肥満症と肥満は別物!?肥満症の診断基準と注意点について

メタボリックシンドロームという言葉もすっかり定着した感がありますが、高度経済成長期以降、日本人にも肥満化の波が押し寄せているようです。そんな中、肥満症と肥満という2つの言葉が聞かれることがあります。肥満症と肥満は別物なのでしょうか。別物だとしたら、どんな違いがあるのでしょう。

「肥満症とはなんですか?」と聞かれて正確に答えられる人は少ないのではないでしょうか。「肥満とはなんですか?」と聞かれたなら、多くの人が正解できると思います。ということは、肥満症と肥満とは何か違いがあるということになります。

今回の記事では、肥満症と肥満との違いや、肥満症の診断基準、肥満症にともなうリスクやその改善法について紹介したいと思います。

肥満症と肥満の違いとは?

ダイエットに成功しウエストが細くなったのでどれくらい痩せたかを確かめるため太っていた頃のズボンを履くとブカブカだった女性

肥満症の判断基準や注意点を紹介する前に、まずは肥満症と肥満との違いについて知っておきましょう。同じだと思っている方も多いと思いますが、実は両者には以下のような違いがあります。

肥満ってなに?

肥満とは簡単に言うと「太っている状態」や「体重の重い状態」のことを意味します。もう少し学術的に説明すると、摂取カロリーが消費カロリーを上回って、脂肪細胞に中性脂肪が蓄積された状態が肥満ということになります。

肥満症とは?

肥満症とは、肥満状態にプラスして、何らかの合併症を生じている状態のことを意味します。単に太っているだけで、健康診断上まったく問題がないというような場合は、肥満症には該当しないということです。

一般社団法人である「日本肥満症予防協会」では、もう少し厳密に肥満症を定義しています。その定義とは、「肥満に起因、関連する健康障害を有するか、そうした健康障害が予測される内臓脂肪が過剰に蓄積した場合で、減量治療を必要とする状態」となっています(『肥満診断基準 2011』より)。

つまり、太っていることによって何らかの疾患を発症している場合、もしくは発症する可能性のある場合で、減量が必要な状態のことを肥満症と呼んでいるという訳です。

ただ、肥満している人のほとんどに、生活習慣病のリスクが潜んでいるわけであり、そういった意味では、肥満と肥満症を峻別する意味はないようにも思えます。

肥満度の計り方

大きい電卓で計算をしている女性

肥満症と肥満とには一応の境界線がありますが、厳密に見ていくと、肥満の人が肥満症になるリスクはかなり高いといえそうです。では、肥満度はどのようにして計るのでしょうか。

BMIを用いる

肥満度を測る際には、BMI(ボディ・マス・インデックス)という指標が用いられます。この指標は全世界共通となっていますが、算出された数値をどう解釈するかは国によって異なっています。

BMIの算出法は、身長(メートル換算)の2乗を体重(Kg換算)で割ったものとなります。たとえば、160cmで体重が45kgだった場合、[45÷(1.6×1.6)]=17.57ということになります。

なぜこのような計算法を用いるかというと、体脂肪率の正確な測定が困難だからだとされています。実際に、家庭用のヘルスメーターに乗ってみても、メーカーによって随分と測定値にばらつきの見られることが分かります。

肥満度の判定法

肥満度の判定法は、BMIによっておこなわれます。アメリカの場合はBMIが30を超えた段階で肥満だと認定されますが、日本の場合はBMIが25を超えた時点で肥満だとされます。

なぜかというと、日本人の場合は体質的に、BMIが25を過ぎるあたりから脂質異常症や高血圧、耐糖能障害といった合併症の表れるリスクが増大するからだとされています。

BMIが25以上、30未満の肥満を1度の肥満、BMIが30以上35未満の肥満を2度の肥満、BMIが35以上40未満の肥満を3度の肥満、BMIが40以上の肥満を4度の肥満としています。BMIが35を超えた時点で、「重度の肥満」だといわれます。

肥満症とは

疑問が浮かんでいる女性

肥満症は先にも述べたように、何らかの合併症をともなう肥満や、合併症の起こる可能性のある肥満のことを言います。では、もう少し詳しく肥満症について解説していきたいと思います。

医学的に減量の必要な肥満

肥満症は、医学的に減量の必要な肥満を意味します。なぜ同じような説明を繰り返したかというと、「医学的に減量すること=ダイエット」だからです。

ダイエットというと、多くの方が「痩せること」や「運動をすること」だと思っていらっしゃることでしょう。ただ、ダイエットには痩せるとか運動をするという意味はないのです。

ダイエットを英和辞典で調べてみると、そこには「規定食」と書かれています。規定食とはまさしく食事を規定することであり、分かりやすい例が病院食となっています。

肥満にともなって合併症を発症しているような場合、医師や管理栄養士によって食餌療法(食事療法)がおこなわれることとなります。

食事による総摂取カロリーを減らしたり、身体にとって必要な栄養を摂取したりすることで、体質の改善を目指すこととなる訳です。

結果として、太っている人が痩せることとなるため、その現象だけを見た場合、ダイエット=痩せるということになる訳です。

仮に拒食症でガリガリに痩せてしまっている人がダイエットをおこなった場合、体重はむしろ増えることとなります。

このように、ダイエットとは本来、健康と美容を取り戻すためにおこなうこと、という定義があるのです。いずれにせよ、肥満症の人は原則としてダイエットをおこなうことになるのです。

肥満症の診断に必須の合併症

肥満症だと確定診断を下すためには、肥満+何らかの合併症が必要となります。よく知られている合併症としては、高血圧や脂質異常症(かつての高脂血症)、2型糖尿病などの耐糖能障害などがあげられます。

その他にも狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患、脳血栓症や一時的脳虚血発作といった脳梗塞、痛風や高尿酸血症、脂肪肝、睡眠時無呼吸症候群や肥満低か換気症候群などがあります。

また、女性にみられる月経異常や妊娠合併症(妊娠糖尿病や難産、妊娠高血圧症候群)も肥満症の確定診断の際に必要な合併症となっています。

あと、変形性膝関節症や変形性股関節症といった変形性関節症、腰痛症や変形性脊椎症などの整形外科的な疾患も肥満症の確定診断に必要な合併症となっています。

2011年にはさらに、新たに肥満関連腎臓病が追加されることとなりました。このように見てくると、肥満している人のほとんどに、何らかの合併症が認められることとなりそうですね。

肥満症の種類による病気のリスク

肥満症や肥満の何が怖いかというと、それによって病気になってしまうリスクが高まるからです。では、肥満症だと認定された場合、どのような病気を発症するリスクが高まるのでしょう。

非アルコール性脂肪性肝炎

肥満症による病気のリスクとしては、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)になる可能性が増大するということがあげられています。

通常、肝機能障害というとアルコールをよく飲む人がなるようなイメージだと思いますが、非アルコール性脂肪性肝炎は、内臓脂肪とのかかわりの深いことが分かってきています。

そのため、内臓脂肪型の肥満になっている人の場合、非アルコール性脂肪性肝炎を発症するリスクが高くなり、そこから肝硬変や肝臓がんへと移行する可能性もあるということです。

ある種のがん

最近の研究によって、肥満症の人はある種のがんになりやすいということが分かってきており、2011年の9月に日本肥満学会の策定する「肥満症の診断基準」の改定がおこなわれました。

それによると、肥満症の人は、大腸がんや乳がん、子宮内膜がんや胆道がんを発症したり、再発したりしやすいということです。

そのため、がん予防の見地からも肥満対策をおこなうことは重要だと考えられているのです。ちなみに、肥満症の診断基準改定によって、以前はあげられていた前立腺がんは外されることとなりました。

肥満症の治療法

検査をしている男性医師

肥満症になると、さまざまな合併症を発症したり、肥満が原因の疾患を発症したりすることが分かりました。では、肥満症の治療はどのようにしておこなわれるのでしょうか。

食事制限

肥満症の治療は原則として食習慣の見直しから始まります。一般的に肥満症になっているような人は食べすぎの傾向があるので、食事制限がおこなわれることとなります。

肥満症になる理由の1つとして、「摂取カロリーが消費カロリーを上回っている」ということがあげられています。そのため、食事による摂取カロリーを減らすことが重要となる訳です。

摂取すべきカロリーについては、その人の体重や年齢、肥満度や合併症の有無、運動量などによって個々に算出されることとなります。

一般的には、標準体重1kgあたり、25キロカロリーから30キロカロリーを1日に摂取することとなります。

標準体重は、BMIを反対から計算することで算出可能です。たとえば、身長が160cmの人の標準体重は、[BMI22(標準値)×1.6(m)×1.6(m)]=56.3(kg)となります。

仮に1kgにつき30キロカロリーを摂取する場合、56.3×30=1689キロカロリーということになります。それを3食に割り振って食べるようにするわけです。

栄養バランスの改善

肥満症の「ダイエット」は食事量の制限をおこなうだけではありません。栄養バランスを考えた食事にすることも重要です。

基本としては、「主食」「主菜」「副菜」をバランスよく摂取することとなります。どのような食事内容にするかは、その人によって異なります。

食品選びのポイント

肥満や肥満症を治療する際には、どのような食品を選ぶのかも重要なポイントとなります。原則として、油脂の少ないものを選択することが大事です。

お肉は脂身の少ないものを選ぶようにし、調理の際にはなるべく油を使わなくていいように、テフロン加工されたフライパンなどを利用するとよいでしょう。

カロリーが低くて、血液をサラサラにする働きのあるキノコやわかめなどの海藻を摂ることも重要です。キノコやわかめなどの海藻には、満腹感を高めてくれる効果も期待できます。

あたり前といえばあたり前ですが、てんぷらや唐揚げなど、油分の多い食事は控えるようにしましょう。また、料理の味付けが濃いとごはんが進んでしまうため、味付けは薄味にするよう心がけましょう。

肥満の本当の原因

美味しそうなチョコレートチップ入りクッキー

ここまで、肥満症と肥満の違いや、肥満症になった場合のリスク、また肥満症の治療法などについて説明してきました。ところで、近年の研究によって肥満になる新たな原因が指摘されるようになってきています。

糖質の過剰摂取

かつては、食べ過ぎが肥満や肥満症の原因と考えられていました。そのため、肥満症の治療をおこなう際にも、カロリー摂取の制限がおこなわれている訳です。

ところが、最近の研究によって、私たちが太ってしまうのは、実は「糖質の過剰摂取が原因である」ということが分かってきたのです。

糖質は私たちの脳や身体のエネルギー源であるため、ある程度の摂取は欠かすことができません。ところが、糖質の摂取量が過剰になってしまうと、肥満になるリスクが上昇するのです。

体内に入った糖質は、すい臓から分泌されるインスリンによって分解され、脳や身体のエネルギーに変換されます。糖質がエネルギー源だといわれるのはそのためです。

ただ、糖質の摂取量が多すぎたり、食後に血糖値が急上昇したりすると、インスリンによる糖質の分解が追い付かなくなってしまいます。

インスリンによって分解されなかった糖質は、緊急時に使われる予備のバッテリーとして、細胞内にとどめ置かれることとなります。その正体こそが脂肪という訳なのです。

カロリー神話は崩壊!?

肥満や肥満症の原因を、「摂取カロリーが消費カロリーを上回っているからだ」と考える立場から、現在の肥満症治療はおこなわれています。

ところが、そのカロリーの算出法自体が19世紀後半に考案されたものであり、時代にそぐわないものになっているのではないかという懸念があります。

実際、一部の医師はカロリーよりも糖質の摂取量に注目し始めています。もちろん、糖質の摂取量を減らせば、ほかはどれだけ食べてもよいという訳ではありません。

栄養学という分野においては、10年前の常識が現在の非常識ということもよくあります。私たちには情報を見極める眼力も求められているといえそうですね。

肥満も肥満症も生活習慣から

肥満症について見てきましたが、いかがだったでしょうか。肥満症と肥満は厳密には違うものですが、両者とも生活習慣病になるリスクが高いことに変わりはありません。普段から食習慣に気をつけて適度に身体を動かし、肥満症にならないようにしたいものですね。