肩こりで悩まされている方はたくさんいらっしゃると思いますが、中には頭痛を併発したり、ひどくて腕が上げられなかったりする人もいるということです。
そこで今回は、肩が凝ってしまう原因や肩こりの種類について解説するとともに、肩こりにならないための対策法を紹介したいと思います。
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まずは肩がこるメカニズムを知ろう!
肩がこらないようにするためには、まず、肩がこるメカニズムについて知っておくことが重要です。病院や整形外科では、肩がこるメカニズムについて、どのように説明しているのでしょうか。
東京医科大学内の整形外科のホームページでは、肩がこるメカニズムについて、「筋緊張」→「筋疎血」→「痛み物質の蓄積」→「筋肉痛」→「筋緊張」…というサイクルを挙げています。
簡単に解説すると、筋肉が緊張して固くなることによって血管を圧迫し、血行が悪くなって(筋疎血)痛み物質が蓄積していきます。それが筋肉痛という形になって表れます。
通常の筋肉痛であれば2、3日もすれば解消しますが、肩こりのように、肩の筋肉に継続的に負荷がかかる場合、筋緊張によってさらなる痛み物質が蓄積します。それによって、肩こりが慢性化してしまうという訳なのです。
ただし、肩こりに関しては、医学的に明確な定義がある訳ではありません。そのため、診断方法や治療法も確立されていないのが現状です。
肩こりの際に緊張が生じる筋肉としては、僧帽筋や首板状筋、頭板状筋、頭半棘筋、棘上筋、肩甲挙筋、大菱形筋、小菱形筋などがあげられています。
ひどい肩こりの原因
肩こりは誰にでも起こりうるものですが、頭痛を併発したり、腕が上がりにくくなったりするほどの、ひどい肩こりになってしまう原因は何なのでしょうか。
長時間運転同じ姿勢をとる
肩こりの原因はいろいろとあげられていますが、中でも長時間の同一姿勢が肩こりのリスクファクター(危険因子)としてよく知られています。
デスクワークなど、長時間にわたってパソコンをじっと見るような仕事をしていると、ついつい顔が前に出てしまうこととなります。
頭は体重の10%前後の重さがあるとされており、首の位置が1cm前に出るだけでも、首や肩にかかる負荷が加速度的に増加してしまいます。
また、そのような姿勢を続けていると、整形外科的によく言われるところの「ストレートネック」になってしまいます。首の骨(頚椎)は本来緩やかに前弯しているのですが、顔が前に出ている時間が長いと、頚椎の前弯が失われていくのです。
頚椎が前弯していることによって、頚椎にアーチ構造が生じます。アーチ構造には衝撃を緩和してくれる働きがあるのですが、ストレートネックになると、衝撃が吸収されなくなり、首や肩に筋緊張が生じることとなるのです。
偏った姿勢を続ける
ひどい肩こりの原因としては、偏った姿勢を続けることもあげられます。分かりやすい例がいわゆる「寝違え」です。偏った姿勢を続けていると、特定の場所にばかり負荷がかかることとなるからです。
また、デスクワークをするときに、背もたれにもたれかかって脚を組み、斜めからディスプレイを見るなどしていると、やはり肩がこりやすくなってしまいます。
長時間冷房の効いた部屋にいる
肩こりのメカニズムのところで、筋疎血という言葉が出てきました。筋疎血とは、簡単にいうと筋肉が緊張することで血管が圧迫され、血行が悪くなることを意味します。
ようするに、肩への血行が悪くなれば、肩こりになるリスクが増大するということを説明しているのです。そして、肩への血行が悪くなる理由の1つとして、冷房があげられています。
特に、デスクワークをする人が多いオフィスの場合、パソコンの温度が上昇しないようにする必要もあるため、過度に温度を下げてしまいがちです。
冷房による冷えと、筋緊張による血行不良が相俟って、さらに肩こりがひどくなってしまうという訳なのです。肩こりの女性なら思い当たる節もあるのではないでしょうか。
肩こりの原因としてはその他にも、運動不足やストレスなどもあげられています。運動不足もストレスも、血行不良を引き起こすリスクファクターとなるからです。
肩こりの種類
肩こりにはいくつか種類があるのですが、大きく分けると「本態性肩こり」と「症候性肩こり」の2つに分類されます。私たちが一般的に肩こりといった場合は、本態性肩こりを指すケースがほとんどですが、肩こりをともなう疾患には以下のようなものも含まれます。
変な格好で寝る寝違え
寝違えは、誰でも1度や2度は経験したことがあるのではないでしょうか。寝違えや筋違えは、病名という訳ではありません。医学的には、「急性疼痛性頚部拘縮」などと呼ばれています。
寝違えを起こすと、首を動かしづらくなったり、痛みのために首を回せなくなったりします。ただ、寝違えを起こしていても、画像診断では異常が見られないので、正確な原因を医学的に突き止めるのは困難だと言われています。
ただ、一般的には寝ている間に不自然な姿勢を継続することによって、特定の筋肉に筋疎血が起こり、それによってひどい肩こり状態になると考えられています。
とはいうものの、筋疎血が起こるにはそれなりの理由があります。理由の1つとしては、もともと肩周りの筋肉に緊張が生じていることがあげられています。
たとえば、赤ちゃんや幼児が不自然な姿勢で寝ていても、起きてきて首や肩の痛みを訴えるようなことはありません。なぜなら、赤ちゃんや幼児は筋肉が柔らかいからです。
大人になると、仕事などで肩周りや首の筋緊張が生じやすいため、寝ている間に筋疎血が起こりやすくなるのです。
腕が上がらない五十肩
肩こりのような症状をともなう疾患としては、五十肩(四十肩とも)もあげられます。ある日突然、肩が痛くなって腕をあげられなくなる、寝ていても痛みが生じるなどの症状が特徴です。
ただ、五十肩を発症する人は、もともと肩こりを持っていたというケースがほとんどです。肩こりは本態性肩こりであり、五十肩は症候性肩こりという訳です。
五十肩の正式名称は、肩関節周囲炎(けんかんせつしゅういえん)と言います。肩関節に炎症を起こすことで、症状が表れます。
炎症には5大徴候と呼ばれるものがあり、それは「発赤(ほっせき)」「腫脹(しゅちょう)」「疼痛(とうつう)」「発熱」「機能障害」の5つです。ただ、現代医学をもってしても、肩関節周囲炎の原因はハッキリと分かっていないということです。
首から腕にかけて肩が痛い椎間板ヘルニア
椎間板ヘルニアというと、腰痛をともなう疾患というイメージがありますが、腰部に見られるヘルニアのことを腰椎椎間板ヘルニアと呼んでおり、頚部に見られるヘルニアのことを、頚椎椎間板ヘルニアと呼んでいます。
頚椎椎間板ヘルニアに比べると、圧倒的に腰椎椎間板ヘルニアの症例の方が多いため、一般的に、単にヘルニアといった場合、腰椎椎間板ヘルニアのことを指すケースがほとんどです。
首の骨のことを医学的には頚椎と呼んでいます。頸椎は7つあるのですが、その骨(椎骨と言います)と骨との間に、クッションの役割を果たす椎間板が存在しています。
椎間板は縦方向の圧には強いのですが、頚椎にゆがみが生じて圧のかかる場所が偏ると、椎間板の中にある髄核が飛び出してしまい、神経を圧迫します。
その結果、首や肩、腕にかけて痛みやしびれが生じるのです。頚椎椎間板ヘルニアも、症候性肩こりに分類されています。
熱を持ったように痛い筋肉炎症
普段あまりしない運動などをすると、翌日にひどい筋肉痛に襲われることがあります。筋肉は筋線維という束からできているのですが、その線維が断裂することで、炎症を起こしてしまうのです。
肩こりのひどいバージョンのような痛みが出ますが、基本的に痛めているのは大きい筋肉であるため、2、3日もすると改善してくるケースがほとんどです。
揉むとラクになる筋肉疲労による血行不良
揉むと楽になるタイプの肩こりは、筋疲労にともなう血行不良が原因で起こる、本態性かたこりです。私たちが単に肩こりといった場合、このタイプの肩こりを指すケースがほとんどです。
肩こりにならないための対策法
肩こりはひどくなると、頭痛や吐き気、めまいをともなうこともあります。そんな事態に陥らないためにも、肩こりにならないようにするのが一番です。では、肩こりにならないようにするには、どのようなことに気をつけるとよいのでしょう。
姿勢をよくする
肩こりを発症する原因の1つとして、ストレートネックがあげられていました。頸椎は本来緩やかに前弯しているものなのですが、不良姿勢を継続することで、頚椎アーチが失われ、ストレートネックになってしまうのです。
ストレートネックになると、頭の重みを逃すことができず、首や肩に負荷がかかり、結果として肩こりを生じてしまいます。ストレートネックにならないようにするには、姿勢をよくすることが重要です。
とは言うものの、「よい姿勢ってどんな姿勢?」と思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。確かに、単に胸を張った姿勢がよい姿勢という訳ではありません。
よい姿勢とは、傾いていない骨盤に、上半身の体重が自然と乗っている姿勢のことを言います。医学的に骨盤が歪むことはあり得ませんが、骨盤が傾くことはよくあります。
特に、デスクワークなどをしていると、骨盤が後ろに傾いて猫背気味になってしまいます。また、後ろに傾いた骨盤に上半身がのることで、頭の位置が前になり、肩こりのリスクが高くなります。
整形外科的にみた正しい姿勢は、耳の穴と肩の先端、太股の外側にある突起(大転子といいます)、比佐のお皿の後方、外くるぶしの前方が、上下まっすぐのライン上に並んでいることです。鏡を見て、正しい姿勢の練習をしてみましょう。
重い物の持ち方に気をつける
肩こりを予防するためには、身体のバランスにも気をつける必要があります。重いものを片側ばかりで持っていると、持っている方の筋肉が緊張するだけでなく、全身のバランスも悪くなってしまいます。重いものを持つ時には、左右交互に持つように心がけましょう。
身体を動かす
肩こりにならないようにするには、適度に身体を動かすことも重要です。肩こりには4大原因と言われているものがあり、それは「長時間の同一姿勢」「運動不足」「眼精疲労」「ストレス」とされています。
運動不足になると、筋力が低下して、頭の重さを支える機能にも悪影響が出ます。また、筋肉量が減少すると、血行が悪くなるため、肩こりを起こしやすくなるのです。
身体を動かすと言っても、なにも肩周りだけを動かすことを意味するものではありません。ウォーキングによってふくらはぎの筋肉を刺激すれば、全身の血流を良くすることが可能です。
身体を冷やさない
肩こりにならないようにするには、身体を冷やさないことも重要です。身体が冷えると血行が悪くなるため、肩こりを発症するリスクも上昇してしまいます。
身体を冷やさないようにするには、なるべくお風呂に入って、身体を温めるよう心がけましょう。お風呂に入るとリラックスして副交感神経が優位になり、睡眠の質を高めることも可能となります。
また、寝るときに首周りにタオルをかけるなどして、首や肩を冷やさないのも有効です。夏の暑い日は、汗ふき代わりにタオルをかけるのもよいでしょう。
癖を見直す
肩こりにならないようにするには、癖を見直すことも重要です。いつも同じ側ばかりで食べ物を噛んだり、脚を組んだり、ふんぞり返って座ったりしていませんでしょうか。
肩こりは筋肉が緊張することによって起こります。そのため、身体に力が入っていない状態にすることが重要です。「肩の力を抜く」ことが重要だという訳ですね。
ひどい肩こりの治し方
ひどい肩こりを病院で治療する場合、生活習慣の改善指導と、薬物療法、運動療法などがおこなわれます。軽い肩こりの場合は温熱療法や電気治療、牽引などがおこなわれますが、ひどい肩こりになると、薬物療法をおこなうのが一般的です。
薬物療法に用いられる医薬品としては、筋弛緩剤や抗不安薬、外用薬や漢方薬などがあげられています。また、生理食塩水をトリガーポイント(痛みの引き金となっている場所)に注射で注入する治療法もあります。
ただ、対症療法をおこなっても、肩こりの原因を取り除かなければ、また同じことの繰り返しとなってしまいます。肩こりの人はマッサージに行くこともあると思いますが、マッサージもやはりその場しのぎの効果しかありません。
やはり、肩こりを根本から改善するためには、日頃から肩関節をストレッチしたり、適度に身体を動かしたりすることが重要です。また、普段からお風呂に入るなどして、身体の回復力を高めることも重要です。
ひどい肩こりのまとめ
酷い肩こりの原因や、解消法について見ていきましたが、いかがだったでしょうか。日本人は民族的に肩こりになりやすい体型をしているのですが、それでも肩こりになる人とならない人がいます。
肩こりにならないようにするには、姿勢を改善することが重要です。今回紹介したポイントを踏まえた上で、正しい姿勢を身につけるようにしてください。また、ストレスをため込まないようにし、良質の睡眠をとるように心がけましょう。