便秘は女性にとって悩みの種。特に、妊娠中は2人に1人が便秘になるとも言われています。病院を受診しない人もあわせるともっと多いと思われますが、そんな便秘の中でも、排便時に痛みをともなう場合、なんらかの疾患を発症している可能性もありますよ。
便秘は日本人にとって身近なものであり、およそ10人に1人ほどが便秘に悩まされているということです。特に女性には便秘の人が多く、中には排便時にお腹が痛いという人や、お尻が痛いという人もいらっしゃることと思います。今回は、そのようなときに考えられる病気の可能性について考察したいと思います。
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便秘でお尻が痛い場合は痔かも!?
排便にともなってお尻に痛みをともなうような場合、便秘が原因となって痔を発症している可能性があります。では、痔とはどのような疾患なのでしょう。
痔ってなに?
痔は、虫歯と並んで日本人の国民病ともいわれている疾患です。痔を患っている人は意外と多く、日本人のおよそ3人に1人が、「自分は痔かも」と思っていて、そのうちの7割は実際に痔を患っているとされます。
〈痔の種類〉
一口に痔と言っても、いろいろなタイプの字があります。大きく分けると痔核と裂肛、痔ろうの3タイプに分類されます。では、それぞれについて詳しくみていきたいと思います。
・痔核
痔の中でももっとも多いのが痔核と呼ばれるタイプの痔です。一般的にはいぼ痔と読まれるもので、内痔核と外痔核の2種類があります。
内痔核は肛門にある「歯状線」よりも内側にできた動静脈瘤のことを言い、外痔核は歯状線よりも外側にできた動静脈瘤のことを言います。
動静脈瘤がこぶやいぼのように見えることから、いぼ痔と呼ばれるようになりました。ただ、内痔核とは言っても排便の際に肛門の外に飛び出すことがあり、そのことを脱肛とよんでいます。
内痔核は状態によって4つのレベルに分類されます。1度の内痔核は、排便をする際に出血がみられるものの、脱肛は起こらないレベルのものを指します。
出血の程度は内痔核の状態によってさまざまで、便器内に鮮血がみられるようなこともあれば、お尻を拭いたときにトイレットペーパーに少し血が付いている程度のこともあります。
ただし、出血するのは排便時だけであって、排便が終われば出血も止まるというのが1度の内痔核の特徴でもあります。
2度の内痔核になると、排便にともなって脱肛がみられるようになります。ただし、排便が終われば自然に元の場所に戻ります。
2度の内痔核になると、1度のときよりも痔核が硬くなってきます。そのため、1度の内痔核と比較した場合、出血量が減ることもあるということです。
3度の内痔核になると、排便時に飛び出した痔核が、指で押しこまないと戻らなくなってしまいます。また、排便のときだけでなく、重いものを持とうと踏ん張った瞬間に脱肛することもあります。
4度の内痔核になると、常に痔核が肛門外に飛び出した状態になります。内痔核は通常痛みをともなわないことが多いのですが、3度や4度の内痔核になると、痛みやかゆみをともなうことがあるということです。
外痔核は、痔核が肛門にある歯状線よりも外側にできます。内痔核とは異なって、激しい痛みをともなうという特徴があります。ただ、痛みは強いのですが、手術にまで至るケースはまれだということです。
・裂肛
裂肛は一般的に「切れ痔」とか「裂け痔」と呼ばれるタイプの痔です。男女ともにもっとも多くみられるのは痔核ですが、女性の場合、痔核に続いて裂肛が多くみられるということです。
裂肛を発症すると、肛門にある歯状線よりも外側にある肛門の上皮が裂けてしまうことによって、激しい痛みと出血がみられるようになります。
・痔ろう
痔ろうは肛門腺に膿がたまるタイプの痔です。男性の場合、痔核に次いで痔ろうが多くみられるということです。肛門周囲膿瘍から移行するケースが多いということです。
痔の原因
痔の原因としてもっとも多いのが便秘だということです。便秘になると便が硬くなりますが、そのような固い便が肛門を通り抜けるときに肛門の上皮を傷つけてしまい、裂肛になることがあります。
また、便を排出しようとするあまり強くいきむことによって腹圧が上昇し、それによって痔核ができることもあるということです。また、女性の場合、出産時にいきむことで痔ができることもあるということです。
他にも、デスクワークなど長時間座ったままの姿勢でいることや、お腹に圧力のかかる運動をしていること、辛い食べ物を食べることなども痔の原因となります。
痔の治療法
痔核や裂肛の場合、手術をするケースはまれで、たいていは生活習慣や排便習慣、食習慣を改善することで治るということです。ただ、痔ろうの場合は自然治癒が難しいため、手術が必要となります。
便秘でお腹が痛い場合その1・腸閉塞
便秘でお腹が痛い時に考えられる疾患の1つに腸閉塞があります。特にお年寄りの場合、便秘が続くことによって腸閉塞を起こす確率が高くなるとされています。
腸閉塞とは
腸閉塞は漢字からも分かるように、腸が塞がって便の通り道が狭くなる疾患のことを言います。イレウスと呼ばれることもあります。
腸閉塞を起こすと、消化管内に大量の消化物がたまることとなります。溜まった消化物や便からは、有害なガスが発生するため、腹痛や嘔吐といった症状が現れることとなります。
腸閉塞の原因
腸閉そくの原因としては、腸内にみられる炎症や異物、悪性新生物(がん)などによって便の通り道が狭くなるということがあげられており、そのような腸閉塞のことを「機械的イレウス」と呼んでいます。
また、開腹手術をなどが原因となって、腸管が麻痺することで腸の蠕動(ぜんどう)が弱くなり、結果として腸閉塞になることもあります。そのようなタイプの腸閉塞のことを「麻痺性イレウス」と呼んでいます。
腸閉塞の治療法
軽度の腸閉そくの場合は保存療法と言って、手術などをおこなわずに治療することとなります。基本的な治療法は絶食と補水です。
食事や飲水を中止することによって腸を休めつつ、静脈注射によって水分を補い、鼻から腸まで管を通して内容物を取り除き、腸の内圧を下げるといったことがおこなわれます。
保存療法をおこなっても改善がみられない場合や、重度の腸閉塞の場合は手術がおこなわれることとなります。最近では腹腔鏡を利用した手術も導入されつつあるということです。
がんにともなって腸閉塞がみられる場合には、がんがある部分の腸を切除し、残った部分をつなぎ合わせるといった処置がおこなわれます。腸管が癒着している場合には、癒着した部分を剥がす処置が取られます。
便秘でお腹が痛い場合その2・過敏性腸症候群
便秘にともなってお腹が痛いというような場合、過敏性腸症候群が疑われることもあります。特に女性の場合、過敏性腸症候群によって便秘になるケースが多いとされています。
過敏性腸症候群とは
過敏性腸症候群は、画像診断などではなにも異常がみられないにもかかわらず、便秘や下痢を繰り返したり、腹痛を起こしたりする疾患です。
ほとんどの場合、命にかかわるようなことはありませんが、いつでもトイレを探してしまうとか、長時間電車に乗るのが不安などといったことが起こるため、生活の質(Q・O・L)を著しく低下させてしまいます。
また、自己判断で便秘薬や下痢止めの薬などを服用すると、かえって過敏性腸症候群の症状が悪化することもあります。
過敏性腸症候群の判断基準としては、過去3ヶ月の間に、1ヶ月につき3日以上の腹痛がおこっていること、また、その腹痛が排便をすることで消失すること、排便回数は便の形状に変化がみられることなどがあげられています。
過敏性腸症候群には下痢型と便秘型、下痢と便秘を繰り返す交代型の3タイプがあり、どちらかというと男性は下痢型が多く、女性には便秘型が多くみられるということです。
過敏性腸症候群の原因
過敏性腸症候群の原因は、現代医学をもってしてもハッキリとしたことが分かっていません。遺伝や腸内に起こる炎症、食べ物や飲み物、ウイルスや細菌など、さまざまな要因が絡み合って発症すると考えられています。
また、細菌の研究によって、ストレスが昂じると過敏性腸症候群の症状もひどくなることが分かっており、ストレスによって自律神経のバランスが乱れることが、過敏性腸症候群のリスクファクターとなっているのではないかと考えられるようになってきています。
過敏性腸症候群の治療法
過敏性腸症候群の治療法としては、薬物療法や生活指導、漢方のよる治療などがあげられます。過敏性腸症候群の症状には便秘と下痢といった相反するものがあるため、症状に応じた治療薬が使用されることとなります。
また、食習慣や生活習慣が乱れているような場合、過敏性腸症候群のリスクファクターのなるような習慣を改善していくこととなります。
ストレス状態が継続しているようであれば、お風呂でゆっくりと温まって副交感神経の働きを高め、睡眠の質を向上させることが重要です。
食事の栄養バランスが乱れているのであれば、栄養バランスに配慮した献立にすることも提案されます。腸内環境を改善するのに効果的な食物繊維を摂取するのも必要となります。
過敏性腸症候群によって下痢を起こしている場合、下痢がつらいからと水分を摂らないのは逆効果です。脱水症状を起こさないためにも、下痢の場合も水分補給をおこなうことが重要です。
便秘でお腹が痛い場合その3・大腸がん
便秘にともなって腹痛がみられるような場合、もしかしたら大腸がんを発症しているかもしれません。
大腸がんとは
大腸がんはその名の通り、大腸にできるがん(悪性新生物)のことを言います。日本人の死因ナンバー1はがんですが、特に女性の場合、がんによる死亡率のトップが大腸癌となっています。
私たちが食べたものは、口の中で唾液に含まれる消化酵素と混ざり、消化されやすい状態になって胃へと送られます。
胃では胃酸によって食べたものの消化をおこない、ドロドロの状態にして十二指腸へと送ります。十二指腸ではさらに、胆汁や膵液などによって食べたものがドロドロに溶かされます。
ドロドロに溶かされた食べ物は小腸へと送られます。小腸ではドロドロになった食べものから、栄養素の吸収がおこなわれます。
栄養素の吸収が終わると、ドロドロになった消化物は大腸へと送られます。大腸は盲腸から始まって、上行結腸と横行結腸、下行結腸、S上結腸、直腸へと移行し、肛門へとつながっていきます。
大腸がんは、大腸内に発生したがんのことを言いますが、結腸にみられるがんのことを「結腸がん」、直腸にみられるがんを「直腸がん」と呼んでいます。
大腸がんがもっとも多くみられる場所はS状結腸と直腸で、大腸がん全体のおゆおそ70%を占めるとされています。
早期の大腸がんの場合、特に目立った症状はみられません。特に、上行結腸や横行結腸に大腸がんができた場合、出血をしても組織内に血液が吸収されるため、発見が遅れる傾向があります。
大腸がんにともなう自覚症状としては、腹痛やおなかが張る感じ、血便や貧血、下痢や便秘、原因不明の体重減少などがあげられています。
大腸がんの原因
大腸がんの原因としては、欧米化した食習慣があげられています。日本人はもともと玄米を中心として、魚や海藻、きのこや野菜をバランスよく食べていました。
ところが、高度経済成長期を迎えると、カロリーの高いものや脂っこい食事が好まれるようになってきました。特に、食肉の消費量がここ60年ほどで10倍にもなっているということです。
動物性の脂肪を消化すると、発がん性の物質が産生され、それによって大腸の粘膜に悪性新生物=がんができてしまうと考えられているのです。
大腸がんの治療法
大腸がんの治療法としては、手術によってがんを取り除くといったことがあげられます。最近では内視鏡による手術をおこなうことが多く、開腹しての手術例は減少してきています。
特に、早期の大腸がんの場合、およそ6割程度が、内視鏡下での手術が可能となっています。ただし、がんの程度によっては開腹しての手術が選択されることもあります。
思いもよらない疾患の場合もある
便秘でお腹やお尻が痛いときに考えられる代表的な病気について見てきましたが、いかがだったでしょうか。たかが便秘と侮っていると、思いもよらぬ疾患を発症することもあります。
便秘にともなって、お腹やお尻に痛みがあるような場合は、自己判断をせず病院を受診するようにしましょう。また、定期的な健康診断を欠かさないようにしてくださいね。