肥満の治療薬は使うべき?肥満治療薬の種類と効果と禁忌症

肥満の方が増えつつある中、肥満を改善する肥満薬が注目されています。その作用は、食欲を抑える、脂肪の吸収を抑えるなどで、肥満に悩んでいる方が試してみたくなるものばかり…。

でも一方で、副作用などの健康被害の報告もありますよね。実際のところ、肥満の治療薬ってどういう薬があって、何を注意したらいいのでしょうか。今回は、肥満の治療薬について詳しくご紹介していきます。

肥満治療薬とは

コップとたくさんの薬

肥満治療薬とは、肥満外来などで処方される薬のこと。薬の作用によって、ダイエットをサポートしてくれます。

ただし、肥満外来では、必ずしも薬を処方されるというわけではありません。栄養のバランスが取れた健康的な食べ方を指導してくれるほか、無理なく続けられる運動の指導や暴飲暴食をコントロールするための指導を受け、それでも必要な場合に薬物による療法が行われます。ですから、肥満外来ですぐに処方してくれる薬だと思わないようにしましょう。

肥満外来(病院)でもらえるお薬

肥満外来では、まず食事療法、運動療法、行動療法などによって、生活習慣の指導が行われます。それでも成果が見られない場合、投薬療法が使われます。

おもに処方されるのは、食欲を抑制する薬や脂肪の吸収を抑える薬です。また、漢方薬が処方されることもあります。こうした薬には、保険が提供される薬もありますが、未認可の薬もありますので、処方される際は事前に確認しておいたほうがいいですね。

保険の適用は?

肥満外来では、保険が適用されるケースとされないケースがあります。

一般的に、BMIが35を超える高度肥満の状態で、健康障害を伴う場合、肥満症という病気の治療に保険が適用される可能性が高いです。たとえば、高血圧、脂質異常症など、肥満に関連した疾患の恐れがある場合や、肥満が原因でひざ痛や腰痛、睡眠時に無呼吸症候群などの症状が現れるなどの場合です。

なお、医学的に問題がなければ、原則として自由診療となるため、保険は適用されません。当然、処方される薬も保険適用外の場合があります。病院によって適用される範囲が異なりますので、興味のある方は問い合わせて事前に確認してみましょう。

肥満治療薬の作用

肥満治療薬には、食欲を抑える作用の薬、脂肪の吸収を抑える薬があります。

食欲を抑える薬は、脳内の視床下部にある食欲中枢を抑制し、満腹中枢を刺激して、満腹感を感じさせます。ついたくさん食べてしまう方、食欲が抑えられない方などには効果が期待できますね。

脂肪の吸収を抑える薬は、食事をしたときに服用し、腸での脂肪の吸収を抑える働きをします。食事をしなかったときなどは服用する必要はありませんが、油っこい料理をよく食べる方などは効果が見られるかもしれません。

肥満治療薬の種類

メジャーと薬

肥満治療薬では、食欲を抑える作用のあるサノレックス(薬剤名はマジンドール)、脂肪の吸収を抑える働きをするゼニカル(薬剤名はオルリスタット)がよく知られています。

サノレックスは一定の条件を満たしていれば保険が適用される薬ですが、ゼニカルは、現在までのところ日本では未認可のため、自由診療でなければ処方されません。詳しく見ていきましょう。

サノレックス

サノレックスは、1992年に厚生労働省が承認した薬で、薬剤名称をマジンドールと言います。BMI35以上の肥満症の方に対して、食事療法や運動療法によって効果が得られない場合、補助的に使われます。最長3カ月まで服用でき、およそ2カ月から2カ月半で耐性ができてしまいます。

サノレックスの効果

肥満度が70%以上、またはBMIが35以上の高度肥満症の方で、食事療法や運動療法の効果が不十分な場合に処方されます。

服用すると、脳の視床下部にある食欲調整中枢に働いて食欲を抑制し、満腹中枢を刺激することで食欲が抑制されます。そのため、空腹を感じることが少なくなり、我慢しなくても食事の量を減らしていくことができるようになります。

サノレックスの副作用

最も多く報告されている副作用は口渇感です。また、便秘、嘔吐や悪心、睡眠障害、胃部不快感なども報告されています。

また、サノレックスはアンフェタミン誘導体に属します。アンフェタミンには身体依存の副作用があるため、サノレックスも同じように身体依存の副作用が考えられます。しかし、実際には、服用開始後、2カ月から2カ月半で薬の効果がなくなってくるため、身体依存はないと考えられています。

サノレックスの禁忌

サノレックスの成分に対して過敏症の既往歴のある患者、緑内障の患者、重症の新生涯のある患者、重症の膵障害のある患者、重症の腎・肝障害のある患者、重症の高血圧症の患者、脳血管障害のある患者、不安・抑うつ・以上興奮状態の患者、統合失調症等の精神障害のある患者、薬物・アルコール乱用歴のある患者、MAO阻害薬投与中または投与中止後2週間以内の患者、妊娠または妊娠の可能性のある方、授乳中の方、小児の方は使用できません。

サノレックスの料金

サノレックスは、保険適用外の場合、1錠500~1000円ぐらいです。1日1錠の服用のため、1カ月に1万5000円~3万円となるため、かなりの負担となります。

一方、保険適用の場合、1錠あたり50~100円程度です。さほど負担ではありませんので、保険が適用されるかどうかは非常に大きいと言えます。

ゼニカル

ゼニカル(Xenical)は、スイスのエフ・ホフマン・ラ・ロシュ社から発売されている肥満治療薬。薬剤名はオルリスタットで、イギリスのグラクソ・スミスクライン社からアライまたはアリ(Alli)の商品名で発売されています。

アメリカ食品医薬品局(FDA)に認可された薬ですが、日本では未認可のため、保険適応の薬ではなく、自由診療で医師によって処方されます。

ゼニカルの効果

BMI30以上か、BMI27以上で高血圧、糖尿病などの症状を伴う方が、40mgのゼニカルを1日3回(1日量120mg)、食事中あるいは食事の前後1時間以内に服用すると、食事によって摂取された脂肪分を分解する酵素であるリパーゼの働きが止められ、消化管からの脂肪吸収が30%前後、抑えられます。

だからといって、脂肪分をたくさん摂取してもいいというわけではなく、脂肪からの摂取エネルギーを30%以下にした食生活で服用することが大切です。

ゼニカルの副作用

おもに便意が急速するほか、油・脂肪便、便失禁、おならなど、便が柔らかくなります。また、服用すると脂溶性ビタミンやベータカロチンの吸収も防いでしまうことから、ビタミンA・D・E・Kやベータカロチンが不足してしまいます。

ゼニカルを服用中はビタミン剤を服用することが勧められます。なお、非常にまれですが、肝臓や腎臓の障害が起こるリスクがあります。

ゼニカルの禁忌

オルリスタットにアレルギーのある方、妊娠・授乳中の方、吸収不良症候群、胆汁うっ滞症、肝臓や腎臓の病気の方は使用できません。また、抗てんかん薬、ワーファリン、シクロスポリンなど、飲み合わせに注意が必要な薬があるため、ほかの薬を服用中の方はかならず医師に相談すること。

ゼニカルの料金

ゼニカルは保険適用外のため、1錠およそ200~500円程度、1日600~1500円、1カ月で18.000~45.000円とかなり高額になります。

サプリメントとの違い

大量のサプリメントが売っているドラックストア

サプリメントは栄養補助食品のひとつで、ビタミンやミネラルなどの栄養を補助するものやハーブなどの成分による働きを有する食品です。健康補助食品とも呼ばれていますよね。

一方、医薬品は、病気の予防や治療を目的とし、その効果や効能、用量や分量、品質や安全性などがしっかりと調査され、さらに国や行政から正式に承諾を受けています。ですから、たとえば同じビタミン剤であっても、サプリメントのビタミン剤と医薬品のビタミン剤では、その効果や効能、処方や作用がまったく異なります。

効果の違い

ダイエットサプリと肥満治療薬の効果の違いは、しっかりとした研究によって裏付けされた効果があるかどうかということですよね。また、安全性の面においても認められているため、用量や用法を間違えない限り、心配はありません。

一方、食欲を抑制する効果が期待できるサプリメントを見かけますが、期待される効果が見られるかどうかはわかりません。

また、薬ではなく食品であるとはいえ、成分の働きによって何らかの副作用が起こる可能性もありますので、安易に服用するのは危険です。しっかりと内容を確認した上で摂取するかどうかを決めましょう。

処方の違い

肥満治療薬は、医師によって処方されます。この場合、基本的には高度肥満症患者の治療のための薬であり、患者のために処方されます。

一方、ダイエットサプリメントは、ドラッグストアやネットなどで自由に入手することができます。ただし、自由であると同時に、自己責任が問われます。栄養補助食品とはいえ、成分による働きを有する食品であるため、使用の仕方には注意が必要です。

作用の違い

医薬品とサプリメントの大きな違いは作用の違いです。医薬品は、その症状を改善するなどの目的のため、それに必要な量の成分が含まれています。しかも、その量を服用しても問題がないという臨床研究での実証済みであるため、安心して使用できます。

しかし、サプリメントは、医薬品ではないため、効果をうたうことができません。しかも、臨床研究をしているかどうかも定かではありません。そのため、摂取してもどのような効果が見られるのか、はっきりとわからないのです。

したがって、「肥満を治療する」など、目的がはっきりしている場合は、肥満外来などで医師に相談し、医薬品を服用した方が安心して効果が得られます。

肥満治療薬の今後について

肥満治療について説明している医者と女性患者

厚生労働省による「国民健康・栄養調査」(2016年)によりますと、BNI25以上の肥満者の割合は、男性およそ30%、女性およそ20%で、この10年間で見ると、男性は変化がないものの、女性は減少傾向にあります。

しかし、肥満と切っても切れない糖尿病について、「糖尿病が強く疑われる者」と「糖尿病の可能性を否定できない者」の推計人数は2.000万人という結果が同調査で明らかとなりました。

こうした状況下、国内各製薬会社をはじめ、研究機関などで、肥満に関する研究、肥満治療薬の開発や実用化に向けての動きがあります。今後のニュースに期待が高まりますね。

世界的には、2012年にアメリカの食品医薬品局(FDA)が承認のハードルを低くしたことで肥満治療薬が次々と販売されるようになって現在に至ります。日本では未認可の肥満治療薬をネットなどで購入する方も増える一方、健康被害なども深刻化しています。

肥満予備軍は2,000万人

肥満が原因で引き起こされる糖尿病。他人事ではないと思われていらっしゃる中高年の方は多いはずではないでしょうか。実際、厚生労働省による「国民健康・栄養調査」(2016年)では、「糖尿病が強く疑われる者」は年々増えており、2016年現在、1.000万人となりました。「糖尿病の可能性を否定できない者」の推計人数は、2007年をピークに若干減っているものの、両者の合計は2.000万人という結果となりました。

この2000万人のうち、男女とも60歳以降が全体の50%以上を占めています。年齢を重ねるとともに、肥満の方は生活習慣を改め、糖尿病にならないように気をつけなければなりません。

リスクも大きい肥満治療薬

昨年2017年には、肥満をつかさどる脳内メカニズムを発見したという嬉しいニュースがありました。このニュースからもわかるように、肥満の原因となる食欲は、脳のメカニズムによるものです。つまり、食欲を抑える医薬品は、当然、脳に働きます。

したがって、薬を服用することで、さまざまなリスクも伴います。実際、無承認無許可の肥満治療薬による健康被害はこれまで何件も発表されています。

昨今のダイエットブームの中、肥満治療薬にも関心が高まっていますが、安易に治療薬を購入したり、服用したりすることはリスクも伴います。このことは絶対に忘れないようにしたいですね。

木曽生物化学研究所プレスリリース「肥満をつかさどる脳内メカニズムを発見」

肥満外来への受診がおすすめ

そうは言っても現状をどうにかしたいとお思いの方、オススメしたいのが肥満外来への受診です。そもそもアナタは肥満症なのか、現在の食生活は正しいのか間違っているのか、どのような改善が望まれるのかなど、日々のダイエットで気になることを専門的な立場で具体的に示してくれます。

気になる方は事前に問い合わせてみましょう。もしかしたら、これまでどうしても成功できなかったアナタのダイエットを手伝ってくれるいい出会いがあるかもしれませんよ。

肥満治療薬は医師に相談を

肥満治療薬は、肥満外来で処方されます。よく知られた治療薬に、サノレックス、ゼニカルがあります。サプリメントとは違い、はっきりとした効果が見られ、安心して服用できますが、肥満治療薬は現代的な問題もいくつか抱えています。自己判断せず、肥満外来で専門家に相談するようにしましょう。