肥満になると血圧があがる?原因や弊害と対処法をご紹介!

血圧が高くなると、なんとなく身体にとって良くないというイメージはだれでも持っているのではないでしょうか。では、血圧が高くなると、身体にどのような悪影響を及ぼすというのでしょう。今回の記事では、肥満と血圧の関係、さらに高血圧に関する異論も紹介します。

肥満になると血圧もあがると言われていますが、どのようなメカニズムでそのようなことが起こるのでしょうか。また、血圧が上がることで、人体にはどのようなリスクが生じるのでしょう。

今回の記事では、肥満と高血圧について解説するとともに、肥満を改善する方法や高血圧の予防法について紹介していきたいと思います。

肥満と肥満症

おなか

私たちが普段何気なく使っている「肥満」という言葉ですが、実は肥満と「肥満症」とは別物だということをご存じだったでしょうか。肥満と血圧の関係について解説する前に、まずは肥満と肥満症との違いについて知っておきましょう。

肥満とは

肥満とは一言でいうと「太っている状態」を指します。もう少し詳しくいうなら、体脂肪がたくさん身体に付着している状態を言います。

肥満しているかどうかを調べるには体脂肪率を測定すればよいのですが、実は、体脂肪率を正確に算出するのは難しいということです。

「うちのヘルスメーターには体脂肪率を計る機能が付いているよ」という方もいらっしゃると思いますが、実際にはヘルスメーターのメーカーによって、体脂肪率が異なって表示されるというのが現実です。

そのため、肥満しているかどうかは、BMI(ボディ・マス・インデックス)という指標で決めることとなります。BMIの算出法は、身長(m)の2乗を体重(kg)で割ったものとされています。

たとえば、身長が158cmで体重が50kgだった場合、[50÷(1.58×1.58)]=「20.02」ということになります。この場合、BMIが20.02とされるわけです。

BMIが18.5以上、25未満であれば標準体重とされます。BMIが18.5未満であれば痩せ型、BMIが25以上であれば肥満とされます。特に、BMIが35を超えているような場合、重度の肥満といわれるようになります。

アメリカではBMIが30を超えた段階で肥満といわれるようになるのですが、日本人の場合、BMIが25を超えると高血圧や脂質異常症といった疾患を発症しやすいことから、BMIが25以上になった場合を肥満としているのです。

肥満症とは

肥満症とは、単に太っているだけでなく、医学的に見て体重を減らす必要のある疾患を発症している、もしくは発症するリスクのある状態を言います。

肥満にともなって、高血圧や脂質異常症、2型の糖尿病や高尿酸血症、心臓の冠状動脈にみられる疾患や脂肪肝、脳梗塞や月経異常などがみられる場合、医学的に治療が必要とされます。

そのため、単なる肥満を治療する場合に保険を適用することはできませんが、何らかの疾患を合併している肥満の場合、治療に保険が適用されることとなります。

ちなみに、肥満症には内臓脂肪型の肥満と皮下脂肪型の肥満があります。内臓脂肪型の肥満のことを、肥満細胞の質的異常による肥満ということがあります。

肥満細胞の質的異常による肥満の場合、先にあげたような高血圧や脂質異常症といった生活習慣病を発症するリスクが高くなるということです。

肥満細胞の量的異常による肥満(皮下脂肪型の肥満)の場合、睡眠時無呼吸症候群や肥満低換気症候群のほか、膝痛や腰痛などの整形外科的な疾患を発症するリスクが高くなるとされています。

高血圧の種類

血圧器

肥満している人は、標準体重の人の2倍から3倍も高血圧になるリスクが高いとされています。では、高血圧にはどのような種類があるのでしょうか。

本態性高血圧

高血圧には大きく分けて、本態性高血圧と二次性高血圧の2種類があります。そして、高血圧全体のおよそ90%が、本態性高血圧だとされています。

本態性高血圧の特徴としては、原因をハッキリ特定できないということがあげられます。遺伝や生活習慣、食習慣やストレス、加齢、そして肥満など、さまざまな要因が複雑に絡まって、結果として現れるタイプの高血圧だとされています。

二次性高血圧

二次性高血圧は内臓疾患など、なんらかの疾患にともなって現れるタイプの高血圧を指します。二次性高血圧の中でもっとも多くみられるのが、「原発性アルドステロン症」と呼ばれるものです。

原発性アルドステロン症は、二次性高血圧のほとんどを占めているもので、副腎から分泌されるホルモンの一種であるアルドステロンが過剰になることで発症するとされています。

また、このアルドステロンは動脈硬化を進行させるリスクファクターでもあるということです。そのため、原発性アルドステロン症の場合、脳卒中や心臓病になる可能性が、本態性高血圧と比較すると高いということです。

二次性高血圧には原発性アルドステロン症の他にも、クッシング症候群や腎血管性高血圧、褐色細胞腫などが原因で起こる高血圧もあります。

高血圧の診断基準

血圧の測定をしたことがないという人は余りいらっしゃらないと思いますが、一応、血圧の診断基準について説明しておきたいと思います。

血圧を測るときには、収縮期血圧と拡張期血圧の2つを測定します。収縮期血圧がいわゆる「上の血圧」と呼ばれるもので、拡張期血圧が「下の血圧」と呼ばれるものです。

日本では収縮期血圧が140mmHg以上、もしくは拡張期血圧が90mmHg以上の場合が高血圧とされ、治療開始の目安となっています。

肥満以外の血圧が上がる要因

タバコ 女性

日本人の高血圧の9割ほどを占める本態性高血圧は、原因がはっきりしないことが多いとされています。その中でも、以下のようなことがリスクファクター(危険因子)となるのではないかと考えられています。

喫煙

タバコは「百害あって一利なし」などといわれますが、それはタバコに含まれている有害物質であるニコチンによってもたらされます。ニコチンは、毒物及び劇薬取締法に明記されている「毒」ともいえるもので、その毒性は青酸カリよりも強いといわれます。

タバコを吸うと毛細血管が収縮し、血行が悪くなります。血行が悪くなると、心臓はより強い力で血液を送り出そうとします。その結果、血圧があがるという訳なのです。

塩分の過剰摂取

肥満している人のほとんどが、食べ過ぎが原因とされています。特に、炭水化物を好む人は、味付けの濃いおかずを食べがちです。そのため、塩分を過剰に摂取してしまう傾向があります。

塩っ辛いものを食べるとのどが渇くように、血液中の塩分(ナトリウム)が増えると、血中の塩分濃度を一定に保つため、血管内に水分が送られます。結果として血管内の血液量が増えるため、血圧も高くなってしまうのです。

ストレス

ストレスは万病の元といわれますが、ストレスを感じたときにも血圧があがります。平常時は何ともないのに、病院で検査をしたときだけ血圧があがるような場合、「白衣性高血圧」などといわれることがあります。

また、ストレス状態が継続することで自律神経のバランスが乱れると、やはり高血圧になる傾向があるということです。

過度の飲酒

高血圧の原因としては、お酒の飲みすぎもあげられています。酒は百薬の長などといわれますが、飲みすぎてしまうと血圧のあがることが分かっています。

ただ、習慣的にお酒を飲んでいる人の血圧があがるのは日中で、実際にお酒を飲んでいる夜間には血圧の下がることも分かっているそうです。そのため、飲酒を控えたとしても、1日平均で見るとそれほど血圧を下げる効果は期待できないようです。

高血圧の治療法

野菜を食べている女性

病院での健康診断の結果、高血圧であるとされた場合、どのような治療がおこなわれることとなるのでしょうか。

生活習慣の改善

原因がよく分からない本態性高血圧の場合、生活習慣を改善することが基礎的治療法として推奨されているということです。

日本高血圧学会の定める高血圧治療のガイドラインによると、塩分の摂取量を1日あたり6g以内にするとか、野菜や果物を積極的に摂るなどといった食習慣の改善が推奨されています。

また、有酸素運動を1日に30分以上おこなうことによって、BMIの数値を25以内にすることも推奨されています。もちろん、アルコールは控えめにして、タバコはやめることが重要です。

薬物療法

軽度の高血圧であれば、生活習慣を改善するだけでも効果がありますが、重度の高血圧になると、生活習慣の改善だけでは追い付かないことがあります。その場合には、血圧を下げる薬(降圧剤)や利尿剤を服用することとなります。

肥満の改善法

ランニングしている女性

肥満になると高血圧になるリスクが高くなるということでした。ということは、肥満を改善することで、高血圧になるリスクを下げることも可能だということですよね。では、どのような方法で肥満を改善することができるのでしょう。

運動をする

肥満とは体脂肪が身体に付着した状態のことを言います。ということは、体脂肪を減らすことによって、肥満を改善することが可能となる訳です。

体脂肪を減らすための運動としてもっともおススメなのが、有酸素運動と呼ばれるタイプの運動です。有酸素運動の代表的なものは、ウォーキングやジョギングなど「ゼエゼエハアハア」いわない程度の運動です。

筋肉に軽度から中等度の負荷を与え、長時間にわたって運動することで、体脂肪を燃焼させることが可能となります。

有酸素運動を開始すると、はじめのうちは血中の糖質が燃焼されてエネルギーになりますが、血中の糖質が使い果たされると、次に体脂肪が燃焼してエネルギーへと変えられます。それによって、体脂肪を減らすことが可能となるのです。

筋トレをする

肥満を改善するためには、基礎代謝を下げないことも重要です。そして、基礎代謝を下げないためには、筋力アップ、もしくは筋肉量の維持が重要となります。

基礎代謝は年々減っていくものですが、その理由の1つとして筋力の低下があげられます。なぜなら、筋肉量は基礎代謝の2割以上を占めているからです。

筋肉は単に運動をするときに働くだけではなく、体温を発生させたり、血液を心臓へと送り返したりするときにも働いています。つまり、筋肉量が多いだけで、痩せやすい体質ということができるのです。

食事制限だけで体重を減らすと、筋肉も一緒に落ちてしまいます。もし、体重が元に戻った場合、ダイエット前よりも太りやすい体質になってしまうのです。それがリバウンドの仕組みという訳なのです。

食事制限をする

ダイエットの本来の意味は、「健康と美容のために食事の量をコントロールしたり、食事内容を見直したりすること」とされています。つまり、ダイエット=食餌療法ともいえる訳です。

世の中にダイエットの方法はたくさんありますが、好きなものを好きなだけ食べて痩せる方法など「絶対に」ありません。特に、糖質の過剰摂取は肥満のもとです。

ごはんやパン、麺類といった炭水化物を好んで食べている人は、まず主食の量を減らすようにしましょう。もちろん、砂糖や生クリームが大量に入っている洋菓子も控えましょう。

高血圧の治療ガイドラインにもありましたが、野菜や果物を積極的に摂ることは、肥満の改善にも効果的です。食事の前にサラダを摂るようにするなど、工夫するとよいでしょう。

ダイエットをするときに運動をするのももちろん結構なことなのですが、運動によって消費されるカロリーは微々たるものです。1時間ウォーキングをしたとしても、おにぎり1個食べただけでチャラになってしまいます。

ただ、「じゃあ運動しなくていいの?」というのは早計です。やはり食事制限をしつつ有酸素運動で体脂肪を燃焼させ、さらに筋トレで筋力アップ、もしくは筋力を維持することが肥満の改善への近道と言えるでしょう。

高血圧に関する異論

右手を前に出している男性

高血圧治療のガイドラインに対しては、医師からも疑問の声の聞かれることがあります。というのも、人間は年を取るごとに血圧が上がっていくものだからです。

血液の中には、酸素と栄養のほかに白血球やガン壊死因子も含まれており、それらが体の隅々に送られることで、私たちの健康状態を維持しているのです。

かつて、血圧の標準値は「年齢プラス90」とされていましたが、基準値はどんどん下げられ、2014年には上の血圧が130以下、120くらいが良好とされるようになったのです。

その結果、日本人の高血圧率がグンと増える結果となった訳です。これでは健康のために基準値を下げたのではなく、降圧剤を売るために下げたといわれても仕方がありませんよね。

血圧は必然性があって上がっていくものです。急激に上昇した場合はともかく、緩やかに上がっていくのであれば、無理に降圧剤を用いることはないという見解もあるのです。

肥満は高血圧のリスクが上がる

肥満と血圧との関係について見てきましたが、いかがだったでしょうか。肥満をすれば高血圧になるリスクが高くなり、高血圧になれば生活習慣病を併発するリスクも高くなるということです。将来の生活習慣病を予防するためにも、早いうちからダイエットに取り組んで、肥満を改善したいものですね。