便秘は比較的ポピュラーなものであり、それほど重大に考えていない方もいらっしゃることと思います。ただ、便秘を放置すると、肌荒れや吹き出物、病気などにつながる可能性もあります。自分の便秘のタイプを知って、早めに解決するようにしましょう。
一口に便秘と言っても、原因は実にさまざまです。そして、原因別に便秘はいくつかのタイプに分けられます。そこで今回は、便秘になってしまう原因を知り、自分がどのタイプの便秘かを理解したうえで、効果的に便秘を改善する方法について解説していきたいと思います。
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便秘の原因その1・腸の機能低下
それでは早速ですが、便秘の原因について見ていきましょう。便秘は腸で便が停滞してしまう現象のことを言いますが、その原因としては腸の機能低下がまずあげられます。
消化・吸収機能の低下
私たちが食べたものは、口の中で咀嚼されて消化酵素を含む唾液と混ぜ合わされます。その後、食道を通って胃へと送られ、胃の中で3時間から4時間かけて、さらに消化され、十二指腸へと送られます。
消化された食べ物は、十二指腸において胆汁や膵液によってさらにドロドロに細かく消化されます。その後、小腸で栄養素が吸収されることとなります。
つまり、食べたものの消化と栄養素の吸収は、食べたものが小腸へと至る過程でおこなわれている訳です。そのため、消化と栄養素の吸収が滞ってしまうと、食べたものがしっかりとドロドロに分解されないため、便秘が起こりやすくなるのです。
便を排出する機能の低下
便秘になる原因としては、便を排出する機能の低下もあげられます。私たちが食べたものは胃や小腸で消化・吸収された後、大腸へと送られることとなります。
大腸は蠕動を繰り返すことによって、便を結腸から直腸、肛門へと送ります。そこで脳から「排便せよ」というメッセージが届くことで、便意が起こることとなるのです。
ところが、大腸の機能が低下することで蠕動が弱くなってしまうと、便がなかなか直腸の方まで送られなくなってしまいます。
大腸には、便から不要な水分を吸収する働きがあるのですが、便が大腸内に長くとどまってしまうと、必要以上に水分を吸収してしまい、便が固くなってしまうのです。これが便秘になるメカニズムという訳なのですね。
要因
腸の機能が低下する要因は実にさまざまですが、第一に飲食があげられます。暴飲暴食はもちろんのことですが、水分不足や糖質の過剰摂取も大腸を疲労させ、腸の機能を低下させてしまいます。
また、野菜をあまり食べなかったり、運動不足だったり、睡眠不足だったりすると、腸の機能が低下しやすくなってしまいます。
あと、ストレスの存在も忘れてはいけません。ストレス状態が続くと、後にも述べますが自律神経のバランスが乱れ、腸の機能が低下し、結果として便秘を起こしてしまいます。
便秘の原因その2・腸の過緊張
便秘の原因としては、腸の過緊張もあげられます。便を直腸へと送るためには、腸が緊張して蠕動する必要があるのですが、腸が緊張しすぎるとかえって便秘になるリスクが高くなります。
交感神経優位が過度になる
便秘にはいろいろなタイプがあります。例えば、腸の機能が低下して便がなかなか直腸へと送られなくなるタイプの便秘を、機能性便秘の中でも弛緩性便秘と呼んでいます。
一方、交感神経優位が過度になることによって、便がなかなか直腸まで至らないタイプの便秘を、機能性便秘の中でもけいれん性便秘と呼んでいます。
私たちの生命活動は自律神経によって制御されていると言っても過言ではありません。自律神経は交感神経と副交感神経とで成っており、両者がバランスをとることで、内臓を機能させたり、体温を調整したり、血流を調整したりしているのです。
交感神経と副交感神経はよく、車のアクセルとブレーキの関係に例えられます。日中は交感神経が優位になって(アクセルを踏んで)活発に動き、夜になると副交感神経が優位になって(ブレーキを踏んで)身体を休めるという訳です。
ところが、身体的なストレス(疲労や睡眠不足など)や精神的なストレス(職場の人間関係や家庭内の不和など)が継続すると、交感神経優位の時間が長くなってしまいます。
やがて夜になってもアクセルを踏みっぱなしの状態になってしまい、睡眠の質が低下することとなります。
食べたものの消化や吸収は夜寝ている間に活発におこなわれるため、睡眠の質が低下してしまうと、必然的に便秘になりやすくなるという訳なのです。
要因
けいれん性便秘は、ストレス状態が継続することによって起こるということでしたが、その他の要因として、便秘薬を継続的に利用することもあげられています。
便秘薬を使いすぎると身体に耐性ができてしまい、便秘薬が効きにくくなってしまいます。そうすると、さらに便秘薬を濫用することとなり、その結果、便秘と下痢を繰り返すといったことが起こります。
便秘の原因その3・便意を我慢する
機能性便秘には、先程紹介した弛緩性の便秘やけいれん性便秘の他、直腸性の便秘と呼ばれるタイプの便秘もあります。
弛緩性の便秘やけいれん性便秘の場合、便が直腸までちゃんと送られないということが起こりますが、直腸性の便秘の場合、便はちゃんと直腸まで送られています。
ところが、直腸まで便が着ているにもかかわらず、脳へと便意が伝わらないことで、排便する機会を失してしまうのです。
その原因としては、便意を我慢してしまうことがあげられています。便意があるにもかかわらずたまたまトイレが見当たらなかったり、会議中でトイレに行けなかったりすることで直腸性の便秘が習慣化してしまいます。
また、便意が訪れないため浣腸剤などを頻繁に利用することで、直腸性の便秘が習慣化することもあります。
このように、直腸性の便秘は日常の習慣によってもたらされることから、習慣性便秘と呼ばれることもあります
便秘の原因その4・病気
便秘の原因としては、病気もあげられています。機能性便秘に対して器質性便秘と呼ばれるものがそうですが、原因となる疾患を治さないと、便秘の改善も見られません。では、どのような病気が原因で便秘を併発するのでしょうか。
イレウス
イレウスのことを日本語では腸閉塞と訳していますが、実際には腸の閉塞が見られなくても、食べたものがちゃんと消化管を流れなくなっていれば、イレウスと呼ばれることになります。
イレウスの大部分を癒着性イレウスと呼ばれるタイプのイレウスが占めており、イレウス全体の6割にも及ぶとされています。
癒着性イレウスを発症すると、腸管が狭くなったり折れ曲がったりすることで、食べたものがちゃんと流れて行かなくなってしまい、結果として便秘を起こすという訳なのです。
癒着性イレウスになる原因としては、胃潰瘍にともなう腹膜炎や、過去の腹部手術、腹部への外傷などがあげられています。
特に、腹部の手術をおこなったことのある人は、ある日突然イレウスを発症することもあるということなので、覚えておくとよいでしょう。
イレウスの症状としては、腹痛やおう吐、吐き気やお腹の張り感、便秘やおならが出なくなるなどといったことがあげられます。
また、稀なケースではあるのですが「糞便イレウス」といって、便秘が長期間にわたって続くと、大量の便が消化管に溜まってしまい、それが原因で起こるイレウスもあります。
大量の便によって腸管が拡張されて緩んでしまい、次第に便意がなくなってきてしまうのです。そうなるとますます便が溜まりますし、大腸によって水分が吸収されるので、カチカチの便が溜まることとなります。
実際に、1998年、奈良県に住む21歳の女性が、便秘が原因と思われる腸閉塞で亡くなったという事例があります。
ごく一般的な体型の女性であったにもかかわらず、亡くなったときには腸内に6.7kgもの便が溜まっていたということです。
また、直腸には10cmにも及ぶ、コンクリートのようにカチカチの便が溜まっており、亡くなった際の女性のお腹は、妊婦さんのように膨れ上がっていたということです。
亡くなった女性は1年以上前から便秘薬を服用しており、それによってけいれん性便秘を起こしていた可能性があります。
もちろん極めてまれなケースではあるのですが、たかが便秘と侮っていると、最悪の場合、命にかかわることもあるということです。便秘が長引いている方は、ぜひ一度、病院を受診して医師の診断を受けてくださいね。
大腸がん
日本人の死因の1位はガンということですが、特に女性の場合、ガンによる死亡の内、大腸がんがもっとも多いとされています。これは、女性に便秘が多いことと無関係ではないようです。
ただし、厚生労働省による研究の結果、2日から3日に1回しか排便がなかったとしても、毎日排便している人と大腸がんになるリスクは変わらないと発表されています。
便秘には怖い便秘と怖くない便秘があります。怖い便秘とは、これまではちゃんと排便リズムがあったのに、急に便が出なくなったというようなタイプの便秘です。
また、排便の前に長時間腹痛をともなったり、便秘と下痢を繰り返したりする人も要注意です。排便習慣に変化がみられた場合、やはり病院で専門家に診てもらいましょう。
腸管癒着
過去に開腹手術の経験があると、腸管癒着といって、腸の内壁の癒着してしまうリスクが高くなるということです。
腸管癒着にともなう便秘の場合、はげしい痛みが現れるという特徴があります。場合によっては失神してしまうほどの痛みだということです。
腸管癒着を起こしている場合、便秘薬の使用は「厳禁」です。通り道がふさがっているのに無理やり便を送ると、腸管が腫れあがってしまい、とても危険です。
開腹手術の経験がある人は、先程も述べたようにある日突然、腸の閉塞や癒着の起こることがあります。便秘にともなって激しい痛みがある場合、早めに病院を受診しましょう。
子宮内膜症
女性の10人に1人が子宮内膜症を持っているとも言われます。子宮内膜症と聞くと、子宮内膜に何らかのトラブルが起こるのかと思いがちですが、実際には、子宮ではない場所に子宮内膜と似た組織ができる疾患のことをいいます。
子宮内膜症が子宮と腸との間にできて大きくなってしまうと、腸が圧迫されることで便秘になることがあります。
便秘の解消法
便秘になると、疾患を発症するリスクがあるだけでなく、肌が荒れてお化粧のノリが悪く立ったり、吹き出物が出たり、口臭が悪化したりします。そのような事態に陥らないためにも、普段から便秘を解消することを意識しましょう。
食物繊維を摂取する
便秘になる原因として、食物繊維の摂取量が不足している、ということがあげられています。そこで、野菜や果物などをたくさん摂取するように心がけましょう。
野菜や果物には、日本人の食生活に不足しているとされるビタミンとミネラルがたくさん含まれています。美容面でもいい効果があるので、積極的に野菜や果物を食べるようにしましょう。
プチ断食
腸が疲労して機能低下を起こしているような場合、プチ断食がおススメです。朝ごはんをいつもの半分程度の量にして、お昼と夜は水分だけで過ごしましょう。
腸にかける負担を減らすことで腸の機能を回復させ、腸の蠕動がしっかりと起こるようになります。暴飲暴食によって便秘になっている場合に効果的です。
腸マッサージ
便秘の解消法としては、腸マッサージという手もあります。大腸は、上行結腸から横行結腸、下行結腸からS状結腸を経て、直腸から肛門へと至ります。
そのため、ひらがなの「の」の字を描くように、下腹部を時計回りに優しくマッサージしてあげましょう。お風呂上がりなど、体が温まっているときにおこなうとさらに効果的です。
ストレスをコントロールする
ウサギの糞のような固くてコロコロとした便が出ているような場合、けいれん性便秘になっている可能性があります。
けいれん性便秘は、ストレス状態が継続することで交感神経が優位になって起こります。そのため、適度にストレスを発散することが重要です。
おしゃべりが好きな人であれば、気の置けない友人とランチをするのも良いですし、カラオケが好きな人であれば、大きな声を出してストレスを発散するとよいでしょう。
原因を知って解消しましょう
便秘の原因や解消法、また、便秘にともなう疾患の可能性について見てきましたが、いかがだったでしょうか。便秘は特に珍しいものではなく、市販の便秘薬を利用している方も多いと思います。
ただ、便秘薬の使い過ぎによって便秘が慢性化したり、かえって悪化したりすることもあります。排便習慣に変化が見られるような場合、まずは病院を受診して専門家の判断を仰ぐようにしてくださいね。