【肥満対策】肥満が原因となる病気11選と身体の不具合とは

現在日本でも肥満患者が多くなってきており、肥満外来なども増えてきています。肥満はあらゆる病気の引き金になります。肥満が引き起こす病気とはどのようなものがあるのでしょうか?

肥満に悩んでいる方も、肥満にならないか心配な方も、これを読んで肥満を改善しましょう。

肥満とは

お腹にメジャーをまく女性

肥満とは、通常よりも体重が多い、または体脂肪過剰についている状態のことです。ここで「通常」とされている基準は、日本肥満学会の肥満基準で分類された普通体重(BMI18.5~25未満)または統計的にもっとも病気にかかりにくいBMI22を利用します。

BMIとは、Body Mass Indexの略で、体格指数とも呼ばれています。この数値は、体重(㎏)÷身長(m)÷身長(m)で計算され、この数値が18.5以下を低体重、18.5~25未満を普通体重、25以上を肥満としています。

BMI25以上

日本肥満学会の基準では、BMI25以上が肥満です。さらに細かく分類すると、25以上30未満が肥満1度、30以上35未満が肥満2度、35以上40未満が肥満3度、40以上が肥満4度で、とくにBMI35以上は高度肥満と分類されています。

日本では高度肥満の成人は全体の0.2~0.3%と言われていますが、肥満の割合は、厚生労働省による「国民の健康・栄養調査(2016年)」によると、男性およそ30%、女性およそ20%です。

生活習慣の乱れからおこる

肥満の原因はおもに食べ過ぎや運動不足です。摂取したエネルギーよりも消費するエネルギーの方が多かったら、消費されないエネルギーが脂肪として蓄えられてしまうのはかんたんに想像できますよね。

また、手軽に食べられるインスタント食品や冷凍食品など、糖分や脂肪分が豊富でビタミンやミネラルなどの栄養素に乏しい食生活が、太りやすい体を作ってしまうこともよく知られています。

でも、肥満の原因はそれだけではありません。たとえば慢性の便秘によって便が排泄されない状態が続くと、体の代謝が低下し、老廃物や脂肪が溜まり、太りやすくなります。

また、ストレス、加齢などによるホルモンのバランスの変化、不規則な生活などが原因で自律神経に影響が及び、結果として消化吸収機能にも影響が及び、太りやすい体質へと変わってしまうことがあります。

様々な病気の原因になる

相変わらずやせているほうがキレイだという風潮が強いものの、太っている人がキレイではないということではありませんし、美しさはまったく変わりません。肥満の状態で問題なのは、身体の不具合を引き起こし、病気の原因となる可能性があることです。

さらに、動くことが面倒になることで、気分が引きこもったり、だれかと会うのが嫌になったりと、精神面にも影響が及んできます。

生活習慣病

かつては加齢によって発病されると考えられていた成人病。生活習慣と深く関りがあることから生活習慣病という名称に変わって久しいですよね。

生活習慣病とは、食べ過ぎや運動不足などの生活習慣が原因で発症する疾患のことです。生活習慣病は、医療費にも大きな影響を与えることから、積極的に厚生労働省が予防対策に取り組んでいる病気で、高血糖、高血圧、高脂血症、糖尿病などのことです。

こうした病気のうち2つ以上の病気が一度に見られ、かつ内臓脂肪が見られる場合、メタボリックシンドロームと呼ばれています。日々のニュースやテレビ番組などで、この名称を聞かない日がないぐらいよく耳にすることからも、生活習慣病が大きな社会問題であることがわかります。

肥満で起こる身体の不具合

膝を手で押さえている女性

それでは、肥満になると、いったいどのような不具合が生じるのでしょうか。それまでの身体機能がどのように変化し、どういった症状が身体に現れるようになるのでしょうか。肥満によって起こる身体的な不具合について見てみたいと思います。

心臓への負担

肥満になると、太った分、体が大きくなるため、毛細血管も伸びていきます。すると、心臓は血管が伸びた分、血液を送り出そうとして圧力を上げていきます。

つまり、心臓はそれまで以上に働かなければならなくなり、心臓に大きな負担がかかってきます。結果、高血圧が引き起こされるほか、脂質異常症や動脈硬化などの進行を加速させることもあります。

腰や膝への負担

体重が増えると、膝や腰に負担がかかるようになります。とくに、長年の膝への負担が原因で、膝の関節が少しずつすり減ることで発症する変形性膝関節症では、加齢、運動不足のほか、肥満は最大の原因です。

また、肥満になるとおなかの周りに皮下脂肪がつくようになることで背中が反るようになるため、腰椎(ようつい)や椎間板(ついかんばん)などに無理が生じ、腰痛が生じるようになります。

高血糖、高血圧、高脂血症

これらの病気は生活習慣病と呼ばれています。偏った食生活や運動不足のほか、飲酒、ストレス、喫煙といった生活習慣が原因です。

これらの病気は、肥満の状態で起こった場合、複数の病気が重ねることでリスクが高まります。メタボリックシンドロームの原因となることでも知られていますよね。

ホルモン値上昇

肥満によってホルモン値が上昇することで、さまざまな健康問題が起こります。

たとえば、女性において、血中のテストステロンという男性ホルモンが上昇することで、卵巣ガンのリスクが高くなるという研究報告があるほか、肥満の女性は閉経後も女性ホルモンの濃度があまり下がらないため、乳がんのリスクが高まるという報告があります。

「肥満と卵巣がんとの関連」

「Body mass index and breast cancer risk in Japan: a pooled analysis of eight population-based cohort studies」

肥満が原因で起こりやすい病気11選

血圧を測る

肥満の状態が引き起こす症状として、まず生活習慣病が挙げられますが、肥満の状態を放置していると、生活習慣病が悪化し、重大な病気へと進んでいくことがあります。場合によっては死に至るケースもあります。いったいどのような病気が考えられるのでしょうか。

糖尿病

糖尿病とは、すい臓から放出されるホルモンのひとつであるインスリンの働きが悪くなることで、血糖値が高い状態が続く病気です。高血糖の状態が続くと、血管は傷つき、血液はドロドロになり、血管がボロボロになっていきます。

糖尿病になると、糖尿病三大合併症と呼ばれる糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害を引き起こすほか、脳梗塞や心筋梗塞など、命にかかわる病気を引き起こすこともあります。

糖尿関連腎臓病

糖尿病性腎症は、糖尿病による合併症のひとつです。腎臓は、血液中の老廃物をろ過する働きのある糸球体と呼ばれた細小血管の塊が集まった器官ですが、糖尿病になると、糸球体の細小血管が狭くなるため、老廃物がろ過できなくなってしまいます。

悪化すると、腎臓の機能がほぼなくなり、透析療法を行うようになります。日本透析医学会の「わが国の慢性透析療法の現況(2015年12月31日現在)」によりますと、透析導入の原因となった疾患の1位が糖尿病性腎症で、38.4%とあります。

高血圧

高血圧とは、血圧が正常範囲を超えた状態で維持されている状態のことです。日本高血圧学会によりますと、収縮期血圧が140mmHg以上または拡張期血圧が90mmHg以上に保たれた状態とされています。一時的に血圧が高くなることではありません。

高血圧になると、血管の内壁が傷つき、血管の柔軟性がなくなって硬くなり、動脈硬化を引き起こしやすくなります。

心筋梗塞・狭心症

高血圧などによって動脈硬化が起こると、血管の内側が狭くなり、血流が不十分になってしまいます。心臓を動かす血量が不足する状態(心筋虚血)で、胸痛や胸の圧迫感を感じるようになることを狭心症と言います。

さらに血管が狭くなることで、完全に血液が流れない状態になりますと、その部分の心筋細胞が壊死してしまいます。これが心筋梗塞です。ともに動脈硬化によって起こる典型的な心臓疾患です。

脳梗塞

脳梗塞とは、脳の血管が詰まる病気で、脳の一部が死んでしまいます。このため、運動麻痺が起きるほか、言葉がうまく話せなくなるなどの後遺症が残ることが多く、日常生活を送るのが難しい状況に陥ることも少なくありません。

手足がしびれる、足がもつれる、ろれつが回らない、言葉が出てこない、他者が話したことがわからないなどの症状が現れたら脳梗塞かもしれません。ただちに病院に駆けつけ、早期治療をすることで、後遺症を少しでも軽くすることができます。

脂質異常症

脂質異常症とは、悪玉LDLコレステロールや中性脂肪が増えるほか、善玉HDLコレステロール値が減っている状態のこと。2007年より「高コレステロール血症」と「高脂血症」を総称して脂質異常症と呼ばれるようになりました。

この状態を放置していると、動脈硬化を起こしやすくなり、さらに脳梗塞や心筋梗塞などの病気が起こる恐れがあります。

脂肪肝

脂肪肝とは、中性脂肪が肝臓に蓄積する病気のこと。摂取された脂質は小腸で吸収されて肝臓で脂肪酸に分解され、糖質はブドウ糖に分解されて小腸から吸収されると肝臓で中性脂肪となりますが、このとき、摂取したエネルギーの方が消費するエネルギーに比べて多いと、使いきれなかった脂肪酸やブドウ糖が中性脂肪として肝臓に蓄えられていきます。

さらに、肥満の状態になると、肝臓での脂肪酸の燃焼が悪くなるため、肝臓に中性脂肪が溜まりやすくなり、脂肪肝となってしまいます。

脂肪肝をそのままにしておくと肝機能が低下し、さらには肝硬変、肝臓がんなどに至る可能性があります。

痛風・高尿酸血症

血液の中にある尿酸という物質の濃度(血清尿酸値)が高くなる病気が高尿酸血症です。血清尿酸値は一時的に高くても問題ありませんが、高い状態が続くと尿酸が関節に沈着していきます。こうして、針状の結晶の尿酸が刺すような激しい痛みを起こすことを痛風と言います。

肥満の方が高尿酸血症になる原因は過食で、尿酸の前駆体であるプリン体はほぼすべての食品中に含まれることから、食べ過ぎることで尿酸が体内に過剰に入り込み、高尿酸血症が起こるようになります。

睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群

睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に何らかの原因で呼吸が停止することで、この症状が現れるほとんどの人が肥満低換気症候群を呈します。

肥満低換気症候群は、睡眠呼吸障害のひとつで、睡眠中だけではなく、日中にも換気が低下している状態で、BMI30以上の肥満と、慢性の高二酸化炭素血症を伴います。喉のあたりの空気の通り道が閉塞して呼吸が困難で、日中に過度の眠気を生じるほか、朝方に頭痛が起こるなどの症状が現れます。

整形外科的疾患

肥満の状態でいると、重い体重を長期間にわたって支えなければなりません。その結果、腰椎が変形したり圧迫骨折を起こしたりする変形性腰椎症が起こるほか、膝関節の軟骨がすり減る変形性関節症を生じることがあります。

月経異常・不妊・妊娠合併症

脂肪細胞から分泌され、食欲のコントロールに働くレプチンは、生殖機能も持っています。このため、脂肪の場合、体脂肪が蓄積され、血中レプチンの濃度が高度であるにもかかわらず、レプチン抵抗性の状態となることから、月経異常、不妊症などの症状が現れます。

また、肥満の状態で妊娠すると、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などの妊娠合併症にかかる可能性が高くなります。

肥満への治療方法

ミーティングをしている医者と看護師

肥満の状態になると、生活習慣病にかかるリスクが高くなります。場合によっては、すでに生活習慣病にかかっている可能性もあります。さらに、肥満の状態を放置していると、死に至る病気などにかかる可能性もあります。つまり、肥満の状態はすぐに解消しなければなりません。

肥満の治療方法は、おもに食事療法と運動療法、さらに日々の生活習慣そのものを改善する行動療法が取られます。場合によって、投薬療法や外科療法も取られます。

食事療法

肥満は食べ過ぎと運動不足によって起こります。このため、食事療法は最も重要な方法で、摂取カロリーをコントロールすることで体重の減少を図ります。

1日の摂取カロリーの基準は、それぞれの機関によって微妙に違います。厚生労働省では、1日に必要なエネルギー(kcal)=標準体重(kg)×標準体重1kgあたりに必要なエネルギーとしています。

標準体重=身長(m)×身長(m)×22

活動別・標準体重1kgあたりに必要なエネルギー

軽労働(デスクワークの多い事務員・技術者・管理者など)  25-30kcal

中労働(外歩きの多い営業マン・店員・工員など)        30-35kcal

重労働(農業/漁業従事者・建設作業員など) 35kcal-

厚生労働省「肥満と健康」

運動療法

肥満を解消するための運動療法では、ウォーキングなどの有酸素運動によって、中性脂肪や体脂肪を減少させ、血圧や血糖値を低下させます。

運動による刺激は、肥満だけではなく、さまざまな病気やストレスなどの解消にもつながるため、さまざまな効果が期待されています。

行動療法

肥満の治療は、食事療法と運動療法がおもに使われますが、実際には継続することが困難で、リバウンドしてしまうこともよくあります。

そのため、肥満治療のもうひとつの核となるのがこの行動療法で、肥満の状態を引き起こした生活習慣を見直し、その問題点を探ります。こうすることで、長期的にダイエットを続けることが可能となります。

投薬療法

肥満の治療で食事療法、運動療法、行動療法を行っても改善が見られない場合、投薬療法が検討されます。使われる薬には、高度肥満の方に保険適用される食欲を抑える薬や漢方薬があります。

ただし、投薬療法はすべての肥満の方に用いられるわけではありません。最近、日本では未認可のダイエット薬などで健康被害が出ている例もありますので、まずは医師に相談するようにしましょう。

外科療法

欧米では肥満の治療の一環で外科療法が普及していますが、日本では、肥満と合併症の悪化や進行が考えられる場合に行われます。手術が適応される条件として、日本肥満症治療学会のガイドライン(2013年)では、

「内科的治療に 抵抗性の18歳から65歳までの原発性肥満患者 で,①減量が主目的のbariatric surgeryの場合は BMI 35 kg/m2以上,②合併症治療が主目的の metabolic surgeryの場合はBMI 32 kg/m2以上」

を手術適応としています。bariatric surgeryとは肥満を治療するための手術のこと、metabolic surgeryとはメタボリックシンドロームを治療するための手術のことです。

また、日本で行われる手術について、「本邦における手術法は、現在世界で最も信頼され、広く行われている胃バンディング術、胃バイパ ス術、スリーブ状胃切除術、スリーブ状胃切除術+十二指腸スイッチ術(スリーブバイパス術)を原 則とする」とありますが、日本では肥満に対する外科療法は世界に後れを取っています。

肥満は病気になる前の早期改善が重要

肥満は食べ過ぎと運動不足という日々の生活習慣が原因で起こります。肥満になると、身体への不具合はもちろん、病気を引き起こし、死に至ることもあります。肥満に対する治療方法は、食事療法、運動療法、行動療法が中心で、場合によっては投薬療法や外科療法などが用いられます。