肥満は何となく体にとって好ましくない状態であることは分かりますが、肥満になると寿命が短くなるリスクも高まるのでしょうか。また、平均寿命とはどのようなことを意味するのでしょう。肥満にならないための方法も紹介します。
肥満になると身体の各部に脂肪が付着していきますが、肝臓に関しても例外ではありません。肝臓への脂肪の付着が進行すると、やがては脂肪肝といわれる状態になります。
では、脂肪肝になってしまった場合、健康上どのような弊害が現れるのでしょうか、また、脂肪肝はどのように改善していけばよいのでしょうか。
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脂肪肝ってなに?
脂肪肝の危険性やその対処法について説明する前に、まずは脂肪肝とはどのような状態のことを言うのかについて理解しておきましょう。
肝臓に脂肪が付着すること
脂肪肝とはその名の通り、肝臓に脂肪が付着する状態のことを言います。この場合の脂肪は、中性脂肪を指します。
食事によって摂取された脂質は小腸で吸収された後、肝臓において脂肪酸へと分解されます。肝臓は脂肪酸から中性脂肪を産生し、肝臓が働くときのエネルギーとして蓄えます。
ところが、必要なエネルギー以上の中性脂肪が溜まっていくことによって、肝臓にどんどん中性脂肪が付着していってしまうのです。これが脂肪肝になるメカニズムです。
脂肪肝の定義
肝臓にはもともとある程度の中性脂肪が付着しているものですが、肝臓の細胞全体の30%以上が中性脂肪によって占められている状態を、脂肪肝と定義しています。
肥満の人は身体のあちこちに体脂肪をため込んでいますが、肝臓にも脂肪を蓄えているケースが多いということです。
ちなみに、体脂肪の量を正確に測ることは困難であるため、BMIという指標をもちいて肥満度の測定をおこなうこととなります。BMIは世界共通の肥満度測定指標となっています。
BMIの算出法は、身長(m)の2乗を体重(kg)で割るというものです。例えば、身長が170cmで体重が65kgの人のBMIは、【65÷(1.7×1.7)】=「22.49」ということになります。
BMIの基準値は22とされていますが、BMIが18.5以上25未満であれば標準体重とされます。BMIが25を超えていると肥満、反対にBMIが18.5未満だと痩せ型と分類されます。
肥満が多いアメリカでは、BMIが30以上から肥満と認定されています。これは、アメリカの肥満に対する基準が緩いというよりは、体質の違いがその理由となっているようです。
日本人は体質的に、BMIが25を過ぎるあたりから、高血圧や脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病になるリスクが高いとされており、そのためアメリカより厳しい標準値が設定されているのです。
脂肪肝の種類
脂肪肝には大きく分けて、アルコール性の脂肪肝と、非アルコール性の脂肪肝の2種類があります。では、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
アルコール性脂肪肝
アルコール性脂肪肝はその名の通り、アルコールを日常的に摂取することによって起こる脂肪肝のことを言います。お酒の飲み過ぎが肝臓に負担をかけるということは、なんとなくわかりますよね。
肝臓は身体の中で「解毒」を担当する器官となっています。少量であればともかく、大量のアルコールは身体にとって毒となりかねません。
そこで、肝臓によってアルコールは解毒され、体外へと排出されることとなる訳です。ところが、アルコールの量が大量の場合、解毒の過程で肝臓へと中性脂肪が蓄えられることとなるのです。
また、肝機能障害によって肝臓の働きが低下することによっても、肝臓への中性脂肪の付着が進行してしまうということです。
どれくらいのアルコールを日常的に飲んでいると、脂肪肝になるリスクが高くなるかというと、ビールなら大瓶(663ml)3本以上、日本酒なら3合以上ということです。
ただし、アルコールを代謝する能力には個人差があるので、これ以下の量でも脂肪肝になってしまう可能性はあります。もともと日本人はお酒に強い民族ではないとされるので、やはり飲み過ぎには注意が必要ですね。
非アルコール性脂肪肝
非アルコール性脂肪肝もその名の通り、アルコールが原因ではない脂肪肝のことを言います。高度経済成長期以前は、脂肪肝というとアルコールの過剰摂取が主な原因とされていました。
ところが、高度経済成長期以降は、非アルコール性の脂肪肝が急速に増えてきているということです。では、アルコール以外のどのような原因で脂肪肝になるのでしょうか。
非アルコール性脂肪肝の原因としては、肥満や脂質異常症(かつての高脂血症)、と尿病などがあげられています。これらに共通して言えるのは、インスリンの機能が低下しているか、インスリンの機能をオーバーしているということです。
インスリンには、体内に入ってきた糖質を分解して、脳や身体が働く際のエネルギーへと変換してくれる働きがあります。糖質(炭水化物)が身体にとってのエネルギー源だと言われるのはそのためです。
ところが、インスリンによって分解できないほどの糖質を摂取したり、インスリンの機能が低下していたりすると、糖質を分解しきれなくなってしまいます。
インスリンが分解しきれなかった糖質は、緊急時に使われる予備のバッテリーとして、細胞内に蓄えられることとなります。これが脂肪の正体で、脂肪肝になる一因ともなっています。
また、BMIで見ると標準体型の人であっても、ジャンクフードやファーストフードなど栄養バランスの偏った食事をしていたり、運動不足が続いたりすることで、肝臓に中性脂肪の溜まることがあるということです。
あと、稀ではあるということですが、なんらかの医薬品によって脂肪肝になったり、妊娠や循環障害が原因となって脂肪肝になったりすることもあるということです。
脂肪肝には自覚症状がない?
脂肪肝の定義や脂肪肝になる原因については分かりましたが、では、脂肪肝になるといったいどのような症状が現れるというのでしょうか。
沈黙の臓器「肝臓」
肝臓は「沈黙の臓器」などと言われるように、肝臓になにかトラブルが起こっていても、自覚症状としてなんらかの異変現れるようなことはほとんどありません。
人によっては微熱が出たり、身体がだるく感じたりすることもありますが、ほとんどの場合、風邪と判断してしまい、その内に治ってしまいます。そのため、脂肪肝を疑うようなことはあまりありません。
脂肪肝を放置していると、やがて脂肪性肝炎、肝硬変を経て、肝臓がんへと至ってしまう可能性が高くなってしまいます。
脂肪肝の見つけ方
脂肪肝を見つけるには、病院を受診して定期健診を受けるのが一番です。先にも述べたように、肝臓は沈黙の臓器と呼ばれ、トラブルがあったとしても自覚症状の現れるようなことはありません。
病気の治療や予防をおこなうためには、健康診断による異変の早期発見が重要となります。自覚症状がないからと油断しないで、1年に1回は健康診断を受けるようにしましょう。
脂肪肝への対処法
脂肪肝にならないようにするためには、日頃からどのようなことに気をつければよいのでしょうか。また、体脂肪を効果的に減らす方法はないのでしょうか。
病院を受診する
繰り返しになりますが、肝臓は沈黙の臓器と呼ばれており、なんらかのトラブルが発生していても、自覚症状の現れるようなことはありません。
病気に関して自己判断するのは危険なので、必ず、その道のプロフェッショナルであるお医者さんに診てもらうように心がけましょう。
食習慣を改善する
生活習慣が原因となってみられる脂肪肝に関しては、適切な生活習慣にすることによって、改善することが可能だと言われています。まずは、食習慣の改善法から見ていきましょう。
糖質制限をおこなう
先述したように、糖質の過剰摂取によってインスリンの糖質分解能力を超えると、体細胞に脂肪が蓄えられることとなります。
高度経済成長期以降に非アルコール性脂肪が増加している原因として、食習慣の欧米化や炭水化物(主食)の摂り過ぎがあげられています。
かつての日本では、玄米を中心として野菜や海藻、魚といったヘルシーな食事をしていました。ところが、現代人の食事は白米を中心に、お肉などの脂っこいものを良く食べるようになっています。
特に、白米を好んで食べる人は肥満するリスクが高いとされています。白米とは、玄米から栄養素を取り除いたカスのようなものです。カスというと聞こえは悪いですが、実際にカスを漢字にすると「粕」=白米となります。
白米にした方が甘くておいしいのは確かなのですが、肥満という観点からすると、白米はあまり摂りすぎない方がよい食品と言えます。パンや麺類も糖質を多く含んでいるので、過剰な摂取は避けるようにしましょう。
食事の前に野菜を食べる
「ベジファーストダイエット」という言葉を聞いたことのある人もいらっしゃることと思いますが、食事の前に野菜を食べることによって、ダイエット効果を高めることが可能となっています。
野菜は食物繊維を多く含むことで知られていますが、食物繊維には水溶性の食物繊維と不溶性の食物繊維の2種類があります。そして、いずれもダイエットをするときの強い味方となってくれます。
水溶性の食物繊維は、消化管内で水分を吸収し、ゲル状になります。そして、腸管内の糖質を包み込んで、糖質が腸管に吸収されるのを妨げてくれます。
糖質の摂取こそが肥満の最大の原因だと考えられているため、この水溶性食物線維の働きによって、肥満するリスクが低下するという訳なのです。
不溶性の食物繊維には、人間の持つ消化酵素では溶けないという特徴があります。やはり消化管内の水分を吸収し、膨張しながら消化管内を移動していきます。
不溶性の食物繊維が胃の中で膨張すれば、お腹がいっぱいになった感覚が得られるため、食事の総量を減らすことが可能です。
また、不溶性の食物繊維が腸管内で膨張することによって、便意が刺激されることとなります。つまり、便秘の解消にも効果的だということなのです。
運動する
脂肪肝を予防するためには、運動をすることも大事です。運動には大きく分けて、以下の2つの方法があります。
有酸素運動
脂肪肝にならないためには、体脂肪を減少させることが重要です。そのためには、有酸素運動がおススメです。有酸素運動とは、筋肉に軽度の負荷をかけながら、長時間に渡っておこなう運動のことを言います。
ジョギングやウォーキングなどが代表的な有酸素運動ですが、有酸素運動を開始してから20分ほどすると、体脂肪の燃焼が起こり始めます。それによって、ダイエットすることが可能となるのです。
筋トレ
ダイエットをするときには、筋トレも重要です。食事制限をおこなうと体重を減らすことは可能ですが、体重と一緒に筋肉も落ちてしまいます。
筋肉は基礎代謝と深いかかわりがあるため、筋肉量の減少によって基礎代謝が低下してしまうと、かえって太りやすい体質になってしまうのです。リバウンドをするのもそのためです。
ダイエットをおこなうときには、筋力アップとまではいかなくても、せめてダイエット前の筋力を維持するように心がけましょう。
効率よく脂肪燃焼するためのひと工夫
体脂肪を効率よく燃焼させるためのほんのちょっとしたコツがあるので、紹介しておきたいと思います。それは、有酸素運動をする前に筋トレをするということです。
有酸素運動をおこなうと体脂肪を燃焼させることが可能ですが、体脂肪の燃焼が起こるまでには、一定の時間が必要となります。
なぜなら、有酸素運動を開始した直後は、血液中の糖質が燃焼して運動エネルギーとなるからです。血液中の糖質を使い果たして初めて、体脂肪の燃焼が起こるという訳なのです。
筋トレをおこなうと、血液中の糖質がエネルギーへと変えられます。そのため、筋トレをおこなってから有酸素運動をおこなうと、体脂肪の燃焼がすみやかに起こることとなるのです。
また、筋トレをしてから48時間もの間、基礎代謝がアップすることも分かっています。せっかく運動をするのであれば、効率よくおこないたいものですよね。
定期的に検診をしましょう
肥満をすると肝臓にも悪影響を与えてしまい、脂肪肝なら脂肪性肝炎、肝硬変や肝臓がんへと移行するリスクが高くなるということでした。また、肝臓は沈黙の臓器と呼ばれ、自覚症状が現れないのもやっかいな点です。
そのため、1年に1度は健康診断を受けて、身体の内部に異変がないかを確認するようにしましょう。また、身体に脂肪をためすぎないよう、日頃から食習慣に気をつけて、適度に身体を動かすよう心がけましょう。