「コーヒーが好きで、1日に何杯も飲んでしまう」…そんな女性の方も多いことと思います。でも、コーヒーはお肌によくないという噂もありますよね。実際のところはどうなのでしょうか。
今回の記事では、コーヒーと肌荒れとの関係について解説することを通して、コーヒーが私たちの身体にもたらすメリットやデメリットについて考察していと思います。
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肌荒れとコーヒーの因果関係
コーヒーは、昔から飲みすぎると身体によくないとか、ある程度は飲んだ方が身体によいとか、いろいろなことが言われています。では、コーヒーと肌荒れにはどのような因果関係があるのでしょうか。
始めにお断りしておきますが、コーヒーを飲んだからと言って、ただちに肌荒れが起こる訳ではありません。ただ、コーヒーを飲む量によっては、肌荒れのリスクファクター(危険因子)になることもあり得るということです。
なぜならば、コーヒーにはみなさんもよくご存じのカフェインが含まれているからです。そこでまず、カフェインにはどのような作用があるのかについて見ていきたいと思います。
カフェインの作用
コーヒーや緑茶、紅茶などにはカフェインが含まれていますが、カフェインには後述するようないろいろな作用があります。
カフェインの摂取が直接的に肌荒れを誘発するものではありませんが、カフェインを摂取する量や、カフェインに対する体質によっては、肌荒れのリスクファクターとなることがあります。
そもそも、カフェインに限ったことではありませんが、特定の栄養素や成分を大量に摂ることは、かえって身体にとっての負担となってしまいます。
たとえば、目や皮膚の粘膜を健康に保ったり、身体の抵抗力を高めたりする栄養素にビタミンAがあります。ビタミンAが不足すると、肌荒れや口内炎ができやすくなったり、風邪をひきやすくなったりするといわれています。
では、ビタミンAをたくさん摂れば摂るほどいいのかというと、そういう訳ではありません。ビタミンAを過剰に摂取してしまうと、逆に皮膚や眼球が乾燥したり、頭痛や悪寒がしたりするということです。
お酒に関しても同じことが言えますよね。「酒は百薬の長」などと言われるように、毎日適量を摂取することで、身体の調子を整えることができます。ただ、摂取量が多すぎると、かえって内臓への負担が増し、生活習慣病などのリスクを高めます。
カフェインに関しても同じことが言えます。多量に摂取すれば身体にさまざまな弊害をもたらしますし、場合によっては中毒症状をきたすこともあります。
カフェインはどのくらいコーヒーに含まれているの
カフェインは、多量に摂取してしまうと身体に悪影響を与えるということですが、では、コーヒー1杯にはどの程度のカフェインが含まれているのでしょう。また、どれくらいのカフェインを摂取すると、身体に悪影響を与えるのでしょう。
全日本コーヒー協会の調べによると、コーヒーには、全体の0.06%のカフェインが含まれているということです。100mlのコーヒーには、およそ60mgのカフェインが含まれている計算となります。これに関しては、ドリップコーヒーであっても、インスタントコーヒーであっても違いはありません。
同じ量で換算した場合、紅茶にはおよそ30mg、煎茶やウーロン茶にはおよそ20mgのカフェインが、コーラにはおよそ12mgから13mgのカフェインが含まれているということです。
欧州食品安全機関(EFSA)によると、成人が1日に摂取してよいカフェインの量は、およそ400mgまでとされています。コーヒー1杯を150mlとすると、1日にコーヒー4、5杯程度は大丈夫ということになります。
ところで、NHKのある番組で、「最近になって若者のカフェイン中毒が増えている」ということが紹介され、話題になったことをご存知の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
日本中毒学会の調査によると、2017年までの5年間に101人のカフェイン中毒患者が病院へ搬送され、そのうちの3人が亡くなったということです。
もちろん、それらの人はコーヒーをたくさん飲んで搬送されたわけではなく、カフェイン入りの錠剤を飲みすぎて搬送されたということです。では、どれくらいのカフェインを摂取すると、中毒症状を発症するリスクが高くなるのでしょう。
カフェイン中毒の症状を発症するには、短時間に1000mgのカフェインを摂取する必要があるといされています。コーヒーだと1杯150mlとして11杯ほどとなるので、あまり現実的ではありません。
ただ、アルコールへの耐性と同様、カフェインにも耐性があります。カフェインに弱い体質の人の場合、200mg程度のカフェインであっても、中毒症状を発症する可能性があるということです。
利尿作用
それでは、実際にカフェインを摂取することによって、私たちの身体にどのような影響が現れるのかについて見ていきたいと思います。カフェインを摂取することによる作用としては、利尿作用があげられます。
カフェインは、摂取してから30分ほどで脳に存在しているアデノシン受容体と結合します。アデノシン受容体のサブタイプである「Ad1-R」には、腎臓への血流を減らす働きがあります。
腎臓への血流が減ると、腎臓では、腎尿細管再吸収が活発化します。ところが、カフェインを摂取することによって、Ad1-Rの働きが抑制されるため、結果として利尿作用がみられることとなるのです。
乾燥肌の増長
コーヒーに含まれているカフェインを摂りすぎることによって、乾燥肌を助長する可能性のあることが指摘されています。「シーズメディカルグループ」では、カフェインの利尿作用によって、お肌が水分不足になると考えています。
また、カフェインの作用によって血管が収縮し、血行が悪くなることによって、お肌の新陳代謝(ターンオーバー)が不活発になり、結果として乾燥肌を招くと考えているようです。
ただし、カフェインと乾燥肌との関係は、「風が吹くと桶屋が儲かる」式の理屈と言えないこともありません。コーヒーを飲んだからと言って、ただちに皮膚が乾燥するわけではありません。
胃酸の分泌が増える
カフェインには、胃酸の分泌を促進する働きがあることでも知られています。一方、コーヒーを飲むことによるリラクゼーション効果によって、胃酸の分泌量が減少するというデータもあります。
なぜ、こうも両極端な研究結果が出ているのでしょうか。それは、コーヒーを肯定的にとらえたいグループと、コーヒーを否定的にとらえたいグループとでは、そもそも研究に取り組む姿勢が異なるからです。
コーヒーを否定的にとらえるグループからすると、カフェインには睡眠を浅くしたり、胃潰瘍のリスクを高めたり、皮膚が荒れたりといった側面を強調したいため、そのようなデータの現れる実験がおこなわれます。
コーヒーを販売している会社などからすると、このような研究結果はたまったものではありません。そのため、否定的なデータを否定するための研究がおこなわれるわけです。
実際に、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、逆流性食道炎などの消化器系疾患と、カフェインとの関係に関しては、関係の見られないことが明らかになっています。
胃潰瘍に関してはカフェインよりも喫煙や肥満の方がリスクファクターとなっていますし、十二指腸潰瘍に関しては喫煙が、逆流性食道炎に関しては、喫煙と飲酒、肥満がリスクファクターとなっています。
このように、医学的にみた場合、カフェインによる胃酸の分泌量増加によって、消化器系の疾患を発症するリスクが上昇するというデータは見られないようです。
睡眠不足
コーヒーを飲むと寝られなくなる、というのは昔からよく言われていることですよね。実際に、カフェインには覚醒作用があることから、睡眠に影響を及ぼすことは確かなようです。
朝起きたときにコーヒーを飲むと、その覚醒作用によって、集中力を高めることが可能だとされていますが、夜遅い時間にコーヒーを飲んでしまうと、入眠を妨げたり、睡眠を浅くしたりする可能性があると考えられています。
カフェインを摂取することによる覚醒作用は、コーヒーを飲んでから3時間から4時間程度持続すると考えられているので、夕方以降はコーヒーを飲まない方が無難だといえそうです。
カフェインの交感神経への作用
カフェインを摂取するとなぜ集中力が高まったり、精神が高揚したり、覚せい効果が得られたりするのかというと、カフェインを摂取することによって、交感神経が優位になるからです。
交感神経は自律神経を構成する神経の1つで、血管を収縮させることによって心拍数を高め、それによって一時的に集中力を増したり、精神が高揚したりすることとなるのです。
カフェインを摂取することによって、交感神経が優位になることには、一長一短があります。睡眠の質が低下するのはデメリットですし、あとで紹介するようにメリットもあります。
砂糖を入れることの肌荒れへの作用
コーヒーを飲むときに、砂糖を入れるという方もいらっしゃることと思います。甘いものを食べたり飲んだりすることは、幸せな気分を私たちに与えてくれますからね。
ただ、肌荒れという点に関していうと、糖分の摂りすぎはあまり感心できません。なぜなら、私たちの身体の老化は、「酸化」と「糖化」によってもたらされるからです。
鉄が錆びるように、私たちの身体も酸化することによって老化が進むとされています。このことを「身体のサビ」ととらえるなら、糖化は「身体のコゲ」にたとえられます。
私たちが食べたものや飲んだものから摂取した不要な糖分は、体内のたんぱく質と結合して、細胞を劣化させることが分かっています。
たとえば、パンケーキを焼くと、黄色っぽかった生地が徐々に茶色っぽくなっていきますよね。あれも糖化の一種です。パンケーキの生地に含まれている糖分が、卵や牛乳などのたんぱく質と結合することで、糖化が進行するのです。
細胞の劣化がお肌に現れた場合、それがシミやシワ、ニキビといった肌荒れの元となるのです。また、糖化によって産生された「糖化最終生成物(AGE)」は、さまざまな病気のリスクファクターとなることが分かっています。
ミルクも肌荒れにつながる
コーヒーにミルクを入れて飲むという方もいらっしゃるかと思いますが、コーヒーフレッシュを使っている人は要注意です。
コーヒーフレッシュは、ファミリーレストランやチェーン展開しているコーヒーショップなどでよく利用されているものですが、実は、牛乳や生クリームから作られた乳製品ではありません。
コーヒーフレッシュの修正分は水と植物性の油脂であり、そこにpH調整剤や乳化剤、香料などの添加物を配合してできあがっています。
そのような添加物まみれの商品が、身体にとっていいわけがありませんよね。もちろん、お肌にとっても有害なのです。
では、本物の牛乳からできたミルクなら安心なのでしょうか。これに関しては、医師の間でも見解が分かれているようです。
乳製品を摂取する人は「腸相」が悪いと主張するドクターもいますし、そんなことはないとする医師もいます。そもそも、牛乳に対する耐性は人それぞれです。
牛乳を飲むことによって健康状態が改善している人であれば、コーヒーに牛乳由来のミルクを用いるのはアリだと思いますし、牛乳を飲むことで肌荒れが起こるような人は、コーヒーのミルクも避けた方がよいでしょう。
肌荒れしにくいコーヒーの飲み
「コーヒーが好きだけど、肌荒れはしたくない」というような方は、たくさんいらっしゃることと思います。では、肌荒れを起こしにくいコーヒーの飲み方はあるのでしょうか。
一日の摂取量に注意する
肌荒れしにくいコーヒーの飲み方としては、一日あたりの摂取量に注意するということがあげられます。なにごとも「過ぎたるは及ばざるがごとし」であり、コーヒーに関してもそれは例外ではありません。
では、コーヒーは、一日当たりどれくらいの量であれば、肌荒れを起こしにくいのでしょうか。答えは、身も蓋もないいい方になってしまいますが、「人それぞれ」です。
人によってアルコールへの耐性が異なるように、カフェインへの耐性も人それぞれです。先述したように、極端な例では、カフェインの摂取量が200mgであっても、カフェイン中毒を起こす可能性があるのです。
カフェイン200mgというと、コーヒーを330mg摂取する計算となりますが、コーヒー330mgというと、だいたいコーヒー2杯分程度の量でしかありません。
もちろん、このようなケースは極めてまれですが、カフェインへの耐性が人それぞれであることの1つの証左となっていると思います。
まずは、コーヒーを飲むことによって、自分の身体にどんな変化が現れるのかを注目しましょう。コーヒーを飲むことで睡眠の質が低下したり、やたらと肌が乾燥したりするようであれば、あなたのカフェイン耐性は低いのかもしれません。
また、コーヒーを飲むことでやたらとハイになるような人も要注意です。そのような人は、コーヒーの覚醒作用によって、一時的に興奮状態となっているに過ぎません。
コーヒーを飲むと頭がすっきりするからとか、気分がよくなるからなどといった現象が起こるのは、ある意味、カフェイン中毒の一歩手前と言えます。
コーヒーが好まれるのはカフェインが入っているからこそなのですが、飲み方によっては肌荒れの原因や、カフェイン中毒のリスクファクターとなるので注意が必要です。
カフェイン量に注目して選ぶ
コーヒーを飲んで肌荒れを起こさないためには、カフェインの含有量にも注目するとよいでしょう。最近は「カフェインレスコーヒー」などという商品もあり、カフェインを大幅にカットしながら、コーヒーの香りが楽しめるようになっています。
飲む時間にも気を付ける
コーヒーを飲むときには、飲む時間帯にも気を付けるようにしましょう。もっとも避けたいのは、朝起きてすぐのコーヒーと、寝る直前のコーヒーです。
人間は夜寝ている間にコップ1杯分の汗をかくともいわれており、朝起きたときには「水分不足」となっています。そんな時間帯に利尿作用のあるコーヒーを飲んでしまうと、さらに水分不足が進行してしまう羽目になります。
また、先述したように、夜寝る前のコーヒーは、入眠を妨げたり、睡眠の質を低下させたりする恐れがあります。そのため、夕方以降には飲まない方が無難です。
一方、カフェインには新陳代謝を一時的に高める働きがあるとされています。そのため、ダイエットにコーヒーを利用している人もいるほどです。
カフェインに含まれているクロロゲンと呼ばれる成分には、脂肪の燃焼を助ける働きがあるとされており、その働きはコーヒーを飲んでから4時間ほど継続するとされています。
そのため、運動をする30分ほど前にコーヒーを飲んでおくと、脂肪の燃焼を助けることができます。ただし、コーヒーを飲んだから脂肪の燃焼が起こる訳ではないので、痩せたいからと言ってやたらとコーヒーを飲まないように気をつけましょう。
カフェオレなら豆乳にチェンジ
コーヒーを飲むときに、牛乳で割ってカフェオレにする人もいらっしゃると思いますが、牛乳は腸相を悪化させ、肌荒れのもとになると考えるドクターがいます。
また、牛乳を飲んでお腹がごろごろする人も、コーヒーに牛乳を入れるのは控えた方がよいでしょう。そのような方におすすめなのが豆乳です。
豆乳には女性ホルモンと似た働きがあるので、お肌にとっても有益ですし、ホルモンバランスを整えるのにも役立ってくれます。慣れれば風味もいいものですよ。
缶コーヒーは避けるのが無難
肌荒れを避けたいのであれば、市販のコーヒーには手を出さないようにしましょう。仮に「微糖」と書かれているコーヒーであっても、驚くほどの量の砂糖が溶かしこまれています。
ほかのカフェインが入っている飲み物にも注意
カフェインというと、コーヒーばかりがやり玉にあげられますが、煎茶やウーロン茶、紅茶などにもカフェインは含まれています。肌荒れが気になるのであれば、これらの飲み物も飲みすぎないように注意しましょう。
コーヒーにはいい作用もある
コーヒーは、どちらかというとネガティブな側面をとりあげられることが多い飲み物のように思われます。同じカフェインを含む紅茶は、なんとなくよいイメージがありますよね。そんなコーヒーの名誉を挽回するために、コーヒーのいい作用について見ていきたいと思います
ポリフェノールの抗酸化作用
コーヒーはカカオ豆からできていますが、カカオ豆には高い抗酸化作用のあることが分かっています。植物が生長するためには水と二酸化炭素、そして日光が必要ですよね。
ただ、日光を浴びるということは、有害な紫外線を浴びるということでもあります。紫外線が有害なのは、植物にとっても同じことなのです。
そこで、植物はその身の内にポリフェノールを産生し、紫外線の害悪から身を守っているのです。ちなみに、ポリフェノールというと、カカオや赤ワインなどに含まれていることが有名ですが、実は、自然界のほとんどの植物にはポリフェノールが含有されているのです。
それはともかく、植物に含まれているポリフェノールは、それを摂取した私たちにも恩恵を与えてくれます。適度にコーヒーを飲むことは、身体を酸化=老化から守ることにもつながるという訳なのです。
偏頭痛の改善効果
コーヒーに含まれているカフェインには、血管を収縮させる働きもあります。血管を収縮させるということは、血行を悪くするということでもあります。
偏頭痛は別名を「血管拡張性頭痛」といい、毛管が拡張して急激に血行がよくなることによって、ズキンズキンと拍動するような痛みをもたらします。
その時に、血管収縮作用のあるコーヒー(カフェイン)を摂取することによって、一時的に血液の循環を悪くし、片頭痛の症状を抑えることが可能となるのです。
美肌ホルモン・エストロゲンの作用
コーヒーを飲む女性は、飲まない女性とくらべて、婦人科系の疾患を発症しにくいというデータがあるそうです。まだはっきりとしたことは分かっていませんが、コーヒーの摂取によって、エストロゲンの濃度が高まるからではないかと考えられているそうです。
エストロゲンは、いわゆる「女性らしさ」を形作るためのホルモンなので、エストロゲンの濃度が高まれば、お肌も美しくなるのです。コーヒーとの関係に関しては、これからの研究結果が待たれるところです。
コーヒーの整腸作用
コーヒーを飲むと、便秘が悪化するという人と、便秘が改善するという人がいます。カフェインには大腸の活動を活発にする働きがあるので、コーヒーを飲むことで便秘の改善が期待できるのです。
ただし、コーヒーには利尿作用や体温を下げる作用もあるので、場合によっては便秘を悪化させることもあります。いずれにせよコーヒーは薬ではなく嗜好品なので、自分の体調に応じて摂取することが重要です。
コーヒーによるリラックス効果
コーヒー好きの人にとって、コーヒーの香りはアロマのようなものです。そのリラクゼーション効果によって、胃酸の分泌量が減少することもあるというのは、先にも述べたとおりです。
あごやフェイスラインにできる吹き出物は、ストレスが原因だともいわれているので、コーヒーを飲むことによるリラックス作用で、改善が期待できるかもしれませんね。もちろん、ニキビに効く薬ほどの効果はありませんが。
コーヒーの飲み方を知って肌荒れを治そう
コーヒーはもともと薬として飲みはじめられたものであり、それだけ、身体の諸器官に与える影響が(いい意味でも悪い意味でも)大きいといえます。
コーヒーに関する研究はいろいろありますが、結局のところ、自分の身体で変化を見るのが一番です。おいしく飲んで肌荒れにならないよう、自分にとっての適量を見極めるようにしてくださいね。