徴としては、けいれん性便秘が多いということがあげられます。とは言っても、女性よりもけいれん性便秘が多いということではありません。
弛緩性便秘の原因は筋力の低下であり、男性よりも女性の方が一般的に筋力の弱いことを鑑みれば、弛緩性便秘が女性に多いのは頷ける話だと思います。
また、直腸性便秘に関しても、女性の方は骨盤底筋群が弱いことを考えると、やはり直腸性便秘も女性に多くみられることが分かると思います。
ただ、けいれん性便秘に関しては、原因がストレスとなっているため、男性であっても女性と同様に起こる可能性があると考えられるのです。
男性にみられる便秘の特徴その2・便秘と下痢を繰り返すことも
男性に見られる便秘の特徴としては、便秘と下痢を繰り返すといったことがあげられます。次項で紹介する過敏性腸症候群の特徴となっているので、後ほど詳しく解説したいと思います。
便秘もちの男性にみられる疾患
男性に便秘が見られる場合、もしかしたらなんらかの疾患を抱えている可能性があります。今回は、代表的な2つの疾患について見ていきたいと思います。
便秘もちの男性にみられる疾患その1・過敏性腸症候群
便秘元の男性に見られる疾患としては、過敏性腸症候群の存在があげられます。男性の場合、30代から40代の働き盛りに多くみられるということです。
過敏性腸症候群の原因
過敏性腸症候群の原因は、現代医学をもってしてもハッキリとしたことが分かっていません。血液検査や画像診断をおこなっても何ら異常がみられないにもかかわらず、腹痛をともなった、便秘や下痢といった排便障害が見られる疾患です。
過敏性腸症候群の特徴
過敏性腸症候群の特徴としては、便秘型、下痢型、便秘と下痢を繰り返す混合型の3つのタイプがあるということがあげられます。男性の場合、下痢型になるケースが多いようですが、便秘型になることもあれば、複合型になることもあります。
過敏性腸症候群は致命的な疾患という訳ではありませんが、トイレがないと不安なので電車に乗ることができないとか、どこに行ってもトイレがないと安心できないなど、生活の質を著しく低下させてしまいます。
過敏性腸症候群の特徴としては、寝ている間は便意が起こらないということもあげられます。また、ストレス状態が緩和すると、過敏性腸症候群の症状も緩和することから、ストレスが過敏性腸症候群を引き起こすリスクファクターだと考えられるようになってきています。
過敏性腸症候群を発症する人の特徴としては、感情をうまく表現できない人や真面目な人、几帳面な人や完璧主義者などがあげられています。
過敏性腸症候群の治療法
過敏性腸症候群を治療する際には、カウンセリングや生活習慣の見直し、ストレスのコントロールや投薬治療といった方法がとられます。
過敏性腸症候群に対する治療薬としては、精神安定剤や鎮痛薬、消化器運動機能改善薬や漢方薬などが用いられますが、過敏性腸症候群を発症するそもそもの要因がストレスであるため、ストレスをなんとかしないことには根本的な解決にはなりません。
趣味に没頭したり、適度に身体を動かしたり、休みの日には行楽地に出かけたりして、上手にストレスを発散することが重要です。
また、栄養バランスのとれた食事を規則正しく摂ることも重要です。食べたり食べなかったり、栄養バランスを欠いた食事をしたりすると、なかなか過敏性腸症候群の改善がみられないこととなります。
便秘もちの男性にみられる疾患その2・自律神経失調症
便秘もちの男性に見られる疾患としては、自律神経失調症もあげられます。自律神経失調症は正確に言うと病名という訳ではありません。
そもそも、自律神経は私たちの生命活動のほとんどに関与しています。血液を循環させたり体温を調節したり、食べたものの消化や吸収をおこなったりといった生命活動の根幹を自律神経がになっている訳です。
そのように考えると、すべての疾患に自律神経が関与することとなる訳で、原因不明といわれる疾患に自律神経がかかわっているのはあたり前だと言えるのです。
言い方は悪いですが、病院を受診して「自律神経失調症ですね」といわれた場合、何も診断されていないのと一緒です。なぜなら、自律神経失調症は病名ではないからです。
自律神経失調症の原因
自律神経失調症が病名ではないというのは、単に自律神経のバランスが乱れていることを、自律神経失調症と便宜的に読んでいるからです。
同じような例をあげると、腰から脚にかけて痛みやしびれの出る「坐骨神経痛」と呼ばれるものがあります。坐骨神経痛も、実は病名ではありません。
ちょっと意地悪な言い方をするなら、「なんだか原因はよく分からないけど、坐骨神経沿いに痛みが出ていますね」ということになります。これでは何の説明にもなっていませんよね。
自律神経失調症も同様で、「なんでこのような症状が出ているのか、ハッキリとした原因は分かりませんが、おそらく自律神経のバランスが乱れているからでしょう」といったようなこととなります。
それはさておき、自律神経のバランスが乱れる原因はなんなのでしょう。また、自律神経のバランスが乱れるとはどのようなことをいうのでしょう。
自律神経のバランスが乱れる最大の要因はストレスです。自律神経は交感神経と副交感神経の2つから成っており、それぞれが身体のアクセルとブレーキの役割を果たしています。
ところが、ストレス状態が続くと、自律神経のうち、交感神経優位の状態が続くこととなります。日中に交感神経が優位になるのはいいのですが、寝るときにも交感神経が優位になるのは考えものです。
なぜなら、夜、寝ている間に副交感神経が優位になることで、細胞分裂が活発になり、身体を回復させたり、修復したりすることが可能となるからです。
また、私たちが食べたものの消化や吸収は、寝ている間に活発におこなわれることとなります。そのため、ストレスによって夜間も交感神経優位になると、食べたものの消化や吸収に支障をきたすこととなるのです。
さらに、交感神経優位の状態が続くと、脳内の神経伝達物質の一種であるセロトニンの分泌量が減少することとなります。
セロトニンには、簡単に言うと神経を鎮静化させる働きがあるため、セロトニンの分泌量が減少すると、ますます交感神経が優位になってしまうのです。
セロトニンの分泌量が減少することには、さらなる弊害があります。それは、セロトニンの分泌量が減少することによって、脳の視床下部にある満腹中枢が刺激されにくくなるということです。
私たちが食事を開始してから20分ほどすると、満腹中枢が刺激され「お腹がいっぱい」というサインが出されることとなります。
ところが、セロトニンの分泌量が減少することによって満腹中枢が刺激されにくくなると、ついつい食べすぎてしまうこととなります。それによって、便秘になるリスクも高くなるという訳です。
自律神経失調症の特徴
自律神経失調症の最大の特徴は、その日その日によって訴えられる症状が異なるという点です。昨日はお腹が痛いと言っていたのに、今日は気分が落ち込んでいるなど、さまざまな症状が訴えられることとなります。このような症状のことを不定愁訴(ふていしゅうそ)といいます。
自律神経失調症の治療法
自律神経失調症の治療も、過敏性腸症候群の治療と同様、カウンセリングや生活習慣の見直し、ストレスのコントロールや投薬治療といった方法がとられます。
便秘の予防法
ここまでの説明で、男性であっても便秘になる可能性はあること、また、便秘が見られる疾患があることについて理解して頂けたことと思います。では、便秘にならないようにするためには、どのようなことに気をつけるとよいのでしょう。
ストレス管理をおこなう
便秘に限ったことではありませんが、ストレスはすべての疾患の元となるものです。そのため、日頃からストレス管理をおこなうことが重要となります。
ストレスの全くない生活などはあり得ないのですから、自分がいまどれくらいのストレス状態になるのかを冷静に把握し、適度にストレスを発散させることが重要です。
適度に運動する
便秘にならないようにするためには、適度に運動をすることも大事です。運動をすることによって、腸の蠕動運動を活発にし、便意を促すことが可能となります。
また、運動をすると全身の血行も良くなります。胃や腸への血行が促進されれば、胃や腸の機能が回復し、消化や吸収能力も高くなりますよ。
食習慣を見直す
便とは言ってみれば、私たちが食べたものの「絞りカス」のようなものです。そのため、食べたものによって便の状態が左右されることとなります。
バランスのとれた食事をとることはもちろんのこと、適度に水分補給をして、便が適度な硬さを保つようにしてあげましょう。
ストレスを管理することが健康へつながる
今回の記事では、男性の便秘に焦点を当ててみました。一般的には女性に多くみられる便秘ですが、男性であっても便秘になる可能性が多いにあることを理解して頂けたことと思います。
特に、現代はストレス社会といわれているように、ストレスによってさまざまな弊害があ現れています。普段からストレス管理をおこなって、便秘だけでなく、病気も予防するようにしたいものですね。