便秘になると、便通がスムーズでなくなるだけでなく、さまざまな症状がみられるようになります。また、便秘が慢性化すると、思わぬ疾患を招くこともあります。
では、便秘になるとどんな症状が出るのでしょう。また、便秘の原因や対処法にはどのようなものがあるのでしょう。
たかが便秘、されど便秘。たかが便秘だと侮って、市販薬を飲み続けていると、思わぬ弊害が現れることもあります。
そこで今回は、便秘になるとどのような症状が出るのか、また、便秘が悪化することでどのような疾患を発症するのかについて紹介するとともに、便秘の原因や対処法についても迫ってみたいと思います。
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便秘の際にみられる症状
便秘の際にはさまざまな症状が現れますが、大きく分けると身体的症状と精神的症状の2つに分類されます。では、それぞれについて見ていきましょう。
便秘の症状〈身体的症状〉
便秘の際に現れる身体的症状としてはまず、お肌のトラブルがあげられます。便秘とは、大腸内に便がとどまっている状態のことを言いますが、大腸内に長くとどまっている便は、やがて腐敗し始めます。
腐敗した便によって腸内の悪玉菌が増えると、有害物質やニオイ物質(スカトールやアンモニアなど)が発生することとなります。便秘の人のオナラが臭いのはそのためです。
また、便が腐敗することによって生じた有蓋物質やニオイ物質は、血液中に溶け込んで全身をめぐることとなります。ニオイ物質が肺に至ると、口臭がひどくなるという現象も現れます。
お肌があれるのも、皮下の毛細血管に有害物質が流れ込むからです。その結果、お肌が荒れて化粧のノリが悪くなったり、吹き出物やニキビなどが出やすくなったりするわけです。
便秘にともなう身体的症状としては、体のだるさや易疲労感(疲れやすくなること)もあげられます。便秘は腸の調子が悪くなることによって起こりますが、腸の状態は全身の状態を表しているともいわれます。
なぜなら、腸は外部からの有害物質(ウイルスや細菌、寄生虫など)がもっとも集まりやすい場所であるため、免疫細胞がたくさん集まっているのです。その数は、全身に存在する免疫細胞の7割にも及ぶとされています。
つまり、腸の調子が悪くなるということは、免疫力が低下するということにもつながっているのです。そのため、腸の調子が悪くなると、疲れやすくなったり身体がだるくなったり、風邪をひいたりしやすくなるのです。
また、便秘にともなう身体的症状として、肩こりや頭痛、腰痛などもあげられています。便秘になっているときは、全身の血行が悪くなるといわれています。
血液は全身に酸素と栄養を運んでいるため、血行が悪くなった場所には栄養状態の低下がみられることとなります。脳への血流が不足した場合、脳は「もっと血液を送って!」というサインを出します。
その際に現れるのがいわゆる「偏頭痛」といわれるものです。偏頭痛は別名を血管拡張性頭痛ともいわれるように、血流が不足したときに急激に血管が拡張することによって起こる頭痛のことを意味します。
栄養状態の低下が肩に見られれば肩こりが起こりますし、栄養状態の低下が腰に見られれば、腰痛が現れることとなります。およそ何らかの症状が出ている場所には、必ずと言っていいほど血液循環の悪化がみられるものです。
女性に冷え症やむくみが多いのもそのためだと言えます。なぜなら、女性は男性に比べると筋力が弱かったり、筋肉量が少なかったりするため、血液を心臓に送り返す力が弱いからです。
さらに、便秘になると食欲の低下もみられます。便がたくさん体内にとどまっていると、血行不良によって胃の機能も低下してしまうため、食欲が低下してしまうのです。
あと、やはり女性に多い便秘にともなう身体的症状が「痔」です。日本人の成人3人に1人が「自分は痔なのではないか」と思っており、実際に検査してみると、そのうちの7割に痔が見つかるということです。
痔は虫歯に続いて多くみられる疾患であり、ある意味、日本人の国民病ともいえる疾患なのです。便秘の女性は排便のときに便を出そうといきむあまり、腹腔のない圧があがり、いぼ痔や切れ痔になってしまうのです。
便秘の症状〈精神的症状〉
便秘になるとさまざまな身体的症状が表れますが、精神的症状も便秘の特徴の1つです。便秘にともなう精神的症状の代表的なものは「イライラ」です。
便通がないということ自体がイライラの元となりますし、便秘になると先ほども紹介したように、疲れやすくなったり身体がだるくなったりします。思うように身体が動かないことから、さらにイライラが増すこととなってしまうのです。
また、便がでないことによる不快感や、おなかの張った感じがするというのも、便秘にともなう精神的症状と言えます。便秘は精神衛生上も好ましくないと言える訳ですね。
便秘の症状が悪化すると…
便秘になるとさまざまな身体的症状および精神的症状が表れるものですが、さらに、便秘が悪化した場合には以下のようなリスクを抱えることとなります。
痔になるリスクが高くなる
先ほど少し触れましたが、便秘が長く続いた場合、痔になるリスクが高くなります。痔には大きく分けて3つのタイプがありますが、それは「痔核(いわゆるいぼ痔)」と「裂肛(いわゆる裂け痔や切れ痔)」、そして「痔ろう(いわゆるあな痔)」の3つです。
男女ともにもっとも多くみられるのが痔核ですが、女性の場合、2番目に多いのが裂肛(いわゆる裂け痔)となっています。その原因の1つとして、硬い便が肛門を通るときに、粘膜を傷つけてしまうということがあげられています。
痔は、軽度のうちであれば手術などをすることなく治すことが可能だということですが、場所が場所だけに恥ずかしがって病院を受診しない人もたくさんいます。その結果、痔が悪化して手術をしなければならなくなるケースもたくさんあります。
大腸がんになるリスクが高くなる
がんは日本人の死因ナンバー1の疾患ですが、中でも大腸がんは、女性のがんによる死亡理由としてもっとも多い疾患です。
便秘と大腸がんには密接な関係があるとされています。なぜなら、大腸がんがもっとも発生しやすい場所は、肛門から近い直腸やS状結腸だといわれているからです。
直腸やS状結腸は便のたまりやすい場所となっており、便が長くとどまればとどまるほど、発生した有害物質による悪影響を受けやすくなってしまうのです。
便通がよい人は肌の調子がよいことも分かっています。なぜなら、体内の有害物質を便とともに排出することができるからです。モデルさんや俳優さんの中には肌をきれいに保つため、食事管理を徹底しておこない、定期的に大腸の内視鏡検査を受けている人もいるほどです。
腸閉そくになる可能性が高くなる
便秘がひどくなったり、長期間続いたりすると、腸閉そくになるリスクが高くなるとされています。実際に、高齢者の便秘がひどくなると腸閉そくになる確率が上がるため、まず便秘を改善するための治療がおこなわれることもあります。
実際に、便秘が原因の腸閉そくによって亡くなられた方もいます。1998年に奈良県で、21歳の女性が、便秘が原因と思われる腸閉そくによって死亡したという痛ましいニュースがありました。
亡くなった女性のBMIは19程度で、どちらかというと痩せ型のほうでしたが、亡くなったあとの解剖によって、腸内に6.7kgもの便が詰まっていたということです。
また、肛門にもっとも近い直腸には、10cmにわたって水分を全く含んでいない、コンクリートのような便が詰まっていたということです。
亡くなった女性の指の爪には、硬くなった便がこびりついていたということです。あまりの苦しさに、自分で描きだそうとしたのではないかと推察されています。
女性は亡くなる1年以上前から便秘薬を使用していたということですが、便秘薬を飲み続けると、身体に耐性ができてしまい、薬の効果がなくなってしまいます。
皆さんもたかが便秘だと侮らずに、あまりに長期間便秘が続くような場合、一度、病院で検査してもらうようにしてくださいね。
便秘になる原因ってなに?
便秘になるとさまざまな症状があらわれ、悪化するといろいろな疾患を発症するリスクが高いということが分かりました。では、そもそもなぜ便秘になってしまうのでしょうか。
バランスの悪い食習慣
便秘になる原因としては、栄養バランスの悪い食習慣があげられます。特に、野菜不足の人に便秘の見られる傾向があるようです。
現代人の食事にはビタミンとミネラルが絶対的に不足しているとされますが、それは、欧米化した食習慣とも無関係ではありません。
戦前の日本人は、玄米を中心として、魚や海藻、野菜をバランスよく食べていましたが、高度経済成長期以降、肉を中心として、白米(精米)やパンをよく食べるようになりました。
白米やパンは美味しいのですが、玄米のように食物繊維を含んでいません。また、お肉とごはんでお腹がいっぱいになるので、必然的に野菜をとる量が減ってしまうのです。
食物繊維は便の嵩を増して腸管を刺激し、便意を促したり、便を固くし過ぎないでスムーズに排便できるようにしたりする働きがあります。便秘に悩まされている人は、野菜や果物を積極的に摂るようにしてくださいね。
水分不足
便秘の原因としては、水分不足もあげられます。私たちが食べたものは、唾液や胃液、胆汁や膵液などによってドロドロの状態になり、小腸で栄養を吸収されたのち、大腸で水分を吸収されます。そのようにして便ができあがる訳です。
ところが、水分の補給を怠ってしまうと、大腸で水分を吸収された便が硬くなりすぎてしまいます。その結果、排便が困難になって便秘へと至る訳です。
デスクワークに集中していると、ついつい水分補給を怠ってしまいがちです。可能であれば机の上にペットボトルに入った飲み物を置いておき、ちょくちょく水分補給するようにしましょう。
運動不足
便秘の原因としては、運動不足もあげられます。特に、高齢者や出産後の女性は、筋力の低下や腹圧の低下によって腸の蠕動(ぜんどう)が弱くなり、便秘になりやすいとされています。
また、運動不足になると血行が悪くなってしまいます。先ほども紹介したように、血行不良になった場所には栄養状態の低下が起こることとなります。
胃腸への血行が悪くなれば、食べたものの消化や吸収機能も低下してしまい、結果として便秘になってしまう訳です。
忙しくて運動をする時間が確保できないという人は、日常的に使っているエスカレータやエレベーターを階段に変えるなど工夫するとよいでしょう。
ストレス
ストレスも便秘になる原因の1つとしてあげられます。ストレスは万病のもとなどともいわれますが、便秘とはどのような関係があるのでしょう。
ストレスが万病の元といわれる理由は、ストレス状態が続くことによって自律神経のバランスが乱れてしまうからです。自律神経は交感神経と副交感神経とで成っており、両者がバランスを保つことで、私たちの生命活動を円滑なものにしてくれています。
交感神経と副交感神経との関係は、よく車のアクセルとブレーキとの関係にたとえられます。活動的になる時間帯は交感神経が優位になり(アクセルを踏み)、身体を休める時間帯には副交感神経が優位になる(ブレーキを踏む)という訳です。
ところが、ストレス状態が続くと、身体を休めるべき時間になってもアクセルを踏みっぱなし(交感神経優位)の状態になってしまいます。
交感神経が優位になると、血管が収縮して血液の循環が悪くなってしまいます。血液の循環が悪くなることによる弊害は、これまで何度も述べてきたとおりです。
また、私たちが食べたものの消化や吸収は、身体を休めている時間帯=睡眠中に活発になります。ところが、交感神経優位の状態が続くと睡眠の質が低下し、消化や吸収を遅延させてしまいます。
睡眠の質が低下すれば、朝起きたときに疲れが抜けていない感じがするのも当然と言えます。このように、ストレスは便秘だけでなく、さまざまな体調不良の原因となるのです。
ストレスの自覚がある場合、お風呂にゆっくりと浸かってリラックスし、早寝早起きを心がけるようにしましょう。便秘に限らず、すべての疾患に有効な対処法ですよ。
便秘が長く続いていませんか?
今回の記事では、便秘にともなう症状や便秘を放置した場合のリスク、また、便秘になる原因について紹介しました。便秘は決して珍しいものではありませんが、長く続くとさまざまな弊害を生じることにもなりかねません。あまり長く便秘が続くようであれば、一度お医者さんに診てもらうようにしてくださいね。