最近、開脚がひそかなブームになっています。両足を180度に開いて、胸がペタンと付けられるなんて、身体の固い人には信じられませんよね。ただ、いきなりそこまでになれなくても、日々の努力で必ず股関節は柔軟になります。今回は、そのための方法を解説します。
「股関節を制する者はダイエットを制す!」などというと驚かれるでしょうか?股関節が固いと、怪我をしやすくなるだけでなく、太りやすい体質になる恐れもあります。今回の記事では、股関節の重要性を解説するとともに、股関節を柔軟にして、痩せ体質をゲットするための方法について紹介します。
CONTENTS
股関節とは?
股関節の重要性や、股関節を柔軟にする方法について解説する前に、まずは股関節とはどのような場所なのか、また、どのような働きがあるのかについて見ていきたいと思います。
大腿骨と骨盤の接する所にある関節
股関節という字には「股」という漢字が含まれているため、股間をイメージされるかもしれませんが、解剖学的には股関節は太ももの骨が骨盤にはまり込んだ場所のことを言います。
太ももの骨のことを解剖学的には大腿骨と呼んでおり、大腿骨の先っぽには大腿骨骨頭と呼ばれる部分があります。そして、大腿骨骨頭が骨盤のくぼんだ場所(寛骨臼といいます)にはまり込むことによって、股関節を構成しているのです。
働き
股関節は、人体にある関節の中で、肩関節と並んで多彩な動きをすることで知られています。大腿骨骨頭は、寛骨臼にその5分の4を覆われる形になっていますが、骨頭が丸い形をしているので、さまざまな方向へと動かすことが可能なのです。
股関節の動きは大きく分けると6つに分類できます。それは「屈曲」「伸展」「外転」「内転」「外旋」「内旋」の6つの動作です。
屈曲は、膝を上に持ち上げるときの股関節の動きを意味します。自力で股関節を屈曲させる場合、整形外科的には120度曲がるのが平均的だとされています。
伸展は、うつぶせになってかかとを上にあげるときの股関節の動きを意味します。やはり自力で足を上げた際、身体の軸に対して股関節が20度程度動くということです。
外転は、まっすぐに立った状態で、片足を横にあげていくときの股関節の動きを意味します。やはり、体の軸に対して45度程度動くのが平均的だということです。
内転は外転の反対側に動かす動作で、サッカーのインサイドキックをイメージしてもらうと分かりやすいかもしれません。一般的には20度程度動くのが平均的だということです。
外旋と内旋は、膝を90度にして片足を上げ、膝の位置をそのままにして足を左右に回す動作のときの股関節の動きを意味します。
たとえば、右膝を90度に曲げた状態で足を上げ、足の先を外側に開いた場合、股関節は内旋することとなります。反対に、足の先を内側にする(あぐらをかくような)イメージと、股関節は外旋することとなります。
外旋と内旋はそれぞれ45度程度だとされています。このような動作を複合的におこなうことによって、股関節はさまざまな動作を可能としているのです。
股関節の柔軟性がなくなるとどうなる?
股関節は実にさまざまな動きが可能であることを理解して頂けたことと思います。では、そんな股関節から柔軟性が失われた場合、どのようなことが起こるのでしょうか。
怪我をしやすくなる
股関節の柔軟性がなくなった場合、怪我のリスクが高くなるということが考えられます。股関節に柔軟性があるということは、外部からの衝撃に対するクッションの役目を果たしてくれているということでもあります。
そのようなクッションの働きがなくなることによって、股関節をはじめ、仙腸関節部や腰部に痛みが出たり、膝を痛めやすくなったりします。
また、股関節が硬いということは、筋肉が硬いということでもあります。筋肉が硬くなると血行が悪くなるため、股関節周囲の栄養状態が低下します。それによって、筋疲労やけがが治りにくくもなります。
スポーツ選手の中でも、股関節が硬くて腰痛を発症するような人もいます。イチロー選手がほかの選手に比べて怪我をしにくいのは、しっかりと股関節のケアをしているということもその一因となっています。
姿勢が悪くなる
股関節の柔軟性がなくなると、姿勢が悪くなる可能性も高くなります。なぜなら、股関節には臀部や腰部の筋肉も付着しているからです。
特に腸腰筋と呼ばれる、腰の骨と股関節をおなか側で結ぶ筋肉が緊張して硬くなることによって、身体が前に倒れて猫背気味になってしまいます。
デスクワークを長時間おこなう人の姿勢が悪くなりがちなのは、この腸腰筋が固くなることも1つの原因となっています。姿勢が悪くなれば、首のコリや肩こり、それが引き金となる頭痛を発症するリスクも高くなります。
O脚になるリスクが高くなる
先ほど、姿勢が悪くなる原因として腸腰筋の緊張があげられていましたが、腸腰筋が緊張すると、付着している股関節を引っ張って、股関節を外旋させることも分かっています。
股関節が外旋するとは、分かりやすくいうと足の軸が外側に開くことを意味します。つまり、足がO脚気味になってしまうということです。
下半身太りしやすくなる
股関節の柔軟性が失われると、下半身太りのリスクも高くなります。先にあげたO脚の場合、太ももやふくらはぎの筋肉の外側ばかりが目立つようになり、痩せていても足が太く見えてしまいます。
また、股関節周囲に筋肉が緊張することで血管を圧迫し、血行が悪くなってしまいます。そうなると、脚にむくみが生じて、見た目が太くなってしまうのです。
股関節を柔軟にする方法・運動編
股関節の柔軟性が失われると、怪我をするリスクが高くなるだけでなく、下半身太りになってしまう可能性も高くなるということでした。では、股関節の柔軟性を取り戻すにはどうしたらよいのでしょう。まずは、股関節を柔軟にする運動を2つ紹介します。
スプリットスクワット
スプリットスクワットは、通常のスクワットとは異なり、足を前後に開いておこなうタイプのスクワットです。通常のスクワットと比べると、筋力の弱い女性でもおこないやすいというメリットがあります。
とはいっても、その効果は通常のスクワットとくらべても遜色ありません。スプリットスクワットの効果としては、筋力アップと姿勢改善、ウエスト周りの引き締め効果などがあげられます。
スプリットスクワットをおこなう際には、まず足を軽く前後に開きます。その状態から、上体をまっすぐ下におろしながら、前の膝を90度、後ろの膝を135度まで曲げ、停止します。
その時に、膝が床についてしまわないように気をつけてくださいね。停止したら、ゆっくりと元の姿勢に戻します。最初は10回から始めるとよいでしょう。終わったら、前後の足を反対にして、また10回おこないましょう。
スプリットスクワットも筋トレの一種なので、当然ですが継続することによって筋力アップが可能です。また、実際にやってみると分かりますが、慣れないうちは左右にフラフラすることと思います。
フラフラしないように我慢してスクワットをおこなうことで、重心バランスが安定し、姿勢の改善効果も得られることとなります。
さらに、スプリットスクワットをおこなうと、おなかにある腸腰筋を刺激することが可能となります。それによって、ウエスト周りを引き締める効果も期待できるのです。
股関節の開閉運動
股関節の内外旋運動とは、その名の通り股関節を開いたり閉じたりする運動のことです。サッカー選手のウォーミングアップ動作をイメージして頂けると分かりやすいかもしれません。
軽くジョギングをしながら、膝を90度に曲げてまっすぐ前にあげ、そこから真横に膝を持っていきます。これが、股関節を開く運動です。
股関節を閉じる運動は先ほどとは反対に、軽くジョギングをしながら膝を90度に曲げ、外側に開いた状態からまっすぐ前に持ってきます。
このような運動のことを動的ストレッチ(ダイナミックストレッチ)と呼んでおり、身体を温めながらおこなうこととなるため、筋肉を適度に緊張させながら、ストレッチをおこなうことが可能となっています。
私たちが一般的にイメージするストレッチは、伸ばす筋肉を意識して、じっくりと筋肉を伸ばすタイプのストレッチだと思いますが、そのようなストレッチのことを静的ストレッチ(スタティックストレッチ)と呼んでいます。
静的ストレッチは筋肉を緩めることを目的としているので、運動前におこなってしまうと、パフォーマンスの低下やけがのリスクの上昇につながりかねないのです。
そのため、スポーツ界では最近になってダイナミックストレッチが注目されるようになっているのです。ちなみに、誰もが知っているラジオ体操も、ダイナミックストレッチの一種です。
皆さんももし、これから運動をするというような場合は、スタティック(静的)ストレッチではなく、ダイナミックストレッチをおこなうようにしてくださいね。
股関節を柔軟にする方法・ストレッチ編
股関節を柔らかくする方法としては、股関節周りの筋肉を柔軟にするという方法があります。その代表的な方法がストレッチです。ここでは、股関節を柔らかくするのに効果的な4つのストレッチ方を紹介したいと思います。
ハムストリングスのストレッチ
股関節を柔らかくするためには、股関節や太ももの骨(大腿骨)にくっついている筋肉の柔軟性を高めるのが、もっとも手っ取り早い方法となっています。
まずは、ハムストリングスのストレッチから始めましょう。ハムストリングスは、太ももの裏側の筋肉を総称したもので、大腿二頭筋と半腱様筋、半膜様筋から構成されています。
ハムストリングスは、太ももの骨だけでなく、坐骨という骨盤の骨にも付着しています。そのため、ハムストリングスが固くなってしまうと、骨盤を後ろに引っ張ってしまい、結果として猫背気味になってしまうのです。
ハムストリングスのストレッチをおこなう際には、椅子やベッドなどを利用するとよいでしょう。片方のかかとを椅子やベッドに乗せて、足をまっすぐ伸ばします。
その状態で、反対側の膝をゆっくりと曲げていきましょう。太ももの裏に突っ張るような感じがあれば、ハムストリングスのストレッチが上手にできている証拠です。
ハムストリングスのストリングスは、股関節の柔軟性を高めるだけでなく、ケガの予防は腰痛予防にも効果的です。また、姿勢を改善したり、血行を促進して足のむくみを解消したりする効果もあるので、ぜひやってみてくださいね。
内転筋のストレッチ
内転筋は、太ももの内側にある筋肉のことを指します。内転筋は、太ももの外側に比べると筋力が弱く、また普段あまり使う機会のない筋肉であるため、血行が悪くなりやすく、結果としてむくみにつながることがあります。
また、内転筋は使わないことによって血行が悪くなって緊張して(こって)しまいます。それによって、冷え症につながるのです。
内転筋のストレッチをおこなう際には、先ほどのハムストリングスのストレッチを応用します。椅子やベッドにかかとを乗せて足をまっすぐ伸ばしたら、足の内側を椅子やベッドにつけ、身体を90度内側に向けます。
たとえば右足の内転筋をストレッチする場合、右足のかかとを椅子やベッドに乗せ、右足を内側に倒して、親指側を椅子やベッドにつけるようにします。
その際、身体を左側に90度回し、横を向くような姿勢をとります。その状態で、左足の膝をゆっくりと曲げていきます。右足の太ももの内側に突っ張るような感じが見られれば、内転筋のストレッチが上手にできている証拠です。
大腿四頭筋のストレッチ
大腿四頭筋は、ハムストリングスとは反対に、太ももの前側にある筋肉の総称で、大腿直筋と外側広筋、内側広筋、縫工筋によって構成されています。
大腿四頭筋はハムストリングスに比べると筋力が強いため、ハムストリングスとのバランスが乱れてしまいがちです。それによって、股関節の動きが悪くなったり、膝痛の元となったりします。
大腿四頭筋をストレッチするときはまず、床に足を投げ出した状態で座り(長座)、片方の膝を曲げて、お尻の横に足先を持ってきます。その状態で両手を後ろにつき、ゆっくりと上体を倒していきます。
可能であれば、背中が床につくまで上体を倒しても構いませんが、身体が硬くて痛いような場合は、両手で上体を支えて、倒せるところまで倒していきましょう。
腸腰筋のストレッチ
腸腰筋のストレッチは、スプリットスクワットの応用となります。足を前後に開いて、上体を下ろした状態のまま、30秒間キープしましょう。
右足が前になっているときには左の腸腰筋が、左足が前になっているときには右側の腸腰筋がストレッチングされます。やはり姿勢改善効果を得られるほか、腰痛予防の効果も得られます。もちろん、股関節の柔軟性も得られますよ。
日ごろから股関節を意識する
今回の記事では、股関節の柔軟性の大切さと、股関節を柔軟にするための運動やストレッチを紹介しました。股関節は沈黙の運動器と呼ばれることもあり、気が付いたらかたくなっていたということがほとんどです。日頃から股関節を意識して動かし、腰痛や下半身太りを予防してくださいね。