一年の半分以上が乾燥している日本では、お肌の乾燥や肌荒れに関する悩みが多いものです。ただ、乾燥によって湿疹が見られたり、かゆみがあったりする場合、乾燥性湿疹になっている可能性もあります。そこで今回は、乾燥性湿疹への対処法について解説していきたいと思います。
肌が乾燥して湿疹が出来たら乾燥性湿疹かも
肌が乾燥してカサカサになることは、それほど珍しいことではありません。ただ、乾燥にともなってかゆみが生じたり、湿疹が現れたりする場合、もしかしたら乾燥性湿疹を発症しているかもしれません。では、乾燥性湿疹とはどのような疾患なのでしょう。
乾燥性湿疹の症状とは
乾燥性湿疹は、「皮脂欠乏性湿疹」とか、「乾皮症」などといわれることもある、皮膚に見られる炎症性の疾患です。では最初に、乾燥性湿疹の特徴や症状について説明していきたいと思います。
肌が乾燥し続けると皮膚炎が起こる
私たちの肌は皮脂によって外部の刺激から守られていますが、皮脂の量が減少してしまうことによって肌のバリアがなくなると、次第に肌がカサカサして剥がれおちることとなります。
一般的に「肌」という言葉が使われる場合、それは「表皮」のことを指すケースがほとんどです。表皮はわずか0.2mmほどの厚さで、表面から順に「角層」「顆粒層」「有棘層」「基底層」で構成されています。
角層は14層から15層ほどで構成されており、厚さがわずか0.02mm程度しかありません。そして、角質には角質細胞間脂質と呼ばれる油分が含まれており、それによって角質が保護されているのです。
ところが、乾燥によって角質細胞間脂質や天然保湿因子が減少すると、次第に皮膚に炎症を起こすこととなります。
さらに皮膚炎が進行して乾燥性湿疹に
乾燥性湿疹の初期にはそれほど症状が強くないため、ただの肌荒れとして放置してしまうケースもありますが、乾燥性湿疹の中期以降になると、次第にかゆみが強くなってきます。
また、肌が亀の甲羅のようにひび割れ、炎症を起こして赤く腫れてきます。酷くなると、寝ているときにかゆみのため目を覚ますことがあるほどです。
さらに炎症状態が悪化すると、かゆみのあまり爪でひっかいてしまい、傷ついた部分から体液がしみ出したり、傷の部分がゴワゴワと固くなったりします。
乾燥性湿疹になる原因とは
乾燥性湿疹になる原因はズバリ「乾燥」です。そのため、乾燥性湿疹は秋から冬にかけて多くみられます。真冬になると症状がもっとも酷くなります。
乾燥する原因としては、気候的要因や年齢的要因などがあげられています。気候的要因は先にも述べたように、湿度が低下することによって皮膚が乾燥し、それによって乾燥性湿疹を発症するリスクが高くなります。
また、年齢を重ねると多かれ少なかれ、誰にでも皮膚の乾燥がみられることとなります。乾燥性湿疹が特にみられやすい場所は手足、特に下腿に多く発症しやすいという特徴があります。
乾燥性湿疹は中高年の人に多くみられ、男性と女性を比較すると、女性に多くみられるというのも特徴の1つです。これは、女性に比べると男性の皮脂の分泌量が多いことと関連しています。
先述したように、皮脂には私たちの肌を外部の刺激から守ってくれる働きがあります。そのため、乾燥によって皮脂が減少すると、肌のバリア機能も低下し、乾燥性湿疹を発症しやすくなるのです。
乾燥性湿疹の対処法
乾燥性湿疹を発症する原因や、乾燥性湿疹の症状については理解して頂けたことと思います。では、乾燥性湿疹を発症してしまった場合、どのように対処すればよいのでしょうか。
湿疹がひどい場合は早めに医療機関へ受診を
乾燥性湿疹の初期にはそれほど症状が強く表れないため、ただの肌荒れとして見過ごしてしまいがちです。また、肌荒れだと思って保湿対策をしたら、乾燥性湿疹が治ってしまうようなこともあります。
ただ、乾燥性湿疹が進行してかゆみが強いような場合は、速やかに医療機関を受診するようにしましょう。一般的には、皮膚科の受診が推奨されています。
なぜ皮膚科の受診が必要かというと、典型的な乾燥性湿疹はともかく、軽症例の場合、アトピー性皮膚炎やじんましん、乳児湿疹や接触皮膚炎との判別が困難だからです。
最近はインターネットで何でも調べられる時代になっていますが、「生兵法は怪我のもと」といいます。ネット上でかじった少しの知識で対処すると、後々大きな災いとなるケースもあります。
乾燥性湿疹を何度も繰り返しているような場合はともかく、初めての場合は必ず医療機関を受診し、専門医の診察を受けるよう心がけましょう。
皮膚の乾燥を抑える保湿する方法
乾燥性湿疹にならないためには、皮膚を乾燥させないことがもっとも重要です。また、乾燥性湿疹に限ったことではありませんが、肌が乾燥してよいことはなにもありません。そこで皮膚の乾燥を抑え、保湿するための方法について見ていきたいと思います。
お肌が乾燥しないように保湿剤を使いましょう
お肌を乾燥から守るためには、足りないすいぶんを補ってあげることが重要です。そのため、お風呂に入ったあとに保湿剤を用いて、しっかりとお肌にうるおいを与えてあげましょう。
また、保湿剤を使ったあとにはクリームも併せて塗るようにしましょう。なぜなら、保湿剤だけで肌ケアを終えてしまうと、いずれその水分は蒸発してしまうからです。
水分が蒸発することを気化といいますが、その際、保湿剤の水分がもともとお肌にある水分までも一緒に気化させてしまいます。つまり、保湿剤を使うことでさらに乾燥がひどくなるという、本末顛倒の結果になりかねないのです。
そのため、保湿剤を塗ったあとはクリームを上から塗って、うるおいを閉じ込めるように心がけましょう。乾燥性湿疹は特に下腿にみられやすいので、ふくらはぎをマッサージしながらクリームを塗りこむとよいでしょう。
乾燥がひどい場合には入浴後だけでなく、暇を見て1日に何度でも保湿するようにしましょう。それでも乾燥が治まらない場合は、皮膚科で相談するようにしてくださいね。
湿疹にならないようにお肌の清潔を保ちましょう
改めて「湿疹とはなんですか?」と聞かれると、正確に答えられる人は少ないのではないでしょうか。湿疹とは、「皮膚の表層に見られる炎症」のことを言います。
では、炎症とはなんなのでしょう。炎症は、外部からの侵入者(細菌やウイルス)を排除したり、自分の死んだ細胞を排除したりすることで、ホメオスタシス(生体の恒常性)を保とうとする働きのことを言います。
つまり、炎症が起こっているということは、そこを治そうとしているということでもある訳です。では、炎症がおこらないようにするためにはどうしたらよいのか。それは、細菌やウイルスが侵入できないようにすればよいのです。
そのためには、お肌を清潔に保つことが重要となります。皮膚には数えきれないほどの常在菌が存在しており、それぞれがバランスを保って暮らしています。
健康状態を保っているうちは常在菌が悪さをするようなことはありません。ところが、お肌を不潔にしていたり、免疫力が低下したりすると、常在菌が悪さを始めることとなります。
そうならないためにもお肌を清潔に保ち、免疫力が低下しないよう、しっかりと睡眠を取って身体を回復させるように努めましょう。
部屋の乾燥に気をつけましょう
乾燥性湿疹の直接のきっかけはズバリ「乾燥」です。そのため、部屋が乾燥しないよう気をつけましょう。特に、乾燥した冬の時期になると、部屋の湿度が40%を下回ることも珍しくありません。
湿度が40%以下になると、乾燥性湿疹を発症するリスクが高くなるだけでなく、インフルエンザウイルスが活発になるため、インフルエンザを発症するリスクも高くなってしまいます。
冬場はエアコンを入れて部屋を暖めるのが一般的ですが、エアコンを入れると空気がさらに乾燥してしまいます。そのため、加湿器を用いて部屋の湿度を高くしたり、お風呂場を開け放って過失したりするとよいでしょう。
お肌にとって良好な湿度の目安は、50%から60%程度が理想だとされています。60%以上になると逆にムシムシしますし、ダニやカビが繁殖する原因ともなります。
肌を爪などで掻かない
肌を爪などで掻いてしまうと、角層に傷がついて肌荒れの元となります。掻くことによって余計にかゆみが増してしまうと、さらに掻いて肌を傷つけるといった悪循環に陥りがちです。
乾燥性湿疹を発症しているような場合、爪でひっかくと炎症した部分に傷がつき、体液が出てしまうようなこともあります。そうなると、余計に回復に時間がかかることにもなります。
そうならないためにも、爪は常に短く切っておき、爪とぎなどで研いでおくようにしましょう。そうすれば、仮にお肌を掻いたとしても、お肌が傷付くリスクを下げることができます。
また、手は常に清潔に保っておくようにしましょう。爪の間に汚れが入っていると、その爪で肌を掻くことで、炎症を起こす可能性が高くなってしまいますからね。
お風呂に入る時間とお湯の温度を適切に
乾燥性湿疹を予防するためには、お風呂の入り方にも気をつけましょう。熱いお湯に入ると皮脂が必要以上に奪われるので、お湯の温度は39度から40度程度にしましょう。また、入浴時間も長くて15分程度にとどめるとよいでしょう。
身体を洗う際には、ナイロンのタオルなどでごしごし洗わないようにしましょう。やはり皮脂が植われてしまうからです。入浴後には木綿製のパジャマなどを着て、皮膚への刺激を減らすようにしましょう。
乾燥性湿疹の原因は乾燥なので乾燥時期に備えて保湿していきましょう
乾燥性湿疹について見てきましたが、いかがだったでしょうか。乾燥性湿疹に限ったことではありませんが、肌が乾燥して得することはなにもありません。乾燥性湿疹にならないためにも、毎日の保湿ケアをしっかりとおこなって、「潤い肌」を作っていきましょうね。