便秘は何科を受診すべき?便秘の原因と予防法も紹介します!

便秘に悩まされている方は多いと思いますが、実際に病院で治療を受けている人は少ないのではないでしょうか。市販の便秘薬を服用するのが一般的なようですが、長期にわたって便秘が続いている場合、病院で治療を受けた方がよいケースもあります。では、便秘は何科で診てもらうことが出来るのでしょうか。

便秘は何科を受診すべき?

お腹を押さえている女性

世の多くの女性を悩ませている便秘ですが、デリケートな問題なので病院を受診せずに市販の便秘薬を飲んで済ませている方もいらっしゃるのではないでしょうか。では、いざ病院で便秘を見てもらうとなったとき、何科を受診すればよいのでしょうか。

消化器科

便秘を病院で診てもらうときには、一般的に消化器科(消化器内科)を受診することとなります。消化器科では、消化器臓器すべての検査や治療をおこなってくれます。

胃腸科

便秘の場合には胃腸科を受診するケースもあります。胃腸科では胃と腸の検査や治療を専門的におこなっています。

消化器科と胃腸科の違い

消化器科と胃腸科の違いは、その名前から読み取ることが可能です。消化器科は消化器臓器すべての疾患を見るのに対して、胃腸科は胃腸を専門としている訳です。

具体的な疾患名を挙げると、胃腸科では胃がんや大腸がん、潰瘍性大腸炎、クローン病、胃潰瘍や胃のポリープなどを診断、治療をおこないます。

消化器科では上記の疾患に加えて、すい臓がんや急性膵炎、B型肝炎やC型肝炎、肝硬変や肝臓がん、脂肪肝や胆のう結石、胆管がんなども診療しています。

ただ、最近は胃腸科でも胃と腸以外の疾患を見るようになっており、両者の厳密な差はなくなってきているようです。便秘を見てもらうのであれば、近くにある方を選択するとよいでしょう。

便秘の原因ってなに?

頭を拳で押さえている女性

便秘にはさまざまなタイプのものがありますが、原因によって便秘のタイプがある程度分かります。では、便秘にはどのような原因があり、どんなタイプの便秘があるのでしょうか。

食習慣

便秘の原因としてまずあげられるのが食習慣です。便は私たちが食べたものの「成れの果て」のようなものですから、食べたものによって便の状態が左右されるのはあたり前といえます。

便秘になる人の特徴として、野菜や果物の摂取量が少なく、お肉や炭水化物を好んで食べるという傾向があげられます。

野菜には食物繊維が豊富に含まれていることから、便秘の改善に効果的だということは皆さんもよくご存じのことと思います。

食物繊維には不溶性の食物繊維と、水溶性の食物繊維の2種類があり、どちらも違ったアプローチで便秘を改善してくれます。

不溶性の食物繊維はその名の通り、私たちの持つ消化酵素では溶かすことができないという特徴があります。また、不溶性の食物繊維には、保湿性が高いという特徴もあります。

不溶性の食物繊維は、消化管内の水分を吸収して膨張しながら、ゆっくりと胃から腸へと移動していきます。

腸管内で不溶性の食物繊維が膨張すると、腸管を刺激して便意が起こることとなります。便意が起こりにくいタイプの便秘に対しては、不溶性の食物繊維を摂取することが効果的だということです。

ただし、直腸性の便秘と言って、直腸にはちゃんと便が送られているのに、排便のタイミングを逃すことで、直腸内に固い便がたまるタイプの便秘があります。

このような便秘がみられるときに不溶性の食物繊維をたくさん摂ってしまうと、かえって便秘が悪化することもあるので、注意が必要です。

水溶性の食物繊維には、腸内の善玉菌のエサになるという特徴があります。便秘の人の腸内では悪玉菌が優位の状態になっているため、腸内を善玉菌優位の状態に変える必要があります。その時に、水溶性の食物繊維が役に立つという訳です。

また、水溶性の食物繊維には、腸管内の糖質を包み込んで、腸に吸収されにくくするという働きもあります。そのため、ダイエットをするときには水溶性の食物繊維を積極的に摂取するとよいでしょう。

運動習慣

便秘の原因としては運動習慣もあげられます。具体的に言うと、運動不足によって筋力が低下することで腹圧も低下し、それによって便秘になってしまうのです。このようなタイプの便秘のことを、弛緩性便秘と呼んでいます。

弛緩性便秘は、高齢者や出産後の女性などに多くみられるタイプの便秘です。腹圧が低下すると、腸の蠕動運動(ぜんどううんどう)が弱くなり、便を先へ先へと送る機能が低下します。

そのため、便がとぎれとぎれになり、便の形状も細くなってしまいます。このような便秘を改善する際には、不溶性の食物繊維を摂取することが有効です。

ストレス

便秘の原因としては、ストレスの存在もあげられています。便秘を改善するには、ストレスの管理も重要となります。

便秘に限らず、すべての疾患を改善する場合についてもいえることなので、少し説明が長くなりますが、ぜひ目を通していただきたいと思います。

ストレスは万病のもと

昔から東洋医学の世界では「ストレスは万病のもと」といわれてきました。ところが、ストレス社会といわれる現代では、西洋医学の分野からもストレスが万病の元として重視されるようになってきています。

ストレスがなぜ病気を引き起こすかというと、ストレス状態が継続することによって、自律神経のバランスが乱れてしまうからです。自律神経失調症などはその最たるものですよね。

自律神経は、交感神経と副交感神経から成っており、両者がバランスを取ることによって、活発に行動したり、身体を休めたりすることが可能となっています。

交感神経と副交感神経はよく、車のアクセルとブレーキの関係にたとえられます。日中、活動的になる時間帯は交感神経が優位になります。いわば、車のアクセルを踏んだような状態ですね。

一方、夜になって身体を休ませるときには、副交感神経が優位になります。車でいうとブレーキを踏んだような状態という訳です。

交感神経と副交感神経は、どちらが優位な方がよいというものではありません。それぞれが優位になるべきタイミングで優位になることが重要なのです。

ストレスが万病のもとといわれるのは、ストレス状態が継続することによって、交感神経優位の状態が長くなってしまうからです。

それによって、本来であれば副交感神経が優位になるべき時間帯の夜間になっても、いわばアクセルを踏みっぱなしの状態になってしまうのです。

交感神経が優位になると、血管が収縮して血行が悪くなります。血液は全身に酸素と栄養を運んでいるため、交感神経が優位になることで全身の栄養状態が低下することとなります。

胃や腸に血行不良が見られれば、食べたものの消化や吸収に悪影響及ぼすこととなります。それによって便秘になるリスクが上昇するのです。

また、交感神経優位の状態が継続すると、睡眠の質も低下してしまいます。私たちが食べたものの消化や吸収は寝ている間におこなわれるため、睡眠の質が低下することによって、やはり便秘になるリスクが高くなることとなります。

ストレスによる脳内バランスの変化

ストレス状態が継続することの弊害は脳にも及びます。脳内には神経伝達物質が存在しますが、中でもノルアドレナリンとドーパミン、セロトニンは脳内の「三大神経伝達物質」と呼ばれており、とりわけ重要視されています。

ごく簡単に説明すると、ノルアドレナリンとドーパミンには神経を興奮させる働きが、セロトニンには神経を鎮静化させる働きがあります。

つまり、交感神経優位の状態が継続することによって、セロトニンの分泌量が減少し、神経を鎮静化させることができなくなってしまうのです。

セロトニンの分泌量が減少すると、脳の視床下部というところにある満腹中枢が刺激されにくくなることも分かっています。

満腹中枢が刺激されることで私たちは満腹感を覚えるわけですが、満腹中枢が刺激されにくくなると、ついつい食べすぎてしまうこととなります。つまり、脳内の神経伝達物質のバランスが乱れることも、便秘を引き起こすリスクファクターとなるのです。

便秘薬

便秘になる原因としては、意外かもしれませんが便秘薬もあげられます。便秘薬の中には、常用することによって耐性ができ、薬の効果が出にくくなるものもあります。

そうなると、さらに多量の便秘薬を服用したり、薬の効き目が強い便秘薬を服用したりすることとなり、かえって便秘が悪化することとなります。

また、心療内科系の医薬品や、パーキンソン病などの治療薬を服用することによって、便秘を発症することもあるということです。

薬に関しては、素人判断は危険です。かならず医師や薬剤師に相談した上で、便秘を服用するようにしましょう。また、便秘薬に頼らなくても排便ができるよう、体質の改善をおこなうようにしましょう。

便秘を放置するリスク

両手を広げて驚いている女性

便秘は消化器科や胃腸科で治療できるほか、便秘を専門とした便秘外来も増えてきています。便秘外来の中には、数年先まで予約が取れないところもあります。なぜ便秘治療が大事かというと、便秘を放置するとさまざまなリスクがあるからです。

痔になる可能性

便秘を放置することのリスクとしては、痔を発症する可能性が高くなるということがあげられています。実際に、痔を発症している人の多くに便秘がみられるということです。

痔は虫歯と並んで日本人の国民病などといわれることもあります。実際、日本人の3人に1人が「自分はもしかしたら痔なのかも」と思っており、検査をするとそのうちの7割ほどに痔が見つかるということです。

痔疾患のうちもっとも多いのは、一般的には「いぼ痔」と呼ばれている痔核(じかく)です。痔核には内痔核と外痔核の2種類がありますが、内痔核の場合、痛みがほとんどないことから、気が付くのが遅れることもあります。

外痔核の場合は激しい痛みがともなうため、発見が容易です。内痔核も外痔核も、早期に治療をおこなえば、手術をするような必要がありません。

女性の場合、痔核の次に多いのが「裂肛(れっこう)」と呼ばれる痔疾患で、一般的には裂け痔や切れ痔などと呼ばれています。

女性に裂肛が多くみられることと、女性に便秘が多いこととは密接な関係があります。大腸には、消化物から余分な水分を吸収するという働きがあります。

そのため、腸内に長時間にわたってとどまっている便からは必要以上に水分が吸収され、カチカチの固い便となってしまうのです。

そのような便が肛門を通過するときに、肛門周囲の粘膜を傷つけてしまうことによって裂肛を発症するという訳なのです。

裂肛を発症すると、排便のときに大変な痛みをともないます。その痛みを避けるために排便を我慢すると、ますます便秘が悪化することとなるのです。

大腸がんのリスク

便秘を放置すると、大腸がんのリスクファクターとなることも分かっています。便秘とは、腸管内に消化物が長くとどまった状態のことをいいます。

そして、長時間にわたって腸管内にたまった消化物(便)はやがて腐敗し始めます。便が腐敗すると、メタンガスのような有害物質や、発がん性物質を放出し始めます。

便秘の期間が短ければ、身体の持っている免疫機能によって対処が可能ですが、便秘の期間が長くなると、大腸がんになるリスクも上昇することとなります。

日本人の死因ナンバー1はがんですが、女性の場合、がんによる死因のトップを大腸がんが占めています。このことと、女性に便秘が多いこととは無縁ではありません。

腸閉塞のリスク

便秘を放置すると、腸閉塞を発症するリスクも高くなります。便秘が原因で起こる腸閉塞のことを、「糞便性イレウス」とよんでいます。

糞便性イレウスが進行すると、ショック症状を引き起こしたり、全身性炎症反応症候群を引き起こしたりすることもあります。

過去には、糞便性イレウスが原因となって腸閉塞を起こした女性が死亡するという痛ましいニュースもありました。

もちろん、そのような事例は極めてまれですが、やはりたかが便秘だと侮らず、長期間にわたって便秘が続いているような場合、一度、病院で診てもらった方がよいでしょう。

心配なことがあれば病院へ行きましょう

便秘は何科で診てもらえばよいのかということでしたが、一般的には消化器科や胃腸科、便秘外来などを受診するのが通常です。

便秘を放置すると、思わぬ疾患につながることもあります。長いあいだ便秘が続いているような場合、まずは病院を受診して、アドバイスをもらうようにしてくださいね。