便秘で悩まされている方はたくさんいらっしゃることと思いますが、実は便秘にはさまざまなタイプがあることをご存じだったでしょうか。
便秘のタイプに合わせた対処法が必要となるのですが、そのためにはまず、自分の便秘のタイプを知っておく必要があります。今回は、便秘のチェックリストと、便秘のタイプ別の対処法を紹介したいと思います。
便秘チェックリストその1・弛緩性便秘の場合
便秘にはいろいろなタイプがあります。病気などが原因ではない便秘に機能性便秘といわれるタイプの便秘がありますが、機能性便秘にもいくつかあります。まずは弛緩性便秘について見ていきたいと思います。
弛緩性便秘のチェックリスト
それでは早速ですが、弛緩性便秘のチェックリストを確認してみましょう。以下の項目に5個以上当てはまる人は、弛緩性便秘になるリスクが高いといえます。
- 若いころにあまり運動をしていなかった
- 普段からあまり歩いたり運動したりしない
- 腹筋運動ができない、もしくは苦手
- 面倒くさがり
- 家事が苦手
- 小食である
- 便が途切れがちで少ししか出ない
- 疲れやすい
- 便秘薬を飲まないと排便できない
- ダイエットをしている
弛緩性便秘とは?
弛緩性便秘とは、腸の蠕動運動(ぜんどううんどう)が弱くなることによって、便が肛門の手前にある直腸まで運ばれにくくなり、それによって排便が困難になるタイプの便秘のことをいいます。
弛緩性便秘の原因
弛緩性便秘は、腸の蠕動運動が弱くなることによって起こるということでしたが、では、なぜ腸の蠕動運動が弱くなってしまうのでしょうか。
加齢
腸の蠕動運動が弱くなる理由としては、加齢があげられます。年をとれば誰でも、若い頃よりは筋肉量が減少しますし、運動量も低下することとなります。
筋力の低下
弛緩性便秘は、どちらかというと女性に多くみられるタイプの便秘です。その理由として、女性は男性よりも筋力の弱いことがあげられます。
筋力が弱くなると、腹圧が低下するため、腸の蠕動運動が弱くなるのです。加齢によって筋力が落ちて弛緩性便秘になりやすいのも同様の理由からです。
弛緩性便秘の改善法
弛緩性便秘を改善するためには、なるべく身体を動かすことです。筋トレをするのも有効ですが、日常の生活にうまく運動を取り入れるようにするとよいでしょう。
ちょっとそこまでお買いものというようなときには、自転車を使わずに歩いていくようにしましょう。また、エレベーターやエスカレーターを使わずに、階段を使うのも弛緩性便秘の改善に効果的です。
便秘チェックリストその2・けいれん性便秘の場合
機能性便秘の中には、けいれん性便秘と呼ばれるタイプの便秘もあります。比較的女性に多いタイプの便秘ですが、男性がなることもあります。
けいれん性便秘のチェックリスト
それでは、けいれん性便秘のチェックリストを見ていきましょう。やはり、以下の項目のうち、5個以上該当するようであれば、けいれん性便秘を発症するリスクがあります。
- ストレスフルな毎日を過ごしている
- 便がウサギのフンのようにコロコロとしていて固い
- 睡眠時間が短い、もしくは入眠時間がその日によってことなる
- 寝る直前までテレビや携帯電話を見ている
- 「まじめだね」とよく言われる、完璧主義者
- 休みの日は遅くまで寝ている
- 趣味がなくて休みの日はぼんやりとしている
- 朝ごはんは食べたり食べなかったりしている
- 病院で自律神経失調症といわれたことがある
- お風呂に浸かる機会が少ない
けいれん性便秘とは?
けいれん性便秘とは、腸がけいれんして収縮することにより、便の通り道が狭くなることで発症するタイプの便秘です。便秘と下痢を繰り返すようなこともあります。
けいれん性便秘の原因
けいれん性便秘は女性に多くみられるタイプの便秘ですが、男性にみられる場合は、便秘と下痢とを繰り返す傾向があるようです。では、けいれん性便秘の原因はなんなのでしょうか。
ストレス
けいれん性便秘の主な原因として、ストレスの存在があげられています。ストレスはさまざまな疾患を発症させるリスクファクター(危険因子)となりますが、便秘に関しても例外ではありません。
ストレスを感じると、人間の身体は交感神経優位の状態になります。交感神経とは車でいうところのアクセルのような働きをしており、血管を収縮させて血圧を上昇させます。
自律神経は交感神経と副交感神経の2つで成り立っており、両者がバランスを取ることによって、私たちの生命活動が円滑におこなわれることとなります。副交感神経は、交感神経とは逆に、車でいうところのブレーキの働きを担っています。
交感神経と副交感神経のどちらが優位であれば健康だという訳ではなくて、交感神経が優位になるべき時に優位になり、副交感神経が優位になるべき時に優位になるということが重要なのです。
一般的には、日中に交感神経が優位になり、夜間に副交感神経が優位になることが重要だとされています。ところが、ストレス状態が継続すると、夜間になっても交感神経優位状態が続いてしまいます。
簡単に言うと、寝ている間もアクセルを踏みっぱなしているような状態になる訳です。それでは身体が休まる訳がありませんよね。
私たちが食べたものは、寝ている間に活発に消化・吸収されることとなります。ところが、寝ている間も交感神経優位の状態が続くと、消化・吸収に支障をきたすこととなります。
夜になっても交感神経優位の状態が続くと、身体の回復機能が低下し、朝起きても疲れが取れていなかったり、十分に寝た気がしなくなったりします。そうなると、今度は日中に眠くなってしまいます。
それで昼寝をしたり、休みの日に遅くまで寝ていたりすると、今度は夜になっても眠れなくなるという悪循環に陥ります。
ストレス状態が継続することのデメリットはそれだけではありません。ストレス状態が継続すると、脳内の神経伝達物質のバランスにも悪影響を与えます。
脳内の神経伝達物質にはいろいろなものがありますが、中でもノルアドレナリンとドーパミン、セロトニンは脳内の三大神経伝達物質と呼ばれています。
ごくごく簡単に説明すると、ノルアドレナリンとドーパミンには、神経を興奮させる働きがあります。よく「アドレナリンが出る」などといいますが、ノルアドレナリンはアドレナリンの前駆体です。
セロトニンには、ノルアドレナリンやドーパミンとは反対に、神経を鎮静化させる働きがあります。三大神経伝達物質も、やはりバランスの保たれていることが重要となります。
ノルアドレナリンやドーパミンの分泌量ばかりが多いと、欲求を満たすことができなくなり、際限なく快楽を追い求めることとなります。また、イライラしたり怒りっぽくなったりします。
セロトニンは神経を鎮静化させるためには必要なのですが、必要以上にセロトニンが分泌されると、意欲や気力の低下や、物事に対する関心の低下を招きます。
ストレス状態が継続した場合、セロトニンの分泌量が減少し、神経を鎮静化させることができなくなってしまいます。それによって、交感神経優位の状態が続いてしまうのです。
セロトニンの分泌量減少による弊害はそれだけではありません。セロトニンの分泌が減少すると、脳の視床下部というところにある満腹中枢が刺激されにくくなります。
そのため、ついつい食べすぎてしまうこととなります。やけ食いというのは、脳神経科学的に見ても根拠があるという訳なのです。その結果、けいれん性便秘を発症することとなるのです。
過敏性腸症候群
けいれん性便秘の原因としては、過敏性腸症候群の存在もあげられています。過敏性腸症候群の原因は、現代医学をもってしてもよく分かっていません。
ただ、夜間には便意が起こらないことと、ストレス状態が緩和することによって、過敏性腸症候群の症状も緩和することから、ストレスが過敏性腸症候群を引き起こすリスクファクターとなっているのではないかと考えられています。
過敏性腸症候群にはいくつかのタイプがあります。女性の場合は便秘になることが多いのですが、男性の場合は下痢になることが多いということです。また、便秘と下痢を繰り返す複合型の過敏性腸症候群もあります。
けいれん性便秘の改善法
けいれん性便秘の改善法としては、けいれん性便秘の原因となるストレスを取り除くということがあげられます。
便秘を改善する際には便秘薬が用いられることもありますが、けいれん性便秘や過敏性腸症候群の場合、そもそもの原因となるストレスを取り除かないと、薬の効果はあまり発揮されないということです。
便秘チェックリストその3・直腸性便秘の場合
機能性便秘の中には、直腸性便秘と呼ばれるタイプの便秘もあります。弛緩性便秘とけいれん性便秘とはまた異なった特徴がありますので、後ほど詳しくみていきたいと思います。
直腸性便秘のチェックリスト
それでは、直腸性便秘のチェックリストを見ていきましょう。やはり、以下の項目のうち、5個以上に該当する場合、直腸性便秘を発症するリスクが高くなります。
- 痔を発症したことがある
- トイレに行くタイミングを逃しがちである
- 朝起きるのが苦手で、トイレタイムを十分に作れない
- 水分補給を怠りがち
- 排便のとき強くいきまないとなかなか便が出てこない
- 職場で大便をすることに抵抗がある
- 便が硬くて排出するのが困難である
- 仕事中にトイレに行くのが難しい
- 排便をした後にもまだ便が残っている気がする
直腸性便秘とは
直腸性便秘は、弛緩性便秘やけいれん性便秘とは異なり、便はちゃんと肛門の手前にある直腸までは送られるものの、便意が脳にうまく伝わらないことによって起こるタイプの便秘をいいます。
直腸性便秘の原因
直腸性便秘になると、硬い便が肛門の手前にある直腸へとたまっていくこととなります。では、なぜそのようなことが起こるのでしょうか。
排便習慣
直腸性便秘は別名を習慣性便秘ともいい、不規則な排便習慣によって発症するリスクが高くなることで知られています。
たとえば、朝の時間が忙しくてトイレに長く入っていられなかったり、仕事中にトイレを我慢したりすることによって、便意を喪失してしまうと、結果として直腸に便がたまっていくこととなります。
便秘薬
直腸性便秘の原因としては、便秘薬の存在もあげられています。便秘薬や浣腸を常用することで、自分の意思によって排便をすることが困難になるケースもあります。
直腸性便秘の怖いところは、便がたまることによって合併症を発症するケースもあるということです。まれなケースではありますが、最悪の場合死亡することもあります。
実際に起きた死亡例があるので紹介しておきたいと思います。1998年のことですから、それほど昔という訳でもありません。
奈良県に住む当時21歳の女性が、直腸性便秘が原因と見られる腸閉そくによって亡くなるという痛ましいニュースがありました。
亡くなった女性はどちらかというと小柄で華奢でしたが、亡くなったときには腸内に6.7kgもの便がたまっており、妊婦さんのようにお腹が膨れていたということです。
また、直腸の中には10cmにわたって、水分を全く含んでいないコンクリートのように固い便がたまっていたということです。
女性はトイレの前に倒れており、その爪の中には固くなった便が詰まっていたということで、どれほど苦しんだかが想像できます。
直腸性便秘になると、痔を発症するリスクも増大します。男女ともに多いのは痔核と呼ばれる、いわゆる「いぼ痔」ですが、女性の場合、いぼ痔に続いて多いのが裂け痔とか切れ痔などと呼ばれる裂肛(れっこう)です。
裂肛は、排便時に固い便が肛門を通過することによって、肛門周囲の粘膜が傷つけられることによって起こります。
排便時に痛みをともなうため、排便を我慢してかえってべんぴが悪化するという悪循環に陥るケースもあります。
また、女性の場合、がんによる死因のナンバー1を大腸がんが占めています。このことと、女性に便秘が多いこととは無関係ではありません。
便秘とは腸内に便が滞っている状態のことをいいますが、腸内に長時間にわたって存在している便は、やがて腐敗し始めます。そして、腐敗した便からは発がん物質が放出されるのです。
直腸性便秘の改善法
直腸性便秘の改善法は、まず病院を受診することです。現在たまっている便を外に出しきってから、腸内環境を改善し、便秘を予防することが重要です。
チェックリストを活用してみて!
今回は、便秘の種類とそのチェックリストについて紹介しました。便秘を放置していると、思わぬ疾患を招く可能性もあります。あまりに長いあいだ便秘が続いているような方は、一度お医者さんに診てもらうようにしてくださいね。