便秘が長い間続くと、お腹の痛みやおなかの張りなどの不快感が生じるだけでなく、お肌の状態を悪くさせたり、身体や精神的な面への悪影響も認められるようになります。
どうしてお腹の症状である便秘で、お腹以外のところに症状が現れるのでしょうか?その原因や症状、効果的な即効性のある便秘解消法について、わかりやすく解説します。便秘をすぐに治したいと思っている方、必見です。
便秘での悪影響
便秘が続くと、どのような影響が身体に現れるのでしょうか?
肌の不調
便秘になると腸の中に、本来は排出されるべき古い便がずっと残ったままになってしまいます。便は古くなるにつれ、どんどん腐敗が進行し、そこから腐敗性のガスや毒素などの有害物質を排出するようになります。
腸は、栄養素を吸収しやすい構造になっていますが、栄養素と有害物質を峻別して吸収してくれるわけではありません。有害物質も等しく吸収されてしまいます。すると、有害物質が血液の流れにのって全身に運ばれます。
それがお肌に届くと、肌荒れや吹き出物を作りやすくなります。したがって一種の自家中毒とする見方もあります。
日頃からスキンケアを しっかりしているのに、お肌の具合がもうひとつよくないというような時は、その原因は便秘かもしれませんね。
身体の不調
便秘になるということは、腸の調子が悪くなるということです。腸の調子が悪くなると、栄養素も吸収しにくくなります。
そうなると体力が低下し、風邪をひきやすくなるなど、体調が悪化しやすくなります。また、日頃の疲れもとれにくくなり、さらに体調に悪影響が出ます。
便秘が続くと、だるさや疲労感など身体に不調をもたらします。
内臓の不調
便秘になり、腸の働きが低下すると、栄養素の吸収が低下します。栄養素が足りなくなった身体は、エネルギーが不足してしまいます。
不足したエネルギーを補い、少しでも多く必要としている身体の隅々にまで運ぶため、血管を収縮させるようになります。すると身体の各所の内臓に必要とするだけの血液が回らなくなってしまい結果、内臓の不調をきたすようになります。
メンタルの不調
便秘が続くと、お腹の痛みや張った感じなどの違和感、つまり嫌な不快感が生じるようになります。また、便が出ないというストレスも蓄積していきます。
こうした症状からイライラしたり、怒りっぽくなったりします。不安感が継続的に生じると、精神的に落ち込んだ状態にもなります。
便秘になってしまう原因とは?
では、身体のいろいろなところに 不調をもたらす便秘はどうして起こるのでしょうか?
ストレス
緊張や不安、動揺などの精神的なストレスを受けることで、自律神経の働きが障害されてしまいます。
これによって、大腸、特に下行結腸が痙攣性の収縮を起こしてしまいます。収縮して内腔が狭くなることで、直腸へ便を送りにくくなり、便秘になります。
このときの便は、ウサギのフンのような丸いコロコロとした硬い便になります。
我慢のしすぎ
排便を我慢しすぎると、便がおなかの中にあることに慣れてしまい、便意を感じにくくなります。
そのため、直腸内に腸の内容物が運ばれてきても、便意を感じにくいので、排便反射が起こらなくなってしまいます。
腸内細菌のバランスの悪化
腸内細菌の影響も無視できません。腸内細菌は、善玉菌と悪玉菌にわけられます。悪玉菌が増えると、腸内環境が悪化し、腸の働きが低下し、便秘を引き起こしやすくなります。
しかも、便秘になって腸内に便がたまると、さらに悪玉菌が増えるという悪循環に陥ってしまいます。
ビフィズス菌などの善玉菌が多い状態から、悪玉菌が増えるというような腸内細菌の構成バランスの悪化は、便秘につながります。
姿勢が悪いことでの浅い呼吸
姿勢も実は便秘に関係があります。悪い姿勢といえば、猫背ですよね。猫背になると上半身が前屈みになり、お腹が圧迫されます。
すると、腸内で便を送り出すことが困難になります。日常的に座った姿勢で仕事をすることが多い人や、職業運転手などが便秘になりやすいのはこのためです。
妊娠
妊娠すると、女性ホルモンの分泌量が変化します。女性ホルモンには、黄体ホルモンと卵胞ホルモンがあります。前者はプロゲステロン、後者はエストロゲンともよばれます。
妊娠中は、両者共に分泌量がふえるのではなく、黄体ホルモンの分泌量が増加します。
ところが、黄体ホルモンには腸の機能を低下させる作用があるのです。それだけでなく、身体の中に水分をため込もうとする作用もあり、大腸からの水分の吸収率が高まります。
妊娠に伴い子宮が大きくなり、腸管を圧迫し、蠕動運動を低下させるのも便秘の原因です。そのために、妊娠中は便秘になりやすくなります。
まさか!便秘薬が便秘を悪化させる?
便秘の時に重宝するのが便秘薬。しかし、使い方によっては、かえって便秘を悪化させることも。
消化や排便のメカニズム
腸は、小腸と大腸で構成されています。小腸は、胃から送られた内容物を、腸液や膵液、胆汁の働きで消化し、栄養素を吸収します。
大腸は、小腸で消化吸収しきれなかった食物繊維成分などから水分を吸収します。
大腸の蠕動運動は、普段はとても弱いです。ところが、胃に食べ物が入ると、腸・結腸反射 が起こり、盲腸から強い蠕動運動がおこります。そして、腸の内容物をたちまちS状結腸や直腸にまで運びます。
腸の内容物は、通常は下行結腸からS状結腸にかけて留まっており、直腸の中は実は空っぽなのです。こうして空っぽの直腸に運ばれてくるのです。
直腸に便が運び込まれることで、直腸の内部圧が高まります。脳に直腸の内部圧が高まったという刺激が伝えられ、便意を感じさせます。
便意を感じて排便のプロセスに入ると、肛門の筋肉を意識的に緩めるようになると同時に、腹筋と横隔膜を収縮させて、腹圧を高めます。これがいきみです。こうして便を身体の外に排出します。
便秘薬が悪化させてしまう原因
便秘になると、便秘薬、つまり下剤についつい頼ってしまいがちになります。ところが、便秘薬に頼りすぎると、便秘薬を使わないと排便が出来なくなる依存傾向が生じるおそれがあり、注意が必要です。
便秘薬にはいろいろな種類がありますが、大きくわけると2つに分類することが出来ます。
ひとつは機械的下剤とよばれる腸の内容物、つまり便に水分を与えてその容量を増すと同時に軟らかくさせ、排便しやすくさせる便秘薬です。もうひとつの便秘薬は、腸の蠕動運動を促進させる刺激性下剤です。
どちらの種類の便秘薬も、長期間のわたって使い続けると習慣性が生まれ、便秘薬がないと自然な排便が出来ないようになってしまいます。
また、便秘薬を中止することに強い不安感を生じるようになり、心理的にも便秘薬をやめることができなくなることもあります。
腸そのものが便秘薬に頼らなければならなくなったり、心理的にも便秘薬に頼らなくてはならなくなったりするので、便秘薬に頼りすぎると、かえって便秘を悪化させてしまうようになります。
医師からの処方やどうしてもの時だけ
便秘薬を使うときは、同じ便秘薬を長期間にわたって使い続けることは避けなければなりません。便秘薬の種類を変更したり、作用方法が異なる便秘薬を併用したりするなど、便秘薬の使い方に工夫が必要です。
しかし、便秘薬の使い方を工夫して習慣性が生じるのを予防するのは難しいものです。
そこで便秘薬に習慣性が生じるのを防ぐ意味でも、医師の診察を受け、便秘の症状を診断したうえで処方された薬剤を使うことをおすすめします。
もしくは医療機関を受診する時間がないほど忙しいときなど、どうしても使いたいときにだけ限って使うようにしてください。
便秘薬を使わずに即効性のある解消方法とは
では、便秘薬を使わないで、便秘を解消するにはどうすればいいのでしょうか?
食事で改善する方法
ひとつは、食事による改善です。
①オリゴ糖
オリゴ糖とは、多糖類のひとつです。オリゴ糖には、いろいろな効果があります。たとえば、むし歯を起こしにくい、低カロリー、ミネラルを吸収しやすくするなどです。
便秘に関係する腸への効果としては、整腸作用があげられ、大腸の蠕動運動を促進したりします。また、腸内環境を改善してくれるビフィズス菌の栄養源にもなります。
オリゴ糖を摂取して、ビフィズス菌を増やし、腸内環境を整え便秘を解消しましょう。
②乳酸菌
腸内環境を整えて、腸の働きを良くすることも、便秘対策には必要なことです。
腸内環境を整えるためには、善玉菌を増やすことが一番です。そこで、善玉菌の代表格である乳酸菌を積極的に摂取することをおすすめします。
乳酸菌をたくさん含んだ食品としては、乳酸菌飲料やヨーグルトがあげられますが、そのほかにもおみそやしょう油、お漬け物などもあります。乳酸菌を摂取して、腸内環境を整えましょう。
③食物繊維
食物繊維は消化吸収されにくいという特徴を持っています。そのため、便のかさを増して、腸を刺激するのに最適です。しかも、水分を吸収しやすいという性質もあります。
したがって、食物繊維の多い食品は、水分を吸収して便を軟らかくすると同時に、かさも増して腸を刺激し、腸の蠕動運動を促してくれます。
食物繊維をたくさん含んでいる食品としては、海藻類、いも類、豆類、根菜類などがありますが、いかにこれらを食べようとしても、限界があります。
そこで、主食に含まれる食物繊維を増やしてみるのもおすすめです。具体的には、白米を玄米ご飯にかえたり、麦ご飯にしたりする方法です。
主食と副菜の両方で、食物繊維をたくさん摂るようにして、便を適度なやわらかさにし、かつ腸を刺激するようにしましょう。
便秘解消エクササイズで改善する方法
便秘をエクササイズで解消する方法もあります。
①マッサージ
お腹をマッサージすると、腸を刺激する効果があります。腸を刺激することで、腸の蠕動運動が促されます。これによって、排便しやすいように便を送り出すことが出来ます。
マッサージの方法ですが、まず仰向けに寝ます。そして膝を三角に立てるように足を曲げます。これがマッサージをするときの姿勢です。
おへそを中心に、円を描くようにお腹をゆっくりとさすります。大腸は時計回りに配置されていますので、便も右回りに送り出す必要があります。円を描くときは、時計回りに、そしてのの字をイメージしてさするようにしてください。
②運動
運動することも便秘の解消にとても効果的です。おすすめなのがウォーキングです。簡単な上に、全身の筋力を高めることが出来ます。
ウォーキングは、意外と腹筋などのお腹の筋肉に負荷をかけてくれます。そのため、ウォーキングを通じて、腸を適度に刺激することが出来ます。腹筋の筋トレもいいですね。
仰向けに寝て上半身を起こしたり倒したりする通常の腹筋もいいのですが、しばらく鍛えていなかったところに、いきなりするとかなりたいへんです。
しんどいときは、仰向けに寝て足だけを上方にあげる腹筋トレーニングや、仰向けに寝た状態で、お腹に力を入れて上半身を数十秒間起こすだけの腹筋トレーニングでもいいでしょう。
③ツボ押し
お腹の調子を整えるツボとしては、大腸兪(だいちょうゆ)、大巨(だいこ)、天枢(てんすう)などがあります。
大腸兪は、背中の腰のあたりにあるツボです。背骨と左右の骨盤のラインが交差するところにあります。ここを刺激すると、腸の働きを正常化する効果があり、便秘の解消にもつながります。
大巨は、おへその下あたりにあるツボです。おへそから指の幅で3本分くらい下、そこから左右に指2本分くらい離れた位置にあります。このツボは、慢性の便秘に効果的といわれています。
天枢は、おへその左右にあるツボです。おへそから左右に、指3本分くらい離れたところにあります。このツボを押すと、腸の働きが活発化して、腸の内部にたまった余分なものを排出するよう促進してくれます。
水分をとって改善する方法
水分不足が便秘を引き起こすこともあります。1日2.0〜2.5[l]くらいの水分が汗や尿、便から排出されているといわれています。水分補給を適度にしておかなければすぐに身体は干上がってしまいます。
①水分の取り方
1日の摂取量としては、何らかの制限がなければ、1日あたり1.5〜2[l]ほど、コップに換算すると10杯弱の水分を摂取しましょう。身体から排出されている水分量よりも少ないのですが、食べ物からも水分は補給されていますので、飲む量とすればこれくらいになります。
水分は、水だけに限りません。牛乳やジュース、お味噌汁やスープなどでも摂取できます。
注意したいのが、カフェインの含まれている飲み物です。具体的にはコーヒーや緑茶ですね。
カフェインが入っていると、利尿作用が働き、せっかく摂取した水分が尿から排出される原因になってしまいます。ですので、ノンカフェインの飲み物がお勧めです。
同様に、アルコールにも利尿作用があるので、便秘の時には避けた方がいいでしょうね。
②効果的な水分補給
毎朝、おきた時に、コップ1杯くらいの冷たい水分や牛乳を飲みましょう。冷たい水や牛乳は、 を引き起こし、眠っていた腸を適度に刺激してくれます。また、日本人には乳糖に耐性がない人が多いので、便を軟らかくする効果もあります。
また、1日に必要な水分摂取量は、前述した通りですが、一度に摂取することはおすすめできません。一度に摂取する量は、およそ250[ml]ほどにして、何回かにわけて飲むのが効果的です。
便秘に気づいたら今すぐ改善しよう
便秘は、長引くとつらいものです。便秘の症状は、お腹が痛くなったり、張ったりするだけではありません。お肌は荒れるし、身体は疲れやすく、そしてだるくなります。精神的にもストレスです。
やはり、便秘は少しでも早く解消し、すっきりしたいものですよね。
かといって、便秘薬に頼りすぎるのは、便秘薬がないと排便が出来なくなったり、精神的にも不安で依存してしまうことにもなりかねず、おすすめできません。
食事やエクササイズなどを通じて、自然に治していくのが一番の解消法です。
そこで、オリゴ糖や乳酸菌、食物繊維を積極的に摂取する、マッサージや運動、ツボ療法で腸の働きを活発化させる ことをおすすめします。便秘を解消して、快適な健康生活をめざしましょう。