便の状態や色は、食べたものや腸内環境に大きく左右されます。そんな中でも、血便が見られるようなときは、便の状態や腸内環境が悪化している可能性があります。では、なぜ血便が見られるようになるのでしょう。
便秘に悩まされている女性の方はたくさんいらっしゃいますが、中には血便が出たり、お尻を拭いたトイレットペーパーに血がついていたりする方もいらっしゃることと思います。血便が出ると驚いてしまいますが、そのようなときに考えられる疾患にはどのようなものがあるのでしょうか。
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便秘で血便が見られる病気その1・痔
便秘にともなって血便がみられるようなときに考えられる疾患としては、痔が最初にあげられるのではないでしょうか。というのも、日本人にとって痔は意外と身近な疾患だからです。
痔ってなに?
痔は、肛門付近にできる炎症性の疾患です。痛みをともなうこともあれば、痛みを感じないこともあります。また、出血がみられやすい痔と、そうではない痔があります。
肛門の構造は意外と複雑になっています。驚かれるかもしれませんが、胎児期の初期には肛門がありません。胎児の成長にともなって、お尻の方がくぼんできて、腸とつながることで肛門が形成されます。
くぼんできたお尻と腸とがぶつかる線のことを、歯状線(しじょうせん)と呼んでいます。歯状線より上は粘膜で覆われており、歯状線より下は皮膚で覆われています。
肛門の内部や肛門の出口付近には毛細血管が集まっています。これらの毛細血管のことを静脈叢と呼んでいます。静脈叢には、静脈が集まった束といったような意味があります。
歯状線より上の肛門の手前には直腸がありますが、直腸の粘膜にある静脈叢には知覚神経がありません。そのため、歯状線より上に発生した痔の場合、原則として痛みを感じることがありません。
ところが、歯状線よりも下にある皮膚部分には知覚神経があります。そのため、歯状線よりも下に発生した痔の場合、痛みを感じることとなるのです。
日本人のおよそ3人に1人が、「もしかして自分は痔なのではないか」と思っており、そのような人が検査すると、およそ7割に痔が見つかるということです。痔は日本人にとって、虫歯と並ぶ国民病ともいえる疾患なのです。
痔の原因
痔ができてしまう原因としてもっとも一般的なのが便秘です。便秘になると、排便のときに固い便が肛門を通過することとなります。その際に、肛門の粘膜や皮膚を傷つけてしまい、結果として痔になってしまうのです。
また、下痢を繰り返すことによって肛門の粘膜や皮膚が弱くなり、それによって痔を発症することもあります。その他、排便時にいきんだり、座っている時間が長かったりすることによって、痔になるリスクが高くなると考えられています。
血便が見られる痔の種類
痔にはいくつかのタイプがありますが、そのうち、どのような痔だと便秘にともなって血便がみられやすくなるのでしょうか。
血便がみられる痔その1・痔核
血便がみられる痔としては、痔核(じかく)があげられます。一般的には「いぼ痔」と呼ばれていますが、医学的には痔核と呼ばれています。
痔核には内痔核と外痔核の2種類があります。内痔核は、歯状線よりも上にできるタイプの痔であるため、通常は痛みを感じることがありません。
内痔核は、その程度によって1度から4度にまで分類されます。1度の痔核は、排便時の出血がみられるものの、肛門から脱出することのない内痔核のことを言います。
1度の内痔核の場合、排便にともなって出血することがあるので、血便が出たと誤解することもありますが、実際は便に血液が含まれている訳ではありません。
出血の程度はさまざまで、鮮血がほとばしるように出るようなこともあれば、お尻を拭いたときにトイレットペーパーに血液が付着する程度のこともあります。
内痔核が進行すると、排便時に内痔核が肛門から飛び出すことがあります。このことを「脱肛」と呼んでおり、最初のうちは排便後、自然に元に戻りますが、ひどくなると常に飛び出したままになります。
ただ、内痔核が進行するにともなって、痔核自体が硬くなってきます。そのため、1度の内痔核のときと比較すると、かえって出血はみられにくくなるということです。
内痔核が1度や2度程度のレベルであれば、通常は手術をするような必要はありません。食習慣や生活習慣を見直すことで、改善が可能だということです。
外痔核は、歯状線よりも下にできるタイプの痔核であるため、内痔核の場合とは異なり、激しい痛みをともなうのが特徴です。外痔核が破裂すると、出血がみられるようになります。
外痔核も通常は手術をする必要がなく、食習慣や排便習慣の改善や、医薬品によって治すことが可能だということです。
血便がみられる痔その2・裂肛
血便がみられる痔としては、裂肛(れっこう)もあげられます。医学的には裂肛と呼んでいますが、「切れ痔」や「裂け痔」といった方が分かりやすいかもしれませんね。
男性でも女性でも、もっとも多い痔は痔核なのですが、女性の場合、痔核に続いて多いのが裂肛だということです。これは、女性に便秘が多いこととも関連しています。
裂肛のやっかいなところは、歯状線よりも下にできるため、激しい痛みが出ることです。痛いのが怖いので排便を我慢すると、腸内の便はさらに水分がなくなって固くなってしまいます。
固い便を出すとさらに裂肛がひどくなるという悪循環に陥ってしまうため、早めに治療することが重要です。裂肛の場合にも、出血がみられることとなります。
便秘で血便が見られる病気その2・潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎は、ストレス社会である現代によくみられる疾患です。日本には現在、18万人以上の潰瘍性大腸炎患者がいるとされ、その数は年々増加傾向にあるということです。
潰瘍性大腸炎ってなに?
腸に炎症がみられる疾患のことを炎症性腸疾患と呼んでいますが、大腸に炎症がみられる疾患のことを、潰瘍性大腸炎と呼んでいます。
炎症を起こす部位は大腸に限定されており、ほとんどの潰瘍性大腸炎は比較的軽症であるということです。潰瘍性大腸炎を発症すると、血便や腹痛、便秘や下痢といった排便障害がみられるようになります。
潰瘍性大腸炎の原因や特徴
潰瘍性大腸炎は、国によって指定難病に認定されており、現代医学をもってしても、ハッキリとした原因が分かっていません。ただ、免疫機能に何らかの異常が起こることで、発症リスクが高くなるのではないかと考えられています。
便秘で血便が見られる病気その3・大腸がん
便秘にともなって血便がみられるような場合、大腸がんが疑われることもあります。では、大腸がんはどのような疾患なのでしょう。
大腸がんってなに?
大腸がんはその名の通り、大腸にがん(悪性新生物)ができる疾患のことを言います。日本人の死因ナンバー1ががんですが、特に女性の場合、がんによる死因のトップを大腸がんが占めています。
大腸がんの原因や特徴
小腸から移行する大腸は、盲腸から始まっています。盲腸から上に向かっている部分のことを上行結腸と呼んでおり、そこから大腸はカーブして左方向へと向かいます。その部分のことを横行結腸と呼んでいます。
横行結腸は左の腹部でカーブして下に向かいます。その部分を下行結腸と呼んでいます。下行結腸はやがてカーブしてS状結腸になり、その先が直腸となっています。大腸がんは、中でも直腸とS状結腸にできやすいとされています。
大腸がんの初期には、症状が何もないことがほとんどです。ただ、便秘や下痢を繰り返したり、おなかが張る感じがしたり、血便がみられたりすることがあるということです。
大腸がんを発症する原因としては、遺伝や高身長などのほかに、食習慣もあげられています。特に、お肉が好きな人は大腸がんを発症するリスクが高いとされています。
なぜなら、腸内の悪玉菌がお肉に含まれている脂質やタンパク質をエサとして繁殖するからです。悪玉菌が繁殖すれば、腸内環境が悪化して、便秘になるリスクが高くなります。
便秘とは腸内に便が滞っている状態のことを意味しますが、腸内に長期間にわたって便がとどまった場合、やがて便は腐敗しはじめます。腐敗した便は、有害なガスや発がん性物質を出すこととなります。
大腸がんは、女性のがんによる死因のナンバー1となっていますが、そのことと女性に便秘が多いこととは無関係ではないでしょう。
便秘で血便が見られる病気その4・大腸憩室症
便秘にともなって血便がみられる疾患としては、大腸憩室症もあげられます。あまり耳馴染みのない疾患ですが、大腸憩室症とはどのような疾患なのでしょう。
大腸憩室症ってなに?
大腸には憩室(けいしつ)といって、腸壁の一部が外側へ袋状になって飛び出している部分があります。憩室の数は人によってさまざまですが、ほとんどが後天的にできるものだとされています。
大腸憩室症の原因や特徴
大腸憩室症の原因に関しては、食習慣の欧米化があげられています。というのも、大腸憩室はかつて、欧米人には多くみられたものの、日本人にはあまりみられなかったということです。
ところが、日本でも高度経済成長期以降、高カロリーの食べ物やお肉、脂っこい食べ物が好まれるようになってきました。そのことが、大腸憩室症になる人を増やしているのではないかと考えられているのです。
大腸憩室症には大きく分けて、「真性憩室」と「仮性憩室」の2種類があります。真性形質は、腸壁そのものが飛び出してしまうタイプの大腸憩室症のことを言います。
仮性憩室は、腸壁にある筋肉の層から、腸の粘膜が飛び出すタイプの大腸憩室症のことを言います。日本人の場合、ほとんどの大腸憩室症が、仮性憩室であるとされています。
大腸憩室症が見つかった場合でも、ほとんどのケースで自覚症状はありません。また、自覚症状のない大腸憩室症は、特に治療する必要もないということです。
ところが、大腸憩室に炎症を起こすと(大腸憩室炎)、腹痛を起こしたり発熱したり、血便が出たりすることがあります。場合によっては大量に出血し、ショック状態になることもあります。
軽度の大腸憩室炎であれば、投薬と食習慣の改善によって治るということですが、腹膜炎を起こしている場合や、化膿がみられる場合には手術が必要だということです。
便秘で血便が見られる場合の対処法
便秘で血便がみられる場合、どのようにして対処すればよいのでしょうか。自分でできることはなにかあるのでしょうか。
病院を受診する
便秘にともなって血便がみられるような場合、まずは医療機関を受診するようにしましょう。素人判断で放置してしまうと、思わぬ結果を招いてしまう可能性もあります。
明らかに肛門付近に違和感があるのであれば、肛門かを受診するとよいでしょう。思い当たることがないのであれば、消化器内科や便秘外来を受診するとよいでしょう。
便秘を予防する
便秘にともなって血便がみられるような場合、便秘を予防することも重要です。特に、痔疾患を予防するためには、便秘を改善することが重要となります。
便秘になる原因はさまざまなので、まずは自分のライフスタイルを振り返ってみましょう。食生活が乱れているのであれば、栄養バランスのとれた食事にしましょう。
睡眠不足や疲労などによってストレスがたまっているのであれば、早寝早起きをして適度にストレスを発散するとよいでしょう。
便秘に限った話ではありませんが、ストレスは万病の元と呼ばれています。なぜなら、ストレス状態が継続すると、私たちの生命活動を司っている自律神経のバランスが乱れるからです。
自律神経は、身体にとって車のアクセルやブレーキのようなものであり、その両者がバランスを保つことによって、身体のさまざまな機能が円滑に働くこととなるのです。
ところが、ストレス状態が継続すると、身体がアクセルを踏みっぱなしの状態になってしまうのです。それによって、寝ても疲れがとれなくなったり、消化や吸収が滞ったりするのです。
特に、現代はストレス社会といわれているので、ストレスを上手にコントロールし、便秘をはじめ、病気にならないようにすることが重要です。
すみやかに病院を受診してください
今回の記事では、便秘にともなって血便がみられるような場合に考えられる病気を紹介しました。血便がみられる疾患はいろいろですが、なにより大事なのは、血便がみられたらただちに病院を受診することです。自己判断で放置すると思わぬ結果を招いてしまうこともあるので、注意してくださいね。