脚痩せをはじめとしたダイエットの記事を見ていると、しばしば「リンパ」という言葉を見かけます。そして、リンパはあたかもダイエット成功のマジックワードのような使われ方をしています。そもそもリンパとは何者で、リンパマッサージの効果とはどのようなものなのでしょう。
エステティックサロンや美容整体などで、「リンパマッサージをおこなって美脚に!」などと宣伝しているところがあります。ところで、この「リンパ」というのは、一体何者なのでしょう。また、リンパマッサージで脚痩せ出来るって本当なのでしょうか。今回は、リンパマッサージの真実に迫りたいと思います。
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リンパってなに?
股関節のリンパマッサージによって得られる効果を説明する前に、そもそもリンパとはどのようなものかを知っておきましょう。
リンパ液のこと
私たちの身体は、その60%から70%が水分によって構成されています。そのうち、さらに60%から70%が細胞内に存在しており、残りが細胞外に存在しています。
細胞外に存在している水分は、おもに「血液」と「リンパ液」に分類することが可能です。血液は血管の内部を流れており、リンパ液は「リンパ管」と呼ばれる管の内部を流れています。
リンパの働き
血液は全身に酸素と栄養を運び、血管を介して細胞から不要な物質を受け取っています。リンパ管は、血管が回収しきれなかったタンパク質や脂肪、有害物質を水分とともに吸収します。それこそが、リンパ液の正体という訳なのです。
リンパによって運ばれる有害物質は、途中にある「リンパ節」という場所で取り除かれます。最終的にリンパ液は静脈へと合流することとなります。
股関節のリンパマッサージ効果とは?
エステティックサロンでは、リンパマッサージと称する施術をおこなっているお店があります。では、股関節のリンパマッサージをすることで、どのような効果が得られるとされているのでしょう。
リンパの流れをよくする
エステのリンパマッサージの効果としては、リンパの流れをよくするということがあげられており、実際にホームページなどでもそのように宣伝されていることが多々あります。
セルライトを除去する
エステサロンのホームページを見ると、痩身エステの効果として、セルライトをリンパや静脈に流すことで、ダイエットが可能と説明されているケースがあります。
手を用いた施術や、専用の機器によってセルライトを溶かして、リンパや静脈にセルライトを流し、結果として痩身が可能になるということです。
血行を促進する
リンパマッサージの効果としては、血行を促進するということもあげられます。下半身には全身の70%もの筋肉が集まっており、股関節のリンパマッサージによって効率よく血液循環を改善できるとされています。
股関節リンパマッサージのウソ!ホント?
リンパマッサージをおこなっているエステティックサロンなどのホームページを見ると、上記のような効果がリンパマッサージによって得られるとされています。では、実際のところはどうなのでしょう。
リンパの流れは遅い
リンパマッサージによって、リンパの流れがよくなるということでしたが、実は、リンパの流れは血液とくらべて、非常に遅いということをご存じだったでしょうか?
心臓から送り出された血液が全身を1周するのにかかる時間は、およそ40秒程度だといわれています。一方、リンパが静脈に流れるまでにかかる時間はおよそ12時間だということです。
そのようなゆっくりとした速度で流れているリンパを、エステの施術で劇的にはやめることはできません。なぜなら、エステティシャンはリンパのことを専門的に学んだ技術者ではないからです。
後で詳しく解説しますが、確かにリンパの流れをよくする技術はあります。ただ、それは専門の技術を学んだ技術者が、医師の指導のもとでおこなう医療補助行為です。
おそらく民間のエステティックサロンに医師が常駐していたり、リンパマッサージの専門教育を受けた人がいたりすることはないでしょう。リンパという言葉を民間の治療家が使った時点で、胡散臭いと思っても間違いないでしょう。
セルライトなど存在しない
セルライトって聞いたことありますよね。あれって何のことだかご存知でしょうか。実は、セルライトは欧米のエステ業界で作られた造語なのです。
医学的にみた場合、セルライトはただの「皮下脂肪」に過ぎません。そして、皮下脂肪には「付きにくく落ちにくい」という女性にとっては悩ましい性質を有しています。
リンパマッサージでは、皮下脂肪を溶かしてリンパや静脈に流すなどといった説明がされますが、医学的に考えるとそのようなことはあり得ません。
なぜなら、皮下脂肪は皮膚の裏にべったりとついている訳ではなく、脂肪細胞という細胞に内包されているからです。リンパマッサージは、脂肪細胞を潰して脂肪を流すとでもいうのでしょうか。
もちろん、そのようなことはあり得ません。仮にそのようなことが可能だとしても、リンパや静脈が脂肪によって詰まることになり、人体に悪影響を及ぼすことでしょう。
むくみの改善効果はある
股関節のリンパマッサージをおこなうことで、むくみの改善効果は期待できます。それでなくても下半身はむくみやすい場所なので、マッサージによる血行改善によって、脚の見た目痩せはできることでしょう。
脚のむくみというと、女性にとっては敵のように思われるかもしれませんが、実は、脚のむくみは身体からのメッセージなのです。
病気によって脚がむくむこともあれば、食習慣や生活習慣が原因でむくむこともあります。むくみがみられるときは、自分の身体を見つめなおす絶好のチャンスとも言えるのです。
股関節のリンパの流れをよくする方法
それでは、股関節のリンパの流れをよくするにはどうしたらよいのでしょうか。なにも、効果のよく分からないリンパマッサージを受けなくても、自分でリンパの流れをよくすることが可能なのです。
下腿をマッサージする
股関節のリンパの流れをよくするためには、筋ポンプが活発に働くようにするとよいといわれます。筋ポンプとは、身体の各部にある筋肉が、心臓へと血液を送り返す働きのことを意味します。
心臓が全身の各部へと血液を送り出していることは、皆さんもよくご存知のことと思います。ただ、心臓には血液を全身に送り出す働きしかありません。
そこで、全身の各部にある筋肉が収縮することによって、心臓へと血液を送り返す手助けをするのです。体内の不要なものは静脈に回収されますが、回収しきれなかった部分をリンパが担当しているということは、先述したとおりです。
そして、体内をめぐってきたリンパは、食道の側にある「胸管」という大きなリンパ管を経て、静脈へ合流することとなるのです。
そのため、胸管より上にあるリンパに関しては、スムーズに静脈と合流することが可能となっています。ところが、胸管より下にあるリンパは、重力に逆らって上方へと進まなければなりません。
特に、ふくらはぎのリンパは心臓からもっとも遠い場所にあるので、ふくらはぎの筋ポンプを強化することで、胸管へと進む手助けをしてあげるとよいでしょう。
ふくらはぎの筋ポンプの働きを高める簡単な方法は、運動とマッサージです。ふくらはぎを両手で覆うようにして、かかとからひざの裏にかけて優しくマッサージしてあげましょう。
イメージとしては、膝の裏へ血液やリンパを送るようなイメージです。股関節のリンパマッサージをするより、よほどむくみ解消の効果が得られやすいと思いますよ。
寝る
股関節を始めとしたリンパの流れをよくするためには、寝るというとてもシンプルな方法があります。リンパの流れを正常に保つ際、もっとも重要となるのが、必要なだけの睡眠時間が確保できていることです。
先ほども述べたように、リンパは12時間ほどかけて静脈へと送られます。なぜそれほどの時間がかかるかというと、リンパ管が非常の細いからです。また、胸管より下にあるリンパは、重力に逆らって上方へと進まなければなりません。
そのため、起きている時間が長ければ長いほど、リンパが流れるのにも時間を要することとなるのです。睡眠をとるときには、一般的に布団に横になることと思います。
布団に横になると、重力の影響から身体を少し解放することが可能となります。それによって、リンパの流れもスムーズになるという訳です。
そういった意味では、エステ台に横になってマッサージをすることで、むくみの改善がみられることは、ごく当たり前のことだということが可能です。
歩く
股関節のリンパの流れをよくするのであれば、歩くという手段も効果的です。歩く動作は下半身主導でおこなわれるため、下半身の筋ポンプ作用が強化され、リンパがスムーズに流れる手助けとなります。
ただ歩くだけでも構わないのですが、歩いている最中にリズムを変えてあげると、より効果的にリンパを流すことが可能となります。
まず、早歩きで5分間歩きます。その後に、膝を高くあげて5分間歩きます。その次に、大股で5分間歩くようにします。それによって、効果的にリンパを流すことが可能だと考えらえています。
医学的に見た股関節リンパマッサージ
これまでも医学的な見解に基づいて、リンパマッサージの効果について説明してきました。では、医学的にみた場合、股関節のリンパマッサージはどのように捉えられているのでしょう。
民間のリンパマッサージは医学的根拠なし
医学的な見地からすると、民間でおこなわれているマッサージの効果に、医学的な根拠は認められないということです。では、なぜこれほどまでにリンパマッサージがはやっているのでしょうか。
それは、医学的にもリンパという部門が、研究の遅れている分野だからだということです。研究者の数も少ないため、そもそもの臨床データに欠けているという現実もあります。
その隙間に忍び寄ってきたのが、エステをはじめとする美容業界という訳です。エステでおこなわれている主義のほとんどはリラクゼーションを目的としており、実際にリンパを流すような施術はあまりおこなわれていません。
仮に、脚だけでなく手も顔もむくむというような場合、それはお医者さんに診てもらった方がよい類のむくみです。あくまでも、エステはリラクゼーションサロンだということを忘れないようにしましょう。
リンパドレナージは治療術
リンパを流すと謳っているエステのほとんどは、実際にはリラクゼーション効果のある施術をおこなっているだけということでしたが、現実にはリンパドレナージという手法があります。
リンパドレナージは、一般社団法人である「リンパ浮腫指導技能者養成協会」の専門教養課程を終えた専門の技術者によっておこなわれるタイプのリンパマッサージです。
リンパドレナージは、悪性腫瘍などの手術後に、リンパの流れが悪くなった際におこなわれる手技です。非常に高度な技術が要求されるので、リンパドレナージをおこなえる人はまだ少ないというのが現状です。
素人が見よう見まねで実践できるようなものではありませんし、下手に手を出すとかえって症状の悪化することもあるでしょう。いずれにしても、エステなどのサロンで、リンパを流すような効果のある手技がおこなわれているとは考えられないということです。
風が吹けば桶屋が儲かる!?
エステティックサロンに限らず、整体院やカイロプラクティック、整骨院やマッサージ屋さんなどではよく、「自然治癒力」などという言葉が用いられます。
誰でも自分の身体を治す力を持っており、その力を最大限に発揮させてあげることによって、病気を治したり、病気になりにくい身体を作ったりすることができるというものです。
その考え方自体に異論をはさむつもりはありませんが、何でもかんでも自然治癒力につなげようとする節がみられないでもありません。
骨盤矯正で代謝を促進し、自然治癒力を高めるとか、エステの施術によって副交感神経を高め、それによって回復機能が高まるなどといった具合です。
そこまでならまだいいのですが、さらに進んで、代謝機能が高まることで痩せやすくなるとか、副交感神経が高まることで痩せやすくなるなどというのは、ちょっと行きすぎと言えるでしょう。
整体やエステの施術にもたくさんのいいところがあります。ただ、医療の分野は医師、リラクゼーションの分野や整体師やエステティシャンと、きちんと分けて考えるべきでしょう。
しかし、凄腕で医師が治せないものを整体などで治療する先生も少数ではありますが、稀に存在します。
リンパについて
股関節のリンパマッサージについて取り上げることで、リンパとはそもそも何なのか、リンパマッサージのウソとホント、リンパの流れをよくするための方法について解説してきました。
ことダイエットという観点からすると、リンパという言葉は便利使いされているような印象があります。医学的な根拠はないことがほとんどなので、甘い言葉に惑わされないように気をつけてくださいね。