日本人は痩せすぎの女性が多いと言われる一方で、過度の肥満に悩む人も増えてきました。肥満は病気ではありませんが、肥満が進行すると肥満症という病気になります。
病気なので、病院で専門医による治療を受けられます。今回は、肥満症と肥満の違いや治療法・肥満の予防についてご紹介します。
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肥満と肥満症の違いとは?判断基準と治療について
肥満症と診断されると病気の扱い
肥満と違って肥満症は病気ですので、医学的にダイエットが必要な状態です。さらに言うと、脂肪を落とさなければ病気になる・もう何らかの合併症を発症している場合は症状が進む状態です。
また、「メタボ」と言われるメタボリックシンドロームとも異なります。メタボリックシンドロームは内臓脂肪型肥満に焦点を当てているためウエストのサイズが大きな判断基準となり、肥満症とは判断基準が少し異なります。
そのためBMI(ボディマスインデックス=肥満指数)の数字が少なくても、ウエストサイズが大きければメタボリックシンドロームの診断がつきます。
では肥満症とメタボリックシンドロームのどちらが重いかというと、肥満症のほうが重いと言えます。肥満症は病気であり、メタボリックシンドロームは要注意の状態です。
肥満と肥満症の判断基準
肥満
- 肥満症と肥満は違います。肥満はただ脂肪が過剰に蓄積されて体重が増加した状態で、病気ではありません。BMIの数字で判断できます。
BMI=体重(kg)÷(身長(m)×身長(m))
で計算され、以下の基準で判断します。
- 18.5未満 低体重
- 18.5以上25未満 普通体重
- 25以上30未満 肥満(1度)
- 30以上35未満 肥満(2度)
- 35以上40未満 肥満(3度)
- 40以上:肥満(4度)
ご覧の通り、25以上になると肥満となります。
肥満症
肥満症はBMI25以上・女性はウエスト周りが90センチ以上であり、以下の病気を併発している場合に診断が付きます。
耐糖能障害・脂質代謝異常・高血圧・高尿酸血症・痛風・冠動脈疾患・脳梗塞・脳血栓・睡眠時無呼吸症候群・脂肪肝・整形外科的疾患(変形性関節症・腰痛症など)・月経異常・肥満関連腎臓病
BMIが35以上になると高度肥満とされ、診断など治療の対象になります。あとは、CTスキャンで内臓脂肪の面積が100平方センチメートル以上の場合も、肥満症となります。
治療できる場所
肥満症は病気ですから、単なるダイエット以外にも医学的な治療が必要です。肥満に悩む人が増えているため、最近は肥満外来(ダイエット外来)といって肥満治療を専門に行っているクリニックがあります。主に総合病院や個人経営のクリニック・美容クリニックで肥満外来を設置されています。
病院では肥満症の重さによって治療に保険が適用されることもありますが、美容クリニックはほとんどが自由診療のため実費になります。関西にも関東にもありますし電話での無料相談もありますので、一度相談してみるといいでしょう。
肥満治療の内容
食事療法
まずは日ごろの食事内容を見直すことから始めます。治療食に置き換えるわけではありませんが、食事療法による肥満症の治療は糖尿病の方の食事療法とよく似ています。
間食を控えて、食事は1口30回以上しっかり噛み20分以上かけてゆっくり食べること、甘い物は見えないところに置いておく…などがポイントとなります。
ただ、家で1人で行うと誘惑に負けてしまうこともあります。肥満の治療では栄養士の方が摂取できるカロリーに合わせた献立を考えてくれますし、メンタル面でも心理カウンセラーの方がサポートしてくれます。1人で辛い思いをするのではなく、専門の方にサポートしてもらいましょう。
運動療法
激しい運動を行う必要はありませんが、1日30分を目標に体を動かしましょう。ダイエットには有酸素運動が有効だと言われており、ウォーキング・水泳などがおすすめです。具体的な内容については、医師の指導に従いましょう。
ただ、肥満症の治療を目的とした運動の場合は、運動してはいけないケースもあります。まずは、風邪をひいているときや二日酔いの時、睡眠不足などで体調が万全ではない時です。
その他にも、高血圧や糖尿病などの病気を併発している場合は必ず担当医の指示に従うようにしましょう。肥満の治療の場合、運動メニューもそれぞれの患者さんに合わせて考えてくれます。
行動療法
行動療法は運動療法と違い、生活習慣の見直しを行う療法です。肥満症になったのには必ず理由があります。肥満症になる人のほとんどは、今までの生活習慣の中に肥満になる理由が隠れているのです。
生活習慣や日ごろの食事を紙に書き、医師やカウンセラーと一緒に自分がなぜ肥満になったのかを客観的に分析します。食べたものを紙に書くという事は大事で、書くことで栄養の偏りも発見できます。
減量は指導されるままに行っていてはストレスが溜まってしまいます。溜まりすぎると、リバウンドという形で現れるリスクもありますので、今まで無意識に行っていた行動を見直すことで楽にダイエットできるのです。
投薬療法
肥満に有効な薬は、肥満の予防や防止を目的として作られており抗肥満薬と呼ばれます。現時点ではサノレックスという薬が、日本国内で唯一厚生労働省に認可されています。もちろん医師による処方が必要な治療薬です。
また、サノレックスを服用している間はお酒が飲めません。二日酔いがひどくなったり、アルコールの副作用がひどく出てしまう恐れがあるからです。詳しくはこちらの記事をご覧ください。(関連記事差し込み)
外科的療法
高肥満の方に対しては、手術によって肥満の治療を行うケースもあります。この手術は、いわゆる美容整形の脂肪吸引や脂肪溶解注射ではありません。胃を切除して、小さくするのです。
この外科手術の効果は高く、体重が数百キロ台の高肥満の方が多い海外でもよく行われている手術です。肥満の治療に効果的ですが、もちろん誰でも手術できるわけではありません。以下の項目を満たしており、医師が必要と判断した人が手術を受けられます。
- BMIが35以上の高肥満の人(場合によっては32の方も対象になります)
- 肥満が体に高負担になっているか、合併症を治療する目的がある人
- 年齢が18歳以上65歳未満であること
- すでに食事療法・運動療法を行ったが効果が現れない人
上記のように、肥満症によって健康被害が大きくなっている人が対象となります。
肥満患者の治療にはランクがある
積極的支援は投薬の可能性もあり
肥満症治療には3つのランクがあり、血液検査や心電図などのメディカルチェックを元に医師が判断します。
積極的支援は、3つのランクの中で最も重いランクとなります。医師や栄養士が力を合わせてダイエット計画を作り、専門医指導の元ダイエットを行います。積極的支援の場合は投薬による治療の可能性もあります。
まずは初回のメディカルチェックで血液検査や尿検査・心電図のチェックなどを行い、現状を確認します。BMIが35以上の場合、治療の対象と判断される可能性が高いです。肥満以外に併発している病気がないか調べて、得た情報をもとにダイエットプログラムを立てていきます。
その後、病院から肥満の治療に必要な体重計・歩数計などの機器が自宅に届き、本格的な治療(=ダイエット)がスタートします。3か月目で一度病院に行き、目標体重を達成できるか途中経過を測定してもらいます。難しい場合は、目標体重やプログラムの見直しを行います。
期間は6か月ですので、6か月目に再度病院に行って目標を達成しているかチェックしてもらいます。
動機付け支援は途中経過の検診なし
動機づけ支援は2番目に重いランクですが、治療ではなく具体的なアドバイスのような指導となります。メディカルチェックを行ったデータをもとに、医師や栄養士たちが肥満とほかの症状の関係を調べて患者さんが自分で行えるダイエット方法を提案します。
その指導を元に患者さんは自分でダイエットを行い、6か月後に効果があったか確認します。
情報提供はダイエット指導なし
最も軽いランクで、今以上肥満にならない方法や健康を維持する方法・生活習慣の改善方法などを提案してもらいます。提供された情報は患者さんの役に立つものばかりなので、悪化しないように気を付けて改善するよう努力します。
特にダイエットの指導は入らず、3か月後や6か月後の検診もありません。
どの治療を行うかは自分で決められない
前述した3つの指導方法は、医師が患者さんの性格や健康状態を総合的に考えて、どのランクでどのような治療を行っていくか判断します。そのため、動機づけ支援がいい・情報提供だけでいいなど自分でランクを選択することはできません。
積極的支援の場合は投薬の可能性もあるとご紹介しましたが、その判断も医師が行います。
肥満を予防する
食生活の改善
治療が必要なほどの肥満になる方は、食生活で高カロリーな食品を大量に食べているケースが多いです。揚げ物やスナック菓子などの脂質や塩分の濃いものは避け、野菜中心の食事を1日3食摂ることを心がけましょう。
摂取カロリーを減らさなければと、1日1食にしたり食事を抜くことは絶対にやめてください。朝ご飯を抜いてその分お昼に高カロリーな外食をすると、体はお昼に食べた高カロリーな食事をなるべく吸収しようとします。結果、やせるどころかさらに肥満になってしまいます。
肥満の予防には、摂取カロリーを減らすことが重要です。こんにゃくやキノコなど、低カロリーの食品も取り入れてカロリーをコントロールしていきましょう。お肉は脂が少ない物を選び、濃い味付けはご飯が進むためいつもより薄味にするように意識しましょう。
スーパーのお惣菜やインスタント食品は、手軽ですが高カロリーのものが多いです。なるべく自炊を心がけましょう。
睡眠時間の確保
睡眠不足は肥満のもとです。良質な睡眠は成長ホルモンがたくさん分泌されるので、寝ている間に脂肪を燃焼してくれる効果があります。
良質な睡眠とは、深い睡眠の事です。成長ホルモンが多く分泌されるのは夜の10時~2時の間ですので、なるべく夜10時~2時の間に寝るようにしましょう。また、夜食も肥満の原因になります。寝る3時間前までには食事を終えて、就寝中に胃が働かなくていいようにしましょう。
運動や行動改善
有酸素運動は、脂肪燃焼以外にも基礎代謝を上げて痩せやすい体づくりをサポートしたり、ストレス解消・生活習慣病の予防にも効果があります。肥満の予防としてぜひとも日常生活に取り入れることをおすすめします。
脂肪燃焼効果は、有酸素運動を20分程度行う必要があります。20分間継続して行うべきと言われていましたが、最近の調べでは1日の運動が合計20分でも脂肪燃焼効果があるとされています。
喫煙や飲酒を控える
お酒やたばこも肥満の原因になります。女性にも男性にも、女性ホルモンと男性ホルモンの両方が存在します。喫煙は男性ホルモンを刺激するため、女性も内蔵型肥満になりやすいです。
アルコールは、飲みすぎると中性脂肪が増えて肥満につながります。アルコール自体も肥満につながりますが、さらに注意すべきはおつまみです。塩分や高カロリーのおつまみの食べ過ぎにも注意しましょう。
肥満症は病気
いかがでしたでしょうか。肥満症と肥満の違い、具体的な治療方法についてご紹介しました。欧米の食文化が入ってきたことやデスクワーク中心の人が増え、すっかり日本も肥満に悩む方が増えました。世の中が便利になることは素晴らしいですが、その分意識して肥満を予防する必要があります。
肥満症は病気です。大幅な減量は生活習慣や食生活を根本的に変えるため、一人では途方にくれることもあります。そんなときは諦めずに専門家の力を借りて、健康な体に生まれ変わりましょう。この記事が参考になれば幸いです。