甘くておいしいバナナは、おやつにも朝ごはん代わりにももってこい。そんなバナナには豊富な栄養素が含まれており、便秘の改善効果も期待できるということです。今回は、便秘とバナナの関係に迫ります。
バナナを食べると便秘の改善ができるという話をよく聞きますが、人によってはバナナを食べることで、かえって便秘がひどくなることもあるそうです。では、バナナはどのような便秘を改善する二の効果的なのでしょうか。また、根本的に便秘を改善するには、どうしたらいいのでしょうか。
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まずは便秘の種類を知りましょう
バナナを食べることで便秘を改善できるかどうかは、便秘のタイプによっても異なってきます。そこでまず、便秘のタイプについて理解しておきましょう。
器質性便秘
器質性便秘は、腸管の形態異常や、開腹手術をおこなったあとに起こる腸の癒着、なんらかの疾患にともなってみられるタイプの便秘です。
機能性便秘
私たちが「便秘」という言葉を使うとき、一般的には機能性便秘のことを指します。腸の機能に異常が生じることによって起こるタイプの便秘です。機能性便秘には以下のような種類があります。
弛緩性便秘
弛緩性便秘は、高齢者や出産後の女性に多くみられるタイプの便秘です。筋力の低下や運動不足などが原因となって、腹圧が低下することで便秘になってしまいます。
弛緩性便秘の場合の便の特徴としては、連続性のない、とぎれとぎれの便になるということがあげられます。医学的には、大腸通過遅延型便秘などといわれることもあります。
けいれん性便秘
けいれん性便秘は、ストレスなどが原因となって緊張状態になることで、腸管にも緊張が起こり、それによって便の通り道が狭くなってしまうタイプの便秘です。
けいれん性便秘になると、便がウサギのフンのように、コロコロとして固い状態になります。また、ストレス状態が続くことによって、過敏性腸症候群に移行するリスクも高くなります。
直腸性便秘
直腸性便秘は、医学的に便排出障害型の便秘といわれることもあります。弛緩性便秘やけいれん性便秘とは異なり、直腸性便秘の場合、便は肛門の手前にある直腸までちゃんと運ばれます。
ところが、便意を脳にうまく伝えられなくなり、それによって、便の排出が困難となるのです。直腸性便秘が長引くと、便がどんどん固くなり、ますます排出が困難となります。
一過性単純性便秘
一過性単純性便秘はその名の通り、一過性にみられる単純な便秘のことです。たまたま食べ過ぎたときなどにみられる便秘で、いったん便通がみられると、その後は規則正しく排便できるようになります。
薬剤性便秘
薬剤性便秘は、何らかの医薬品を服用することによって起こるタイプの便秘です。たとえば、心療内科系の薬や、パーキンソン病の薬などを服用した場合、便秘になるリスクが高くなるとされています。
バナナで便秘が改善できる理由
便秘の改善にはバナナが効果的だということですが、なぜ、バナナを食べることで便秘の改善ができるというのでしょうか。それには、以下のような理由があげられています。
バナナで便秘が改善できる理由その1・食物繊維
バナナで便秘が改善できる理由としては、バナナには豊富な食物繊維が含まれているからだとする説があります。バナナをむいてみると筋のようなものがありますが、あれも食物繊維の一種です。
食物繊維には不溶性の食物繊維と水溶性の食物繊維とがあり、両方とも違ったアプローチで便秘を改善してくれます。
不溶性の食物繊維はその名の通り、私たちが持つ消化酵素をもってしても溶かすことのできない食物繊維です。また、不溶性の食物繊維には保湿性が高いという特徴もあります。
不溶性の食物繊維は私たちの消化管内で水分を吸収して膨張しながら、ゆっくりと胃から腸へと進んでいきます。不溶性の食物繊維が大腸内で膨張すると、便のかさが増して腸管を刺激し、便意を促進することが可能となるのです。
水溶性の食物繊維は、腸内細菌の一種であるビフィズス菌などの善玉菌のエサとなります。それによって腸内環境が改善されることで、便秘も改善できることとなるわけです。
バナナで便秘が改善できる理由その2・オリゴ糖
バナナで便秘が改善できる理由としては、バナナに含まれているオリゴ糖の存在もあげられています。バナナに含まれているオリゴ糖はフラクトオリゴ糖と呼ばれるもので、控え目な甘さを持っています。
「フラクト」という言葉自体に「果物」と意味が含まれています。バナナ以外にも、ニンニクや玉ねぎ、ゴボウなどにもフラクトオリゴ糖が含まれているということです。
オリゴ糖には水溶性の食物繊維と同じく、腸内の善玉菌のエサになるという特徴があります。それによって腸内環境が改善すると、便秘の解消にもつながるという訳なのです。
また、フラクトオリゴ糖には、便秘の解消効果だけでなく、丈夫な骨を作ってくれる効果もあります。なぜなら、フラクトオリゴ糖にはミネラルを吸収するという特徴もあるからです。
バナナで便秘が改善できる理由その3・レジスタントスターチ
ダイエットに興味がある方でしたら、レジスタントスターチという言葉を聞いたことがあるかも知れません。レジスタントスターチは、日本語でいうと「難消化性でんぷん」ということになります。
レジスタントスターチは、不溶性の食物繊維と水溶性の食物繊維の両方の特徴を有していることから、便秘を改善するのに効力を発揮するということです。
バナナで便秘が改善できる理由その4・マグネシウム
バナナで便秘が改善できる理由としては、バナナにマグネシウムが含まれているということもあげられます。マグネシウムには、腸の蠕動(ぜんどう)を促進したり、便を軟らかい状態にして排出しやすくしたりする働きがあるとされています。
便秘薬にはいろいろなタイプがありますが、浸透圧性下剤には酸化マグネシウムや硫酸マグネシウムが含まれているものもあります。それほど、便秘の改善にマグネシウムが効果的だということなのです。
バナナで改善できる便秘とできない便秘
便秘にはいろいろなタイプがありますが、バナナを食べることによって改善が期待できる便秘と、バナナを食べても改善が期待できない便秘があります。ではまず、バナナを食べることで改善が期待できるタイプの便秘について見ていきましょう。
バナナで改善できる便秘
バナナを食べることで改善が期待できる便秘は、弛緩性便秘です。バナナに含まれている不溶性の食物繊維によって便のかさを増すことで、排便を促すことができるようになります。
バナナで改善できない便秘
バナナを食べることで改善できない便秘の筆頭が、器質性便秘です。器質性便秘は機能性便秘とことなり、生活習慣や食習慣の改善だけではまず治りません。
便秘の原因となっている疾患や、腸の形態、腸の癒着をなんとかしないことには、便秘を改善することができないのです。
また、直腸性便秘の場合も、バナナに含まれている不溶性の食物繊維によって、余計に便が固くなってしまい、かえって便秘が悪化することもあります。
バナナだけで便秘が改善できる?
「バナナを食べると便秘が改善できる!」などと書かれているインターネット上の記事はたくさんありますが、バナナにはそれほど便秘改善効果が期待できるのでしょうか。
無駄ではない
バナナを食べることで便秘か改善できるかどうかという質問に対しては、「改善できるケースもある」と答えるのが正解かと思います。
誰もがバナナを食べることで便秘を改善できる訳ではありません。人によって、バナナを食べることで便秘が改善することもあれば、バナナを食べることでかえってべんぴが悪化することもあります。
また、バナナには便秘の改善に効果的な栄養素が含まれているということでしたが、栄養成分的に見てみると、それほど大量に含まれている訳ではありません。
たとえば、私たちが1日に摂取すべきマグネシウムの量は、250mgだということです。バナナ100gに含まれているマグネシウムの量は32mgだということなので、バナナだけで摂取しようとすると、およそ800gのバナナを食べなくてはなりません。
とは言うものの、手軽にマグネシウムを摂取するには効果的ですし、その他の栄養素も便秘改善に有効だということなので、便秘の改善目的でバナナを食べることは、決して無駄ではありません。
バナナだけで便秘を改善するのは難しい
バナナに限ったことではありませんが、なにか特定のものだけを食べて便秘を改善するというのは、あまり賢いやり方だとは言えません。
便秘になる原因は実にさまざまであり、便秘のタイプの多岐にわたっています。そのため、自分に合った便秘の改善法を選択することが重要です。
バナナ以外の便秘改善法
バナナを食べることで改善が期待できる便秘のタイプはそれほど多くありません。では、便秘を改善するにあたって、バナナを食べる以外にどのようなことをおこなうとよいのでしょうか。
バナナ以外の便秘改善法その1・ストレス発散
バナナを食べる以外の便秘改善法としては、ストレスを発散することがあげられます。ストレスは万病のもとなどといいますが、便秘にとってもストレスは大敵です。
ストレス状態が続くと、自律神経のバランスが乱れます。自律神経とは、私たちが特に意識しなくても勝手に働いてくれる神経のことで、私たちの生命活動のほぼすべてに関わっています。
体温を調節したり、血圧を調節したり、体温を発したり、食べたものの消化や吸収をしたり、細胞分裂を促したりするのは、すべて自律神経の働きによります。
自律神経は交感神経と副交感神経の2つから成っており、それぞれ車のアクセルとブレーキの関係にたとえられます。
つまり、日中に活動的になるときはアクセルを踏み(交感神経が優位になり)、夜になって身体を休めるときにはブレーキを踏む(副交感神経が優位になる)という訳です。
交感神経と副交感神経の切り替えがうまくいっていると、私たちの生命活動も円滑におこなわれることとなります。ところが、日本人は体質的に、交感神経と副交感神経の切り替えが苦手だとされています。
夜になっても交感神経優位の状態が続くと、緊張状態が継続してしまい、睡眠の質が低下してしまいます。私たちの身体では寝ている間に修復がおこなわれるため、睡眠の質が低下すると、疲労回復に時間がかかることとなります。
また、私たちが食べたものは、夜寝ている間に活発に消化・吸収されます。そのため、睡眠の質が低下すると、食べたものの消化や吸収が滞ることとなります。
さらに、交感神経優位の状態が続くと、脳内の神経伝達物質の一種である「セロトニン」の分泌量が低下してしまいます。
セロトニンには、簡単に言うと神経を鎮静化させる働きがあります。自律神経失調症の人やうつ病の人は、セロトニンの分泌量が少なくなるとされますが、セロトニンの分泌量低下によって、神経を落ち着けることができなくなるのです。
あと、セロトニンの分泌量が減少すると、脳の視床下部にある満腹中枢が刺激されにくくなることも分かっています。ストレスによってやけ食いするのには、ちゃんとした理由があるという訳なのですね。
このように、ストレスがたまると、便秘だけでなく、さまざまな悪影響が心身ともに見られることとなります。そのため、便秘を改善するためには、ストレスを発散する必要があるのです。
バナナ以外の便秘改善法その2・食習慣の見直し
バナナ以外の便秘改善法としては、食習慣の見直しもあげられます。あたり前といえばあたり前ですが、バナナさえ食べていれば、あとは好きなものを食べていいという訳ではありません。
そもそも、日本人に便秘が増えたのは、欧米化した食習慣が原因だと考えられています。簡単に言うと、お肉を食べる量が増えたということです。
お肉に含まれているタンパク質や脂質は、腸内の悪玉菌のエサとなります。それによって腸内環境が悪化し、便秘になってしまうという訳なのです。
便秘を改善するためには、バナナを食べるだけでなく、魚や野菜、海藻やキノコ類などを積極的に摂るようにするとよいでしょう。
便秘のタイプにより有効なバナナ
バナナは便秘の改善に有効なイメージがあるかも知れませんが、それは便秘のタイプにもよります。まずは自分の便秘のタイプを知り、自分に合った便秘の改善法を模索するようにしましょう。