ワセリンはなんとなく保湿をするときに用いるものだというイメージはあるものの、実際にはどのようなものなのか、詳しいことが分からないという方もいらっしゃることと思います。
今回は、コンビニやドラッグストアでよく見かけるワセリンについて、その効能やおすすめの使い方、安全性や副作用などについて詳しく解説していきたいと思います。
ワセリンとは?安全なの?
ワセリンの効果や効能、使い方などについて解説する前に、そもそもワセリンとはどのようなものであるのかについて知っておきましょう。そうすることによって、より効果的にワセリンを使うことができますよ。
ワセリンの成分
実は、「ワセリン」は、オランダとイギリスに本拠を置く、世界的に有名なメーカーである「ユニリーバ」が商標権を持つ製品のことを指します。
アメリカではワセリンのことを「Petroleum jelly」と呼ぶこともありますが、世界のさまざまな国で、「Vaseline」が一般名詞化しているといます。
ちょうど、ジョンソン・エンド・ジョンソン社の登録商標である「バンドエイド」が、絆創膏の代表となっているようなものです。
アメリカではワセリンのことを、「Petroleum jelly」と呼ぶことがあるという風に説明しましたが、「Petroleum」には「石油」という意味があります。そのことからも分かるように、ワセリンは石油から作られています。
石油から抽出された炭化水素類を漂泊してできたものがワセリンで、その大部分が炭化水素化合物であるイソパラフィン(単にパラフィンとも)と、脂環式炭化水素であるシクロアルカンによって構成されています。
日本における医薬品の規格基準書である日本薬局方によると、ワセリンのことを「石油から得た炭化水素類の混合物を脱色して精製したものである」という風に定義しています。
ワセリンの安全性
ワセリンは石油由来の成分からできているということでしたが、その安全性についてはどうなっているのでしょうか。結論から言うと、純度の高いワセリンを用いている場合、安全性は確保されていると考えてよいでしょう。
現在では精製技術の向上によって、ワセリンを製造する際に不純物を取り除くことが容易となっています。実際、病院でも皮膚科系の疾患などにワセリンがよく用いられています。
医薬品には必ず副作用がともなうものですが、ワセリンの副作用としては、発疹や発赤、かゆみの見られることがあるということです。また、人によってはアレルギーを起こす可能性があるということです。
ただ、これらの副作用はワセリンに限ったことではありませんし、医薬品に限ったことでもありません。お化粧品だって、肌質に合わなければ発疹やかゆみの元となる訳ですから。
そもそもワセリンは、天然の素材でできている訳ではありませんから、特別な「薬効」などはありません。また、お肌の状態を向上させるものでもありません。
ワセリンの安全性がなぜ高いかというと、そもそもワセリンが皮膚内部に全く浸透しないという性質を持っているからです。皮膚内部に浸透しないため、成分が肌を経て毛細血管内に侵入することもありません。
そのため、敏感肌の人やアトピーなどの炎症性皮膚疾患を持っている人でも、安心してワセリンを使うことができるのです。
ワセリンの保湿効果・ほかの効能
ワセリンの成分と安全性についてはご理解頂けたことと思います。それでは次に、ワセリンの最大の特徴である保湿効果と、その他の効能について見ていきたいと思います。
ワセリンは保湿効果抜群
ワセリンの最大の特徴としては、保湿効果にとても優れているということがあげられます。では、ワセリンは肌を乾燥から守るために、どのような働きをしてくれるのでしょうか。
お肌を乾燥から守るために、まず欠かせないことが「保湿」です。そのため、洗顔後には化粧水などを用いて、お肌にうるおいを「与える」訳です。
ただ、化粧水にはお肌にうるおいを与える働きはあるものの、うるおいを「保つ」働きはありません。そこで、ワセリンの出番となるのです。
ワセリンには油分が含まれているという特徴と、粘着性が高いという特徴があります。それによって、お肌に保護膜を作り、お肌の水分を逃がさないように「フタ」をしてくれるのです。
ワセリンは刺激から肌を守ってくれる
ワセリンはお肌を乾燥から守ってくれるだけでなく、外部の刺激からもお肌を守ってくれます。ワセリンを塗ると、お肌に保護膜を作ることになるので、お肌への直接の刺激を防ぐことができるのです。
お肌にとってもっとも避けるべきことが「乾燥」と「摩擦」です。お肌が乾燥したり、お肌に摩擦が加わったりすることで、お肌がカサカサになったり、お肌の表面が荒れたりするのです。
お肌が荒れると化粧のノリが悪くなることはもちろんのこと、吹き出物ができたり湿疹ができたりする元となります。ワセリンは、そのような害悪からお肌を守ってくれるのです。
ワセリンは外部から雑菌が侵入するのも防いてくれる
ワセリンは、外部の刺激からお肌を守ってくれるだけでなく、外部からの雑菌の侵入も防いでくれます。私たちの皮膚には常在菌が存在しており、それぞれがバランスを取って暮らしています。
ところが、外部からの雑菌の侵入によって常在菌のバランスが乱れると、さまざまなお肌のトラブルとなって表れます。通常、私たちの皮膚は皮脂で覆われており、皮脂が外部の雑菌の侵入を防いでくれています。
ところが、何らかの原因によって皮脂の分泌量が減少すると、皮膚の表面が乾燥し、外部の雑菌が侵入しやすくなってしまうのです。そこでワセリンを皮脂の代わりに用いて、雑菌の侵入を防ぐという訳です。
安定していて劣化しにくく他の薬品と併用可能
ワセリンの特徴としては、成分が非常に安定しており、劣化しにくいということもあげられます。そのため、安心してお肌に用いることができます。
また、ワセリンは第3類医薬品ではありますが、一般用医薬品の中でもっともリスクの低いものとなっています。そのため、ほかの薬品との併用も可能となっています。
傷口にも使える
冒頭でも述べたように、ワセリンは皮膚に浸透することが全くないという特徴があります。そのため、傷口にも安心して用いることが可能です。
最近は、擦り傷や切り傷、やけどなどの皮膚疾患に対して、「湿潤療法」を施すケースが増えてきています。かつては皮膚のケガというと、消毒薬を塗って乾燥させるのが一般的でした。
ところが、最近になって、消毒薬を塗ると欠損組織を再生する細胞までも殺してしまうことから、従来のように消毒薬を塗ることがなくなっています。
湿潤療法の原則としては、「水道水で傷口をよく洗い流す」ことと、「消毒薬を塗らない」こと。そして、「傷口を乾かさない」という3つのことがあげられています。
そのうち、傷口を乾かさないというときに、ワセリンの保湿力が効果を発揮するという訳です。ただし、傷口が化膿しているような重症のときには、皮膚科を受診するようにしてくださいね。
ワセリンの種類と自分に合うものとは
ワセリンにはさまざまな効果や効能がありますが、実は、ワセリンにもいくつかの種類があります。そこで、ワセリンの種類や特徴、どのような人におすすめなのかについて見ていきたいと思います。
日本で一般的に用いられているワセリンは、「白色ワセリン」「黄色ワセリン」「プロペト」「サンホワイト」「ヴァセリン」の5つです。それぞれの特徴を表にまとめてみました。
ワセリンの種類 | 特徴 | こんな人におすすめ |
---|---|---|
白色ワセリン | ワセリンから不純物を取り除いたもの。ベンゼンなどの不純物が微量残存。 | 一般的な肌質の人 |
黄色ワセリン | 不純物を多く含む | 一般的には使用されない(工業用途) |
プロペト | 不純物を高度に取り除いている | 眼科用 |
サンホワイト | 不純物がほとんど含まれていない | 乳幼児におすすめ |
ヴァセリン | アメリカから輸入されている白色ワセリン | 長期保存が可能なので、長く使いたい人におすすめ |
ワセリンとヴァセリンとの違いは、日本で使われているワセリンとくらべると、ヴァセリンの方がややベタつくという点です。また、ヴァセリンには酸化防止剤が少量配合されているため、長期保存が可能となっています。
白色ワセリンやヴァセリンは、値段・品質・感触のどの点を取っても平均的で、プロペトやサンホワイトは高品質な分、値段が高めになっています。その分、安全性と効果の面で優れています。
ワセリンのおすすめの使い方
ワセリンにはいろいろな種類があり、それぞれに特徴が異なっていることも理解して頂けたことと思います。それでは次に、ワセリンのおすすめの使い方について見ていきたいと思います。
手足の保湿ケア・ささくれケア
ワセリンのおすすめの使い方としては、手足の保湿ケアや指先のケアがあげられます。日本の冬は乾燥しやすいので、特に手足の保湿ケアが重要となります。
また、水仕事をする機会の多い女性の場合、皮脂が不足することによって手湿疹を発症するケースもあります。そのため、水仕事をした後にはワセリンで保湿することが推奨されています。
ワセリンを塗ることは、指先のささくれをケアする際にも有効です。ささくれを無理に剥がしてしまうと、痛いだけでなく出血をともなうこともあります。
また、ささくれが衣服などに引っかかったり、ささくれが触れた場所を傷つけてしまったりします。ワセリンでささくれを覆うように塗ることで、そのようなリスクを低下させることができます。
唇の保湿ケアとしてリップクリームの代わり
ワセリンのおすすめの使い方としては、唇の保湿ケアとして、リップクリームの代わりに用いるということもあげられます。
ワセリンには油分が含まれているため、ぷるんと潤いのある口元を演出することもできますよ。また、なんどか述べているように、ワセリンは皮膚に全く浸透することがありません。
唇も皮膚の一部ですが、その他の部分とくらべると角層が薄いため、外部の刺激を受けやすいという特徴があります。そのため、皮膚にダメージを与えないワセリンで保護してあげることが有効なのです。
ボディの保湿ケア
ワセリンは、ボディの保湿ケアに用いることもできます。なぜワセリンが皮膚に全く浸透しないことをこれほど強調しているかというと、「経皮毒」の問題があるからです。
経皮毒とは、お肌に塗ったお化粧品などの成分が、皮膚を経て毛細血管へと侵入する現象のことを言います。そして、お肌から入った毒性のあるものは、口から入った毒性のあるものよりも有害性が高いとされているのです。
2013年に、大手化粧品メーカーの美白剤を使った女性の奥に、原因不明の白斑が現れるといニュースがあったことをご記憶の方もいらっしゃることと思います。
詳しい経緯は述べませんが、美白剤に含まれている有害な成分が、皮膚を経て毛細血管内に侵入したことで、そのようなトラブルが発生したものと考えられています。
ワセリンは再三述べているように、皮膚に浸透することが全くないので、そのようなリスクを冒すことなく、全身を保湿できるのです。
スキンケアの仕上げに
ワセリンには、お肌の水分を閉じ込めてうるおいを保つという働きがあります。そのため、スキンケアの仕上げにワセリンを用いることも有効です。
夜寝ている間、私たちの肌は乾燥と摩擦にさらされることとなります。いくらスキンケアを頑張っておこなっても、寝相だけはどうすることもできませんよね。
寝ている間に枕や布団の摩擦が加わることで、お肌が乾燥したり荒れたりする可能性もあります。そんなときにワセリンを用いることで、ダメージを最小限に食いとどめることができるのです。
かかとの保湿ケア・靴擦れ予防
ワセリンをかかとに塗ることで、かかとの保湿や崩擦れ予防をすることも可能です。かかとは特に乾燥しやすい場所なので、お風呂上がりなどにワセリンを塗っておくとよいでしょう。また、かかとの乾燥をワセリンで予防することによって、ストッキングの伝線を防ぐ効果も期待できますよ。
花粉症対策
花粉症対策にワセリンを用いるのも効果的です。鼻の中が乾燥していると、花粉が体内に侵入しやすくなりますし、外部の刺激に対して過敏になってしまいます。
ワセリンを鼻の穴の周りに塗ることで、鼻の中の乾燥を予防することができます。その結果として、花粉症の症状を緩和することができるのです。
ワセリンを使うときに注意するポイント
ワセリンは比較的安全で、とても高い保湿効果が期待できます。そんなワセリンですが、使うにあたっていくつかの注意点がありますので、以下に紹介しておきたいと思います。
べたつき感がある
ワセリンには油分が含まれているので、使用すると若干のベタつき感があります。それが気になるという方もいらっしゃると思いますが、お肌が乾燥するよりは大分マシだと思いますよ。
厚塗りに注意
ワセリンを使うとベタつくから嫌だという方は、ワセリンを圧塗りしないように気をつけましょう。少量を手にとって体温で温め、薄く伸ばすようにしましょう。
長期間使っていると肌が皮脂を出さなくなってしまう
ワセリンは皮脂の代わりとなってお肌を乾燥から守ってくれますが、あまりにもワセリンばかりに頼ってしまうと、お肌が皮脂の分泌をサボってしまいます。あくまでもサポート的に用いるようにしましょう。
まとめ
ワセリンの効果について見てきましたが、いかがだったでしょうか。基本的にワセリンは安全で、保湿効果が高いので、お肌の乾燥を予防するのにとても効果的です。敏感肌の人はプロペトやサンホワイトを利用して、乾燥の季節を乗り切ってくださいね。