牛乳で便秘は治らない?牛乳での腸への効果と解消する方法4選

牛乳は便秘によいと言われることがあります。一方で、牛乳を飲むと下痢になるとも言われます。また、牛乳が原因で便秘になるということを聞いたことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

実際、欧米では牛乳による便秘が問題になっているようです。ではいったい、牛乳はおなかにいいのでしょうか、よくないのでしょうか。今回は、便秘と牛乳の関係と飲み方について調べてみました。

牛乳ってどんな飲み物?

牛乳が注がれているコップ

牛乳とは牛から搾った乳のことでしょうか。実は違うんです。牛から搾った乳は生乳と呼ばれ、この生乳を加熱殺菌したものが牛乳です。牛乳は、水やその他の成分を加えることはもちろん、減らすこともできません。

たんぱく質やビタミン、ミネラルなど脂肪以外の固形分8%以上、乳脂肪分3%以上を含むものと規定されています。では、牛乳にはどのような栄養価があり、体にどのような効果を現すのでしょうか。

牛乳の栄養価

牛乳の栄養価を調べるには、文部科学省の日本食品標準成分表(7訂、2015年)が参考になります。普通牛乳のエネルギーは100gで67kcalです。そのうち87.4gが水分ですが、以下の主要な栄養素が含まれています。

  • タンパク質      3.3g
  • 脂質            3.8g
  • 炭水化物 4.7g
  • ナトリウム      41mg
  • カリウム 150mg
  • カルシウム      110mg
  • マグネシウム    10mg
  • リン            91mg
  • ビタミンA       38mg

こうして見てみると、タンパク質、脂質、炭水化物の三大栄養素がバランスよく含まれていることがわかります。

また、ミネラルでは、塩分などのナトリウムの排出を促進する働きのあるカリウム、骨や歯の元となるカルシウム、カルシウムと結合して丈夫な骨や歯を保つために必要なリンなどが豊富に含まれています。体を作るための栄養素がバランスよく含まれていると言えますね。

文部科学省、日本食品標準成分表(7訂、2015年版)

カルシウムの効果

牛乳の栄養価で特筆するべきはカルシウムです。厚生労働省の日本人の食事摂取基準を見てみると、30~49歳の男女で一日550mg、50歳以降の男性で一日600mg、50~69歳の女性で550mg、70歳以降の女性で500mgとあります。

カルシウムは、体重の1~2%を占める必須ミネラルで、そのほとんどが骨や歯に存在しています。体の基礎を作る重要な栄養素で、年齢とともに骨に含まれるカルシウムが少なくなる骨粗しょう症の予防にも重要な成分です。また、カルシウムは出血を助ける働きや、ストレスを和らげるミネラルとしても知られています。

牛乳は一杯200gを摂取すると、220㎎ものカルシウムが摂取できます。同じ乳製品では、チーズにもかなり豊富に含まれていますが、日本人はチーズを習慣的に食べることはあまりありません。

また、豆腐などの豆類、いわしなどの魚介類にもカルシウムが豊富です。一回の食事として摂るには理想的ですが、料理などの時間を気にすることなく、気軽に摂取することができるという点においては、牛乳に勝るものはないと言えます。

厚生労働省、日本人の食事摂取基準(2015年)

どうしてお腹がゆるくなるのか

牛乳を飲むと下痢をしてしまう方がいらっしゃいますよね。この原因として考えられるのは、乳糖不耐症です。乳糖不耐症とは、牛乳を摂取すると、下痢や腹痛といった消化不良の症状を起こすことですが、ではなぜこのようなことが起こるのでしょうか。

牛乳を飲むと、牛乳に含まれる乳糖という成分は、胃で消化されずに小腸に移動します。ここで乳糖を分解する酵素によって分解・吸収され、体の栄養となりますが、この酵素の力が弱い場合、乳糖は小腸で分解されずに大腸へと移動することになります。ちなみに、乳糖を分解する酵素は、離乳期をすぎると、一般的に乳糖分解酵素活性が低下します。

大腸へ移動した乳糖は、大腸内の浸透圧作用を高めることから、腸内の水分が増えます。また、大腸の腸内細菌によって腸管が刺激され、蠕動運動が活発になります。さらに、一部の腸内細菌は水素ガスを発生させることから、おなが張った状態となります。

このように、小腸で乳糖を十分に分解できないか、あるいは牛乳を飲み過ぎたことで乳糖が十分に分解されないと、下痢のような症状が現れるようになるのです。

牛乳の便秘を改善する効果は?

6:14を指している時計とコップに注がれたミルクあとチョコチップクッキー

牛乳を飲むとおなかがゆるくなる働きを上手に利用して、便秘を改善することが可能です。それには、牛乳に含まれる乳糖の働きを理解することが大切です。

また、腸内に存在する善玉菌を増やすことで、腸内環境を良くしておくことも重要です。腸の中のことは目で見ることはできませんので、日頃のこうした食生活に対する意識を高めて、便秘の改善に努めていきたいですね。

乳糖が腸の蠕動運動を活発に

牛乳に含まれている乳糖は、大腸に到達すると、腸内細菌によって腸管が刺激され、蠕動運動が活発になります。

腸内細菌とは、腸内につねに存在する細菌のことで、回腸下部から大腸にかけて、100種類以上の細菌が生息しています。この細菌には、消化や吸収を助けて腸内をキレイにする善玉菌と、腐敗物質を作り、炎症を起こすほか、発がん性の物質を作る悪玉菌の2種類があります。

善玉菌には乳酸菌、ビフィズス菌、腸球菌などがあります。一方、悪玉菌には、大腸菌、ウェルシュ菌、ブドウ球菌などがあります。

こうしたによって発酵を受け、有機酸などを生成し、これらが大腸の水分やナトリウムの吸収を抑制することで、腸管を刺激するのです。

なお、牛乳には炭水化物の仲間であるオリゴ糖が含まれていますが、これは善玉菌のビフィズス菌が繁殖するための栄養源となります。

朝起きてからの1杯は効果的

最近、話題になっている時間栄養学では、朝は体内時計をリセットするのがいいとされていますよね。このため、栄養価が高く、排便を促す牛乳を朝食で摂ることは非常に効果的です。

冷たい牛乳を飲むよりも、温かい牛乳を飲んだ方が、腸を刺激せず、体を冷すこともありません。好みでココアやきな粉を混ぜてみると、おいしくなりますよ。ココアには善玉菌のリグニンが含まれていますし、きな粉は食物繊維が豊富です。さらに効果が期待できそうですね。

牛乳が便秘に効かない場合も

お腹を押さえている女性

これまで述べてきたように、牛乳に含まれる乳糖は、大腸に到達すると腸管が刺激され、蠕動運動が活発になることから、便秘に効果が期待できます。

でも、牛乳が便秘に効かないケースもありますので、ご自身はどうなのか十分に調べてみる必要があるかと思います。いったいどのようなケースでしょうか。

牛乳で下痢をしやすい方は控えた方が良い

牛乳を飲むと下痢をする方は、乳糖不耐症かもしれません。乳糖不耐症の場合、牛乳に含まれる乳糖を分解する酵素の力が弱いため、乳糖が大腸へ移動し、下痢などの症状を呈します。また、牛乳に含まれる成分に対するアレルギーがある方も下痢などの症状が現れることがあります。

このように、牛乳を飲むと下痢の症状が現れる方は、牛乳の摂取を控えた方がベター。ひどい場合、腹痛がひどくなってしまいます。

痙攣性便秘の場合

精神的なストレスなどによって生じる痙攣性便秘の方をはじめ、大腸の運動や分泌機能に異常を来すことで起こる過敏性腸症候群の方も、便秘の症状を悪化させる可能性があります。

とくに冷たい牛乳を飲んだ場合、腸に強い刺激を与えるため、逆効果となります。どうしても牛乳を飲みたい場合、牛乳を温めて飲むことで胃腸への急激な刺激を抑えることができます。

自律神経の乱れの場合

自律神経が乱れると、身体的にも精神的にもさまざまな症状が現れます。こうした症状の総称を自律神経失調症と呼んでいます。自律神経失調症の場合、便秘や下痢が繰り返されることがあります。

これは、自律神経の一方である交感神経が優位になったり、もう一方の副交感神経が優位になったりとバランスが崩れているため、便秘と下痢という正反対の症状が現れると考えられています。

このように身体的にも精神的にも不安定なとき、牛乳を飲んで便秘を解消しようと思ったら下痢になってしまう可能性もあります。牛乳は控えた方がいいですね。

牛乳で便秘を解消する方法

牛乳をとても美味しそうに飲む女性

牛乳で便秘を解消するためには、正しい飲み方をしなければなりません。これまで見てきたように、牛乳は栄養価が高く、すぐれた飲み物である一方で、便秘を解消する以上に腸の動きが活発になり、下痢の症状が現れることもあります。うまく便秘を解消するためのコツをしっかりとつかんで、おなかをすっきりさせたいですね。

朝の1杯が良い

体内時計をリセットするために、朝はとても大切な時間です。1杯の牛乳で栄養を摂取すると同時に、排便を促したいですね。冷たい牛乳はおなかに刺激が強すぎますので、温めて飲むことをオススメします。好みでココアやきな粉を混ぜると飲みやすくなります。

飲んでいい牛乳の上限

牛乳に含まれる乳糖には、下痢のような症状を起こす働きがありました。では、下痢にならずに便秘を解消する量のリミットはあるのでしょうか。興味深い研究を見つけましたので見てみたいと思います。

これは、健康な女子学生と男子学生を対象にし、乳糖を30g、40g、50g、60gの4段階で摂取、血糖値や腹部の症状などを調べた研究です。この実験の考察では、乳糖の最大無作用量は体重㎏あたり1回0.71gという結果が明らかとなりました。

つまり、体重が50㎏の方は乳糖35gまで摂取しても下痢にはならないということです。ちなみに、牛乳200mlには、乳糖は9gほど含まれています。つまり、体重50㎏の方は一度に4杯以上の牛乳を飲まない限り、下痢の心配はないということになります。

もちろん、個人差はありますので、あくまでの参考までに覚えておくといいですよ。体重に0.71をかけて計算してみてください。

ヒトにおける乳糖の一過性下痢に対する最大無作用量とそれに及ぼす食べ方に関する研究

牛乳同様便秘に良い飲み物

白湯、ヨーグルトドリンク、青汁など、便秘に良いとされるドリンクはいくつもあります。こうした飲み物は、冷たい状態で飲むよりも、温めた方がいいですよ。冷えを解消し、血液や体液などの流れを良くしてくれます。

白湯は沸騰した湯を冷ましたもの。ただの冷めた湯だと思ったら大間違いで、いったん沸騰させることで、カルキなどの不純物が取れ、ゆっくりと体内に摂り入れることでデトックス作用があるとも言われています。

ヨーグルトには、乳酸菌など腸内環境を整える成分が含まれているほか、牛乳と同じように高い栄養価で知られています。ただし、乳酸菌は高温では死んでしまうため、ぬるい状態で飲むようにするといいですよ。

青汁も食物繊維が豊富で、腸の働きを活性化させてくれます。βカロチン、ビタミンCやKなどのビタミンのほか、カリウムやリンなどのミネラルも豊富ですので、免疫力を高め、肌にハリを与えるなどの効果も期待できます。

水分補給が重要

便秘症の方の中には、水分摂取量が少ないことが原因の方もいらっしゃいます。摂取した食べ物は、消化吸収されて大腸まで到達すると、カスだけが残ります。水分も吸収されていくため、そもそも水分量が少ないところに便秘が続くと、ますます水分が吸収されていき、便がますます硬くなってしまいます。

ある研究では、一日の水分摂取量が500ml以下の場合、排便量を減少させ、便秘症状につながることが示唆されたとしています。一日にどのぐらいの量の水分が必要なのかという具体的な量については個人差もありますが、500ml以上は必ず飲むようにすることで便秘にならないようにするというのはひとつの目安になりそうですね。

便秘ケアとしての水分摂取のエビデンスに関する統合的文献レビュー

牛乳の高い栄養価

牛乳は栄養価が非常に高く、便秘に効果が期待できる飲み物です。牛乳に含まれる乳糖は腸の運動を活発にしてくれるからです。牛乳で下痢するなどの方は便秘に効果が見られないこともありますが、朝から牛乳を飲んで便秘を引き起こさない身体を作っていくことが大切です。