肥満とはよく聞く言葉ではありますが、肥満外来や肥満の治療について知っている方って少ないと思います。少しでも肥満を気にしている方の中には、すでに病院の力が必要な場合もあります。肥満の治療方法と肥満外来について詳しくご紹介します。
CONTENTS
肥満治療とは
肥満そのものは病気ではありませんが、肥満レベルが高度になったり、他にも生活習慣病を合併している場合には、治療を受けることも必要になってきます。肥満治療の実態についてご紹介します。
食事療法
肥満の元になっているのは、日々の食生活であることがほとんどです。肥満の治療において、最初に必要になるのは食事の改善であり、避けて通ることはできません。
食事療法の基本は次の通りです。
- 消費エネルギーよりも摂取エネルギーが小さくなるようにカロリー制限する
- 医師から摂取エネルギーを指示された場合には、それに従ったエネルギー量を守る
- 各栄養素のバランスはきちんと補うことが必要
- 毎食に「主食・主菜・副菜」を取り揃えて、バランスよくたべる。
- 主食の炭水化物は制限しすぎないで、毎食量を決めてある程度食べる。
- 良質なタンパク質を含む魚、肉、卵類は欠かさず毎食食べる。
- ビタミン、ミネラル、食物繊維を含む野菜、海藻類なども積極的に食べる。
- エネルギー量の少ない、こんにゃくやキノコ、海藻類を活用する。
- 脂の多い炒め物や揚げ物よりも、煮物や焼くだけなどシンプルな料理法を使う。
日本人ならば昔ながらの和定食をイメージして食べるとバランスが良くなります。彩りも考えながら盛り付けていくと、栄養バランスもアップします。
自分だけの努力では限界があるかもしれませんが、病院では医師や栄養士などからの指導を受けることもできます。他の人の手を借りて、無理なく食事制限を取り入れていきましょう。
運動療法
食事次いで欠かせないのが、運動療法です。運動療法というと何か特別なことをしそうに思えますが、単に運動を取り入れていくという事です。
肥満の解消におすすめなのは、酸素を取り入れながらも少しきついと感じるような中程度の強度の有酸素運動です。ウォーキングやゆるめのジョギング、サイクリングや水泳などがおすすめです。
また、筋トレも筋肉量を増やす事で燃焼しやすい体を作れるため、ある程度取り入れると効果的。
ただし、運動については体の状態によっては危険なこともあるため、必ず医師に運動しても良いか確認するようにしましょう。また、運動だけで痩せることは大変です。かならず食事療法も併せて行いましょう。
行動療法
行動療法というのは、いわゆる「クセ」を矯正するために行われるものです。肥満の患者さんは、「別に食べてないのに太る」とか話すことがあります。
しかし、実態をのぞいてみると、普通の人では信じられないくらい食べていたり、常識から逸脱しているようなケースも少なくありません。
行動療法とは、日常行動のどんなクセが肥満に結びついているのかを明らかにして、感覚レベルで認知のズレを矯正していく方法です。
本人が無自覚に行なっていることを可視化するために、食事日記や行動評価、体重のグラフ化などを行なって、本人の自覚を高めていきます。本人にやる気を沸かせるといった意味もあり、根本的な治療につながります。
投薬療法
食事、運動、行動療法などを行なっても、肥満が改善されないという場合には、薬物療法を組み合わせることもあります。お薬を使って痩せるということです。
日本においては、「マジンドール」「セチリスタット」のみしか使用することができず、保険適応も必ず通るものではありません。太ったらお薬を飲んで痩せようと安易に考えることは避けましょう。
このような肥満治療薬は、太った脂肪細胞を減らすわけではなく、食欲を抑えて減量させる効果があります。ただし副作用の問題もあり、長い期間使えるものではありません。基本的にはあくまでも治療の補助として使うものと考えておきましょう。
外科療法
最後の手段として登場するのが、外科療法です。美容外科で行われる脂肪吸引とは別に、肥満の治療では、胃を小さくさせる手術が行われることがあります。
胃を小さくすることで、摂取カロリーを小さくすることができます。また、消化ホルモンの分泌にも影響があり、代謝などが改善されることもあります。
ただし手術が受けられるのは、他の治療を受けても改善が得られないケースで、厳しい制限があります。
肥満治療で病院に行く前に
肥満の治療を受けるために病院に行こうかなと考える前に、まずは自分の肥満の状態を確認しておきましょう。
BMI測定
肥満かどうかは、体重だけではなく身長の要素も加味して判断することが必要です。そこで役に立つのがBMIという指標になります。
BMI(Body Mass Index)=「体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)」
BMIが25以上になると肥満と判定されます。ただし、25以上になったからすぐに治療が必要というわけではありません。
また、BMIが35を超えると高度肥満と判定され、何らかの治療が必要な状況になります。
肥満外来ではどんなことをするの
それでは、肥満外来ではどのようなことをするのでしょうか?診断から費用に関してまとめてみました。これから受診しようと思っている方は参考にしてみてください。
肥満か肥満症の診断
肥満外来では、肥満か肥満症なのか区別するためにも、いくつかの検査を行います。
「肥満症」とは肥満に起因、関連する健康障害を有するか、そうした健康障害が予測される内臓脂肪が過剰に蓄積した場合で、減量治療を必要とする状態のことです。
引用元:http://himan.jp/column/what/
肥満は病気ではありませんが、肥満症になるとれっきとした病気ということになります。肥満症かどうかの診断には、複雑な診断基準があり、そのフローチャートに従って判断されます。
鍵となるのが、高血圧、糖尿病、脂質異常症、などの合併症があるかどうかです。その判定に必要な検査なども併せて実施することがあります。
ダイエット入院か外来へ通う
肥満外来では、入院治療するか外来で治療するかの選択があります。
ダイエット入院
治療のために入院する「ダイエット入院」は、その期間にダイエットを成功させるためだけではなく、教育のために導入されることもあります。
何泊かの入院の間では、糖質制限食による治療や、運動療法、行動療法などに関わる講義などを聞くこともあります。家ではどうしても甘えてしまって何も行動ができないような場合には、ダイエット入院が効果的です。
医師の管理のもとで、厳しい食事制限などを行っていくため、体調不良などに陥ったときにもすぐにみてもらえる安心感があります。
また、病院によって心療内科の医師によるカウンセリングなどを受けることもできます。精神的に食べ過ぎてしまっているような方も多いので、心療内科的なアプローチも効果的です。
入院期間は病院のプログラムによって異なり、5泊程度の短いものから、12泊程度まで長い期間のものもあります。自分の肥満の状況にあわせて選ぶと良いでしょう。
外来へ通う
外来でも治療を受けることはできます。入院後に外来でフォローするケースもあれば、最初から最後まで外来治療で終わる場合もあるようです。外来では、食事指導や行動療法などを受けて、家でそれを実践していくことになります。
また、薬物療法を使う場合にも、外来治療で通院しながら服用することができます。
ただし、外来の場合には、いかに自宅で自分の意思を貫いて、頑張れるかにかかってきます。意思が弱くて続かなそう、食欲を我慢できない、というような方は一度でも入院治療を受けると、その後の外来治療も成果が得られやすくなります。
チームで治療する
肥満の治療には、お医者さんの力が必要ですが、他の医療者も多く関わってチームで治療を進めていきます。
たとえば、生活のフォローに看護師が協力したり、栄養指導には栄養士、服薬管理には薬剤師など、さまざまなメンバーが参加します。
お医者さんにはちょっと話しにくいというようなことも、他の医療従事者には伝えられることもあります。いろいろな方の協力を得ながらダイエットを成功させましょう。
気になる費用、保険は使える?
費用については病院によって差があるため、参考価格となりますが概ね次のような費用がかかります。
外来診療時:5000円〜10000円程度※検査や投薬代によっては10000円以上することもある
入院時:各保険診療の高額診療費の範囲内※ベッド差額、食事代、洗濯代なども別途必要になる
個室代によっても差が生まれますが、1週間から2週間程度の入院で10万円前後、またはそれ以上はかかることがあります。
また、保険適応の効かないダイエット治療になると、すべて全額自己負担になるため、費用は高額になります。急激な効果が得られるような薬物療法や脂肪吸引では、保険が適応にならないケースも多いため、あらかじめ病院に相談してからの方が安心です。
肥満治療にや肥満外来についてのQA
肥満治療を受けるときや、肥満外来に行くか迷っているあなたが気になっていることがあれば、ここで解決しておきましょう。
肥満外来が近くにない場合はどうするの?
肥満外来はまだ全国的に見ると多いわけではありませんので、近くにはないこともあると思います。肥満外来があるところまで行ければそれがベストではありますが、難しい場合には通える範囲の病院で治療をうけましょう。肥満外来と標榜していなくても、内分泌外来などでも相談することはできます。
通うのが難しい場所にあると、続けて通院することを挫折しかねません。自分が通える範囲の病院をみつけて通うことが大切です。
肥満遺伝子キットとは?
どうして頑張っているのに痩せないんだろう・・そう思っている方は、自分の体質を遺伝子レベルでチェックしてみると良いかもしれません。
最近は、肥満遺伝子を家庭において自分で検査することができるキットもあるんです。口の内側の粘膜細胞を採取して、機関に送ります。その後、検査結果が送られてくるという流れです。
結果には、遺伝的に確立の高い体質判定や、その場合におけるアドバイスなどをもらうことができます。メーカーによっては体質にあったサプリメントをオーダーできることもあるので、いろいろと比べてみると良いでしょう。
病院に任せたら絶対痩せる?
病院に行けば特に頑張らなくてもお医者さんの助けを借りて痩せられる、とそう思っていると失敗してしまいます。病院任せでは簡単には痩せられません。
病院では教育や協力はしてくれますが、頑張るのは本人です。厳しいようですが、自分で努力しなければ痩せることはできないのです。
それでも、自分だけで自己流でダイエットすると失敗したり挫折しやすいので、病院で医学的な専門知識を活かしたダイエットに取り組むことはとても有意義だといえます。どうしても痩せなければならないという方は、一度肥満の相談をしてみることをおすすめします。
肥満外来の選び方は?
肥満外来は次のようなポイントを吟味して選ぶと良いでしょう。
- ダイエット法で選ぶ(運動療法、食事療法がメインなのか、薬物療法、脂肪吸引など)
- 予算で選ぶ(保険適応になる肥満外来、脂肪吸引などを受けられるが自費治療となる美容外科、痩身クリニックなど)
- 通いやすい立地である(自宅から近い、駅から近いなど)
- 結果を出している病院である
また、プライバシーに配慮されているか、メールなどのサポートがあるかなどの違いもあるので、よく調べてから選ぶようにしましょう。
肥満治療試してみては?
病院における肥満治療についてお話ししてきましたが、参考になったでしょうか?肥満そのものは病気ではありませんが、高度な肥満やメタボ、生活習慣病などを抱えている場合には病気として治療することが必要になります。
病院に通うことで、結果も出やすくなるだけでなく、モチベーションを上げることにもつながります。自分にあった先生や病院を選んで、ぜひ肥満治療を試してみてください。