コーヒーで便秘が治るか便秘になるかは便秘のタイプによる!

コーヒーの愛飲者は多いですが、コーヒーを飲む人は飲まない人に比べて死亡率が高いという説や、反対に、がんになりにくくなるという説など、まったく反対の健康効果が不調されています。では、便秘に対してコーヒーはどのように作用するのでしょう。

コーヒーに含まれている成分は、私たちの身体にさまざまな影響を与えます。よい影響もあれば悪い影響もあるのですが、では、便秘に関してはどのような影響を与えるのでしょう。

今回の記事では、便秘のタイプと、コーヒーを飲むことで改善できる便秘のタイプ、また、効果的な便秘の改善法を紹介したいと思います。

便秘のタイプをしろう!

本を読んでいる女性

コーヒーを飲むことで便秘の解消ができるのか、それとも便秘がひどくなってしまうのかを知るためには、便秘のタイプについて理解しておく必要があります。なぜなら、便秘の種類によって医薬品の作用が異なりますし、コーヒーが与える影響も異なるからです。

器質性便秘

便秘の種類の1つに、器質性便秘と呼ばれるものがあります。腸の機能障害にともなって便秘になったり、なんらかの疾患にともなって便秘になったり、腸の変形によって便秘になったりするという特徴があります。

器質性便秘は、この次に紹介する機能性便秘のように、生活習慣の改善によって治ることはまずないとされるため、速やかに医療機関を受診することが重要となります。もちろん、コーヒーを飲むことで改善するようなことはありません。

機能性便秘

私たちが一般的に便秘という言葉を使う場合、通常は機能性便秘のことを指すケースがほとんどです。機能性便秘としては、おもに以下の4つの便秘があげられます。

・弛緩性便秘

弛緩性便秘は、腸の蠕動(ぜんどう)が弱くなることによって起こるタイプの便秘です。腸には、収縮と弛緩を繰り返して内容物を先へ先へと送る働きがあり、その働きのことを蠕動と呼んでいるのです。

蠕動が弱くなってしまう原因としては、運動不足による筋力の低下や腹圧の低下があげられています。高齢者や出産後の女性にみられることの多い便秘だということです。

弛緩性の便秘になると、便がなかなか肛門の手前にある直腸へと送られないため、まとまりのない途切れがちな便がみられることとなります。

・けいれん性便秘

けいれん性の便秘は、ストレスなどが原因で腸管が緊張して収縮し、それによって便の通り道が狭くなることで、お通じが少なくなるタイプの便秘のことを言います。

けいれん性の便秘になった場合、ウサギのフンのように硬くてコロコロとした便がみられるという特徴があります。また、便秘薬の常用によってけいれん性の便秘になることもあります。

・直腸性便秘

私たちの大腸は長さ1.8mにも及ぶとされており、盲腸から始まって上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸を経て肛門へと至ります。

直腸性便秘は、便自体はちゃんと直腸まで送られているのに、便意を脳にうまく伝えることができず、結果として直腸内に便がたまってしまうタイプの便秘のことを言います。

便が腸管内にとどまる時間が長いため、大腸に水分が吸収されることで、カチカチになった便がみられるようになります。

直腸性の便秘は「習慣性の便秘」といわれることもあり、排便のために割く時間が少なかったり、無理に便意を抑えたりすることによって起こります。

また、便秘薬を常用していると、自然な便意が起こらなくなり、それによって直腸性の便秘になることがあります。

極めてまれなケースではありますが、直腸性の便秘がひどくなって死亡したという例もあります。1998年に奈良県で起こった事案なので、それほど昔の話という訳ではありません。

当時21歳だった女性が、直腸性の便秘による腸閉塞で亡くなるという痛ましいニュースがありました。女性はどちらかというと小柄でやせ形でしたが、亡くなったときには腸内に6.7kgもの便が詰まっていたということです。

また、肛門へとつながる直腸には、長さ10cmにわたって、水分を全く含まないコンクリートのような便が詰まっていたということです。

亡くなった女性は、亡くなる1年以上前から便秘薬を常用していたということです。長期間にわたって便秘が改善しない場合、最悪の事態に至らないためにも病院を受診するようにしましょう。

・一過性単純性便秘

一過性単純性便秘はその名の通り、一過性にみられる単純な便秘のことを言います。たまたま食べ過ぎた翌日に便秘なるものの、一度お通じがあるとその後は正常な状態に戻るようなタイプの便秘です。

・薬剤性便秘

薬剤性便秘は、何らかの医薬品を服用することによって起こる便秘です。便秘を起こす医薬品としては、抗うつ薬や抗コリン薬、パーキンソン病の治療薬などが知られています。

また、先ほども述べたように、便秘薬を常用することで便秘が悪化することもあります。なぜなら、便秘薬の中には継続使用することによって、身体に耐性ができるものがあるからです。

コーヒーで便秘が改善する理由

カーテンを引っ張ってる女性医者

コーヒーを飲むことで便秘が改善できるかどうかについては説が分かれています。なぜそのようなことが起こっているのか、まずはコーヒーを飲むことで便秘の改善が可能であるとする説から見ていきたいと思います。

理由1 カフェインの効果

コーヒーで便秘が改善できる理由としては、コーヒーに含まれているカフェインに、大腸の働きを活発にする効果があるとされているからです。

実際、手術をした後に腸の機能を高めたいような場合、コーヒーを服用するという試みも始まっているようです。ただ、コーヒーを飲むことで便秘が改善されるのかについては研究報告がないことから、エビデンスという点ではまだ弱いといわざるを得ません。

理由2 オリゴ糖の効果

コーヒーを飲むことで便秘が解消できる理由としては、コーヒーにオリゴ糖の一種であるコーヒーオリゴ糖が含まれているということもあげられています。

オリゴ糖にはたくさんの種類がありますが、腸内に住んでいる善玉菌の一種であるビフィズス菌のエサになることで、腸内環境の改善が可能になるとされています。

コーヒーオリゴ糖はコーヒー豆を絞ったかすからできているのですが、砂糖よりもカロリーが低いことから、ダイエット方面でも注目されているオリゴ糖となっています。

理由3 ミルクの成分

コーヒーを飲むときにミルクを入れると、ミルクに含まれている乳糖によって腸内の乳酸菌が増え、腸内環境の改善につながるとされています。

また、ミルクにはオリゴ糖の一種であるガラクトオリゴ糖も含まれています。ガラクトオリゴ糖にも、ビフィズス菌のエサとなり、腸内環境の改善する効果が期待されています。

コーヒーで便秘が悪化する理由

お腹を抱えている女性

それでは次に、コーヒーを飲むことで便秘が悪化するという説についてもみていきたいと思います。コーヒーに含まれる同じ成分によって、便秘がよくなるとする説もあれば悪化するという説もあり、専門家の意見が待たれるところです。

理由1 カフェインの効果

コーヒーを飲むことで便秘が悪化する根拠としては、コーヒーに含まれるカフェインの存在があげられています。カフェインには大腸の動きを活発にする働きがあるはずでしたが、なぜカフェインの摂取によって便秘が悪化するのでしょうか。

その理由として、カフェインに利尿作用があるからだという説があります。利尿作用によって体内の水分が不足し、それによって便が硬くなってしまうという訳です。

ただ、この説に関しては反論も試みられています。水分補給の専門家からは、コーヒーを飲むことによって水分不足になるという説には、十分なエビデンス(医学的証拠)が不足しているという指摘も上がっています。

カフェインを摂取することによって便秘が悪化する理由としては、カフェインを摂取することで交感神経が刺激されるということもあげられています。

よく、コーヒーを飲むと眠れなくなるとか、受験勉強で徹夜するためにコーヒーを飲むなどといったことがありますが、それは、コーヒーに含まれるカフェインに覚醒作用があるからです。

カフェインを摂取すると交感神経が優位になります。簡単にいうと、車のアクセルを踏んだような状態になるのです。交感神経が優位になると、血管が収縮して血圧があがります。

私たちが食べたものは、副交感神経が優位になる睡眠中に消化・吸収されることとなります。ところが、夜になっても交感神経が優位になっていると、食べたものの消化や吸収が滞ることとなります。それによって便秘になりやすくなるのです。

また、コーヒーを飲むと身体が冷えてしまうなどといわれますが、これもカフェインの働きがかかわっています。カフェインの摂取によって交感神経が優位になると、血管が収縮して血行が悪くなってしまうのです。

血液は全身に酸素と栄養を運んでいるので、血行が悪くなった場所には、栄養状態の低下がみられることとなります。栄養状態の低下が胃腸に見られれば、必然的に便秘になる可能性が高くなるという訳です。

なぜ、カフェインの摂取によって便秘がよくなるという説と、反対に悪くなるという説があるのかを理解するためには、カフェインと頭痛との関係について知っておくとよいかもしれません。

頭痛の原因はほとんど分かっていませんが、血液の循環が大きくかかわっていると考えられています。大きく分けると、「血管拡張性の頭痛」と「血管収縮性の頭痛」があります。

血管拡張性の頭痛はいわゆる偏頭痛と呼ばれるタイプの頭痛で、片頭痛の場合にはコーヒーに含まれるカフェインを摂取することで、症状を緩和することができるとされています。

なぜなら、血管が拡張することで頭がズキンズキンと拍動するように痛むわけですから、カフェインの摂取によって交感神経優位の状態にし、血管を収縮させることで痛みを緩和させることが可能となるからです。

血管収縮性の頭痛は、首や肩の筋肉が緊張して血管を圧迫し、血液の循環が悪くなることによって起こります。この場合、カフェインを摂取すると余計に血行が悪くなるので、頭痛が悪化することになります。

便秘とカフェインに関しても、同じことが言えそうです。腸の蠕動が弱くなることで起こる弛緩性の便秘の場合、カフェインによって腸の蠕動を活発にすることで、便秘の改善が可能と言えます。

反対に、ストレスなどが原因となっておこるけいれん性の便秘の場合、カフェインを摂取することで余計に緊張状態が強くなってしまうため、かえって便秘が悪化することとなります。

コーヒーと自律神経の関係について、コーヒーの香りをかぐことでリラックスし、それによって副交感神経が高まるという説もありますが、臭いの影響と体内に摂取する影響のどちらが大きいのかについては、説明する必要もないと思います。

先ほども少しふれたように、カフェインと便秘との関係について、専門の機関による研究報告はありません。ネットの情報を鵜呑みにしてコーヒーを飲んで、便秘を悪化させることのないよう気をつけてくださいね。

理由2 クロロゲンの作用

コーヒーを飲むことで便秘が悪化するという根拠の1つが、コーヒーに含まれているクロロゲンの存在です。クロロゲンには胃腸の機能を低下させる働きがあるため、コーヒーを飲みすぎると便秘がひどくなるとされるのです。

コーヒーで便秘を改善するためには?

コップをもって窓の外を見ている女性

結局のところ、コーヒーを飲むことで便秘の改善は可能なのでしょうか。コーヒーを飲んで便秘を解消したいのであれば、以下のような飲み方がおススメとなっています。

朝一番に飲む

コーヒーを飲むことで便秘を解消したいのであれば、朝起きてすぐにコーヒーを飲むようにするとよいでしょう。先ほども少し触れましたが、食べたものの消化や吸収は、私たちが寝ている間に活発におこなわれます。

つまり、私たちが起きている時間の中で、朝がもっとも腸の働きの活発な時間帯という訳なのです。そのため、朝一番にコーヒーを飲むことで、便秘の改善効果が期待できます。

ホットで飲む

朝一番にコーヒーを飲むときは、アイスコーヒーではなくホットコーヒーを飲むようにしましょう。長い目で見るとホットコーヒーにも身体を冷やしてしまう働きがあるのですが、アイスコーヒーで直接的に腸を冷やしてしまうよりははるかにましです。

まだ医学的根拠はない

便秘とコーヒーとの関係について見てきましたが、いかがだったでしょうか。現在のところ、専門機関による研究報告がないため、コーヒーが便秘の改善に効果的なのかどうか、医学的根拠をともなった説はありません。

それを証拠に、便秘とコーヒーについて調べると、素人の書いた記事が散見されるだけとなっています。医学的根拠のない一般人の説に惑わされるよりは、病院を受診した方が早く便秘を改善できますよ。