ふとした時に耳の中でカサカサと音がして、綿棒で掃除してみたら乾燥した耳垢が取れたこと、ありませんか?でも、気になるあまり掃除をしすぎると耳の中を傷つけてしまう危険性があります。そこで、乾燥した耳垢の正しい取り方や注意点、そもそも耳垢とは何なのかという点をまとめました。耳垢について知ると、正しい耳のケア方法も理解できるでしょう。
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耳垢は汚いものだと考えていませんか?
耳垢は医学的には「じこう」と呼ばれています。でも、一般的には「みみあか」「みみくそ」と呼ばれているので、汚いものや不必要なものというイメージがあるかもしれませんね。しかし、実は耳垢は大切な役割を果たしてくれているのです。
耳垢は耳を守ってくれるもの
耳垢は外耳道といわれる耳の穴から鼓膜までの間、耳の穴から1.5㎝までのところに発生します。そして耳垢を形作るのは、耳の中にある耳垢腺や皮脂腺から出た分泌物に、耳の産毛や剥がれ落ちた角質、空気中のチリやホコリが混ざってできたものです。
「えっ、やっぱり耳垢って汚いものでは?」と思うかもしれませんが、ちょっと考えてみてください。耳垢は、外耳道の外側で、外からのチリやホコリ、耳から出る不要物をまとめたものです。つまり、耳の入り口で外からの不要物の侵入を防ぎ、老廃物が奥に入らないように耳を守ってくれているということなのです。
耳垢は耳を守るという働き全うするため、さまざまな役割を果たしてくれています。
耳垢の役割
耳垢が果たす役割の1つは、耳の穴に侵入したゴミやホコリを吸着することです。耳垢腺や皮脂腺から出る分泌物には適度な粘着性があるため、不要物を吸着しやすいのです。
また耳垢には苦味のある成分や臭いがあるため、虫の侵入を防ぐという役割もあります。虫だけでなく、耳垢には抗菌作用のある成分も含まれているため、雑菌や細菌の侵入を防ぎ、感染防御の役割も果たしてくれています。
さらに耳垢には外耳道を守るという役目もあります。外耳道の皮膚は薄く傷つきやすいのですが、その皮膚を覆い、また分泌物で潤いを与えることによって耳を守っているのです。
耳垢は、耳を守るためにこのようなさまざまな役割を果たしてくれているのです。
乾燥耳垢は病気ではない
しかし、耳垢の役割を見てみると、耳垢には粘着性があるはずなのに自分の耳垢は乾燥している、と不安になるかもしれません。でも安心してください!
乾燥耳垢は遺伝が関係していることが多いからです。実に日本人の7〜8割の方は、乾燥タイプの耳垢なんだそうです。なので、乾燥耳垢は保湿が足りないとか何かの病気ということではありません。
耳垢の質の違いは、耳の中にある耳垢腺と皮脂腺からの分泌物の量によります。分泌物が多いとしっとりしますが、普通や少ない場合は垢となる時点でカサカサになります。そして、分泌物の量は病気や健康とは全く関係がありません。
さらに安心していただくために、耳垢の種類ついて説明したいと思います。
耳垢は乾性と湿性がある
耳垢の質には、大きく分けるとカサカサした乾性耳垢としっとりした湿性耳垢の2タイプがあります。乾燥タイプの耳垢はアジアを中心とした黄色人種に多く見られ、アメリカやヨーロッパ、アフリカなどでは湿ったタイプの耳垢が多いという研究報告があります。人種によっても耳垢の質が異なるということですね。
では、乾性耳垢と湿性耳垢とはどのような耳垢なのか、それぞれどのような特徴があるのかを具体的に調べてみましょう。
乾性耳垢
カサカサと乾燥した乾性耳垢は、コナミミやミミカスとも呼ばれています。色は灰白色や薄い黄色をしています。また、同じ乾性耳垢でもさらにタイプが異なります。耳垢がパラパラと粉状になったタイプ、皮膚がむけた後のような鱗(うろこ)のような、比較的大きめのタイプです。どちらも量が少なめという特徴があります。
このような乾性耳垢は、物を食べたり話したりするときの顎の運動と共に前に押し出され、自然に排出されるようになっていますので、乾性耳垢の方は基本的には耳掃除の必要はないといわれています。ただ、他人に耳からぱらぱらと耳垢が落ちるのを見られるのは嫌ですよね。乾燥した耳垢の正しい取り方は後ほど詳しく説明しますので、参考にしてください。
湿性耳垢
しっとりとした湿性耳垢は、アメミミ、ヤニミミ、ジュルミミ、ネコミミと呼ばれています。色は褐色で、アメ状でベタベタしています。湿性耳垢には、ベタベタしたタイプに加え、湿り気を含みながらもパラパラとしたパン粉のようなタイプ、皮膚がむけたような状態ですが湿ったタイプがあります。湿性耳垢はどのタイプの場合も量が多めなので、定期的にお掃除をする必要があります。
お掃除をする時は、耳垢が発生している手前だけを綿棒でぬぐう程度にしましょう。綿棒を奥に押し込んでしまうと耳垢も奥に押し込まれてしまい、感染や難聴など耳のトラブルを引き起こす可能性があるからです。また、耳垢は耳を乾燥から守っています。取りすぎにも気を付けましょう。
乾燥した耳垢の正しい取り方
乾燥した耳垢は外耳道にくっつきにくいため、顎を動かす動作で自然とは移出されるようになっています。それでも、身だしなみとしてキレイにしていたいですよね。乾燥した耳垢の正しい取り方を説明します。
準備するもの
乾燥した耳垢、特に粉状の耳垢は外にかき出しにくく奥に入りやすいため、掃除のためのグッズも考える必要があります。そこで、乾燥した耳垢を掃除するために適したグッズを準しましょう。
- 耳用掃除機:通販で家庭用のものが手軽に購入できます。特に、粉状の耳垢を取るのにおすすめです。
- ベビー綿棒:耳穴よりかなり小さめの綿棒です。耳穴よりも小さいので、耳垢を奥に押し込む心配がありません。
- 粘着綿棒:はがれた耳垢、粉状の耳垢をくっつけて取るため、奥に入ってしまうのを防ぐことができます。
- 耳かき:外耳道が曲がっていたりして耳垢が出しにくいときは必要かもしれません。しかし、外耳道を優しくなでる程度に使用しましょう。
正しいやり方
耳掃除は正しい方法でしなければ、耳の中を傷つけたり、耳垢を奥に押し込んでしまったりして、別のトラブルを引き起こしてしまう可能性があります。では、耳掃除はどのようにすると良いのでしょうか?
耳かきを使用した場合
- 親指と人差し指で耳かきを支える。
- 耳の中1cmまでくらいを、耳かきで円をかくように優しくなぞってかいていく。
- 耳かきの後ろについているフワフワした梵天(ぼんてん)を斜め上から入れ、耳の中で円をかくように回しながら外に出す。
綿棒を使用した場合
- 綿棒はなるべく外耳道に触れないように、耳の中1cmくらいのところに入れる。
- 綿棒をクルクルと回しながら、優しく外耳道をなぞる。
- 綿棒を耳の壁に沿わせながら外に出す。
また最後に、耳掃除のあとに耳用ローションで保湿することもおすすめです。もちろん、時間が経てばまた分泌物が出て保湿してくれるので、絶対に必要ということではありません。
耳用ローションを使用する場合は、ローションを綿棒に含ませ、耳の中から外に向けてなぞるようにしてつけます。その後、乾いた綿棒で拭き取るように中から外に向けてなぞってください。ひんやりして気持ちがいいですよ!
耳垢を取る頻度
耳掃除は気持ちが良いので毎日している、という方もいるかもしれません。しかし、毎日掃除することで、耳を守っている必要な耳垢まで取り除いてしまっているかもしれません。何度か触れましたが、特に乾性耳垢の方の場合、不必要な耳垢は自然に排出されるようになっています。なので、綿棒などを使用しての掃除は1ヶ月に1~2回程度でよいといわれています。毎日のお手入れとしては、お風呂上りに耳の穴の入り口付近を軽く拭き取るくらいで十分なのです。
もし、耳の中でカサカサという音が気にるときやかゆみがひどい場合、自分でむやみに掃除しようとすると耳の中を傷つけてしまうかもしれません。ぜひ、耳鼻科にかかって対処してもらいましょう。
やってはいけない事
耳垢を取るときにやってはいけないことがあります。それは、乾燥した耳垢のまとまりが良くなると考えてオイルや水で湿らせることです。まとまればごっそり取れる、と考えるかもしれません。が、耳垢は湿らせると水分を含んで膨れ、外耳道をふさいでしまいます。そこに綿棒や耳かきを入れると、耳垢は奥に押し込まれてしまうでしょう。なので、耳掃除のために耳垢を湿らせるのは避けて下さい。
また、耳垢を取ると気持ちがいいですよね。それでついつい綿棒や耳かきを奥まで入れてしまうかもしれません。しかし、耳垢は外耳道の入り口の近くにしか発生しません。もし、奥に入れて外耳道をこすってしまうなら薄い外耳道の皮膚を傷つけることになるので、気を付けましょう。
耳垢を取るときの注意点
耳のトラブルを避けるため、自分で耳掃除をする場合でも、人の耳を掃除する場合でも注意
したいことがあります。
むりに取らない方がいい
自分で耳掃除をすると、耳垢が本当に取れているのか不安になったり、何かまだ残っているような気になったりすることがあるかもしれませんね。また、他の人の耳掃除をしていて、耳垢が奥に見えたりすると、つい取ってしまいたくなるかもしれません。
しかし、むりに取らないようにしましょう。特に自分でする場合、見えないので耳垢を奥に押し込んでしまったり、耳の壁を傷つけて炎症が生じたりする危険性が高くなります。そうすると、耳垢が耳を塞いで聞こえにくくなることがあります。人の耳を掃除する場合も同じです。つい奥に耳かきを入れてしまい、鼓膜を傷つけてしまうかもしれません。
どうしても気になる場合は、耳鼻科で耳掃除をしてもらいましょう。
取る頻度が多すぎるのも良くない
耳掃除の頻度は、月に1〜2回程度で十分です。もし耳掃除をする頻度が高いと、耳垢を取りすぎることによるトラブルを引き起こすかもしれません。
耳垢を取りすぎることによるトラブルの1つは耳の乾燥です。耳垢には耳を保湿するという役目があるからです。耳が乾燥するとかゆみが発生するので、かきすぎて耳を傷つけることになるかもしれません。
別のトラブルは、外耳道が傷つきやすくなることです。外耳等は非常にデリケートです。その部分に触れることが多いということは、それだけ傷つけやすいのです。傷ついてしまえば、傷口が炎症を起こしてかゆみを引き起こしたり、耳垂れが出たりします。
なので、耳掃除の頻度に気をつけて耳を大切にしましょう。
正しいケアで耳の健康を守りましょう
耳垢の働きや耳垢の種類、また耳掃除の方法などについてまとめました。
耳垢は耳を守るためにさまざまな役目を果たしてくれています。なので、耳掃除の方法や頻度に気をつけて、耳垢の取り過ぎには気をつけたいですね。
また、耳垢の乾燥は遺伝や体質が関係している場合が多く、肌の乾燥と違って保湿する必要はありません。気にしすぎて触りすぎると、耳垢を奥に押し込んでしまったり、耳を傷つけたりと耳のトラブルを引き起こしてしまうかもしれません。乾燥した耳垢を掃除する正しい方法や正しいケアで、ぜひ耳の健康を維持してくださいね。
しかし、もし耳のかゆさがひどい場合や痛みがある場合は、一度耳鼻科で見てもらうことをおすすめします。