口臭が生臭いような気持ち悪いにおいがする。「なんだか口の臭いが生臭い気がする」…そんな悩みをお持ちではありませんか?口臭がすると人に迷惑をかけてしまいますし、当の本人も気になってお話などがしづらくなってしまいますよね。
口臭のタイプにはいろいろなものがありますが、今回の記事では生臭いニオイの口臭やその原因、また口臭の発生するメカニズムなどについて紹介したいと思います。
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まずは口の中の原因を疑う
口臭の原因はいろいろありますが、80%以上の口臭に関しては、口腔内に原因があるとされています。そのため、口臭がする場合にはまず「口の中に原因があるのではないか?」と疑う必要があります。
歯周病
口腔内に原因がある口臭の筆頭として、歯周病があげられます。歯周病というと中年期以降の発症するようなイメージをお持ちの方もいらっしゃることと思いますが、実はその認識は大間違いです。
一般社団法人である「日本生活習慣予防協会」の調べによると、日本人は20代で70%以上が歯周病になっているということです。また、30代から50代で80%、60代以降で90%もの人が歯周病を罹患しているということです。
これほど多くの人が歯周病を患っているのに、なぜ自覚している人が少ないのでそうか。それは、歯周病の初期にはほとんど自覚症状がない、ということが原因となっています。
歯周病になると、歯茎が炎症を起こしたり、歯茎から出血したりするのですが、特に痛みなどがないため、そのまま放置するケースがほとんどです。そして、知らないうちに歯周病が進行していくという訳なのです。
歯周病によって口臭がする原因は、大きく分けて2つあります。1つは、歯周病菌の活動によって「揮発性硫黄化合物」と呼ばれるニオイ物質が産生されるということです。
揮発性硫黄化合物が原因となる口臭については、次項で詳しく紹介したいと思います。歯周病による口臭のもう1つの原因は、歯周病が進行することによって、歯茎に膿がたまるということです。
歯周病によって歯茎にたまった膿は悪臭を放つため、それが呼気に乗って口から吐き出されることで、口臭となって現れるのです。
VSCによる口臭
口臭の原因として忘れてはならないのが「VSC」の存在です。VSCとは「Volatile Sulfur Compounds」の頭文字をとったもので、先に紹介した揮発性硫黄化合物のことを指します。
口臭の元となるニオイ成分は20種類ほどあるとされていますが、中でもこのVSC(揮発性硫黄化合物)は特徴的な臭いがすることで知られています。
揮発性硫黄化合物には硫黄という文字が含まれています。硫黄というと温泉をイメージされる方も多いのではないでしょうか。そして、硫黄の臭いというと腐卵臭、そう、卵の腐ったにおいということになります。
揮発性硫黄化合物の中でも、硫化水素と呼ばれるものは卵の腐ったような臭いがするという特徴があります。硫化水素は起床時や空腹時、緊張時に唾液の分泌量が減少することで発生します。
このようなタイプの口臭のことを「生理的口臭」と呼んでおり、誰にでもあたり前にみられる口臭です。時間の経過や食事、緊張の緩和によって、自然と消えていく類の口臭です。
揮発性硫黄化合物としては他に、「ジメチルサルファイド」と「メチルメルカプタン」があげられており、この2つは歯周病にともなって発生することでよく知られています。
ジメチルサルファイドは「生ごみのような臭い」と表現されており、メチルメルカプタンは「生臭い」「野菜や魚の腐ったような臭い」と表現されることがあります。
硫化水素と比べるとジメチルサルファイドやメチルメルカプタンは非常に強烈な悪臭を放つことで知られています。歯周病患者さんの息が臭いのは、ジメチルサルファイドやメチルメルカプタンのせいだという訳なのです。
膿栓
口臭の原因としては、膿栓もその1つにあげられます。膿栓とは喉の奥、両サイドにある扁桃(へんとう)に膿がたまることを言います。膿栓にたまっている膿は非常に臭いため、敗れることによって強烈な悪臭を放つこととなります。
ドライマウス
口臭の原因としてはドライマウスもあげられています。ドライマウスとは、簡単に言うと唾液の分泌量が減少することによって口腔内が乾燥し、食べ物を飲み込みにくくなったり、口の中に痛みを発しやすくなったりする状態のことを言います。
専門的には口腔乾燥症とも呼ばれており、日本ではおよそ800万人にドライマウスの症状がみられるということです。
ドライマウスの原因は実にさまざまで、老化によって唾液の分泌量が減少することもあれば、口呼吸による口腔内の乾燥、薬の副作用、自己免疫疾患(シェーングレン症候群)などもドライマウスの原因としてあげられています。
ドライマウスになってしまうと、唾液の分泌量の減少によって生理的口臭が発生しやすくなるだけでなく、口腔内に細菌が繁殖しやすくなるというデメリットもあります。その結果、歯周病が悪化して口臭もひどくなります。
病的な口臭
口腔内には特に問題が見当たらないのに口臭の見られる場合、病的な口臭である可能性があります。では、どのようなことが考えられるのでしょうか。
胃炎
胃の悪い人の息を嗅いだことのある人もいらっしゃることと思いますが、独特の臭気が感じられます。なぜそのようなことが起こるかというと、胃炎がその理由の1つとしてあげられています。
胃炎には急性胃炎と慢性胃炎とがありますが、急性胃炎は刺激物や医薬品の副作用、細菌感染などによって症状が急激に表れるタイプの胃炎のことを指します。
慢性胃炎は、急性胃炎が慢性化したり、食生活が乱れていたり、ストレス状態が継続したりすることによって発症します。また、アルコールやたばこも慢性胃炎の原因となります。
胃炎の原因としてはピロリ菌の存在も無視することができません。ピロリ菌は消化器官に影響を及ぼすため、口臭の原因となるとも考えられているのです。
蓄膿症
蓄膿症はその名の通り、膿を蓄える疾患のことを言います。では、どこに膿を蓄えるのかというと、答えは鼻です。鼻には副鼻腔と呼ばれる細い空気の通り道がありますが、アレルギー症状の悪化や細菌感染によって炎症を起こすと、副鼻腔炎を発症します。
副鼻腔炎が悪化すると、次第に副鼻腔に膿がたまることとなるのですが、この膿が強烈な悪臭を放つのです。その悪臭が呼気に乗って排出されることで、口臭として認識されることとなるわけです。
トリメチルアミン尿症(魚臭症)
トリメチルアミン尿症は、魚臭症や魚臭症候群などともよばれており、文字通り魚の腐ったような臭いが口臭、または体臭として現れてしまう疾患のことを言います。
「そんな病気、初めて聞いた」という方もいらっしゃることと思います。それもそのはずで、トリメチルアミン尿症はとても珍しい疾患で、全世界に700人ほどしか患者さんがいないとされています。
トリメチルアミンは、魚の鮮度が落ちたときや魚が腐ったときに発せられるニオイ物質であり、それが人間の体内で発生すると、魚臭い口臭や体臭としてあらわれることとなるのです。
トリメチルアミンは普通であれば肝臓で分解されて無臭化します。ところが、遺伝的にトリメチルアミンを無臭化する酵素を持っていない人の場合、トリメチルアミン尿症となってしまうということです。
それぞれの対策方法
口臭には口内環境の悪化によって現れるタイプの口臭と、病的な口臭との2種類があるということでした。では次に、そのような口臭が現れた場合の対策について解説していきたいと思います。
歯周病やVSCが原因の場合
まずは歯周病やVSC(揮発性硫黄化合物)が原因となって表れている口臭への対処法や予防法から見ていきたいと思います。
正しいケア
歯周病や揮発性硫黄化合物が原因となって表れている口臭に関しては、正しいケアをおこなうことによって改善、予防することが可能となっています。
正しいケアとしてもっとも簡単なのが、歯磨きを「正しく」おこなうということです。とは言うものの、正しい歯磨きとはどのような歯磨きなのでしょうか。
正しい歯磨きのポイントは3つあります。1つ目は歯ブラシを細かく動かして歯を磨くこと、2つ目は歯と歯茎との間もしっかりと磨くこと、3つ目はゴシゴシと強い力で磨かないことです。
1つ目の歯ブラシを細かく動かすについてですが、歯ブラシを大きく動かしてしまうと、磨き残しが出やすくなってしまいます。そのため、歯ブラシを細かく動かして磨き残しを出さないことが重要なのです。
2つ目の、歯と歯茎の間もしっかりと磨くということですが、歯茎もしっかりとブラッシングすることによって、歯茎の血行がよくなり、口内環境を改善することが可能となります。
また、歯周ポケットにたまった汚れや細菌を歯ブラシで描き出すことによって、歯周病になるリスクを下げることが可能となります。
歯ブラシでは取りきれない汚れは、歯間ブラシやデンタルフロスを用いて丁寧に取り除きましょう。また、マウスウォッシュなどを利用するもの効果的です。
定期的なクリーニング
毎日の歯磨きはもちろん大事なのですが、どうしても自分だけでは取りきれない、取り残してしまう汚れもあります。その汚れが原因となって歯周病になるケースもよくあります。
そのため、定期的に歯科医院を受診して、歯のクリーニングをしてもらいましょう。歯石などは細菌の温床となりますので、歯に関するプロフェッショナルである医師や歯科衛生士にしっかりと取ってもらいましょう。
膿栓が原因の場合
膿栓が原因で口臭がしている場合には、膿栓を取ってくれる病院を探すとよいでしょう。膿栓に関しては、ぜひ取った方がよいという医師もいれば、特に症状がなければ放置してかまわないとする医師もいます。ただ、臭いが気になるような場合は、やはり取ってもらった方がよいでしょう。
ドライマウスが原因の場合
ドライマウスが原因で口臭の見られるような場合は、歯科医院を受診して、ドライマウスの治療をおこなうことが重要です。
ドライマウスは口呼吸やストレス、病気や生活習慣によって起こっていることがほとんどであるため、根本的な解消には時間がかかります。
ただ、近年になって開発されたパーフェクトぺリオと呼ばれる殺菌水を用いることによって、口腔内の細菌を除去することができるようになってきているということです。
あと、ドライマウスは唾液の分泌量が減少することによって起こるので、唾液の分泌量を増価させるような治療もおこなわれます。
ドライマウスが高血圧や糖尿病といった疾患によって発症している場合には、元となる病気の治療をおこなうことが重要です。
病気が原因の場合
胃炎や蓄膿症が原因となって口臭の見られるような場合には、やはり元となる病気の治療をおこなうことが先決です。
トリメチルアミン尿症を改善するためには、トリメチルアミンを発生させてしまうレシチンやコリン、トリメチルアミンオキシドを多く含む食品を摂らないということが重要になります。
レシチンを多く含む食品としては、ごま油やコーン油といった油類、小魚や卵黄があげられています。コリンを多く含む食品としては、アブラナ科の野菜(キャベツやブロッコリー、カリフラワーなど)、加工肉やナッツなどがあげられています。
トリメチルアミンオキシドを多く含む食品としては、エビやカニなどの甲殻類、タコやイカなどの頭足類、海水に住んでいる魚などがあげられています。
原因が自分で分からない場合
口臭の原因は実にさまざまですが、自分では原因が特定できないという場合、どのように対処すればよいのでしょうか。
口臭外来へ行ってみる
自分では口臭の原因が分からないようなときは、口臭を専門としている口臭外来を受診するとよいでしょう。専用の機器によって口臭を測定し、ガスの種類によって口臭の原因を特定してくれます。
一度歯科医院へ行ってみましょう
口臭の原因はいろいろですが、生臭いような臭いがする場合、揮発性硫黄化合物が原因となっていたり、トリメチルアミン尿症を発症したりしている可能性があります。ただ、自分で判断するのは困難なので、気になる場合は速やかに口臭外来や歯科医院を受診しましょう。