肥満で入院する場合の2つの治療法と治療で重要なこと3つ

肥満は気を抜くと誰でもなっておかしくないことです。日々に生活習慣から起こることが多いので自分でコントロールしなければなりません。

現在では肥満になったことで入院することもあるそうです。今回は肥満患者が入院した場合についてそして入院するとどんなこと治療ができるのか詳しくご紹介致します。

肥満で入院となる場合の診断

女性医者

最近は食生活の乱れや運動不足などから、肥満になる方が増えています。肥満は、それ自体は病気ではありませんが、メタボリックシンドローム、糖尿病、脂質異常症、高血圧などの生活習慣病になる可能性が増加するため危険な予備軍となります。

そうならないために肥満になった場合には、ダイエットが必要になってきますが、その方法として入院するプログラムが病院などで実施されています。

ただ、入院の前にはしっかりとした肥満診断が必要になりますのでまずはその内容をチェックしましょう。

診断1・BMI値の測定

肥満を診断する基準として、今、一般的になっているのがBMIです。同じ体重でも、身長によってその判断が異なってくることを肥満度に反映して考える方式で、以下の計算方法で算出します。

「体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)」

BMIは、「ボディ・マス指数」、「体格指数」という名称もあり、肥満度を表す指標として用いられており、現在では世界共通の計算方法として国際的なスタンダードになってきています。

肥満度の分類については、以下の日本肥満学会による肥満度判定基準をもちいて分類しています。

男女による区別はせず、BMI25以上が「肥満」と判定され、BMI18.5以上25未満が「普通体重」とされています。

さらにBMI35以上になると「高度肥満」と診断され、治療の必要性が高くなってくると考えられています。

<日本肥満学会の肥満度判定基準>

BMI 肥満度判定
18.5未満 低体重
18.5~25未満 普通体重
25~30未満 肥満(1度)
30~35未満 肥満(2度)
35~40未満 肥満(3度)
40以上 肥満(4度)

診断2・腹囲の測定

肥満の診断には、腹囲の測定も行います。この場合にはメタボリックシンドロームであるかを診断することに主に用います。腹囲の測定は、以下の段取りで行います。

  1. 上半身の服を脱ぎ、まっすぐ立ちます。
  2. お腹をふくらましたり、へこませたりせずに、軽く呼吸して、リラックスしている状態にします。
  3. おへその位置から、肋骨と腰骨の中間地点あたりを図ります。

スクリーニング検査

まずは腹囲を測定し、その数字によりふるい分けを行います。男性は85cm以上、女性は90cm以上である場合に、メタボリックシンドロームが疑われます。

さらに、以下の3つの項目の中で2つ以上に該当するとメタボリックシンドロームになります。

  1. 血糖・・・空腹時血糖値が110mg/dl以上
  2. 脂質・・・中性脂肪値が150mg/dl以上、HDLコレステロール値が40mg/dl未満、またはその両方
  3. 血圧・・・収縮期血圧が130mmHg以上か、拡張期血圧が85mmHg以上またはその両方に当てはまる。

CTI撮影

メタボリックシンドロームの診断には、CTI撮影(CT検査)でも可能であり、念入りにチェックするには腹囲を測るよりもこちらの方が正確な診断を行うことができます。

腹部のCTI撮影を行い、内臓脂肪面性が100cm2だとメタボリックシンドロームを疑い、それプラス上記の3つの血糖、脂質、血圧の中から2つが該当するとメタボリックシンドロームとなります。

診断3・肥満+健康障害か内臓脂肪の蓄積がある(肥満症の判断)

肥満症の診断には、ステップがあります。太っているからといっていきなり肥満症というわけではありません。まずは、肥満であるかどうかBMIから判断します。

そこでBMI25以上で肥満だった場合に、上でも解説したような健康障害があるかどうかを判定し、もしも当てはまる場合には、肥満症となります。

さらに、健康障害があって、腹部測定によって内臓脂肪面積が100cm2以上ならば、内臓脂肪型肥満の肥満症となります。

高度肥満の方

肥満度判定のBMIにおいて35以上となり、かつ、健康障害があり、腹部測定によって内臓脂肪面積が100cm2以上だと、高度肥満の肥満症となります。

肥満で入院の理由1・ダイエット入院

点滴

肥満で入院する場合には、ダイエット入院と肥満外科手術による2つの入院があります。まずは、入院することで、食事制限や運動などの基礎知識を学びながらダイエットしていく、ダイエット入院から紹介していきます。

ダイエット入院とは

ダイエット入院は、通常の自分だけで行うダイエットに比べると、より減量効果のあるダイエット方法だと考えられています。

治療のために入院するのですが、その期間にダイエットを成功させることももちろんのこと、ダイエットのための食事や運動などの教育のためにも意味があります。

具体的には、糖質制限食による治療や、運動療法などに関わる講義などを受講し、実際のダイエット活動をします。自分一人ではダイエットが難しく、かつ、肥満症である場合にはオススメなダイエット方法です。

ダイエット入院のスケジュール

ダイエット入院の一般的なスケジュールは、7泊8日がもっとも一般的です。毎日、糖質制限などの食事とともにダイエット方法などの指導を受けます。

退院後も、同様の指導を通院などにより、食事療法、運動療法、行動療法、薬物療法などをフォローしてくれます。

1日3食の食事は徹底管理され、合間の時間においては、以下のようないろいろな講義を受けます。

  • 医師による食事療法
  • 30回咀嚼法やグラフ化体重日記の記載などの行動療法
  • 管理栄養士による集団栄養指導
  • 理学療法士による運動療法の指導
  • 自己学習

ダイエット入院の期間

ダイエット入院の期間は、病院や程度によって次のようなバリエーションがあります。

  • 7泊8日(長い場合には1ヶ月も可能
  • 退院後半年間は、月1回の通院フォロー
  • 半年以降は、3ヶ月おきに通院フォローを2年間

ダイエット入院の費用(保険診療3割負担)

7泊8日のダイエット入院、保険診療3割負担で、以下のようになります。

入院前の検査に5000円〜10000円(初回検査、栄養指導、薬など)

入院時の食事、部屋代、洗濯代などを込みで、35000円〜50000円

(追加検査などにより、ここに5000円〜10000円追加となる可能性あり)

1ヶ月入院した場合には、この3〜4倍になります。

ダイエット入院の目的

ダイエット入院の目的は、もちろんダイエットにはなります。実際に1週間くらいのダイエット入院でも2〜5kgダイエットすることも可能になります。

しかし、ダイエット入院の真の目的は、入院期間に食事療法、運動療法、行動療法などを、医師や管理栄養士、理学療法士などから学ぶことで、一からダイエットの基礎知識を学べます。

また、毎日の生活で学んだダイエット方法を実践できるので確実に自分でダイエットするよりも正確な経験ができます。

その後も、担当した医師によるフォローを2年間受けられるのも大きなメリットです。また、これだけでなく、検査などを行うことで、肥満の原因をつきとめることもできます。

肥満症にはいろいろな危険な病気が隠されている場合がありますが、健康診断レベルでは見つけられない場合があります。

ダイエット入院によって、隠されている病気がないかを検査できますし、ないとしても内臓脂肪などがどの程度なのかなど、段階的に自分の肥満状態についてチェックすることができます。

肥満で入院の理由2・外科手術で入院

手術服

現在、日本の肥満症治療の中心は、食事療法、運動療法、行動療法、薬物療法となっています。一般的にいう内科的治療となります。

しかし、内科的治療では長期的な体重を維持していくには、なかなか困難になってきます。

その一方で、肥満の外科手術であれば、長期的な体重減少と肥満関連の病気の改善を行うことが可能となってきます。

肥満での外科手術とは

肥満での外科手術は、内科的治療を受けても十分な効果を得られず、糖尿病や心臓病などの肥満による合併症がひどくなってきて、命の危険性もあるような状態の場合に受けるべきものです。

難易度の高い外科手術も行うので、安易に受けるべきものではありません。基本的にはBMIが30以上で、肥満による合併症がある人が対象となる手術です。

手術の種類と入院期間

現在日本で行える肥満外科手術の方法には4種類あり、それぞれに体重減少の割合や入院期間などがいろいろと異なってきます。

※参考 四谷メディカルキューブ

手術名 体重減少率 入院期間 特徴
腹腔鏡下ルーワイ胃バイパス術(LRYGB) 超過体重減少率70%

平均40~50kg程度

3日 小さな胃嚢(20~30cc) を小腸へ吻合する。吸収量を下げるため、残った胃と小腸をバイパスする。切離した胃は体内に残る。
腹腔鏡下スリーブ・バイパス術(LSGB) 超過体重減少率70%

平均40~50kg程度

3日 袖状胃切除と同様な細長い胃を作る(100~150cc)。十二指腸は最初の部分で切られ、小腸と吻合される。小腸の長さは胃バイパス術とほぼ同じ。切った胃は取り出す。
腹腔鏡下袖(スリーブ)状胃切除術(LSG) 超過体重減少率60%

平均30~50kg程度

3日 細長い胃を作る(60~100cc)。小腸との吻合はない。切った胃は取り出す。
腹腔鏡下調節性胃バンディング術(MID‐BAND) 超過体重減少率40~50%

ゆっくりした体重減少

術後の努力をもっとも必要とする

平均20~30kg程度

1日 調節可能なシリコンのリング(バンド)を胃の上部に巻きつけて、小さな胃(15~30cc)に分割する。

また、日本ではまだ肥満外科手術を行えるところはあまりなく、かつ日本肥満学会が基準を見たいしていると判断しているのは以下の13施設のみとなっています。

  • 岩手医科大学 附属病院
  • 東北大学医学部 附属病院
  • 自治医科大学 附属病院
  • 千葉大学 附属病院
  • 東邦大学医療 センター佐倉病院
  • 四谷メディカル キューブ 減量・糖尿病 外科センター
  • 社会医療法人 誠光会 草津総合病院 第 2 外科・ 肥満代謝外科
  • 滋賀医科大学 附属病院 消化器外科
  • 関西医科大学 枚方病院 消化管外科
  • 大阪大学医学部 附属病院 消化器外科
  • 大分大学医学部 附属病院 消化器外科
  • 大浜第一病院 外科
  • 東京都立多摩総合 医療センター

外科手術で入院する場合の費用

手術名 費用
腹腔鏡下ルーワイ胃バイパス術(LRYGB) 200万円(自由診療)
腹腔鏡下スリーブ・バイパス術(LSGB) 220万円(自由診療)
腹腔鏡下袖(スリーブ)状胃切除術(LSG) 190万円(自由診療)
腹腔鏡下調節性胃バンディング術(MID‐BAND) 120万円(自由診療)
腹腔鏡下胃縮小術
(スリーブ状切除によるもの)
30万円+個室代(保険診療)

外科手術の目的

あくまで肥満の場合には内科的治療が最優先されますが、高度肥満であり内科的治療では治療困難と判断されてしまっている人や、肥満による糖尿病、脂質異常症、高血圧などの合併症に苦しんでいる人などは、肥満外科手術を行う上で、治療をすることが可能になります。

肥満外科手術は、当然外科手術なので危険もともないますし、費用もかなり高額になってきますが、肥満症で苦しんでいる方の治療の選択肢を広げる上で、今後日本でも進められていくべき治療だと考えられています。

チーム医療でサポート

肥満外科手術には、手術する医師だけではありません。手術には外科医が必須ですが、他の医療者も多く関わってチームとして治療を進めていきます。

手術前、手術後の生活のフォローに看護師が協力し、栄養指導には管理栄養士がアドバイスし、服薬管理には薬剤師などが参加することで、チームとして医療をサポートしてくれます。

経験のある方々によるチームなので肥満に対する悩みから手術に対する恐怖や心配などにも相談に乗ってくれます。

肥満で入院する場合に重要なこと

ウエストサイズ測定

肥満で入院する場合には、肥満治療は入院だけでは終わらないこと、意思が大事であること、病院選びも大事であるということです。最後に1つずつ見ていきましょう。

重要なこと①肥満治療は一生

肥満治療は一度行えば肥満から解消するわけではありません。もともと肥満になりやすい体質の場合には引き続き食事制限などを行わなければなりません。

また、病気が原因で肥満になる場合もありますし、一生をかけて肥満と向き合っていかなければなりません。

注意して、肝に命じて欲しいのは、ダイエット入院をしたり、肥満外科手術をすれば、何もしないで肥満から解消するといったことはないということです。その後の一生を通して、肥満と向き合っていきましょう。

重要なこと②自分の意思が大事

肥満で入院する場合には、チーム医療としていろいろな専門家がサポートしてくれますが、最終的には自分の意思が強くなければダメです。

入院してる間も今までに経験したことのないような食事制限や運動を行うことになるので、1週間続けるだけでも意思が大事になってきます。

この入院期間をしっかりこなせないようでは、その後の生活で食事制限などを行なっていくことは不可能なので、意思を強く持つことが大切です。

重要なこと③自分にあった病院や先生を見つける

肥満による治療にかかわらず病院や先生は、自分にあった先生を見つけることが必要です。自分が疑問に思うことや悩みを素直に話せる相手であることが大事です。

先生も人間ですので、合う合わないということもあります。自分が続けやすい気の合う先生を見つけましょう。

特に肥満治療においては、どの病院でも行えるわけではなく、肥満外科手術においては13施設でしか行えないこともありますので、病院、先生選びは慎重に行いましょう。

まずはカウンセリングから

肥満による入院は、勇気のいることですが、しっかりとした食事制限や運動などを学べるのでその後の肥満対策においてとても勉強になると思います。

ただし、ダイエット入院や肥満外科手術は、あくまで内科的治療を行っても肥満を改善できない人や、高度肥満で生活習慣病に苦しんでる場合などに行うべきものです。

くれぐれも手取り早くダイエットにつながるからという軽い気持ち受けられる方法ではないことを理解しておきましょう。