ダイエットに関する雑誌やインターネット上の記事を見ていると、マッサージをすることで部分痩せができるなどと書かれていることがあります。はたして、毎日マッサージをすることで痩せることは可能なのでしょうか。今回は、マッサージの効果について解説します。
マッサージって気持ちいいですよね。マッサージ屋さんでやってもらうのもいいですし、パートナーにしてもらうのもいいものです。もちろん、自分でマッサージするのも心地よいものです。
そんなマッサージですが、毎日おこなうとどのような効果が得られるのでしょうか。反対に、毎日やることによる弊害はないのでしょうか。また、毎日マッサージすることで痩せることは可能なのでしょうか。
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マッサージの効果
毎日マッサージすることによって痩せられるのかどうかについて解説する前に、そもそもマッサージをすることによって、どのような効果が得られるのかについて知っておきましょう。
疲労回復
マッサージには、血行を改善して疲労回復を高める効果が期待できます。血液は全身に酸素と栄養を運んでいます。そのため、マッサージによって血行が促進されれば、栄養状態の改善効果が得られるのです。
リラクゼーション
「マッサージが死ぬほど苦手」という人でもない限り、マッサージをすることでリラクゼーション効果が得られます。マッサージをおこなうことでリラックス状態になると、副交感神経が優位になります。
副交感神経には車でいうところのブレーキの働きがあります。そのため、副交感神経が優位になることで、身体をゆっくりと休めることが可能となるのです。
疼痛の緩和
適切な圧力でおこなうマッサージには、筋肉痛や神経痛といった疼痛を緩和する効果もあります。マッサージをおこなう際には、対象となる人や場所に手を触れることとなります。
つまり、マッサージ行為は文字通り「手当て」なのです。幼少期にお腹が痛い時、母親に撫でてもらうと不思議と痛みが治まった、という経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ちょっと専門的な話になるのですが、地球にS極とN極があるように、私たちの身体にもS極に対応する場所と、N極に対応する場所があります。
バイオマグネティックエリアという考え方では、たとえば頚部はN極だとされています。そのため、ピップエレキバンなど、N極の磁石を貼ってあげることで、血行の促進がみられると考えられているのです。
それはともかく、痛いところを撫でたり軽く圧迫したりすることが、痛みの緩和につながることは皆さんも経験的にご存知なのではないでしょうか。すねをぶつけたら、手で撫でますよね。このように、マッサージにも疼痛の緩和効果が期待できるのです。
回復力を高める
マッサージによってリラックスすると、副交感神経が優位になるということでした。副交感神経は、交感神経とともに自律神経と呼ばれるものです。自律神経は、私たちの生命活動をつかさどっている神経でもあります。
先ほど副交感神経を車のブレーキにたとえましたが、交感神経は反対に、車のアクセルに例えられます。どちらが大事だという訳ではなく、両者のバランスのとれていることが重要なのです。
ただ、日本人の8割方は交感神経優位型だとされています。もう少し分かりやすくいうと、緊張型の人が多いということです。欧米人の悠揚さに比べると、確かに日本人は少し神経質な感じがしますよね。
交感神経が優位になると、血管が収縮して血行が悪くなってしまいます。血液は酸素と栄養のほか、白血球も運んでいます。白血球は外敵から身体を守ってくれる働きを有しているので、血行が悪くなれば回復力の低下につながる訳です。
マッサージによって副交感神経が優位になると、反対に血管が拡張して血液の循環がスムーズになります。結果として、身体の回復力の向上につながるという訳なのです。
毎日マッサージをするメリット
マッサージをすることにはさまざまな効果がありますが、それでは、毎日マッサージをすることにはどのようなメリットがあるのでしょうか。
むくみの改善
毎日マッサージをするメリットとしては、むくみを改善できるということがあげられます。特に、女性の場合、男性とくらべてむくみが出やすいとされています。
その理由として、女性は男性に比べると、筋肉量が少なかったり、筋力が弱かったりすることがあげられています。筋肉には、関節を動かすだけでなく、血行を促進する働きもあるのです。
血液を全身に送り出すのは心臓の働きですが、心臓には血液を送り出す働きしかありません。全身の各部へと送られた血液は、筋肉のサポート(収縮運動)によって心臓へと送り返されるのです。
ただ、ふくらはぎは心臓からもっとも遠い場所にある上、重力に逆らって上方へと血液を送らなければなりません。そのため、筋力が弱いと血行が悪くなり、むくみが出やすくなるのです。
毎日ふくらはぎをマッサージしてあげることによって、血液を心臓へ送り返す手助けをしてあげることが可能となります。その結果、むくみを改善することができるという訳なのです。
冷え症の改善
筋肉には関節を動かしたり、血液を心臓へと送り返したりする働きのほか、身体の熱を産生する働きもあります。そのため、筋肉が凝り固まってしまい、血管を圧迫して血行が悪くなることによって、冷え症を発症してしまうのです。
首や肩のこりがひどければ手先の冷えにつながりますし、腰や臀部、下肢の筋緊張が強ければ、足先の冷えにつながります。およそ何らかの症状が出ているところには、必ずと言って冷えと血行不良がみられます。
冷えと血行不良の反対の現象が、いわゆる「炎症」といわれるものです。炎症というと悪いイメージをお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。実は、炎症とは治癒反応でもあるのです。
身体のどこかがダメージを受けると、血液が患部に集まってきます。なぜなら、血液は酸素と栄養、白血球を運んでいるからです。そして、血液が集まってくることによって、損傷箇所を治そうとするのです。
その時に、必ずと言っていいほど熱と痛みが発生します。血行がよくなって熱を発することで、一時的に痛みが増すのですが、それは治癒反応に他ならないのです。
東洋医学では「冷え症は万病のもと」などといわれます。それは、血行が悪くなった所に冷えと不具合が生じるからです。毎日マッサージをすることで、そのような不具合のリスクを下げ、冷え症を改善することが可能となります。
新陳代謝の活発化
マッサージによって血液の循環が促進されると、新陳代謝が活発になります。新陳代謝とは古いものが新しいものへと生まれ変わることを意味します。
人間の身体でいうと、髪の毛が伸びて生えかわったり、爪が伸びたり、肌が生まれかわったり(ターンオーバーなどと言います)することが、新陳代謝にあたります。
毎日マッサージをするデメリット
毎日マッサージをすると、たくさんのメリットが得られますが、逆に何かデメリットはないのでしょうか。場合によっては、以下のようなデメリットが考えられます。
疲れる
自分で自分のマッサージをする場合もそうですし、人にマッサージをしてあげる場合もそうですが、毎日マッサージをしていれば当然のことながら疲れます。
自分でおこなうふくらはぎや太もも、二の腕や前腕などのマッサージならそれほど疲れないかもしれませんが、腰部や臀部のマッサージをしていると疲れることと思います。
揉み返しの可能性
人間の身体には適切な刺激量(ドーゼと言います)があり、あまりにも強い圧でマッサージをおこなうと、かえって筋線維を傷つけてしまうことがあります。
マッサージ屋さんではそのことを揉み返しなどということがありますが、揉み返しの実態は筋線維の断裂であり、怪我にほかなりません。
また、自分でマッサージをおこなう場合でも、首やあごといった場所のマッサージは非常に難しいので、やり過ぎることでやはり揉み返しになる可能性があります。
マッサージでダイエットのウソ
ダイエットに関する雑誌の記事やインターネットのサイトを見ていると、必ずと言っていいほどマッサージについて触れられています。ただ、結論から言うといくらマッサージをしたところで、痩せるようなことは「絶対に」ありません。
脂肪燃焼は起こらない
マッサージでなぜ痩せられないかを説明する前に、ダイエットという言葉について説明しておきたいと思います。ダイエットとは本来、規定食のことを意味します。
規定食とは、健康や美容のために食事量を制限したり、食事内容を見直したりすることを意味します。そういった意味では、マッサージでダイエットとか、運動をしてダイエットという表現は根本的に矛盾していることとなります。
ただ、日本ではほとんどの人が「ダイエット=痩せる」という意味で理解していると思いますので、本稿でも便宜上、ダイエットを痩せるという意味で解釈したいと思います。
では、マッサージをすることでなぜ痩せられないかというと、いくら筋肉や脂肪を揉んだりつねったりしたところで、脂肪の燃焼がおこることはないからです。
太るということは身体に体脂肪が付くということにほかなりません。そのため、ダイエットをするためには体脂肪を減らすことが重要となるのです。
たとえば、エステティックサロンでおこなわれている痩身エステの説明を見ると、マッサージによって脂肪を燃焼させ、その結果痩せることができると書かれていることがあります。
実際に、施術前と施術後の写真を掲載して、ウエストや太もものサイズがこんなにダウンしました、などと書かれていることもあります。
ただ、痩身エステの施術によって見られるサイズダウンは、単にむくみが取れたことによって起こるものであり、根本的に痩せている訳ではありません。たいていの場合、次の日には元通りになってしまいます。
セルライトなんてない
エステティックサロンでは、セルライトを静脈やリンパに流すことによって、痩身が可能だと説明していることがありますが、これも大間違いです。
セルライトとはヨーロッパのエステ界によって作られた造語であり、医学的にみれば単なる皮下脂肪のことを言います。
皮下脂肪は皮膚の下にいきなりくっついている訳ではなく、脂肪細胞と呼ばれる細胞内に蓄えられているものです。
脂肪細胞に蓄えられている皮下脂肪を、なぜ静脈やリンパに流すことができるのでしょう。また、もしそのようなことができてしまったら、静脈やリンパが詰まることになり、人体の機能に重大な危険が生じることとなります。
リンパの流れは関係ない
ダイエットに関する記事を見ると、リンパという言葉もよく出てきます。マッサージによってリンパの流れを促進し、老廃物の排出を促すというのが大方の記事にみられる文章です。
ただ、リンパの流れというのはとても遅く、また、それほど大量の老廃物を運べるわけでもありません。巷でおこなわれているリンパマッサージには、リンパの流れをよくする効果もありませんし、もちろん、痩せることなどありません。
自宅で毎日できるマッサージ
マッサージで痩せることはできませんが、リラクゼーション効果や疲労回復効果は期待できます。また、むくみを取ることで、見た目痩せの効果は得られます。そこで、自宅で毎日できる簡単なマッサージ法を紹介しておきたいと思います。
ふくらはぎのマッサージ
先述したとおり、ふくらはぎは心臓からもっとも遠くにあるため、どうしてもむくみの出やすい場所となっています。そのため、ふくらはぎのマッサージをすることで、足の見た目痩せをすることが可能となります。
ふくらはぎのマッサージをするときには、両手でふくらはぎを包み込むようにして、かかとの方から膝の方へマッサージしていきましょう。膝の裏に血液を送り出すようなイメージでおこなうと効果的です。
また、お風呂にゆっくりと浸かって、身体を温めてからマッサージすると、より効果的にむくみの改善をおこなうことができますよ。
顔のマッサージ
美容整体などで小顔整体メニューなどがありますが、あれもエステティックサロンの痩身エステと同じで、単に顔のむくみを取っているに過ぎません。なぜなら、頭蓋骨の大きさが変わるようなことはないからです。
顔のマッサージをおこなうときには、頬骨の近くにあるこりをほぐしてあげましょう。また、こめかみを両手の親指以外の指先で押さえ、くるくると円を描くようにマッサージしましょう。これだけでも、顔のむくみを改善することが可能です。
たくさん効果のあるマッサージはおすすめです
毎日マッサージをする効果について見てきましたが、いかがだったでしょうか。マッサージのよいところは、それほどの力を必要とせず、リラクゼーション効果が得られるという点です。
身体がリラックスすれば、副交感神経が優位になり、身体の回復を促進することが可能となります。マッサージをしたからといって痩せることはありませんが、それ以外にもたくさんの効果があります。むくみや冷え症が気になる人には、ふくらはぎのマッサージがおススメですよ。