便秘の時、胃が痛くなってきた経験ありませんか?どうして便秘と胃痛が時を同じくして起こるのでしょうか。不思議ですよね。たまたま偶然に時期が重なっただけなのでしょうか。
そこで、便秘と胃痛の関係や、その原因、便秘と胃痛を共に解消する方法などについて、両者の関係から改善法、おすすめの食事療法までわかりやすく紹介します。
CONTENTS
胃痛と便秘の関係
胃の痛みと便秘にはどのような関係があるのでしょうか。
一番の原因はストレス
便秘とは、腸に内容物がたまり続ける状態のことです。便秘が続くと、おなかの不快感やふくれた感じなどによってストレスを感じるようになります。
胃は、ストレスに敏感な臓器です。胃の中では、胃酸という強い酸が食べ物を溶かしていますが、胃酸は実は胃の粘膜を障害するほど強いものです。しかし、胃酸から胃の粘膜を保護するために粘液が分泌され、胃の粘膜を守っています。
この粘膜の分泌には、ストレスの栄養を受けると分泌量が低下するという特性があります。すると、胃の粘膜が胃酸から守られなくなるので、胃の粘膜が障害され、胃に痛みを感じるようになるのです。
便秘のストレスは、胃痛をもたらす要因なのです。
自律神経のバランスが崩れると
自律神経とは、身体の生命維持に関係する神経のことで、自分の意思とは関係なく働いています。自律神経は、大きくわけると交感神経と副交感神経にわけることが出来ます。
日中などにアクティブに活動している時に優位になるのが交感神経、食事の後や夜間などリラックスしている時に優位になるのが副交感神経です。つまり、交感神経と副交感神経は同時に働くことはなく、バランスよく交互に作用しているわけです。
胃や腸も同じく自律神経の制御を受けています。
腸の病気である便秘を起こすと、ストレスが蓄積されていきます。ストレスがたまると交感神経が優位になってきます。本来副交感神経が優位になっているべき時間にも影響してくるので、便秘というストレスが自律神経に影響を及ぼすことが理解できると思います。
すると、自律神経のバランスが崩れ、体調が不調をきたしてきます。そうです、便秘が自律神経のバランスに影響し、体調を悪くすることもあるのです。
胃腸は非常にデリケート
胃腸は、健康な生活を送る上で、不調をきたすことがないよう具合を良くしておくことは、非常に大切です。
しかし、困ったことに胃腸はとてもデリケードな臓器でもあります。食べ過ぎや飲み過ぎだけでなく、ストレスや疲れなどいろいろな影響を受けます。
こうした悪影響が積み重なると、便秘、下痢、胃もたれ、胸やけ、げっぷ、疲れやすさ、風邪をひきやすくなるなど、いろいろな症状が現れます。
デリケートな胃腸を優しくいたわってあげたいものですね。
胃と腸は切っても切り離せない関係
胃と腸のことを「胃腸」とまとめて表現するほど、両者は切っても切れない密な関係にあります。実際、表現の上でなくても胃と腸はつながっています。
どちらも食べ物の消化吸収に大切な臓器ですし、自律神経によって制御され、体調が悪くなったり、ストレスがたまったりすると、ともに痛んだり働きが低下したりします。
病気が原因で便秘と胃痛が起こる
腹膜炎
腹膜炎とは、腹膜腔に細菌が感染して起こる炎症のことです。
腹膜炎は、その経過から急性腹膜炎と慢性腹膜炎に分けられます。前者は、胃潰瘍や十二指腸潰瘍を形成することで、腹膜に穴が開いて起こることが多く、後者は、結核やがんによって起こることが多いです。
その急性腹膜炎の症状は、お腹の痛みだけにとどまらず、発熱やさむけ、吐き気や嘔吐を認めますが、便秘も伴います。急性腹膜炎の治療は、それを引き起こした原因となる病気の治療で、重篤化すれば死に至ることもある病気なので早期の治療が必要とされています。
腸閉塞
腸閉塞は、腸管が塞がれた状態になってしまう病気のことです。腸閉塞のことをイレウスということもあります。腸がふさがってしまうと、食べ物やガスなどの腸の内容物が腸の中に留まり続けるようになります。
そのため、初期段階では単なる便秘と勘違いしてしまうことがありますが、腸閉塞の症状は便秘だけにとどまらずお腹全体の痛み、嘔吐、発熱などを生じます。
腸閉塞をきたす原因は、過去の手術による瘢痕形成などの影響、悪性腫瘍、ヘルニアが考えられます。
潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に潰瘍を形成する病気のことです。原因はよくわかっていません。若年者から高齢者まで幅広い年齢層で発症しますが、好発年齢は20代です。
その症状は、お腹の痛み、発熱、体重減少、激しい下痢や血便ですが、やがて下痢と便秘を繰り返すようになることもあります。ほとんどの症例が軽症で、重症化することはほとんどありません。
機能性消化管障害
機能性消化管障害とは、便秘や胃痛などの胃腸の異常症状を認める病態のひとつで、FGIDともよばれます。
これの特徴は、原因となるような所見が認められないということです。つまり胃腸自体には、悪性腫瘍などの腫瘍性病変、細菌感染、胃潰瘍などの潰瘍形成病変などの病気がありません。
レントゲン検査や胃カメラや大腸カメラなどの内視鏡検査をしても異常となる所見が認められません。にもかかわらず、胃腸に不快感が起こるのです。機能性消化管障害には、過敏性腸症候群と慢性胃炎・神経性胃炎の2つがあります。
過敏性腸症候群
過敏性腸症候群は、腸を検査しても血液を検査しても異常な所見が認められないのに、長期間にわたっておなかの不快感や痛み、便秘や下痢をおこす病気のことです。
原因はよくわかっていないのですが、ストレスなど心理的な影響、胃や腸などの消化管の運動や感覚異常が考えられています。
主な症状は、おなかの不快感や痛み、便秘や下痢です。便秘を中心としたタイプと、下痢が主な症状となるタイプ、便秘と下痢を交互に繰り返すタイプにわけられます。
便秘型の過敏性腸症候群では、ウサギのフンのようなころころした硬い便になります。
慢性胃炎・神経性胃炎
慢性胃炎・神経性胃炎とは、おなかの上部に胃痛や胸やけといった症状があるのにも関わらず、いろいろな検査をしても異常となる結果が認められない状態のことです。
胃痛や胸やけが主症状ですが、便秘を伴うことや、身体のだるさや頭重感を認めることもあります。
自律神経を整える3つの方法
自律神経を整えて、便秘と胃痛を共に解消しましょう。
腹式呼吸
呼吸は、胸式呼吸と腹式呼吸にわけられます。
これらは特に意識することはないのですが、男性が腹式呼吸、女性が胸式呼吸をしていることが多いといわれています。
胸式呼吸は交感神経を優位にさせます。一方、腹式呼吸は副交感神経を優位にするといわれています。腹式呼吸の方法は簡単です。
鼻からゆっくりと息を吸い込みながら、おなかを膨らませます。そして息を吐くときは逆におなかを凹ませるだけです。つまり、おなかの力を使って息を吸ったり吐いたりするのが腹式呼吸なのです。
おなかを使う=副交感神経が優位な状態するので、腹式呼吸では副交感神経が優位になります。
とかくストレスの多い現代社会では、ストレスを感じて交感神経が優位になる場面が多くなってきます。腹式呼吸をして、精神的に落ち着いた状態をもたらして副交感神経の働きを優位にし、自律神経を整えましょう。
瞑想
瞑想とは、目を閉じて、眼前の世界を離れて、静かに思いにふけることです。
実は、瞑想は自律神経の調子を改善させるのにとても効果的です。その理由はいくつかあります。ひとつは、精神的に落ち着いたリラックスした状態を作り出せることです。
前述したように、自律神経はヒトの意識に関係なく働き、心臓を動かすなど生命維持に関係している神経です。ところが、生命維持に関係していますが呼吸だけは意識によってコントロールできます。実際に、息を止めようとすれば止めることが出来ますよね。
瞑想では、静かに思いにふけるために、呼吸の仕方をゆったりとした深いものにします。これによって副交感神経を優位にし、リラックスした状態をもたらします。
そして、深い呼吸は、脳の内部でセロトニンというホルモンを分泌させます。セロトニンには、脳の内部で不安や憂鬱な気持ちを軽減させる作用があります。
瞑想は脳の内側からも不安や憂鬱感を解消させリラックスした状態にしてくれるのです。
もうひとつは、ストレスの軽減です。ストレスを感じると、コルチゾールとよばれるホルモンが分泌されます。このホルモンがたくさん分泌されると、緊張感を高め不安な気持ちになってしまいます。
瞑想をすると、コルチゾールの分泌量が少なくなることが明らかになっています。つまり、ストレスによる精神的な悪影響を瞑想は抑えてくれるのです。
この他にも、瞑想は不眠を解消させたり、プラス思考をもたらすなどいい意味での精神的な働きを示してくれます。
こうして瞑想は、精神的に落ち着かせることによって自律神経を整えてくれるのです。
オンオフ切り替えられる生活
仕事とプライベートのオンオフを切り替えを上手くすることができないと、自律神経にも影響を及ぼします。
仕事や運動、勉強、家事や育児などに集中している時は、交感神経が優位に立っています。人間は、ずっと仕事をしていることはできません。休憩や休息が必要です。身体が休んでいる時は副交感神経が優位になります。
仕事とプライベートのオンオフをきちんと切り替えられない人は、休むべき時間が減少し、交感神経が優位になっている時間が長くなります。すると、ストレスや疲れがたまるようになり、ひいては自律神経のバランスをも崩してしまうことにつながります。
仕事をしている時は仕事に、そして休日はしっかり休むといった具合に、オンオフをきっちりと切り替えられないと、自律神経を乱してしまいかねません。
胃痛と便秘は一緒に改善する
胃と腸は密接な関係にあります。その不具合である胃痛と便秘も一緒に改善させましょう。
胃腸に優しい食事
胃痛や便秘には、胃腸に優しい食品、つまり消化の良いものを食べることをお勧めします。
胃腸に優しい食べ物といえば、ヨーグルトが代表的です。
ヨーグルト以外では、主食系では柔らかめのごはん、パン、うどんがいいでしょう。それ以外では、牛乳や豆腐、白身魚、柔らかく煮込んだ野菜が胃腸に優しい食材とされます。
胃や腸に負担をかけないように
暴飲暴食、アルコールの飲み過ぎ、脂っこいものの食べ過ぎ、熱いものや冷たいものの摂りすぎなどは、胃腸に負担をかけます。
食事だけでなく、タバコや睡眠不足、ストレスも胃腸を傷める原因になります。
そこで、食事は規則正しい時間に食べるようにし、暴飲暴食はしないようにしましょう。喫煙者は禁煙してください。アルコールを飲むときは、度数の高いものはストレートで飲まないようにする、脂っこいもののや辛すぎるものは控えるなど、食事を工夫して、胃腸に負担をかけない優しい食事にするようにしましょう。
適度な運動は必要
運動不足は、便秘の原因となります。特に弛緩性便秘と呼ばれるタイプの便秘では、腹筋の筋力低下や体力そのものの低下が大きく影響します。
胃も同じで、運動不足になると、胃から腸へ食べ物を送り出すの働きが低下し、食べ物が長い間胃に残ってしまうことになります。
すると、胃の痛みや胃もたれなどの症状を引き起こします。
腹筋を鍛えるだけでなく、ウォーキングや水泳、ジョギングなどの全身運動で体力を増進し、便秘や胃痛を解消しましょう。
自分なりのストレス解消法をもつ
前述したように、胃腸はデリケートな臓器です。ストレスがたまってくると、すぐに荒れてしまいます。
生きていく上でストレスを無くすことはできません。ならば、たまってくる前にストレスをなくすようにしましょう。
そこで、自分自身に適したストレスの解消法を作っておくことをお勧めします。ストレスと上手に向き合い、溜め込まないようにしてくださいね。
胃痛と便秘は珍しくない
胃と腸は、「胃腸」とひとまとめに表現されるほど、切っても切れない関係にあります。
そして、どちらもデリケートな臓器です。そして、ストレスや自律神経の影響を受けやすい臓器でもあります。そのため、便秘と胃痛を同時に発症することも珍しくありません。
便秘と胃痛を認めたら、胃や腸に負担をかけないよう、胃腸に優しい食事にしたり生活習慣を改善したりしてください。そして、適度な運動とストレスを解消することによって、便秘と胃痛を同時に治していきましょう。