世界的に見ると高度の肥満症の人は少ない日本ですが、それでも年々肥満の人が増える傾向にあるそうです。では、肥満はどのように検査し、確定するのでしょうか。今回は、目的別の肥満に対する検査を紹介したいと思います。
肥満の検査法は、目的に応じていくつかのものがあります。今回の記事では、肥満をした際におこなわれる代表的な検査法を、目的別に3つ紹介したいと思います。また、肥満の仕方に応じたダイエット法や、ダイエットを成功させるためのコツについても解説していきたいと思います。原因を知って効果的にダイエットしてくださいね。
肥満の3つの検査法
肥満という言葉はよく聞かれますが、では具体的にどのような状態になると肥満とされるのでしょうか。また、肥満に関して、どのような検査法があるのでしょうか。今回は、3つの代表的な検査法について見ていきたいと思います。
検査法1~遺伝子検査~
最近になって注目されているのが、遺伝子検査によって肥満になるリスクを検査するというものです。その結果に基づいておこなわれるダイエットのことを「遺伝子ダイエット」などと呼ぶこともあるそうです。遺伝子ダイエットは、おもに3つの遺伝子を調べることでおこなわれています。
β3アドレナリン受容体遺伝子
β3アドレナリン受容体遺伝子には、白色脂肪細胞や褐色脂肪細胞の働きをコントロールする働きがあり、それによって脂肪の蓄積や燃焼がおこなわれるとされています。
ところが、日本人のおよそ30%に、β3アドレナリン受容体遺伝子に変異がみられ、それによって安静時の基礎代謝が低下してしまうということです。
基礎代謝とは、私たちが特に意識していなくても、1日の間に消費されるエネルギー(カロリー)のことを言います。特別な運動をしなくても、呼吸や内臓の働き、食べたものの消化や吸収にもエネルギーが使われるからです。
私たちが1日の間に消費するカロリーのうち、基礎代謝は6割から7割を占めるとされています。そのため、基礎代謝が低下してしまうと、太りやすい体質になってしまうのです。
β3アドレナリン受容体遺伝子に変異がみられる人は、そうでない人と比較した場合、1日の間に消費されるカロリーが200キロカロリーほど低くなってしまうとされます。
β3アドレナリン受容体遺伝子に変異がみられる人の太り方の特徴として、「リンゴ型」の体型になるということがあげられています。男性によくみられるタイプの肥満が、リンゴ型=内臓脂肪型の肥満であるとされます。
アンカップリングプロテイン遺伝子
アンカップリングプロテイン遺伝子は「UCP1遺伝子」とも呼ばれており、日本人の20%前後に、アンカップリングプロテイン遺伝子の変異がみられるということです。
アンカップリングプロテイン遺伝子に変異がみられる場合、そうでない人と比較した場合、1日の間に消費されるカロリーが100キロカロリー少なくなるとされています。
アンカップリングプロテイン遺伝子に変異がみられる場合の特徴として、体型が「洋ナシ型」になるということがあげられています。腰回りやおしり周り、太もも周りなどの脂肪がつきやすい、皮下脂肪型の肥満になることから、女性に多くみられるタイプの肥満だとされます。
β2アドレナリン受容体遺伝子
β2アドレナリン受容体遺伝子は、脂質の代謝にかかわる遺伝子の1つだと考えられています。日本人の16%程度に、β2アドレナリン受容体遺伝子に変異がみられるとされています。
Β2アドレナリン受容体遺伝子に変異が見られる人の特徴としては、安静時の基礎代謝量が通常の人と比較して、300キロカロリーほど多いということがあげられています。
その点だけ見ると太りにくくてよさそうに思えるのですが、β2アドレナリン受容体遺伝子に変異がある場合、脂肪だけでなく筋肉も分解されることが分かってきています。
そのため、若いうちはほっそりしているのに、いつの間にか太ってしまったなどというケースがよく見受けられます。
検査法2~病院での検査~
肥満になった場合、病院ではどのような検査をおこなうのでしょうか。肥満の場合と、肥満症の場合の両方について見ていきたいと思います。
血液検査
肥満と肥満症の違いってご存知でしょうか。肥満とは単に太っている状態のことを言いますが、肥満症とは、肥満に加えてなんらかの疾患を発症している場合、もしくはなんらかの疾患を発症する可能性のある場合を言います。
肥満に加えて疾患を発症している場合や、予防のために治療が必要とされる場合、肥満症とされ、実際に治療がおこなわれることとなります。肥満症であるかどうかを判定する際には、血液検査のおこなわれることがあります。
肥満症になると、高血圧や脂質異常症、高尿酸血症や脂肪肝などを発症するリスクが高くなるとされています。血液検査の数値によって、それらの疾患を発症するリスクや、実際に発症しているかどうかを検査するという訳です。
画像診断
肥満の検査法としては、画像診断法もあります。肥満に対してもっともよくおこなわれる画像診断としては、CTスキャンによる検査とMRI検査があげられます。
CTスキャンはコンピューター断層撮影法ともいわれ、人間の身体を輪切りにしたような映像を撮影することが可能な検査機器です。得られた画像から、体脂肪率などを測定することが可能となります。
MRIは磁気共鳴画像診断装置のことで、身体の任意の場所を、好きな角度からスライスしたような画像が得られる検査機器です。さまざまな疾患の早期発見に効果的な検査機器とされています。
腹囲の測定
病院での肥満検査としては、腹囲の測定もあげられます。腹囲の測定をおこなうことで、どれだけの内臓脂肪が付着しているのかを類推することが可能となります。
男性の場合、腹囲が85cmをオーバーすると内臓脂肪型の肥満とされます。女性の場合は、腹囲が90mをオーバーすると、内臓脂肪型の肥満とされます。ではなぜ、女性よりも一般的に体格の良い男性の方が、内臓脂肪型の判断基準が厳しいのでしょうか。
それは、女性の方が男性よりも皮下脂肪を蓄えやすいからです。皮下脂肪の厚さを加味して、女性の内臓脂肪型の肥満の判断基準は、男性よりも緩くなっているのです。この検査によって、内臓型の脂肪、すなわちメタボリックシンドロームかどうかが分かるということです。
検査法3~BMIの測定~
肥満かどうかを簡単に調べる方法として、BMIと呼ばれるものがあります。BMIは「ボディ・マス・インデックス」の頭文字をとったもので、肥満度を測定する世界共通の方法とされています。
内臓脂肪を正確に測定するのは医学的にもなかなか困難なため、BMIの算出と腹囲の測定によって、肥満度を決めるのが一般的となっています。
BMIの測定法
BMIは「体重(kg)÷身長(m)の2乗」によって求められます。たとえば、身長が160cmで体重が53kgの人の場合、[53÷(1.6×1.6)]=「20.7」がBMIということになります。
肥満の診断基準
では、BMIの数値がいくらを超えると肥満に分類されるのでしょうか。BMIの算出法は世界共通なのですが、BMIの数値がいくつから肥満とされるのかについては、国によって基準が異なっています。
肥満大国のアメリカの場合、BMIが30を超えると肥満に分類されることとなります。日本の場合は、BMIが25を超えると肥満に分類されることとなります。
なぜアメリカよりも日本の方がシビアな判断基準になっているかというと、日本人は体質的にBMIが25を超えたあたりから、さまざまな疾患を発症するリスクが高くなるとされているからです。
逆に、アメリカ人の場合、体質的にBMIが25を超えていても、そこまで健康的なリスクがないということです。分かりやすい例を挙げるなら、日本人には痩せている糖尿病患者さんがいますが、アメリカ人の糖尿病患者さんはものすごく太っています。
遺伝子ダイエットって意味があるの?
最近人気の遺伝子検査ですが、肥満に関しても遺伝子が関与しているという考え方から、先ほど紹介したような遺伝子検査がおこなわれています。その結果に基づいて遺伝子ダイエットがおこなわれることとなるのですが、本当に効果があるのでしょうか。
医学的には疑問
先ほど紹介した3つの遺伝子(β3アドレナリン受容体遺伝子、アンカップリングプロテイン遺伝子、Β2アドレナリン受容体遺伝子)が肥満にかかわっていることは、医学的にも証明されているようです。
ただ、肥満に関する遺伝子は60種類ほどあるとされており、3つの遺伝子だけで肥満の原因を決定づけるには、少し根拠が薄弱なのではないかという指摘があります。
ダイエットのモチベーションにはなる
遺伝子ダイエットが本当に効果的かどうかはともかく、遺伝子検査をおこなうことによって「自分に合ったダイエット法」が提示されることとなります。
そのほとんどが食事法に関することですが、遺伝子云々にかかわらず、ダイエットをするときに食事制限をおこなうのは必要なことです。
ただ、「あなたはこのタイプの肥満だからこうした方がいいですよ」と指導された方が、納得してダイエットに取り組むことが可能ですよね。そのため、遺伝子ダイエットは、ダイエットをするときのモチベーション作りには有効だと言えそうです。
ダイエットを成功させるためのコツ
巷にはさまざまなダイエット法がありますが、とんでもないダイエット法でもない限り、ほとんどのダイエットに効果が期待できます。ただ、ダイエットを成功させるためにはいくつかのコツを知っておくことが重要です。
活動代謝を高める
基礎代謝や新陳代謝という言葉なら聞いたことがあるという人でも、「活動代謝という言葉は聞いたことがない」という人もいらっしゃるのではないでしょうか。
活動代謝とは、1日の間の動作で消費されるエネルギー(カロリー)のことで、運動以外によって消費されるものを指します。たとえば、掃除をしたり洗濯をしたり、料理を作ったりするときに使われるエネルギー(カロリー)が活動代謝にあたります。
ダイエットをするときに、食事制限をしたり運動をしたりする人は多いと思いますが、活動代謝に気を付けている人はそれほどいないのではないでしょうか。
現代人の生活はとても便利で効率的になっていますが、便利で効率的ということは、身体を動かさなくても済むようになっているということでもあります。たとえば、お風呂を沸かすのも現代では指1本でできますよね。
電化製品にはリモコンが付いているので、エアコンの温度を調節するのも、テレビのチャンネルを変えるのも、その場を動かずに操作できます。
このように、現代人の活動代謝は40年前と比べると、60%程度にまで低下しているということです。ダイエットをするときに食事制限や運動をすることはもちろん大事なのですが、活動代謝を高めることも同じく重要なことなのです。
完璧主義はやめる
ダイエットを成功させたいのであれば、完璧主義はやめるようにしましょう。完璧主義に陥ってしまうと、するべきことができなかったときに、「自分はダメな人間だ」と自己否定することにつながりかねません。
「○○のような運動は△分やらなければ効果が上がらない」という説明を見ると、完璧主義者の人はそれだけやらないと「意味がない」と考えてしまいがちです。
意味がないと考えて全くやらないのと、効果的ではないにせよ数分間でもおこなうのと、長期的にみたらどちらが痩せられるか、答えるまでもありませんよね。
モチベーションを維持する
ダイエットを成功させるためには、モチベーションを維持することがもっとも重要です。そもそも何のためにダイエットを始めたのでしょうか。
「ダイエットして健康的になりたいから」「痩せてもてたいから」「腰痛を改善したいから」など、人によってその理由がさまざまだと思います。
そして、ダイエットには終わりがありません。「体重を○kgにしたら一応成功」という目的地はあったとしても、今度はそれを維持していかなければなりません。
そのため、モチベーションが維持できるよう、目標設定を明確にしましょう。そして、サボったからと言ってテンションを下げないように心がけましょう。
なんのためにダイエットするのか目標設定が重要
今回は少し目線を変えて、肥満の検査法やダイエットを成功させるためのコツについて解説しました。ダイエットは掃除と同じで、ここまでやったら終わりというゴールがありません。
そのため、なんのためにダイエットするのか、最初の目標設定が重要となります。いつまでも若々しく、キレイでいられるよう、ダイエットを続けていきたいものですね。