いつもは歯磨きをすると口の中がさっぱりとして爽やかなのに、最近歯磨きをした後も嫌な臭いがする、というような方いらっしゃいませんか。もし、歯を磨いた後にも口臭が気になるような場合、思っても見ないような病気が潜んでいる可能性もあります。今回の記事では、歯を磨いた後に口が臭う原因や、改善法について説明していきたいと思います。
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口の中の臭いの原因
口の中から嫌なにおいがするような場合、どのような原因があるのでしょうか。口腔内のトラブルはもちろんのこと、その他の要因で悪臭を放っている可能性もありますよ。
磨き残しがある
口の中から嫌なにおいがするもっともシンプルな理由は、歯を磨いた際に磨き残しがあるケースです。単純に考えても、歯を磨かないと口の中が臭くなるというのは簡単にイメージできますよね。
歯を磨いた際に磨き残しがあると、それは歯垢(プラーク)となって残ってしまい、それが原因で悪臭を放つようになるのです。
歯周病が進行している
口臭がひどいような場合、歯周病が進行している可能性もあります。歯周病はかつて歯槽膿漏と呼ばれていましたが、細菌感染によって発症する炎症性の疾患のことを意味します。
歯磨きをした時に磨き残しがあると、歯と歯茎の間に歯垢が溜まることとなります。歯垢は細菌のエサとなるため、歯と歯茎の間に細菌が増殖し、それが原因となって歯茎が炎症を起こし腫れてしまいます。
私たちの口内には500種類とも600種類とも言われる細菌が存在していますが、その中のおよそ20種類ほどが歯周病になる原因菌とされています。
歯周病になっても最初のうちは特に痛みなどがないため、自分が歯周病になっていることに気づかないケースもよくあります。それが知らないうちに進行してしまい、気が付くと悪臭としてあらわれる可能性があるということなのです。
内臓の病気
可能性としては低いですが口臭がひどい場合、内臓に何らかの疾患が表れている可能性があります。たとえば、胃腸など消化器系の疾患がある場合、肉の腐ったような口臭を発することがあります。
また、糖尿病を患っているような場合、特徴的なアセトン臭のすることがありますし、腎機能障害を患っているような場合には、アンモニア臭を発することがあるということです。
膿栓
膿栓(のうせん)とは、咳やくしゃみをしたときに喉の奥から飛び出してくる、膿のような色をした塊のことを言います。俗に「臭い玉」などといわれることもあるように、つぶしたときに下水のような悪臭を放つことで知られています。
膿栓は扁桃腺にたまることで知られています。なぜそのようなことが起こるかというと、扁桃の表面にある小さな穴である腺窩(せんか)に、細菌や食べカス、白血球の死骸などがたまってしまうからです。
膿栓に対するアプローチは医師によってさまざまで、脳線があるだけで臭いがすることはないとする立場の医師もいれば、口臭の原因になるから取り除いた方がよいとする立場の医師もいます。
蓄膿症
蓄膿症は副鼻腔炎ともいわれますが、副鼻腔に存在している小さな空洞に炎症がおこることで、副鼻腔に膿がたまってしまうのです。そのため、蓄膿症と呼ばれるわけです。
副鼻腔にたまった膿は強烈な悪臭を放ちます。あたり前といえばあたり前ですが鼻と口はつながっていますし、鼻が詰まることによって口呼吸となるため、口臭もひどくなってしまうのです。
臭いをなくす対処法
口臭の原因の原因としてはいろいろなことがあげられますが、では、口臭をなくすためにはどのように対処するのがよいのでしょう。
歯ブラシ以外のケア用品の使用
私たちが口内のケアをおこなう場合、歯ブラシで歯を磨くことが一般的だと思います。ただ、歯ブラシだけでは歯の汚れを完全に落とすことが困難です。そのため、以下のようなアイテムを使って口内のケアをおこなうとよいでしょう。
①フロス・歯間ブラシ
歯を磨いただけでは取りきれない食べカスやプラーク(歯垢)を取り除く方法として、フロス(デンタルフロス)や歯間ブラシを使うという手があります。
フロスや歯間ブラシは簡単に言うと「糸ようじ」ですが、歯と歯の間が狭い場合にはフロスを、歯と歯の間が比較的広い場合には歯間ブラシを使うのが一般的です。
フロスや歯間ブラシを選ぶ際には、自分にあったサイズを選択することが重要です。歯と歯の間に無理やりフロスや歯間ブラシを差し込んでしまうと、歯肉を傷つけることになりかねないため注意が必要です。
なかなか歯と歯の間にフロスや歯間ブラシが入っていかない場合や、歯と歯の間に差し込んだフロスや歯間ブラシが動かしづらい場合は、ワンサイズ下のものに変更するようにしましょう。
また、フロスや歯間ブラシにはストレートタイプのものと、L字タイプのものがあります。前歯の掃除をしたい場合にはストレートタイプを利用し、奥歯にはL字タイプを使用するとよいでしょう。
フロスや歯間ブラシを使うときには、歯と歯の間にフロスや歯間ブラシを差し込み、優しく前後に動かしましょう。また、フロスや歯間ブラシで歯の汚れを落とした後は、うがいをしましょう。
フロスや歯間ブラシは、使い方が正しければ毎食後におこなっても構いませんが、現代人は忙しいので、夜だけおこなっても構いません。
②舌クリーナー
口臭の原因はいろいろありますが、そのうちの1つに舌苔(ぜったい)があげられることもあります。舌の表面には細かい溝があるのですが、そこに食べカスなどがたまることで、臭いを発するようになってしまうのです。
そのような場合、舌クリーナーを利用して舌を磨き、適度に舌苔をとることで口臭の予防が可能となります。ただし、歯ブラシを使って舌の表面をごしごしとこするようなことは避けましょう。
舌はとても繊細な器官なので、歯ブラシで磨いたりすると舌の表面に傷がついてしまいます。特に、研磨剤が含まれている歯磨き粉を使って舌を磨くことは絶対にやめましょう。
舌苔取りたいときには、専用の舌クリーナーを使うようにしましょう。ただし、舌クリーナーを使う場合であっても、舌の側面や裏側を磨いてはいけません。
舌の側面は味覚をつかさどっているため、磨いて傷をつけることで味覚が鈍ってしまいます。また、舌の裏はとても弱いので、舌クリーナーで傷つけると口内炎ができることにつながりかねません。
③洗口剤
舌苔をとる際には舌クリーナーを使うのが一般的ですが、歯磨きをしたあとのようなさっぱり感が欲しい場合には、洗口剤(マウスウォッシュ)や舌磨き専用のジェルを用いるとよいでしょう。
洗口剤の中にも種類があり、口臭を予防するものだと歯周病の細菌を殺菌するものやたんぱく質を分解するものなどがあります。アルコールが含まれていると口が乾燥し逆に口臭が発生してしまうのでアルコールが含まれていないものを選ぶようにしましょう。
歯周病治療
歯周病が原因で口臭のするような場合は、歯科医院で歯周病の治療をおこないましょう。とは言うものの、歯周病の初期には痛みなどがないため、自分が歯周病になっているのか分からないこともあると思います。そこで、歯周病を自分でチェックする方法をいくつか紹介しておきたいと思います。
①朝起きたときに口臭がひどかったり、口の中がネバネバしていたりする
②歯を磨くと歯茎から血が出る
③歯茎がピンク色ではなく赤黒く腫れている
④歯茎が下がって歯の根元が露出してきている
⑤歯ごたえのある食べ物が食べづらい
⑥固いものを食べると歯茎から血が出たり、歯茎に痛みが出たりする
以上のような症状がある場合、歯周病になっている可能性があります。自己判断で対処せず、歯科医院でしっかりと診てもらうようにしましょう。
内科や耳鼻科の受診
歯科医院を受診しても口臭の原因が分からない場合、内科系の疾患が潜んでいたり、耳鼻科系の疾患が潜んでいたりする可能性もあります。
慢性的に鼻炎を抱えているような人や、アレルギー性鼻炎を持っているような人は、知らないうちに副鼻腔炎になってしまっていることもあります。そのような人は、耳鼻科を受診するようにしましょう。
また、食事をすると胃がもたれたり、腸の調子が悪くなったりするような人や、歯科医院でも耳鼻科でも口臭の原因が分からない人は一度内科を受診してみるとよいでしょう。
においのする細菌たち
口の中で細菌が繁殖している場合、臭いの原因となってしまうということでしたが、では、臭いの元となる細菌にはどのような種類があるのでしょうか。細菌以外の原因物質も併せて紹介したいと思います。
プロフィロモナスジンジバリス菌(Pg菌)
Pg菌は、口の中にもともと存在している細菌の一種で、まだ詳しいことはわかっていませんが思春期ころに感染されるといわれている歯周病の代表的な細菌になります。
また、Pg菌は嫌気性といって空気を嫌う性質をもっているため、歯茎の奥へ奥へと隠れようとするのです。そのようにしてジンジバリス菌が増殖すると、身体がPg菌をやっつけようとします、そうすると歯茎を支えている骨が破壊されてしまうのです。
歯茎が炎症を起こして出血すると、Pg菌はさらにその血液をエサとして増殖するという悪循環を起こします。Pg菌が何かを分解する時に強いにおいを発し結果的にそれが口臭となるのです。
ちなみにPg菌は口の中から血管を巡り全身疾患を引き起こす細菌としても有名です。
メチルカプタン
メチルカプタンはメタンチオールとも呼ばれ、化学式「CH3SH」で表されるチオールの一種です。メチルカプタンは1971年に施行された悪臭防止法によって、悪臭物質に指定されています。
メチルカプタンは簡単にいうと、歯周病菌が歯に付いた食べ残しをエサとして食べた後に出る排泄物のようなものです。臭いもいろいろな表現法がありますが、メチルカプタンの臭いは野菜の腐ったような臭いと表現されます。
硫化水素
口臭の原因は、多くが揮発性硫黄化合物によるものとされており、その中に先程紹介したメチルカプタン、ここで紹介する硫化水を、そしてこの後に紹介するジメチルサルファイドがあります。
メチルカプタンは歯周病菌がプラークを分解する時に発生しますが、硫化水素は口腔内に疾患がなくても発生することがあります。例えば、起床時に口が臭うような場合、硫化水素によって口臭の出ている可能性があります。
硫化水素による口臭は「卵の腐ったような臭い」と表現されることがありますが、歯周病菌が原因となって発声するメチルカプタンに比べると、比較的臭いは弱いとされています。
ジメチルサルファイド
メチルカプタンや硫化水素は、口腔内に問題が発生している場合に見られる揮発性硫黄化合物ですが、ジメチルサルファイドの場合は少し性質が異なります。
ジメチルサルファイドは口腔内のトラブルが原因ではなく、内科系の疾患によって起こるとされているのです。例えば糖尿病が疑われるときには口臭がリンゴの腐ったような臭いになり、肝機能障害が疑われるときには魚が腐ったような臭いになるといった具合です。
他にも
口臭が起こる原因は他にもあります。たとえば、腸管で糖質が分解されるときに発生する水素ガスと呼ばれる物質がありますが、水素ガスは一定の割合で血液中に吸収され、それが呼気となって出てくるのです。
また、水素ガスが腸内細菌によって分解されると、メタンガスという物質を産生します。メタンガスもやはり血液中に吸収され、呼気となって出てきます。
便秘の人はメタンガスを産生しやすい傾向がありますが、そのようなときに口臭がおならのような臭いになったり、大便のような臭いになったりすることがあるということです。
口臭はサインです
歯を磨いても口の嫌な臭いが残るような場合、口内に問題があるケースとそれ以外のケースがあります。口内に問題がある場合、歯周病や舌苔の増えすぎなどが考えられるので、まずは歯科医院を受診するようにしましょう。
口内には問題がないのに口臭がするような場合には、耳鼻科系の疾患や内科系の疾患の可能性があります。口臭がするということは何かしら原因があります。ひとりで悩んでいないで、早めに専門医に相談するようにしてくださいね。