便秘を改善するときに便秘薬を用いることがありますが、酸化マグネシウムは、昔から便秘薬としてよくもちいられてきたものです。では、酸化マグネシウムにはどのようにして便秘にアプローチするのでしょう。また、便秘薬やサプリはどのようにして用いるとよいのでしょう。
便秘に悩まされている方は沢山いらっしゃると思いますが、便秘になる原因がさまざまなことから、治療法も実に多岐に及んでいます。
治療法の1つとして、マグネシウムを含む食品と摂取したり、酸化マグネシウムを配合した便秘薬を利用したりするという方法があります。では、マグネシウムにはどのような効果や副作用があるのでしょうか。
マグネシウムってなに?
便秘に対するマグネシウムの効用について解説する前に、まずはマグネシウムとはどのようなものなのかについて見ていきたいと思います。
ミネラルの一種
マグネシウムは金属元素の一種であり、人間にとって必要なミネラルでもあります。元素番号でいうと12番にあたります。「水兵リーベボクの船…」と暗記した方もいらっしゃるのではないでしょうか。
マグネシウムはとても軽い金属であるため、さまざまな合金の基本となる金属として、欠かすことのできないものとなっています。日本にマグネシウムをもたらしたのは、かの有名なシーボルトさんで、1823年のことだったということです。
マグネシウムの働き
体内で起こる化学反応のすべてに酵素がかかわっていますが、マグネシウムには、体内にある酵素が働く際に、手助けをしてくれる働きがあります。それによって、心臓の機能を正常に保ち、血液が全身に安定して供給されることとなります。
また、マグネシウムには、いわゆる善玉コレステロールを増やし、悪玉コレステロールを減らす働きや、骨の正常な代謝を助ける働きなど、たくさんの役割があります。
マグネシウムを含む食品
マグネシウムを多く含む食品としては、海藻類があげられています。特に、あおさや青のりなどの海苔にマグネシウムは多く含まれているため、普段から海苔を積極的に摂るとよいでしょう。
便秘薬としてのマグネシウム
便秘の治療にも、マグネシウムが効果的だとされています。では、便秘薬にはどのようなマグネシウムが含まれているのでしょうか。
酸化マグネシウム
便秘薬にはいろいろなタイプがありますが、中でも浸透圧性の下剤の一種である「塩類下剤」には、酸化マグネシウムの用いられることがあります。また、硫酸マグネシウムが用いられることもあります。
酸化マグネシウムの働き
酸化マグネシウムには、水分を吸収する働きがあります。また、酸化マグネシウムは腸管内で吸収されることがないため、便を軟らかくして排出しやすい状態にしてくれるのです。
酸化マグネシウムの副作用
酸化マグネシウムを配合した便秘薬の副作用としては、多用することによって高マグネシウム血症になるリスクが高くなる、ということがあげられます。特に腎機能障害を持っている人は要注意です。
高マグネシウム血症を発症すると、身体に力が入りにくくなったり、身体がだるくなったりするということです。その他の副作用としては、胸やけや吐き気、食欲の低下などがあげられています。
主な便秘薬
せっかく酸化マグネシウムについて触れたのですから、この機会に主な便秘薬について紹介しておきたいと思います。便秘にはいろいろなタイプがあるので、それぞれに便秘に適した便秘薬を用いることが重要です。
浸透圧性下剤
便秘薬は大きく分けると、「浸透圧性の下剤」「刺激性の下剤」「その他」に分類することが可能です。まずは浸透圧性下剤について見ていきたいと思います。
・塩類下剤
塩類下剤は昔からよく用いられているタイプの下剤で、酸化マグネシウムや硫酸マグネシウムを利用して作られています。効果や副作用に関しては先述したとおりです。
酸化マグネシウムや硫酸マグネシウムは腸管から吸収されにくいため、よほどの濫用をしない限りは、習慣性に移行することが少なく、長期にわたって服用できるというメリットがあります。
塩類下剤は一般的な便秘の改善に用いるだけでなく、病気にともなう便秘の改善や、食中毒の際の有害物質を排出する際にも利用されています。
・糖類下剤
糖類下剤にはラクツロースやD-ソルビトールがあります。シュガーレスのガムなどに用いられることがあるので、耳にしたことがあるという人もいらっしゃるのではないでしょうか。
シュガーレスのガムの注意点として、一度にたくさんのガムを食べると、おなかを下すことがあると書かれています。それは、D-ソルビトールに便秘改善の効果があるからです。
ラクツロースは、肝機能障害にともなう便秘によく用いられるタイプの便秘薬で、便を軟らかくすることによって排便を促します。また、便を酸性化させることによって、有害物質であるアンモニアの発生を阻害してくれます。
・膨張性下剤
膨張性下剤はその名の通り、腸内で膨張することによって便の嵩を増し、腸管を刺激することで便意を促す効果のある便秘薬です。直腸性の便秘や弛緩性の便秘など、便意が起こりにくいタイプの便秘や、腸の蠕動(ぜんどう)が弱くなっているタイプの便秘に用いられます。
膨張性下剤にはカルボキシメチルセルロースナトリウムが配合されており、服用してから半日から1日程度で効果があらわれはじめ、規則的な便通がみられるまで服用することとなります。
膨張性下剤も酸化マグネシウムや硫酸マグネシウムと同様、腸管から吸収されにくいため、よほどの濫用をしなければ、継続的に服用できるというメリットがあります。
ただ、化学的に製造されている医薬品には、効果があれば必ず副作用もあるものです。膨張性下剤の副作用としては、吐き気やおう吐、胸やけや腹部の張り感などがあげられています。
刺激性下剤
便秘薬には、刺激性下剤と呼ばれるものもあります。浸透圧性下剤に比べると効果が高いのですが、習慣性に移行するリスクも高いため、継続して服用しない方がよいとされます。
・小腸刺激剤
刺激性下剤には、「小腸刺激剤」と「大腸刺激材」、そして「直腸刺激剤」の3タイプがあります。まずは小腸刺激剤から見ていきましょう。
小腸刺激剤としてはヒマシ油がよく知られています。服用して2時間ほどすると、小腸が刺激されて活発に働くようになります。副作用としては、胸やけや吐き気、腹痛などがあるほか、発疹がみられるケースもあるということです。
・大腸刺激材
大腸刺激材には、アントラキノン誘導体と、ジフェニール誘導体があります。アントラキノン誘導体には腸の蠕動を活発にする働きがあります。センナやダイオウ、アロエといった生薬から製造されます。
月経時の女性や妊婦さん、授乳中の女性の服用は推奨されていません。特にアロエは、妊娠中の女性が服用した場合、胎児が脱糞して子宮内を汚してしまうため、服用が禁止されています。ジフェニール誘導体は、妊婦さんが服用しても安全だということです。
・直腸刺激剤
直腸刺激剤は、簡単に言うと坐薬のことです。肛門にもっとも近い場所にある直腸を刺激することで便意を促します。これらの刺激性下剤は習慣性に移行しやすいため、慎重に利用することが求められます。
その他の下剤
その他の便秘薬としては、浣腸や副交感神経劇剤などがあります。浣腸剤も習慣性に移行する恐れがあるため、継続して使用することはやめましょう。また、妊婦さんの使用は厳禁です。
便秘改善の3ステップ
便秘にはいろいろなタイプがありますが、便秘を改善するためにおこなうことは3つだけです。では、便秘改善の3ステップを紹介したいと思います。
下剤を用いる
便秘を改善するためには、まず、現在たまっている便を排出することが重要です。「そんなの当たり前でしょ?」と思われるかもしれませんが、便秘の改善は便の排出だけでは終わらないのです。
とりあえず、現在腸内にたまってしまっている便を排出するには、先ほど紹介した下剤を、便秘のタイプに応じて用いることとなります。
サプリメントを利用する
腸内にたまった便を無事に排出することができたら、次に腸内環境の改善をおこないます。そのためには、乳酸菌や納豆菌などを配合したサプリメントを利用するとよいでしょう。
便秘の改善というと乳酸菌と思いがちですが、実は、乳酸菌は腸内環境を改善して、便秘を予防するために用いるべきものです。
すでに腸内に便が滞ってしまっている場合、乳酸菌を摂取しても便秘の改善はあまりみられません。腸内の便がなくなってから乳酸菌などを摂取することが重要なのです。
また、乳酸菌といえばヨーグルトということで、ヨーグルトをせっせと食べている方もいらっしゃることと思います。もちろん、ヨーグルトには乳酸菌が多く含まれていますが、いかんせん、腸内細菌の数とくらべると、やや少ないことは否めません。
腸内には100兆から1000兆もの細菌が住んでいるとされますが、市販のヨーグルト1パック(450g)に含まれている乳酸菌は500億に過ぎません。
500億もいるのに「500億に過ぎません」と書くのもどうかと思いますが、いかんせん腸内の細菌の数が多すぎます。500億という数は、腸内細菌のわずか0.05%から0.005%に過ぎないのです。
もちろん、普段から食習慣に気をつけて、ある程度腸内環境が良好な人であれば、ヨーグルトに含まれている乳酸菌によって、腸内環境をさらに良化させたり、良好な状態を維持したりすることが化のだと思います。
ただ、現在便秘になっている人や、長年便秘に悩まされている人の場合、腸内環境を改善するよりも、まずは便を出してしまうことが先決となります。
食習慣を見直す
腸内にたまった便を排出することが出来、乳酸菌や納豆菌を摂取することによって腸内環境を改善できたら、今度は腸内に住む善玉菌を増やすことが重要となります。
腸内には善玉菌と悪玉菌、そして日和見菌が存在しています。善玉菌が増えると、日和見菌は善玉菌に似た働きをし、悪玉菌が増えると、日和見菌は悪玉菌に似た働きをするようになります。
そのため、善玉菌を増やすためのエサを投入する必要があるのです。腸内の善玉菌を増やすためには、オリゴ糖や水溶性の食物繊維、はちみつなどを摂取するのがよいとされています。
その他の便秘解消法
重度の便秘は病院で治療してもらうのが一番ですが、一過性の便秘を改善したり、便秘を予防したりするのであれば、以下のような手段が有効となっています。
適度に身体を動かす
便秘を予防したり改善したりするには、適度の身体を動かすことが重要です。特に、高齢者や出産後の女性に多くみられる弛緩性の便秘は、筋肉量の減少による腹圧の低下が原因で起こると考えられています。
また、運動不足になると血液の循環が悪くなるため、胃腸にも悪影響を及ぼします。そのため、日頃から積極的に身体を動かすようにしましょう。
平日は仕事で忙しくて運動をする暇がないという人は、エレベーターやエスカレーターを使わずに階段を使ったり、ひと駅分だけ歩いたりするなどといった工夫をするとよいでしょう。
ストレスを解消する
便秘を予防したり改善したりするには、ストレスをコントロールすることも重要です。まったくストレスがないのも問題ですが、ストレスがありすぎる方がさらに問題です。
現代はストレス社会などと呼ばれ、多くの方がストレスを抱えて暮らしています。ストレスがたまりすぎると、自律神経失調症やうつといった精神的な疾患を抱えるだけでなく、さまざまな生活習慣病を発症するリスクが高くなります。
ストレス状態が継続すると、自律神経のうち、交感神経が優位になります。交感神経には、車のアクセルのような働きがあり、私たちが活発に動く際には交感神経が優位になっています。
ところが、ストレスがたまりすぎると、夜になっても交感神経優位の状態が継続してしまい、睡眠の質が低下します。
私たちが食べたものは寝ている間に消化・吸収されることとなるため、睡眠の質が低下すると、必然的に便秘になりやすくなるのです。
ストレスを解消する方法は人それぞれですが、お風呂に入ってゆっくりと睡眠をとった上で、趣味に没頭したり親しい友人とおしゃべりをしたり、遠出をして気晴らしをしたりするとよいでしょう。
便秘で使用するのは酸化マグネシウム
今回の記事では、便秘とマグネシウムの関係や、便秘のタイプ別に効果のある便秘薬を紹介しました。酸化マグネシウムは昔から便秘治療にもちいられており、比較的安心して服用できる便秘薬だということです。
ただ、医薬品には必ずデメリットがありますので、医師の指導のもとで服用するようにしましょう。また、日頃から運動をしたりストレスを発散したりして、便秘にならないように工夫することも重要ですよ。