便秘と貧血がおこる4つの病気!症状の特徴や改善法は?

便秘は女性に多くみられるものですが、貧血もやはり女性に多くみられます。たまに便秘や貧血になる程度ならともかく、たびたび便秘や貧血になる場合、もしかしたらなんらかの疾患を発症しているのかもしれません。

多くの女性を悩ませる便秘ですが、中には便秘にともなって貧血がみられるという方もいらっしゃるのではないでしょうか。便秘も貧血もつらいものですが、両方同時にみられると辛さも倍増ですよね。では、なぜ便秘と貧血が同時に起こるのでしょうか。今回は、便秘と貧血が同時にみられる場合に考えられる疾患について、解説していきたいと思います。

便秘と貧血がみられる病気その1・子宮筋腫

お腹の痛みに無理やり起こされた女性

女性に多くみられる便秘ですが、貧血をともなうような場合、もしかしたら子宮筋腫を発症しているかもしれません。子宮筋腫は必ずしも珍しい病気という訳ではありませんが、どのような病気なのでしょうか。

子宮筋腫とは

子宮筋腫は、子宮のいろいろな場所にできる良性の腫瘍です。腫瘍と聞くと「え?がんなの?」とおどろかれる方もいらっしゃると思いますが、実際にはそのようなことはありません。

腫瘍の「腫」にはその名の通り「腫れる」という意味があり、腫瘍の「瘍」では「できもの」という意味があります。つまり、腫瘍には「腫れて盛り上がったできもの」という意味があるのです。

良性の腫瘍とは、体内の他の器官へと転移することがない腫瘍のことをいいます。他の場所へと転移する腫瘍は、「悪性腫瘍」と呼ばれています。

子宮筋腫は特に珍しいものではなく、女性の4人に1人から5人に1人にみられるとされており、特に30代から40代の女性の場合、3人に1人程度が子宮筋腫を持っていると考えられています。

子宮筋腫ができる原因は、これほど医学の進歩した現代でも、ハッキリとしたことが分かっていないということです。ただ、ホルモンバランスの異常がかかわっていると考えられているようです。

子宮筋腫は、できる場所によっていろいろな名前が付けられています。子宮を構成している筋肉の中にできる子宮筋腫のことを、筋層内筋腫(きんそうないきんしゅ)と呼んでおり、子宮筋腫の中でもっともポピュラーなものです。

子宮筋腫全体で見た場合、筋層内筋腫の割合がおよそ6割を占めるということです。筋腫の大きさはさまざまで、豆粒程度のものもあれば、卵大の大きさのもの、こぶし大の大きさのものまであります。

子宮の外側にできるタイプの子宮筋腫のことを、漿膜下筋腫(しょうまくかきんしゅ)と呼んでいます。筋層内筋腫に次いでよくみられるタイプの子宮筋腫で、全体のおよそ3割を占めるとされています。

一般的には子宮の表面にできるものですが、中には有茎漿膜下筋腫と呼ばれ、子宮から離れた場所にでき、茎のようなもので子宮とつながっているタイプの子宮筋腫もあります。

子宮の中(赤ちゃんが育つ場所)に発生する子宮筋腫のことを、粘膜下筋腫と呼んでいます。子宮の内側を覆っている粘膜部分にできる筋腫で、自覚症状がもっとも表れやすいとされています。

子宮筋腫は良性の腫瘍なので、特に自覚症状がないようであれば、それほど気にする必要はないということです。また、閉経を迎えると、自然と子宮筋腫は小さくなっていきます。

子宮筋腫の症状

子宮筋腫にともなって現れる症状はさまざまですが、もっとも分かりやすい症状として、月経時出血の量が多くなったり、レバーのような血の塊がみられたりします。月経時の出血量が多いと、立ちくらみやめまい、貧血がおこりやすくなります。

また、子宮筋腫によって膀胱が圧迫されると、トイレが近くなったり、トイレを我慢できなくなったりすることもあります。あと、月経時にお腹が痛くなったり、月経時以外でも痛みが出たりします。

特に、有茎漿膜下筋腫がみられるケースで、茎の部分にねじれが生じると、腸捻転を起こすことがあります。とても激しい痛みが起こり、即時の手術が必要となります。

子宮筋腫にともなう貧血は軽視されがちなことが多いのですが、子宮筋腫が原因となって起こる貧血は、徐々に悪化する傾向があります。そうなると、めまいや立ちくらみが起こるだけでなく、体内の諸器官にも悪影響が及ぶこととなります。

子宮筋腫による貧血がおこると、身体の各部への血液循環が滞ってしまうこととなります。血液は全身に酸素と栄養を運んでいるため、血行が悪くなった場所には、栄養状態の低下がみられることとなるのです。

また、血液の循環が悪くなると、心臓はより強い力で血液を送り出そうとします。それによって血圧があがると、血管にも負担がかかることとなります。

子宮筋腫の治療法

子宮筋腫の治療には、薬物療法と手術療法があります。子宮筋腫はホルモンバランスの変化によってできると考えられているため、ホルモンバランスを調整する医薬品が使用されます。

発想としては2つのタイプがあって、人為的に更年期状態を作り出すことによって子宮筋腫の成長を抑制する方法と、妊娠に似た状態を作り出すことによって、子宮筋腫による症状を軽くする方法があります。

更年期に似た状態を作り出すためには、Gn-RHアナログと呼ばれるものが用いられます。医薬品としては、酢酸ゴセレリンや酢酸ブセレリン、酢酸リュープロレインなどがあります。

また、女性ホルモンの働きを抑制するために、男性ホルモンに似た働きをする医薬品が用いられることもあります。代表的なものはダナゾールです。

子宮筋腫の薬も医薬品である以上、副作用の影響から逃れることはできません。子宮筋腫の薬に限ったことではありませんが、医薬品というものは、身体にとっては異物にほかなりません。

そのため、解毒をする器官である肝臓への負担は避けられません。また、更年期に似た状態を作ると、実際に更年期障害のような症状が現れることもあります。

更年期障害の症状としては、ホットフラッシュと言って、身体が急に火照って発汗するといったことがあげられます。また、頭痛や肩こりがひどくなったり、イライラしたり、訳もなく不安になったりと、心身ともにさまざまな症状が現れます。

子宮筋腫の症状を改善するための医薬品としては、低用量ピルや、黄体ホルモンを配合した医薬品もあります。

子宮筋腫を手術療法で改善する場合、子宮を全摘するやり方と、筋腫のみを取り除くやり方の2パターンがあります。

子宮を全摘する手術法は、赤ちゃんを望んでいなくて、子宮を全摘しなければならないケースに実施されます。

筋腫を取ることによって妊娠の可能性が増すような場合には、筋腫のみを摘出する手術法が推奨されています。

便秘と貧血が見られる病気その2・自律神経失調症

パソコンのモニターにドクロマークが出てきてしまい落ち込んでいる女性

便秘と貧血が見られる病気としては、自律神経失調症もあげられています。現代はストレス社会だといわれていますが、病院を受診して自律神経失調症といわれる人の数も年々増えてきています。

自律神経失調症とは

自律神経失調症とは、実は病名ではありません。何らかの症状を訴えて病院を受診したものの、画像診断でも血液検査でも何の異変もみられないような場合、自律神経失調症と呼ばれることが多いようです。

自律神経は私たちの生命活動すべてにかかわっていると言っても過言ではないので、何らかの症状がみられる場合には、自律神経の働きに変調をきたしていて当然だと言えるのです。

自律神経は交感神経と副交感神経の2つから成っています。両者はよく、車のアクセルとブレーキの関係にたとえられます。交感神経がアクセルで、副交感神経がブレーキだという訳です。

車を運転するときに、アクセルやブレーキを踏むのと同様、私たちが生活する中でも、交感神経を優位にしたり、副交感神経を優位にしたりといったことがおこなわれるのです。

交感神経と副交感神経のどちらが優位であればよいという訳ではなく、交感神経が優位になるべき時に交感神経優位状態になり、副交感神経が優位になるべき時に、副交感神経優位状態になることが必要なのです。

ところが、ストレスが昂じてくると交感神経優位の状態が継続してしまいます。いわばアクセルを踏みっぱなしの状態になってしまい、心身ともに緊張状態を強いられることとなります。

自律神経失調症の症状

自律神経失調症の特徴として、不定愁訴(ふていしゅうそ)がみられるということがあげられます。不定愁訴とは、その時々によって訴えられる症状が異なることを意味します。

昨日は頭が痛いと言っていたかと思うと、今日は気分が落ち込んで仕方ないと訴えるなどといった具合です。自律神経失調症のときに訴えられる症状は実にさまざまです。

身体的な症状としては、胃痛や胸やけ、吐き気や貧血、便秘や下痢といった排便障害、首のコリや肩こり、腰痛や膝痛、食欲不振などがあげられます。

精神的な症状としては、気持ちがふさぎこんだり、訳もなく悲しい気持ちになったり、不安な感じがしたり、イライラしたりといった、さまざまなことがあげられます。

自律神経失調症の治療法

自律神経失調症の治療法は、薬物療法とカウンセリングが主なものとなっています。薬物療法をおこなう際には、抗不安薬や向精神薬を用いられたり、睡眠導入剤が用いられたりします。

一般的に自律神経失調症やうつの治療法としては、薬物療法を選択するケースが多いようです。なぜなら、薬物療法の方が、時間がかからず効率よくおこなえるからです。

ひとりひとりをカウンセリングするのには、大変な労力と時間が必要となります。そのため、自律神経失調症のカウンセリングは、自費治療となっているところが多いようです。

便秘と貧血が見られる病気その3・鉄欠乏性貧血

強い頭痛のせいで思わず壁にもたれこむ女性

便秘と貧血が見られる場合に考えられる病気としては、鉄欠乏性貧血もあげられます。どちらかというと、女性に多くみられるタイプの貧血ですが、高齢になると男女ともに見られるようです。

鉄欠乏性貧血とは

鉄欠乏性貧血はその名の通り、鉄が欠乏することによって起こるタイプの貧血のことを言います。先ほど血液が酸素を運んでいると説明しましたが、もう少し詳しくいうと、血液の中の赤血球が酸素を運んでいます。

赤血球の中にはヘモグロビンと呼ばれるたんぱく質の一種があるのですが、このヘモグロビンには、酸素と結合しやすいという特徴があるのです。

そのため、血液中のヘモグロビン濃度が低下すると、貧血を起こしやすくなるのです。鉄は、ヘモグロビンを作るときに欠かせない成分とされており、鉄分の摂取量が不足すると、鉄欠乏性貧血になりやすいという訳なのです。

鉄欠乏性貧血の症状

鉄欠乏性貧血になると、貧血だけでなく、めまいや動悸、息切れなどもみられるようになります。また、唇が荒れたり、爪が割れやすくなったり、肌が乾燥しやすくなったりもします。

鉄欠乏性貧血の治療法

鉄欠乏性貧血の治療には、鉄剤を服用するという方法があります。ただ、鉄剤を服用すると、腹痛や吐き気、便秘や下痢といった排便障害の起こることがあります。

また、鉄欠乏性貧血を根本的に改善するためには、生活習慣の見直しも重要となります。なによりも、栄養バランスのとれた食事にすることが大事だということです。

便秘と貧血が見られる病気その4・大腸がん

機械を使って体の中の検査をしようとしている外科医

便秘と貧血が見られる病気としては、大腸がんもあげられます。大腸がんは、女性のがんによる死因のナンバー1となっています。このことと、女性に便秘が多いこととは決して無縁ではないでしょう。

大腸がんとは

大腸がんは、消化管の最後の部分である大腸(直腸と結腸)に発生する悪性腫瘍のことで、かつては欧米人によくみられていたのですが、近年では日本人の罹患者も増大傾向にあります。

大腸がんの症状

早期の大腸がんの場合、自覚症状のないことが多いということです。たまたま健康診断をしていて見つかったというケースもあるほどです。

大腸がんが進行すると、便秘や下痢といった排便障害がみられたり、血便が出たりすることがあります。また、腸管内の出血によって、貧血が起こることもあるということです。

大腸がんの治療法

大腸がんの治療もその他のがんの治療と同じく、「手術療法」「抗がん剤治療」「放射線治療」という、いわゆる「がんの3大治療」がおこなわれることとなります。

早めの受診を心がけましょう

便秘にともなって貧血が見られる病気について見てきましたが、いかがだったでしょうか。たかが便秘、たかが貧血だと侮っていると、思わぬ疾患を発症する可能性もあります。便秘にともなって貧血がみられるような場合、消化器内科や婦人科、便秘外来などを受診するようにしてくださいね。