人間の身体は食べたものによってつくられており、便は食べたもののなれの果てということもできます。つまり、食事によって便秘になることもあれば、食事によって便秘を改善することも可能だという訳です。今回は、便秘と食事との関係に迫ります。
「長いあいだ便秘に悩まされている」という女性も多いことと思いますが、そのような方は自分の食事を振り返ってみましょう。便秘になりやすいものを食べていませんか?
今回の記事では、便秘になりやすい食事を紹介するとともに、便秘を改善するための食事法についても解説していきたいと思います。食事以外の便秘改善法も教えちゃいますよ!
CONTENTS
便秘になる食事内容
便秘になりたくてなる人はいないと思いますが、知らないうちに便秘になってしまうような食事の仕方をしてしまうことがあります。では、どのような食事の仕方によって便秘になってしまうのでしょうか。
食物繊維が不足している
便秘になってしまう食事の仕方としてまずあげられるのが、食物繊維が不足しているということです。食物繊維の摂取量が不足すると便秘になるということは、多くの方がよく知っていることではないでしょうか。
現代人は野菜の摂取量が不足しているとされています。食物繊維は野菜に多く含まれているため、野菜の摂取量が不足することによって、便秘になりやすくなるという訳なのです。
お肉を好んで食べる
お肉を好んで食べる人も、便秘になりやすいとされています。便秘に悩む人は年々増えてきており、病院によっては便秘外来の予約が数年先になるところもあるほどです。
お肉を好んで食べるようになったのが、高度経済成長期以降だという説があります。戦前の日本人は玄米食を中心とし、魚や海藻、野菜を中心とした食生活を送っていました。
ところが、高度経済成長を迎えると、人々の生活が豊かになってきました。その絶頂がバブル期ですが、裕福になった現代人は、カロリーが高くて脂っこい食べ物を好むようになってきたのです。
農林水産省の調査によると、高度経済成長期以前、1人の日本人が1年間に肉を食べる量はおよそ3kg程度だったとされています。
ところが、21世紀に入る頃には、1人の日本人が1年間に肉を食べる量は、なんと43kgにまで増加しているということです。
肉食を続けるとなぜ便秘になるのでしょうか。それは、腸内に住んでいる悪玉菌が、お肉に含まれるたんぱく質をエサとして増殖するからです。その結果、腸内の細菌バランスが乱れ、結果として便秘になってしまうのです。
もちろん、お肉には人体に欠かせない必須アミノ酸を含んでいるものもあることから、まったく摂らないというのも問題です。ただ、食べすぎると便秘になるリスクが高くなってしまうのです。
便秘を促すものを飲んでいる
便秘を促す飲み物としては、カフェインを含んでいるものがあげられます。カフェインには交感神経を優位にする働きがあり、飲むと覚醒作用や利尿作用、解熱鎮痛作用などが得られるとされています。
少量を飲むだけなら特に問題ないのですが、大量に飲んでしまうと交感神経が優位になりすぎ、自律神経がいわば興奮状態になってしまうのです。
交感神経が優位になると、血管が収縮して血行が悪くなってしまいます。血液は全身に酸素と栄養を運んでいるため、血行不良になると栄養状態が低下することとなってしまいます。
栄養状態の低下が胃腸に見られれば、食べ物の消化が滞ったり、腸の機能が低下したりして、便秘になる可能性が高くなります。
ただ、カフェインを摂取するとその利尿作用によって体内の水分が不足し、便も硬くなってしまうという説に対しては、異論が唱えられることもあります。
水分補給を専門にしている人の中には、カフェインの摂取を過剰に控えることによって、かえって脱水症状を呈する可能性があるとする人もおり、見解が分かれているところです。
とは言うものの、カフェインの過剰摂取によって体調に変化が見られることは間違いありませんし、あまりにも多量のカフェインを摂取した場合、カフェイン中毒になることもあります。
カフェインを含む飲み物としては緑茶やコーヒー、紅茶ウーロン茶、コーラや滋養強壮剤などがあげられています。カフェインに限ったことではありませんが、特定のものを多量に摂取すると、さまざまな弊害が起こります。
粉ものを好んで食べる
意外に思われるかもしれませんが、タコ焼きやお好み焼きなどの「粉もの」を好んで食べる人は、便秘の可能性が高くなるそうです。
粉ものとは、小麦粉から作られた食べ物を意味しますが、関西では特に「粉もん」と呼ばれ親しまれており、お好み焼きをおかずにしてごはんを食べるなどという独特の文化があります。
料理をされる方であればご存じだと思いますが、小麦粉には水分を吸収してまとまるという性質があります。そのため、粉ものを食べすぎると便が硬くなってしまうという訳なのです。
便秘を改善する食事法
便秘を促進してしまう食べ物や飲み物について知って頂いたところで、次に、便秘を改善する食事法について紹介したいと思います。
食物繊維を摂取する
便秘の原因として食物繊維の摂取量の不足があげられていました。ということは、食物繊維を積極的に摂取することによって、便秘の改善が期待できるという訳です。
食物繊維には不溶性の食物繊維と水溶性の食物繊維があり、どちらも野菜に多く含まれています。不溶性の食物繊維には、保湿性が高く、水分を吸収して膨張するという性質があります。
不溶性の食物繊維が大腸内で膨張すると、便の嵩を増すことが可能となります。それによって腸管を刺激し、便意を促すことにつながるのです。
また、水溶性の食物繊維には消化酵素によって溶かされ、体内でゲル状になるという性質があります。それによって、便を軟らかくして排出されやすい状態にしてくれるのです。
ちなみに、不溶性の食物繊維も水溶性の食物繊維も、ダイエットをするときにもオススメな栄養素となっています。
不溶性の食物繊維は私たちが持っている消化酵素では溶かすことができないため、消化管内の水分を吸収しながらゆっくりと移動していきます。
私たちが食べたものは、胃の中で3時間から4時間ほどとどまるとされています。その間、不溶性の食物繊維が胃の中で膨張することによって、満腹感を得やすくなるのです。
また、水溶性の食物繊維は、消化管内で糖質を包み込み、糖質が腸へと吸収されるのを防いでくれます。肥満の原因は糖質の過剰摂取だと考えられているため、水溶性の食物繊維を積極的に摂取することでダイエット効果も得られるのです。
水分補給をおこなう
便秘を改善するためには、水分補給を欠かさないことも重要です。デスクワークなどに集中していると、ついつい水分補給を怠ってしまいがちです。しかも座りっぱなしなので、腸の動きも鈍くなってしまいます。
便秘が気になる場合、寝る前にたくさんの水を飲んでおくとよいでしょう。私たちが食べたものの消化や吸収は、寝ている間に活発におこなわれます。
また、朝起きたときにコップ1杯の水を飲むもの便秘の改善に効果的です。それによって、腸を刺激して便意を起こすことができるからです。
発酵食品を食べる
発酵食品は健康に良いとされていますが、便秘の改善にも一役買ってくれます。発酵食品とは、乳酸菌や納豆菌、酵母菌などの微生物によって発酵した食品のことを言います。
腸内には多数の細菌が存在していますが、発酵食品を摂取することによって、腸内環境を改善し、結果として便秘の解消につなげることができるようになるのです。
適度な油分を摂取する
油というと肥満や老化の原因として嫌われがちなものですが、体内にとって必要な油もあります。必須脂肪酸と呼ばれるものがそれで、オレイン酸やリノレン酸、ドコサヘキサエン酸やエイコサペンタエン酸などがあります。
お肉よりも魚の油の方が健康によいとされるのは、青魚などにはドコサヘキサエン酸やエイコサペンタエン酸などの必須脂肪酸が豊富に含まれているからです。
便秘を改善する飲み物
便秘を改善するには食習慣を見直すという方法がありますが、便秘改善効果の期待できる飲み物を飲むというのも1つの手です。では、便秘改善効果のある飲み物にはどのようなものがあるのでしょう。
お酢
お酢には、体内でのビタミC吸収を助けてくれるという働きがあります。ビタミンCには、腸内で善玉菌を増やす、悪玉菌を減らすという働きがあります。お酢によってその効果が高まるため、便秘の改善効果が期待できるのです。
また、お酢には腸内の働きを活性化させる効果もあります。腸内のお酢は炭酸ガスを発生させて腸管を刺激し、便意を促進してくれるのです。
水
便秘の改善する飲み物としては、水もあげられます。特に白湯を朝起きたときに1杯飲むと、腸を刺激して便意を起こしやすくするとされています。
ココア
ココアには豊富な食物繊維が含まれているので、便秘の改善に効果的です。ただし、市販のココアには大量の糖分が含まれているため、ダイエット中には注意が必要です。
お茶
お茶の中には便秘改善効果が期待できるものもあります。一般的な茶葉から作られたお茶ではなく、変な言い方ですが「お茶ではないお茶」に便秘改善効果が期待できます。
厳密な意味でいうと、お茶とは茶葉から作られるもののことを指しますが、お茶と似た飲み方をするものも、お茶と呼ばれることがあります。たとえば、玄米茶や麦茶などがそうです。
便秘の改善効果が期待できるお茶としては、ゴボウ茶やルイボスティーなどがあげられます。ゴボウ茶には食物繊維が、ルイボスティーにはマグネシウムが豊富に含まれていますが、それぞれ便秘の解消に一役買ってくれます。
ミックスジュース
野菜や果物をミキサーで粉砕して作るミックスジュースも、便秘の改善に効果的です。ミックスジュースは食物繊維をたくさん含んでいるので、あたり前といえばあたり前ですよね。
便秘のタイプによっては注意が必要
一口に便秘と言ってもさまざまなタイプがあります。便秘のタイプによっては、便秘を改善する目的でおこなった行為が裏目に出てしまうこともあります。では、どのように気をつければよいのでしょう。
便が硬くなりすぎている場合
便秘には直腸性の便秘と呼ばれるものがあります。大腸は上行結腸から始まり、横行結腸、下行結腸、S状結腸を経て、直腸へと至ります。その先になるのが肛門という訳です。
直腸性の便秘は、直腸までちゃんと便が送られているのに、脳に便意がうまく伝わらないことによって排便が困難になるタイプの便秘を意味します。
その際に不溶性の食物繊維を大量に摂取してしまうと、便がさらにカチカチになってしまい、余計に便秘が悪化することとなります。
直腸性の便秘は習慣性の便秘とも呼ばれており、朝のトイレ時間をゆっくり取れないとか、朝五歯を食べる時間がなくて、腸管が刺激されないなどの原因で起こります。
直腸性の便秘がみられる場合には、夜寝る前にたくさん水分を取っておき、朝起きたときにコップ1杯分の水を飲みましょう。その後、便意が訪れるまでゆとりを持って過ごすことが重要です。
腸が緊張している場合
便秘にはけいれん性の便秘と呼ばれるタイプの便秘もあります。睡眠不足や疲労、人間関係の悩みや仕事上のトラブルなど、ストレスが昂じると腸も緊張してしまいます。
腸が緊張すると、便の通り道が狭くなってしまい、結果として便秘になる訳です。このようなタイプの便秘の人は、カフェインの含まれている飲み物は避けるようにしましょう。
また、夜遅くまで起きているとついつい間食を取ってしまいがちになります。夜遅い時間の食事は消化に悪いので、ストレスを解消するためにも早寝早起きするようにしましょう。
便秘が続く場合は病院を受診しよう!
便秘にはいろいろな種類があり、自分ではどのタイプの便秘なのか判断することはなかなか難しいと思います。「便秘で病院に行っていいの?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、病院の中には便秘外来を設けて、便秘の患者さんを専門に見ているところもあります。
便秘の中にはそれほど心配しなくてよい便秘もあれば、器質性便秘と言って、なんらかの疾患が原因で起こるタイプの便秘もあります。また、便秘を放置していると、腸閉そくを発症するリスクが高くなることも分かっています。
便秘に限ったことではありませんが、素人が自己判断していいことはなにもありません。便秘が長く続いている場合、インターネットに解決策を求めるのではなく、まずは専門家に診てもらうようにしてくださいね。
食習慣の改善に取り組みましょう
今回の記事では、便秘になってしまう食べ物や飲み物、反対に便秘の改善に効果的な食べ物や飲み物について紹介しました。長いこと便秘に悩まされている方はまず専門家に診てもらい、その上で今回の記事を参考にして、食習慣の改善に取り組んでくださいね。