便秘が続いて嘔吐してしまったことはありませんか?「便秘が原因で嘔吐してしまうの?それともほかに病気の可能性があるの?」と気になるところですよね。実はその嘔吐、重大な病気のサインかもしれません。
便秘は軽視されがちですが、放置すれば将来病気になるリスクがぐんっ!と跳ね上がります。それどころか、嘔吐を伴う便秘の場合はすでにほかの病気を発症している可能性もあります。今回は、そんな身体のSOSを見逃さないため、便秘と嘔吐が関係する病気について詳しくご紹介いたします。
便秘とは
便秘の定義・種類などからご紹介いたします。
便秘の定義
便秘にも定義があります。国際基準もあるのですが、日本では「日本内科学会」「日本消化器病学会」の2つの学会が便秘の定義をしています。
日本内科学会は、「3日以上排便がない状態か、もしくは毎日排便があっても残便感(便が出きっていない感じ)がある状態」としています。また、日本消化器病学会は「排便が減少して数日に1回程度になり、排便の間隔が不規則で便に含まれる水分の量が低下している状態。」としているものの「明確な定義はない」とも言っています。
毎日排便があっても残便感がある・排便回数が減った・便がコロコロのうさぎのふんのような状態であれば便秘と言えるでしょう。
便秘の種類
便秘には、大きく分けて器質性便秘と機能性便秘の2種類があります。詳細は後述しますが、嘔吐を伴うほどの重度の便秘は器質性便秘であることが多いです。
割合としては機能性便秘の方がかかりやすく、機能性便秘は多くの種類に分けられます。ダイエットなどの過度な食事制限や生理前に起こる急性便秘や、運動不足やストレス・便意を我慢したせいで起こる慢性便秘、薬の副作用で起こる医療性便秘などに分類されます。
便秘の診断
便秘が原因で嘔吐した可能性があるなら、一度早めに病院に行って診てもらいましょう。担当医によって手順はそれぞれだとは思いますが、まずは問診から始まりいつごろからどんな症状が起きたのかという質問から始まります。嘔吐したことや便秘の影響かもしれないことはきちんと伝えましょう。
触診もすることが多いです。お腹や腸の張り具合・痛み・腸の動きを実際に触ってもらう事で、より詳しく診断されます。そのあとは、担当医の判断によってレントゲンや大腸内視鏡、造影検査で大腸に異常がないかを細かく診てもらいます。
器質性便秘と嘔吐の関係性
「最近便秘気味だな」と感じた時に嘔吐をしてしまった場合、便秘が進行している可能性があります。もしかしたらその便秘は、重大な病気のサインかもしれません。
器質性便秘とは
器質性便秘と機能性便秘のうち、多いのは圧倒的に機能性便秘です。生活習慣の乱れや運動不足など、日々の積み重ねで起こるのが機能性便秘だからです。
ですが、どちらの方がより注意が必要かというと圧倒的に器質性便秘です。機能性便秘と異なり、胃や大腸などの消化器官そのものに異常があることで起こる便秘だからです。意外なようですが嘔吐と便秘には関係があり、重大な内臓疾患を抱えている可能性があります。
生活習慣を正すことで改善する機能性便秘とは違い、器質性便秘であった場合は病院で治療や手術をせずに改善することはできません。嘔吐を伴う便秘はどのような病気の可能性があるのか、具体的に見てみましょう。当てはまるものがあれば、必ず病院で診てもらうようにしてください。
器質性便秘の原因となる病気
①大腸がん
大腸がん自体に嘔吐の症状はないのですが、大腸がんが進行すると大腸にできた腫瘍が大きくなり腸を塞ぎます。その結果後述する腸閉塞(イレウス)という別の症状として表れ、腸の中で内容物が詰まって逆流してしまい嘔吐に至るのです。
初期症状の嘔吐物は透明な胃液などですが、腸の内容物が逆流しているので悪化すると下痢便状のものになってしまう恐ろしいものです。
②腹膜炎
腹膜とはお腹の部分を覆っている膜で本来無菌状態なのですが、急性虫垂炎などほかの部分が炎症を起こすことで腹膜にも細菌が入り込んで炎症を起こす病気です。
特に急性腹膜炎は激しい腹痛や便秘・嘔吐の症状が次第に広がっていきます。最悪の場合は死に至ることもありますから、一刻も早く病院へ行きましょう。
③腸閉塞
腸閉塞は先天性のものから前述した大腸がんによるもののほかに、便秘で便が詰まることによる「糞便性イレウス」という病気もあります。嘔吐を伴うほどの重い便秘の方はこちらの方も気を付けなければいけません。
糞便性イレウスは初期段階では自覚症状がなく、気づいたときには緊急性の高い段階まで進んでしまうことがあります。便秘がひどくなると嘔吐するという方は、早めに病院で診てもらいましょう。
④腸捻転(ちょうねんてん)
腸捻転は腸閉塞の一種で、腸の一部が捻じれることで詰まってしまう病気です。腸閉塞と同じく腸がふさがって消化物が前に進めないため、逆流して嘔吐してしまうのです。
悶絶するほどの激痛を伴うので、大抵の方は放置せずにすぐ病院へ行かれます。手遅れになれば命にかかわるほど危険ですので、絶対に病院に行くようにしましょう。
⑤潰瘍性大腸炎
大腸部分の粘膜にびらんや潰瘍ができて炎症が起こる病気ですが、医師によっては便秘と潰瘍性大腸炎は無関係とする意見もあります。実は潰瘍性大腸炎自体が原因や治療法が確立されておらず、難病に指定されています。
下痢と便秘を繰り返す痙攣性便秘になるのが特徴ですが、潰瘍性大腸炎の炎症による消化不良で嘔吐を伴うとも考えられます。
器質性便秘の症状
上記でお伝えしたように、器質性便秘は機能性便秘に比べて嘔吐や血便を伴うものが多くその症状は決して無視できません。かかっている病気によって違いはありますが、多くの場合は嘔吐や吐き気に加えて血便や重度の腹痛、急な発熱などの症状が起こりやすいです。
機能性便秘であれば、「数日の間水分がかなり不足していた」「全く運動しなかった」「食事の内容に偏りがあった」など振り返れば思いつくことがあるものです。ですが、器質性便秘は内臓の異常なので、生活習慣や食生活を変えたくらいでは改善しないのです。
嘔吐があったら早めに病院へ
便秘というと大した症状ではないと放置する人が多いですが、嘔吐を伴う重大な便秘なら身体の異常を疑うべきです。万が一重大な病気があったとしても、早期発見・早期治療が完治のカギとなります。悩んだり自己解決したりせず、迷わず病院へ行きましょう。
普段から気を付けた方が良い便秘改善習慣
病気の可能性についてお伝えしてきましたが、機能性便秘が悪化しても嘔吐に至ることはあります。便秘の改善習慣についてご紹介していきましょう。
水分はしっかりとる
人の身体の6割は水分でできているため、不足すると健康的にも美容の面でも不調を引き起こします。1日1.5リットル~2リットル程度の水分摂取が必要ですが、食事も含めての数字なので飲み物として飲む水は1日1リットル程度で構いません。寝起きに1杯のお水から飲み始め、こまめに摂取するようにしましょう。
朝食は毎日食べる
大腸が一番活発に動くのは朝なので、朝ご飯を食べると便秘には非常に効果的です。便秘が3日続くと胃もたれや吐き気を感じ、便秘が進行することで嘔吐してしまう人もいます。
そんな食欲がないほどしんどいときは、嘔吐や吐き気を和らげるホットミルクや胃の粘膜を守るココアを飲み、油っこい物や辛い物は控えるようにしましょう。
バランスの良い食事
朝・昼・晩と3食きちんと摂っていても、揚げ物ばかりやお肉ばかりの偏った食事では便秘は改善しません。野菜を中心とした食物繊維や、ビタミン・ミネラル・たんぱく質など栄養のバランスを意識した食事を摂るように心がけましょう。
ちなみに、嘔吐と便秘の両方に悩む方には「しょうが」がおすすめです。嘔吐や吐き気を抑える酵素や、腸を活発にする成分を含んでいます。1日5グラム以上を目安に食べてみてください。
適度な運動
運動は大腸の動きを促し、便を押し出す筋肉も強化されるので便秘に効果的です。血流もよくなって内臓の冷えも改善されますし、便秘に影響を及ぼすストレスの緩和にも効果を発揮します。
家の中で腹筋を鍛えるのもいいですし、天気がいい日は外に出てジョギングやウォーキングをするのもおすすめです。内臓の機能がアップして、気分もリフレッシュされますよ。
トイレを我慢しない
仕事が忙しかったり人のお宅にお邪魔したりしている時は、便意が来てもつい我慢する方が多いのではないでしょうか。排便しにくい時というのは確かにありますが、便意を我慢することで便秘は悪化します。
「排便したい」という身体からの信号を一度無視すると、数分後には収まります。ですが、信号を無視し続けると大腸の感覚が鈍化して、排便の準備ができても信号がうまく遅れず排便できなくなってしまうのです。
これは「直腸性便秘」という症状ですが、改善が難しく「スーパー便秘」とも呼ばれています。そうならないためには、大腸の動きが活発になる朝に排便するリズムを身に付けておくことがおすすめです。
便秘薬ではなく整腸剤や漢方を試して見る
便秘薬は、大腸のぜん動運動を無理やり促して排便させるタイプもあります。常用すれば耐性がついてしまい、大腸の機能そのものが低下してしまう危険があります。
便秘によって嘔吐が起こるのは腸内環境の悪化も考えられますので、便秘薬よりは整腸剤で腸内環境を整えるほうがいいでしょう。
自分でも気づいていない身体全体の不調を治してくれる効果がある「漢方」を使うのもおすすめです。便秘や吐き気に効果がある漢方はいくつかありますが、どの種類が良いのかは体質によって変わります。まずは病院で漢方を処方してもらうことをおすすめします。
侮らない方が良い怖い便秘
「便秘なんて、ただ便が出ないだけ」とあなどってはいけません。便秘による怖い事実をご紹介します。
便秘が続いて死亡することがある
便秘や嘔吐が心配で検査した結果、甚大な原因がなかったからと安心してはいけません。ただの便秘が続いたことにより、命を落とす人もいるのです。
1998年に、便秘薬を1年以上飲んでいた20代前半の女性が、腸の中に詰まった6.7キロもの便のせいで腸閉鎖を起こしてトイレの前で亡くなってしまいました。その便が詰まったお腹は、妊婦さんのようにパンパンに膨らんでいたそうです。
病院に行かず独断で市販の便秘薬を飲み続けたことで、大腸の機能が低下して慢性的な便秘になってしまった痛ましいケースです。
日本女性のがん罹患率第一位は大腸がん
戦前は日本で大腸がんになる人はほとんどいなかったようですが、戦後に食の欧米化が進んだことで大腸がん患者が急増しました。今となっては、大腸がんが日本女性のがん罹患率第1位になっています。
女性の方が多い理由は、血便などの症状で「おかしいな」と思っても恥ずかしさがあり病院に行かず発見が遅れるというほかにもう1つあります。それが「便秘」です。
女性は男性に比べて筋肉が少なく、便を押し出す力や排便時にいきむ力が弱いので便秘になりやすいと言われています。便は体内にある発がん性物質などの老廃物も含まれます。そのため便秘で腸内に便が滞留している間に、発がん性物質が大腸に吸収されてしまうのです。
美容の大敵
便秘はお肌の大敵です。便秘が原因で肌荒れしたことがある方も多いのではないでしょうか。便秘によって体内の毒素が排出できないため、血液を介して体内に再び吸収されてしまうのです。
その結果ダメージを受けやすいのがお肌です。血液に溶けた老廃物が肌細胞を変形させてニキビやふきでものを作ります。便秘が改善した結果、お肌がきれいになったと実感する女性も多いです。
便が溜まって下腹がぽっこり出ることで、ボディラインにも打撃を与えます。せっかく痩せていても、下腹だけぽっこりしていてはタイトな洋服を着る気がなくなってしまいますね。
「嘔吐するほどの便秘は身体のSOSかも!すぐに病院に行くべき」
便秘と嘔吐が関係する病気についてご紹介しました。便秘は便が溜まってしまうだけとあなどりがちですが、重大な病気のサインの可能性もあります。また、便秘を放置することで発症する病気もありますので、便秘の時に嘔吐してしまう人は必ず病院に行きましょう。この記事が参考になれば幸いです。