肥満と診断された方で細菌息苦しいと感じる方はいませんか?もしかしたら危ない病気を併発しているかもしれません。また、肥満ならではの病気も実はあるんです。肥満の疑いが少しでもある方はぜひ参考にしてみて下さい。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」肥満治療評論家
息苦しいと感じる原因
私たちは通常、息を吐いて吸ってという呼吸を自然と繰り返しています。しかし、普段より息苦しいと感じることがあれば、それは何らかの原因による異常のサインかもしれません。
精神的なストレス
呼吸や心臓のはたらきを司っているのは、自律神経と呼ばれる神経です。運動神経とは違い、特に意識しなくても動かすことのできる神経で、生命維持には欠かせません。
この自律神経には、交感神経と副交感神経があります。ストレスや不安、恐怖などがあると、交感神経が優位になり、息が荒くなったり、動悸などの症状が起きて息苦しく感じることがあります。
酸欠状態
息が苦しくなるときに、考えられる原因としては酸欠もあります。酸素が通常必要なレベル以下に供給が落ちてしまい、息苦しく感じるのです。酸欠状態になるのは、自分に原因がある場合と、環境に原因がある場合があります。
例えば、全力疾走で走ったあとや、肺や呼吸機能に問題があり脳や体が酸欠状態になることがあります。肥満気味の方は、首のあたりが脂肪で締め付けられて酸欠状態になることもあります。
また、換気が不十分な部屋で過ごしていた時や、工場などの労働環境などによって酸欠になることもあります。
アレルギー性
息苦しいと急に感じるようになった場合には、アレルギーによる反応ということも考えられます。例えば、アナフィラキシーです。食べ物など何らかの特定の成分に晒されることにより、体が過度にアレルギー反応を起こすと、呼吸困難や気道が腫れて息ができなくなることがあります。
食物アレルギー以外にも、喘息やアレルギー性鼻炎などもアレルギーによるもので、息苦しさを伴う病気です。
呼吸器へのダメージ
呼吸が苦しくなるということは、息切れとも呼ばれることがあります。気道が狭くなったり、肺の機能低下などの呼吸器のダメージが起きている可能性も考えられます。肺から取り込んだ酸素は体のいたるところに運ばれて行きます。この酸素が不足したり、二酸化炭素が多すぎると至るところにあるセンサーが反応すると、息切れの自覚症状が出てきます。
例えば、気道が狭くなっている、肺の組織が破壊されているなど、何らかのダメージがあると、酸素を十分に供給できなくなり、息切れを起こすようになってしまいます。
その他の疾患
肺や気道のダメージが原因とお話ししましたが、明らかに何らかの疾患が隠れているケースもあります。詳しくは次に紹介しますが、何らかの病気がある場合には、息が苦しいという以外にも同時に他の症状を引き起こすこともあります。疾患はさまざまにあるため次の章を参考にしてください。
呼吸困難を伴う疾患
呼吸困難が起きる病気は1つではありません。次にそれぞれの考えられる疾患を紹介していきます。ただし、ご自分で診断することは危険です。あくまでも予備知識として確認することに活用し、診断はお医者さんに相談するようにしてください。
慢性閉塞性肺疾患
COPDとも呼ばれるこの病気は、タバコ病とも言われることがあります。タバコの煙を吸入することにより、肺に慢性の炎症が起きる病気です。肺の中のぶどうの房のようになっている肺胞という袋が破壊されたり、細い気管支がダメージを受けて発症します。慢性のせきや痰を伴い、動いた時に息切れすることも多い病気です。
気管支喘息
気管支の慢性的な炎症と過敏性を伴う病気です。咳が続いたり、呼吸が苦しくなるなどの症状がみられます。気管支喘息にはアレルギー性に発症するアトピー型と、アスピリンなどの消炎鎮痛剤に対して反応しておきるアスピリン喘息があります。
肺結核
結核という菌が肺に感染して起きる病気です。結核菌が体内に入って、増殖し、何らかの症状を引き起こすと結核を発症したことになります。肺結核は菌だけ保有している場合もあり、発症するのは10人に1,2人とも言われます。症状としては、風邪のような症状から始まり、発熱、長引く咳などが特徴です。近くに肺結核の方がいた場合にはリスクが高くなります。
間質性肺炎
肺の間質と呼ばれる組織が繊維化することで起きる病気です。原因としては、関節リウマチなどの膠原病によっておきる場合と、抗がん剤などの薬剤、アスベストなどの化学物質によって起きる場合があります。
肺の肺胞壁に炎症が起こり、壁が厚くなってくることで、空気中の酸素を取りこむ力が低下して息苦しく感じるようになります。息切れは初期では階段の上りや荷物を運んだときなどに感じます。
自然気胸
気胸というのは、肺に穴が空いて空気が漏れて、胸腔に溜まった状態です。このうち自然気胸は特に事故やナイフによる刺し傷などがなくても自然と発生するタイプの気胸のことをいいます。比較的若くて、痩せて胸の薄い男性に多い病気です。
心不全
心臓の働きが不十分になった状態の心不全でも、息切れの症状は特徴的にみられます。心不全の初期ではとくに日常では息切れを感じることはありませんが、坂道や階段を上る時、重たいものを運ぶ時に息切れしやすくなります。
またさらに進行してくると、仰向けに寝られないほど息苦しくなったり、息苦しくて目を覚ますような状態になっていきます。
肺塞栓症
肺に血液の塊(血栓)が詰まる病気です。特に多いのが足にできた血栓が血流を流れて肺まで運ばれて詰まらせてしまう場合です。飛行機で起こりやすいエコノミー症候群もこの肺塞栓症を引き起こします。もっとも多い症状が息苦しさで、突然苦しくなることがあります。また同時に脈拍も上がることがあります。
心筋炎
心臓の筋肉に炎症がある状態を心筋炎といいます。心筋炎になると、心臓の機能が低下して心不全に至ることもあります。風邪と同じようなウイルス感染によるものが多い病気です。風邪の症状である、咳や熱などの症状と同時に、胸の痛み、動悸、息切れなどを感じる場合には注意が必要です。
心膜(嚢)炎
心膜炎は心臓のまわりを覆っている心膜に炎症が起きる病気です。心嚢(しんのう)とも呼ばれます。胸の痛みや圧迫感を感じたり、発熱や呼吸が苦しいなどの症状が代表的です。炎症の原因には、何らかの細菌やウイルス感染や、心筋梗塞や悪性腫瘍などが関係していることもあります。
過換気症候群(過呼吸)
不安や極度の緊張、ストレスなどによって、必要以上に呼吸することによって起きるのが過換気症候群です。過呼吸状態になると、血液中の炭酸ガスの濃度が低下して、呼吸中枢によって呼吸が抑えられます。すると息ができないような苦しさを感じるようになるのです。
肥満による息苦しさの原因
ここまで紹介した疾患は肥満の有無に関わらず息苦しさを起こすことのある病気の代表です。次に、肥満と特に関係の深い原因を紹介していきます。
喘息
喘息は普通の人に比べて気道が狭くなって、呼吸しにくかったり、咳を伴う病気です。肥満の方では、この喘息にかかるリスクが高いというデータがあります。
肥満と喘息の悪化を裏付ける情報はいくつかあります。肥満では脂肪細胞から分泌されるレプチンという物質が増えて、気道の収縮を引き起こすということが分かっています。
睡眠時無呼吸症候群
眠っている間に呼吸が止まる病気です。特に男性で肥満気味の方に多い傾向があります。
男性の方が上半身に脂肪がつきやすく、特に首の周りにつきやすい特徴があります。首のあたりを脂肪が締め付けることにより、空気の通り道がふさがれてしまうと、この病気が発症することがあります。
肥満により併発した疾患によるもの
睡眠時無呼吸症候群と似た病気に、肥満肺胞低換気症候群という病気があります。睡眠時だけでなく、日中においても換気量が低下して、息切れなどの症状を引き起こします。さらに極度の肥満では、ピックウィック症候群という病態もあります。肥満肺胞低換気症候群がさらに重症化したものです。
肥満による心臓への負担
肥満の方が歩く時にゼーゼーと言ったりすることが多いのは、喘息などの呼吸器の問題だけではなく、心臓に負担がかかっている可能性もあります。
肥満になって体の体積が大きくなると、その分全身の組織に血液を供給するための毛細血管が長くなります。すると心臓はもっと遠くへ血液を送る必要があるため、心臓に負担がかかってしまいます。その結果、息切れや動悸が起こりやすくなるのです。
肥満による息苦しさ改善
肥満による息苦しさを改善するには、正常な体型の方とは違った配慮も必要になります。肥満という特徴を踏まえて、正しく対処するようにしましょう。
肥満を改善する
肥満により息苦しさを感じるのは、肥満そのものが大きな原因となっていることも少なくありません。例えば、睡眠時無呼吸症候群は首の周りの脂肪を減らすことで、改善できる可能性があります。
生活習慣の改善や、定期的な運動を心がけて、減量することが大切ですが医師の指導のもと行うことも忘れないようにして下さい。
ただし、急激な減量はリバウントにもつながります。1ヶ月あたり体重の5%までにとどめて、ゆっくり減量した方が良いでしょう。
病気を治す
心臓や肺、気管支などに病気を持っている場合には、元の疾患を治すことが必要となります。息苦しさや息切れが初期症状として現れている場合には、早めの治療により元の疾患の悪化を防ぐことにもつながります。息切れが気になる方は、まずはお医者さんに相談するようにしてください。
運動不足の解消
運動不足が慢性的になっていると、筋力が落ちるだけでなく、心臓のポンプ機能も落ちてすぐに息切れしやすくなります。適度に日常的な運動を取り入れて、心臓の機能を高めていくようにしましょう。おすすめは酸素を取り込んで行う有酸素運動です。ウォーキングならば1日30分程度を目安に、週に3,4回は行うのがおすすめです。ただし、運動により息苦しくなってしまう場合には、無理しないことが大切です。
急激な寒暖差に気を付ける
冬場にお風呂場で心臓発作を起こして倒れる方がいますが、これは急激な寒暖差が原因です。気温差が大きいと、血管が急に収縮して心臓にも負担がかかります。暖房の効いた部屋から寒いお風呂やトイレなどに移動するときなどは注意が必要です。脱衣所も温めておくなど工夫しましょう。
喫煙は控える
タバコは呼吸機能に悪影響をもたらします。また、心臓にも負担を与えて心拍数を上げる作用もあります。息苦しさを感じる方は、禁煙する努力をしましょう。自分では難しい場合には、病院や薬局でニコチンガムなどの禁煙補助薬を処方してもらうのも良いでしょう。
早めに医師に相談しましょう
肥満と息苦しさの関係についてお話ししてきましたが、参考になったでしょうか。息苦しい症状を起こす病気はさまざまで、特に肥満の場合には特異的な理由も考えられます。まずは自己判断せずにお医者さんに相談しましょう。また、肥満の関連性が高い場合には、減量するように努力していきましょう。