浮腫ってなに?浮腫の種類とその対処法を紹介します!

医療関係の人でもない限り、普通に生活をしていると、あまり浮腫という言葉を耳にすることはないのではないでしょうか。浮腫などという字を見ると怖いものと思ってしまうかもしれませんが、実際にはよくみられる現象でもあります。今回は、浮腫について徹底解説していきます。

浮腫という言葉を聞いたことがあるでしょうか。浮腫は誰にでも起こりうるものであり、通常であればそれほど心配する必要はありません。

ただ、何らかの疾患が原因で起こるような浮腫もあれば、病気の治療後にみられるような浮腫もあります。今回は、浮腫の種類やその対処法について、詳しく紹介したいと思います。

浮腫ってなに?

手足

浮腫いう言葉を聞いたことがないという方でも、「むくみ」という言葉なら聞いたことがあるのではないでしょうか。浮腫とは実はむくみと同じもので、皮下組織に余分な水分が溜まっている状態のことを言います。

浮腫が起こる原因は実にさまざまです。長時間の移動で足がむくんだり、お酒を飲んだ翌日に顔がむくんだりするようなことは、誰でも1度や2度は経験があるのではないでしょうか。それでは、浮腫の種類について見ていきたいと思います。

浮腫の種類その1・全身性の病気によるもの

医者

浮腫の起こる原因としてはまず、全身性の病気によるものがあげられます。全身性の病気の際に現れる浮腫には、身体の両側にみられるという特徴があります。それでは、どのような病気にともなって浮腫が現れるのでしょうか。

循環器系の疾患からくる浮腫

循環器系の疾患があるような場合に、むくみが見られるようなことがあります。主な疾患としては、うっ血性の心不全や心タンポナーデ、収縮性の心膜炎などがあげられています。

心臓には全身の各部に血液を送り出す働きがありますが、その機能が低下することによって全身の血行が悪くなり、結果としてむくみが現れるという訳なのです。

肝機能障害・腎機能障害からくる浮腫

人間の血液中には、アルブミンと呼ばれるたんぱく質の一種が存在しています。アルブミンには、血管に水分を取りこんだり、逆に、血管から水分を排出したりする働きがあります。それによって、血液中の水分量を均等に保とうとするのです。

ところが、肝機能障害や腎機能障害が原因でこのアルブミンの量が減少してしまうと、血液中の水分量をコントロールすることが困難になってしまい、結果としてむくみが出るようになってしまうのです。

肺高血圧症からくる浮腫

心臓の弁膜症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺動脈性肺高血圧症などの疾患にともなって肺高血圧症を発症することによって、むくみを生じることがあります。

肺高血圧症を発症すると、心不全を引き起こすのですが、この場合の心不全は右心室にのみ見られるため、血液の循環が滞ることとなります。その際、腹水がたまればお腹が張ることとなりますし、足に水分がたまれば、足のむくみが見られることとなるのです。

甲状腺機能の異常からくる浮腫

甲状腺はのど仏の下あたりの首の前側に位置する、蝶のような形をした器官であり、甲状腺ホルモンと呼ばれるホルモンの分泌を司っています。その機能が亢進したり低下したりすることによって、むくみの生じることがあります。

甲状腺機能の亢進症としては「バセドウ氏病」が有名です。甲状腺機能が亢進すると、甲状腺ホルモンが多量に分泌されるようになり、体内のたんぱく質や脂質、炭水化物が過剰に燃焼してしまいます。

この状態が続くといずれ、低たんぱく血症の状態に至ります。低たんぱく血症になると、水分が血管外へと逃げだすこととなり、結果としてむくみが現れることとなるのです。

反対に、甲状腺機能が低下することによってむくみが生じることもあります。甲状腺機能低下症として有名な疾患としては、橋本病があげられます。

甲状腺機能が低下した場合、甲状腺機能亢進症のときとは反対に、甲状腺ホルモンの分泌量が低下します。その結果、疲労感や無気力、便秘や月経異常、そして全身のむくみなどが現れるということです。

その他

その他、むくみを生じさせるような全身性の疾患としては、蛋白漏出性胃腸症やなんらかのアレルギー、遺伝性血管性浮腫などがあげられています。

浮腫の種類その2.局所に問題があるもの

足

浮腫が起こる原因としては、全身の病気ではなく、身体の局所に問題があるケースもあげられています。では、具体的にどこに問題があると浮腫が出やすいのでしょうか。

慢性の静脈不全からくる浮腫

血液の流れを極めて簡単に説明すると、心臓→動脈→静脈→心臓という流れになります。そして、静脈には血液の流れが逆流しないための弁がついています。その弁のことを、静脈の逆流防止弁などと呼ぶことがあります。

何らかの原因によってこの逆流防止弁が壊れることによって、血液の流れが滞ってしまい、結果として足にむくみが現れることもあります。女性に多くみられる下肢静脈瘤も、静脈の逆流防止弁が壊れることによって起こります。

上大静脈症候群からくる浮腫

上大動脈は、上半身の血液を集めて心臓へと送る通り道となる血管です。その血管が、腫瘍などによって圧迫されると、やはり血液の循環が悪くなり、むくみの生じる原因となってしまいます。

その他

その他、むくみが生じる原因としては、医薬品を服用するということもあげられています。たとえば、向精神薬や降圧剤、糖尿病の薬などを服用した際、むくみが現れるということです。

浮腫の種類その3・生活習慣によるもの

お腹のサイズ

ここまで病的なむくみについて紹介してきましたが、日常の生活習慣や食習慣によってむくみが生じるケースも多々あります。その中から代表的なものを紹介しておきます。

肥満性浮腫

肥満性浮腫はその名の通り、肥満が原因となってむくみを生じるようなケースです。先ほど心不全が原因でむくみの生じることがあるといいましたが、それは心臓が人間の身体にとってエンジンのようなものだからです。

肥満をするということは、エンジンの大きさが変わらないのに、車体だけが重くなるようなものです。当然、心臓にかかる負担は増しますし、心臓の機能が低下することにもつながります。

また、肥満することによって運動習慣がなくなると、筋ポンプ作用(血液を心臓へと送り返す筋肉の働き)も低下し、結果として浮腫が生じやすくなるのです。

起立性浮腫

起立性の浮腫もその名の通り、立っていることによって主に足に浮腫が見られることを言います。人間はほかの動物と違い二足歩行をするため、どうしても足の方に血液がたまりやすいのです。

飲酒後の浮腫

お酒を飲んだ翌日、顔や手足にむくみの見られるようなことがあると思います。アルコールを分解するときには大量の水分を必要とするため、結果として浮腫が出やすくなるのです。

また、アルコールの摂取をおこなっていると、利尿作用によってトイレが近くなりますよね。トイレを繰り返すことで脱水状態になり、さらに水分を摂取するという悪循環の結果、むくみが起こりやすくなるのです。

水分や塩分の摂りすぎ

単純に、水分の摂りすぎで浮腫が出るケースもあります。また、塩分の摂りすぎによって浮腫が出るケースもあります。塩っ辛いものを食べるとのどが渇きますよね。

あれと同じで、血液中の塩分濃度が高くなると、身体が血中の塩分濃度を一定に保とうとし、細胞から血管内へと水分が贈られるのです。その結果、むくみが生じるという訳なのです。

リンパ浮腫とは?

足 マッサージ

浮腫と聞いたときに、「リンパ浮腫」とか「悪性リンパ腫」をイメージした方もいらっしゃるのではないでしょうか。そこで、リンパ浮腫についても触れておきたいと思います。

がん治療にともなう浮腫

リンパ浮腫がどのような浮腫かというと、がんを治療する際に手術をおこなってリンパ節を取り除いたり、放射線治療によってリンパ節を傷つけたりすることによって、リンパの流れが滞ってしまい、生涯にわたって腕や足がむくむタイプの浮腫を意味します。

がんの手術をした人全員にリンパ浮腫が起こる訳ではないのですが、特に乳がんや子宮がん、卵巣がんといった婦人科系の疾患、また、前立腺がんや皮膚がんなどの手術後にみられるケースが多いということです。

リンパ浮腫の症状

リンパ浮腫の症状は、進行状況によって「早期」「軽度から中等度」「重度」の浮腫に分類されます。早期には特別な自覚症状のないことも多く、浮腫に気がつかないケースもよくあるということです。

見た目上の変化としては、浮腫によって皮膚にシワがよりにくくなったり、以前であれば見えていた静脈が見えにくくなったりするということがあげられています。

軽度から中等度のリンパ浮腫になると、むくみによって腕や足が太くなってきます。また、それにともなって腕や足に重さやだるさを感じたり、疲労感が出やすくなったりします。

重度のリンパ浮腫になると、身体の各関節に違和感を生じ、動かしづらくなるという現象が現れます。また、皮膚が乾燥して硬くなるといったこともみられるそうです。

リンパ浮腫の治療法

リンパ浮腫の治療法としては、リンパドレナージと言って、専門の訓練を積んだ技術者によって、リンパの流れをよくするような施術がおこなわれます。

リンパドレナージは、滞ってしまったリンパの流れを、正常に機能しているリンパ節へと導く医療技術のことを言います。エステサロンなどでおこなわれているリンパドレナージとは全くの別物なので気を付けてくださいね。

また、浮腫の現れている場所を圧迫したり、圧迫しながらリハビリをおこなったりすることもあります。他にも生活指導を守るなど、複合的な治療がおこなわれることとなります。

気をつけたいこと

リンパ浮腫がみられるような場合には、当然のことながら専門医の治療を受けることが最重要となります。ただ、日常生活においても、以下のようなことに気をつける必要があります。

皮膚の清潔を保つ

がんの手術後にリンパ浮腫を発症しないようにするためには、皮膚の清潔を保つことが重要です。不潔にしていると、リンパ浮腫の原因となる炎症を引き起こすことがあるからです。

石鹸やボディソープ、シャンプーなどには、皮膚への刺激が強い化学的成分を用いているものがあるので、なるべく天然由来の成分で作られた、肌に優しいものを利用しましょう。そのうえで、清潔な衣類を着用しましょう。

皮膚の保湿を保つ

皮膚の乾燥も炎症や細菌感染の元となります。結果としてリンパ浮腫を招いてしまわないように、普段から保湿用のクリームを用いるなどして、肌を乾燥から守るように心がけましょう。

皮膚を外的刺激から守る

がんの手術をおこなったあとや、抗がん剤治療をおこなっているときには、身体の免疫力が低下しています。そのため、思ってもないことからリンパ浮腫を発症することもあります。そのため、皮膚を外的な刺激から守るようにしましょう。

たとえば、擦過傷や裂傷などから肌を守るため、夏でも長袖を着るなどするとよいでしょう。長袖を着ていれば、虫さされから肌を守ることにもつながります。

他にも、肌への刺激となるシップや貼るカイロ、ハリやお灸、女性であればむだ毛処理のときに使う剃刀などは避けた方がよいでしょう。

身体への負担を減らす

リンパ浮腫の予防や改善をするためには、血行をよくすることが重要です。ただ、激しすぎる運動や過度の刺激は避けた方がよいでしょう。運動をするのであれば、ウォーキング程度の軽い運動にしましょう。

また、長時間の同一姿勢は血液やリンパの流れを悪くするもとです。仕事をするときには適度に休憩を挟み、家事をする際にも休みながらおこなうよう心がけましょう。

浮腫は身体からのメッセージ

浮腫について見てきましたが、いかがだったでしょうか。浮腫にも、特に心配のない浮腫から病気が原因となっておこる浮腫まで、さまざまなケースのあることが分かって頂けたことと思います、ある意味、浮腫は身体からのメッセージということが可能です。

一過性のものであればそれほど心配することはありませんが、長期間にわたって浮腫がみられたり、浮腫にともなって何らかの違和感があったりする場合は、速やかに医療機関を受診するようにしてくださいね。