「肥満」や「高血圧」という言葉は皆さんも一度は聞いたことがある方が多いのではないでしょうか?
高血圧と聞くと、どこか年配の方がなるようなイメージもあると思いますが、近年では高血圧の若年化が進んでいるという事実をご存知ですか?
その要因は様々なのですが、今回は「高血圧と肥満の関係性」について詳しくご説明していきたいと思います。
「自分はまだ2、30代で若いから大丈夫、関係ない」とは思わずに、「高血圧になる可能性は誰にでもある」ということを忘れずに、この2つの関係性について学んでいきましょう。
高血圧とは
では、まず今回のキーワードの1つである「高血圧」について説明していましょう。
まず「血圧」というのは、実はちょっとした日常生活のアクション(運動や気温の変化)で、常に上ったり下がったりして変化するものなので、一時的な血圧の上昇は「高血圧」とは呼びません。
ただし、これが「高血圧」と呼ばれるようなものになると、身体が安静にしていてもこの「血圧」が慢性的に高くなり、血管に常に負荷を与え続ける原因になるので「動脈硬化」といった病気や症状を引き起こす要因になってしまいます。
高血圧のレベルはガイドラインによるとⅠ度・Ⅱ度・Ⅲ度の3段階に分けており、その下が「正常高値」というのレベルになります。
この「正常高値」は「高血圧の一歩手前で、注意が必要なレベル」という意味で、実は高血圧予備軍となるので油断は禁物。
ちなみに若年性高血圧は以下のように定義されています。
年齢が35歳以下で、血圧の数値が140/90mmHg以上の数値に該当する状態のこと
この数値をみてちょっとドキッとした方は35歳以下であっても高血圧の予備軍である可能性があるので注意が必要です。
血圧が上がるメカニズム
それではここからは血圧がどのように上がるのか、そのメカニズムについて以下の4つに分けて説明していきたいと思います。
- 心拍出量
- 循環血液量
- 末梢血管抵抗
- 血液粘稠度
では、まず最初に「①心拍出量」ですが、心拍出量とは「心臓が1回の拍動で、送り出す血液の量のことをいいます
一般的には、1分間に血液を送り出す量のことを「心拍出量」といって、1回の拍動が強くなる程、心拍出量が増加し血圧が上がるメカニズムになっています。
2つ目の「②循環血液量」は体の中を循環している血液の量。
この循環血液量が減ると血圧が下がり、逆に量が多いほど血圧は上がるメカニズムになっています。
3つ目の「③末梢血管抵抗」は、毛細血管に血液が流れ込む際に受ける抵抗が強いと血液の流れ難くなるため、血圧が上がります。
それと同時に、1回の拍動を強くすることで末梢血管に血液を流そうとするため、血圧が上がるという仕組みです。
最後の「④血液粘稠度」ですが、血液はそもそも「血っしょう」と呼ばれる液体成分と、「赤血球」などの固形成分から構成されています。
そしてこの「赤血球」などの固形成分の割合が血液中に増えてしまうと粘り気が出てしまうため、血液の流れが悪くなります。
その結果、1回の拍動を強くすることで血液の流れをスムーズにしようとするために、血圧が上がることになるのです。
遺伝
血圧が上がる原因には実は「遺伝」も一部関係しています。
健康診断を受けたことがある方であれば「家族内に高血圧の方はいないですか?」という質問をされたことはないでしょうか?
それは何故なら「高血圧」に遺伝因子が関係していることがわかっているためなのです。これは血圧が通常の人より上がりやすいということ。
例えば両親が高血圧な場合、その子供も同じ食生活を送ることが多いので高血圧になりやすい傾向にあるようです。
塩分の摂りすぎ
「高血圧」の原因で有名なものに、「塩分の過剰摂取」というものが挙げられると思いますが、その詳しい理由もご存知ですか?
塩分は摂りすぎると血液中の塩分濃度が高くなり、身体が血液中の塩分を薄めようと働くため、血液中に水分が取り込まれるようになります。
そして、その際に血液の量が増えることによって血管の壁に圧力がかかり、血圧が上がることになります。
食生活の乱れ
この「食生活の乱れ」というのは、先程の「塩分の過剰摂取」も大きく関わっています。
日本高血圧学会は、高血圧の人に対して1日あたり6g未満の減塩を推奨しているのですが、この6gがどれ程の量かご存知でしょうか?
身近な例を挙げると、ラーメンは5〜6g、ハンバーガーは2〜3gだと言われているので、この6gがいかに低い設定であるかご理解していただけるかと思います。
また塩分以外だと、「動物性脂肪」といったコレステロールが高い食品や加工食品、また「糖質」が高い白米やうどん、パスタ、パンなどの炭水化物にも注意が必要です。
ストレス
人はストレスのある状況にいると、それに抵抗するために交感神経が強く働くために血圧も上昇します。
こういった反応が一時的なものであれば問題はないのですが、このストレス状態が慢性化すると、血圧の上昇が頻繁に起こり、血圧がずっと高いままになってしまうのです。
特に若年層の患者さんでは、ストレスが血圧に及ぼす影響が相対的に大きい傾向にあるデータも出ています。
過労
日本人が「ストレス」という言葉を聞くと切っても切り離せないのはこの「過労」というキーワードではないでしょうか。
「過労死」という言葉もみなさんご存知だと思いますが、この「過労死」は過度の労働によって引き起こされる血圧の上昇と動脈硬化が進むことにより起こる死因のこと。
研究によればストレス時の血圧反応と心臓の肥大が密接に関係していることがわかっています。
血管の老化
だれもが老化していくように、実は「血管」も老化していくのですが、その理由は普通の生活をしていても、高齢になればなるほど動脈硬化は進んでしまうためです。
ただし、この動脈硬化は日頃の食生活や運動に配慮することによって進行をなだらかにすることが可能です
運動不足
「運動不足」だと、余った脂肪などの栄養分が血液中に入り、血管の内壁に溜まっていき血液の流れが悪くなっていきます。
そして血管がそういった状態になると、心臓は十分な血液を送ろうと圧力を上げるため血圧が上がる原因になります。
運動は血管を拡げる効果もあるので結果的に血圧を下げることに繋がりますし、さらにストレス解消にもなるので日頃から適度に取り入れることをおすすめします。
肥満
「肥満」は、体の脂肪組織及びさまざまな臓器に異常に脂肪が沈着した状態のことで、偏った食事、過度な飲酒、運動不足、過度のストレス、喫煙といった「生活習慣」が原因です。
そして「肥満」であることは、同時に「高血圧」になる確率を高めることも分かっています。
飲酒喫煙
たばこに関しては明らかに不健康だということが分かると思うのですが、アルコールは何故「高血圧」を引き起こすのでしょうか?
アルコールは実は一時的には血圧を下げるのですが、適量以上の飲酒は血圧を上昇させることがわかっています。
たばこは出来るだけ止めた方がいいのは勿論なのですが、アルコールは節酒を心がけたほうがいいでしょう。
原因がはっきりしていないとも言われている
実は日本人の90%前後の人は原因がはっきりわからない「本態性高血圧」だともいわれています。
「本応性高血圧」とは、そもそも高血圧になりやすい体質であったり、不規則な生活習慣などが原因で発症する「高血圧」です。
肥満による高血圧
「肥満」と「高血圧」は親密に関係しており、それによって様々な病気を引き起こすこともあるので治療と改善が必要です。
ここではその「肥満」と「高血圧」の関係性についてみていきましょう。
メカニズム
「肥満」は偏った食事、過度な飲酒、運動不足、過度のストレス、喫煙といったことが原因で「生活習慣病」を発症しやすくなります。
その症状の中には「高血圧」も含まれ、「肥満」であるということは、「高血圧」を発症するリスクを必然と高めることと同じなのです。
診断基準
では、「肥満」であることをどうやって診断するのでしょうか?みなさんは「BMI」という言葉を聞いたことはないでしょうか?
このBMIというのは、BMI = 体重(kg)÷(身長(m)×身長(m))という公式によって求めることが可能。
日本ではBMI=22を標準体重として、25以上を肥満という基準を設定しています。この数値は肥満である程高くなります。
治療と改善
ではこの数値を下げるにはどういった治療や改善が必要なのでしょうか?
健康診断などで「肥満」と診断された場合は、通常専門医を紹介されることになっており、その専門医師の指導の元、生活習慣改善や減量、適切な治療をしていくことになります。
病気による高血圧
「高血圧」の原因は「生活習慣」や「遺伝」だけではなく、時にはその他の「病気」が理由の場合もあります。
ここでは「高血圧」の原因が病気による場合のケースを以下の順でそれぞれ説明していきたいと思います。
- 薬剤による高血圧
- 腎臓病に伴う高血圧
- 腎動脈の狭窄
- ホルモンの過剰分泌
- 大動脈疾患等の血管疾患
薬剤による高血圧
まず最初の原因は「薬剤」によって引き起こる可能性がある「高血圧」です。
普段は血圧が正常であっても、他の症状が理由で薬を飲んだことによって副作用で一時的に「高血圧」になる場合があるようです。
その際は、かかりつけの医師に相談して処方している薬を変えてもらうなどの対応が必要です。
腎臓病に伴う高血圧
2つ目の理由は「腎臓病」が基になって起きる「高血圧」です。
腎臓のはたらきが悪くなると、高血圧の大敵である余分な塩分と水分の排泄ができなくなり、その結果として血液量が増加し血圧が上がります。
それに加え、腎臓は「レニン」という酵素を分泌するのですが、この酵素、血圧を上げる作用をもつ「アンジオテンシンⅡ」というホルモンをつくるのに欠かせなく、血圧を一定に保つことを可能にしています。
なので、腎臓の働きが悪くなると、血圧を調節する能力は低下し高血圧になりやすくなります。
腎動脈の狭窄(きょうさく)
実は「高血圧」の治療や予防をしていても血圧がなかなか下がらないケースがあるんです。
その原因の1つは、この「腎動脈狭窄症(じんどうみゃくきょうさくしょう)」です。
腎動脈狭窄症は気づかずに放置してしまうと、腎臓自体が慢性的にダメージを受けてしまい、ゆくゆくは「人工透析」が必要となるなど、身体に大きな影響を及ぼします。
なので早い時点で腎動脈の動脈硬化を発見し、進行を予防することが重要になってきます。
ホルモンの過剰分泌
ホルモンの中には「高血圧」を引き起こす可能性があるホルモンも。
そのホルモンは「アルドステロン」といって、そのホルモンが過剰に分泌されることで、高血圧になります。
「手術で治る高血圧」としても知られていて、多くの場合はアルドステロンを作る「副腎」に腫瘤などができて発症し、その腫瘤を手術で切り取ると血圧が改善されます。
この「原発性アルドステロン症」は血液検査で分かるので、気になる方は検査を受けることをおすすめします。
大動脈疾患等の血管疾患
最後の理由は「大動脈疾患等の血管疾患」からくる「高血圧」です。
中高年の方なら、大動脈瘤や大動脈解離といった病名を、聞いたことがあるのではないでしょうか?
老化した血管内壁に高血圧が加わったために、血管がふくらんだ状態になるのが大動脈瘤、また血管内壁の一部に亀裂が入って剥離した状態が大動脈解離です。
動脈硬化を起こしやすい方は、血圧やコレステロール、血糖値を含めて管理することが予防になります。
高血圧の改善
では「高血圧」について一通り学んだ所で、最後にどうしたら「高血圧を改善できるのか」についてお話していきたいと思います。
高血圧の改善1~食事~
まずは生活の中でも改善しやすい「食事」について。
「高血圧」を予防するには、まず栄養バランスに優れた和食中心の食事にすることが効果的です。
すでに「高血圧」の方はそれに踏まえて「減塩食」を取り入れるなど塩分の摂り過ぎにも気をつけたいですね。
日本高血圧学会のガイドラインによると、1日当たりの塩分摂取量の目標を6g未満と設定していますが、少なければ少ないほど良いようです。
また、血圧を調節する成分に「カリウム」、「マグネシウム」、「カルシウム」などのミネラルがあるので、これらを多く含む食品である、こんにゃく・きのこ・海藻を積極的に摂り入れると良いでしょう。
高血圧の改善2~運動~
上記の「食事」の改善ができたなら出来るだけ「適度な運動」も取り入れていくのを忘れずに。
血圧を下げるために運動を取り入れる際のポイントは「適度な有酸素運動を1日30分以上、ほぼ毎日続ける」ということ。
慣れないうちは最初はキツく感じるかもしれませんが、ウォーキングや軽いジョギング、エアロバイクなどから始めてみるといいかもしれません。
高血圧の人がしないほうが良い運動
いくら血圧を下げるには運動が効果的だからといって、「息が上がってしまうような激しい運動」や「無酸素運動」はむしろ血圧を急に高めてしまうだけでなく、心肺機能に必要以上の負担を与えてしまうことがあるので避けましょう。
高血圧は若年化が進んでいる
今回のお話を通して「肥満」と「高血圧」の深い関係性についてご理解していただけましたでしょうか?
高血圧と聞くと、これまでは高齢者だけの疾患のイメージもあったかと思いますが、現代では若年化が進んでいるので本当に注意が必要です。
「高血圧になる可能性は誰にでもある」ということを忘れずに、ご自身の状況にあった「肥満」と「高血圧」の予防に努めていって欲しいと思います。