現代日本人には、肥満の人が増えてきているとされます。では、体脂肪率が何%になると、肥満とされるのでしょう。また、肥満してしまう原因は何なのでしょうか。今回は、肥満の原因とその対処法に迫ります。
現代の日本は、食糧を取り巻く環境が非常に良好なため、いつでもどこでも好きなものを食べることができます。それは、一方ではメリットなるのですが、他方ではデメリットともなります。デメリットの最たるものが、肥満の問題です。今回の記事では、肥満になってしまう原因を紹介するとともに、その対処法についても解説したいと思います。
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肥満の定義とは?
肥満の原因やその対処法について説明する前に、そもそも肥満とはどのようなことを指すのかについて解説しておきたいと思います。はたして肥満は病気なのでしょうか?
太っている状態のこと
肥満とは何かを一言でいうと、太っている状態のことを言います。そして、肥満状態であるとされる人には、体脂肪がたくさん付着しています。ただ、体脂肪は簡単に計ることができないため、後述するBMIという指標が用いられることとなります。
肥満症との違い
肥満という言葉と肥満症という言葉がありますが、両者は似ているようで明確に異なるものです。簡単に言うと、肥満は病気ではなく、肥満症は減量を必要とする疾患、もしくは健康障害のことを言います。
肥満症にともなう疾患の種類
肥満症になると、さまざまな病気になるリスクが上昇します。肥満症は、高血圧、脂質異常症、糖尿病とあわせて「死の四重奏」と呼ばれており、決して侮ってはいけないのです。では、肥満症にともなう疾患にはどのようなものがあるのでしょう。
脂肪細胞の量的異常の場合
肥満症にともなう疾患は、脂肪が蓄積することによって起こります。ただ、内臓脂肪が蓄積して起こるタイプの疾患と、皮下脂肪が蓄積して起こるタイプの疾患とがあります。
皮下脂肪が蓄積した場合、脂肪細胞の量的異常が見られ、何らかの疾患へと至ります。たとえば、睡眠時無呼吸症候群や肥満低換気症候群などがそれに当たります。
また、整形外科的な疾患を発するリスクも高くなるとされています。太ると膝や腰を痛めやすいなどといわれますが、それは皮下脂肪が蓄積することによって起こるという訳なのです。
脂肪細胞の質的異常の場合
脂肪細胞の質的異常というのは、内臓脂肪がたくさん蓄積しているようなケースを指します。内臓脂肪が蓄積した場合、脂質異常症や高血圧といった生活習慣病に至る可能性があります。
また、高尿酸結晶や痛風、脳梗塞や冠動脈の疾患、脂肪肝にともなう肝機能障害、月経異常や妊娠合併症などのリスクも上昇します。内臓脂肪であれ皮下脂肪であれ、あまりため過ぎるのはよくないということですね。
肥満の基準について
先ほど少しふれましたが、脂肪の量を測定するのはなかなか困難だということです。家庭用のヘルスメーターでも体脂肪率が計れますが、メーカーによって差が出るなどといったこともあります。そこで、一般的にはBMIと呼ばれる指標が用いられることとなります。
BMI指数
BMIとは「Body Mass Index」の頭文字をとったもので、体脂肪がどれくらい蓄積しているかの指標となるものです。計算法は、身長(m)の2乗を体重(kg)で割ったものとなります。では、どれくらいの数値がみられると、肥満ということになるのでしょうか。
BMI測定
肥満度合
WHOによる肥満の定義と、日本肥満学会が定める肥満の定義はやや異なっているようです。というのも、日本人と海外の人とでは体質が異なるからです。では、日本では肥満をどのように定義しているのでしょう。
1度の肥満
肥満にも程度がありますが、1度の肥満とはBMIの数値が25以上、30以下の肥満を指します。このレベルにある肥満のことを、軽度の肥満ということがあります。
ちなみに、WHOでは肥満の基準をBMI30以上としています。ただ、日本人の場合、BMIが25を超えると、高血圧や脂質異常症などのリスクが高くなることから、BMI25以上から注意を喚起しているのです。
2度の肥満
2度の肥満とは、BMIが30以上で35以下の肥満を指します。このレベルにある肥満のことを、中等度の肥満などということもあります。
3度の肥満
3度の肥満は、BMIが35以上で40以下の肥満を指します。BMIが35を超えると高度の肥満と呼ばれることとなり、直ちに減量することが重要となります。
4度の肥満
4度の肥満とは、BMIが40以上の肥満を指します。たとえば、身長が160cmでBMIが40の場合、体重がおよそ102kgということになります。
普通体重はどれくらい?
BMIが高いのも問題ですが、低すぎるのも問題とされます。では、BMI的に普通の体重とはどれくらいなのでしょうか。日本では、普通体重をBMI18.5以上、25未満と定めています。BMIが18.5以下になると、低体重に分類されることとなります。
肥満になる原因とは?
肥満の定義や分類については、おおよそのところを理解して頂けたことと思います。では次に、肥満になってしまうのはなぜなのか、その原因について見ていきたいと思います。
運動不足
肥満になってしまう原因の1つとしては、運動不足があげられます。毎日5kmも10kmも走っているのに、それでも肥満しているという人は、あまりいないのではないかと思います。
運動不足になると、消費カロリーが減少することとなるので、肥満になるリスクが上昇します。それでも若いうちは基礎代謝量が多いので何とかなることもありますが、20代半ばを過ぎて基礎代謝量が減少してくると、これまでと同じ生活をしていると太ることとなります。
食べ過ぎ
肥満になるもっとも分かりやすい原因が食べすぎです。ダイエットの基本が「消費カロリー>摂取カロリー」の状態にすることであることからも分かるように、摂取カロリーが増えれば当然、太るリスクが高くなるわけです。
また、近年では太ってしまう原因として、糖質の過剰摂取が注目されるようになってきています。「糖質制限ダイエット」などというダイエット法を目にしたことがある、という人もいらっしゃるのではないでしょうか。
糖質(炭水化物)は私たちの脳や身体が活動する際のエネルギー源となる物質なので、ある程度の摂取は欠かせません。糖質は体内でインスリンによって分解され、エネルギーへと転換されるのです。
ところが、糖質の摂取量があまりにも多くなってしまうと、インスリンによる分解が追い付かなくなり、それが脂肪として細胞内に蓄えられることとなるのです。そのため、食べすぎはもちろんのこと、糖質の摂取量に気をつけることも重要です。
筋力の低下
肥満になってしまう原因としては、筋力の低下もあげられます。なぜなら、筋肉量は基礎代謝と密接にかかわっているからです。基礎代謝とは、私たちが何もしていなくても、1日のうちに消費されるエネルギー(カロリー)のことを言います。
呼吸をするのにも、体温を発生させるのにも、食べ物の消化・吸収にもすべてエネルギーが必要となるのです。1日の総消費カロリーのうち、基礎代謝だけで6割から7割を占めるとされています。
さらに、基礎代謝のうち、22%程度を筋肉の活動が占めているということです。筋肉には関節を動かす働きだけでなく、体温を発生させたり、血液循環を助けたりする働きもあります。
そのため、筋力が低下してしまうと基礎代謝量も減少することとなり、1日の間で消費されるカロリーも減ってしまうのです。その結果として、太りやすい体質になってしまうのです。
肥満への対処法その1・運動をする
運動不足が原因で肥満になっているような場合は、運動をするというのがもっとも簡単、かつ分かりやすい対処法となります。では、どのような運動をおこなえばよいのでしょう。
有酸素運動
脂肪を燃焼させるためには、有酸素運動と呼ばれるタイプの運動をおこなうのが効果的です。ランニングやジョギング、ウォーキングなどをおこなうとよいでしょう。
有酸素運動をおこなうと、まず血液中の糖質がエネルギーとして用いられ、次に体脂肪がエネルギーとして用いられることとなります。ただ、体脂肪が燃焼するまでには、運動開始から20分以上経過する必要があるとされています。せっかく有酸素運動をするのであれば、20分以上おこなうようにしてくださいね。
活動代謝を上げる
脂肪を燃焼させるためには、活動代謝を上げることも重要となります。活動代謝とは、運動をする以外の場面で、日常生活の中で身体を動かす際に消費するカロリーのことを言います。
たとえば、掃除をしたり洗濯をしたりするときにもカロリーを消費しますし、買い物にでかけたり仕事に行ったりするときにもカロリーを消費します。
活動代謝を上げるためには、面倒くさがらずに立ったり座ったり、歩いたりといった動作をおこなうことです。まずは家じゅうのリモコンを捨てましょう…というのは冗談ですが、そのような意識の持ち方が重要だということです。
肥満への対処法その2・食習慣の改善
食べすぎが原因で肥満になっているような場合は、食習慣を改善することが必要となります。では、どのように食習慣を見直すとよいのでしょう。
糖質の摂取量を減らす
食習慣のもっとも簡単な改善法は、糖質の摂取量を減らすということです。もともと甘いものが好きだという人は、おやつを洋菓子ではなく和菓子にしたり、糖質の含有量が少ないものに変更したりするとよいでしょう。
ご飯やパン、麺類といった主食が好きな方は、玄米や雑穀米にするとか、糖質の含有量が低い麺類にするなどといった工夫をするとよいでしょう。
食べ方を変える
食習慣の改善法としては、食べ方を変更するという手もあげられます。たとえば、食事の最初に野菜を食べるという方法があります。「ベジファーストダイエット」などというダイエット法を目にしたことがある人もいらっしゃるのではないでしょうか。
食事について詳しく知りたい方はこちらも併せてお読みいただくと上手に食事のコントロールができます。
野菜に含まれている食物繊維には、不溶性の食物繊維と水溶性の食物繊維の2種類がありますが、そのいずれもがダイエットをする際には効力を発揮してくれます。
不溶性の食物繊維には、人間の持つ消化酵素でも溶かすことができないという特徴があります。また、保湿性が高く、体内の水分を吸収しながら、消化管内をゆっくりと進んでいきます。
不溶性の食物繊維が胃の中でとどまり膨張することによって、満腹感が得られやすくなります。また、腸内で膨張することで腸管を刺激し、便秘の解消効果も得られます。
水溶性の食物繊維には、糖質を包み込んで腸内に吸収されにくくするという働きがあります。そのため、糖質を摂取する前に、水溶性の食物繊維を摂取しておくとよいという訳なのです。
肥満への対処法その3・筋力アップする
筋力の低下が原因で肥満になっているような場合は、筋力アップに取り組むとよいでしょう。では、どのような方法で筋力アップをおこなうといいのでしょうか。
筋トレをおこなう
筋力アップをしたいのであれば、筋トレをおこなうというのがもっとも単純かつ、効果的な方法となります。スポーツジムでウエイトトレーニングをおこなうのもよいでしょうし、自宅で腕立て伏せやダンベルトレーニングをおこなうのもよいでしょう。
ただし、筋肉は一朝一夕に付けられるものではないということを忘れないようにしてください。筋肉をつける専門家であるボディビルダーであっても、1年間につけられる筋肉はせいぜい1kgか2kgということです。
また、逆の意味で考えると、ムキムキになどなりたくてもそうそうなることはできないということでもあります。そのため、安心して筋トレをおこなって、身体を引き締めてくださいね。
日常のルーティンを変える
筋力アップはそう簡単にできるものではないので、長い目で取り組むことが重要となります。そのため、日常のルーティンに、筋肉を鍛える行動をとりいれてあげましょう。といっても、それほどむずかしいことではありません。
たとえば、いつもエレベーターやエスカレーターを使っているなら、階段を使うようにするという手があります。また、リュックサックや鞄にちょっとしたおもりを入れておくのもよいでしょう。
日頃の生活を見直してみましょう
肥満と体脂肪率との関係、そして肥満への対処法について見てきましたが、いかがだったでしょうか。脂肪の中でも、皮下脂肪には「付きにくいものの落ちにくい」という性質があります。そのため、日頃から少しでも構わないので、身体を動かしたり糖質の摂取量を減らしたりしてくださいね。