便秘で死亡することがある!?便秘のリスクを紹介します!

便秘が何日も続くと不愉快なものですが、不愉快なだけでなく身体に重大な影響を及ぼすこともあります。その最大のものが命に対する危険性ですが、実際に便秘が引き金となって死亡するという事例もあります。今回はそのような事例を紹介するとともに、便秘のリスクについて考察します。

たかが便秘、されど便秘。便秘を放置していると、さまざまな健康上のトラブルを招いてしまいます。まれなケースですが、便秘が原因で死亡するというケースもあるそうです。今回は、実際に合った便秘による死亡例を紹介するとともに、便秘を放置することによって起こりうるリスクについて解説したいと思います。

便秘による死亡例その1・イレウス

腰とお腹を手で押さえている女性

便秘が原因となって死亡した例としては、便が腸内に大量に詰まることによって腸閉塞を起こし、そのショックによって死亡するといったことがあげられます。

イレウスによる死亡事例

1998年に、奈良県に住む21歳の女性が、便秘が原因とみられる腸閉塞(イレウス)を発症し、トイレの前で倒れている状態で発見され、まもなく死亡していることが確認されたということです。

なくなった女性の身長は158cmで体重が47.6kg、BMI(肥満度)にして19.06ということなので、どちらかというと痩せ型の女性であったということです。

ところが、死亡した際の解剖の結果、腸内にはなんと6.7gにも及ぶ大量の便が詰まっていたということです。

小腸からつながる大腸は、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸を経て、直腸から肛門へと至ります。死亡した女性の直腸には、コンクリートのように全く水分を含まない便が、10cmに渡って詰まっていたということです。

この事例の場合は若い女性に起こったことですが、老化によって腸閉塞を起こす人の多くに、便秘がみられるということです。

イレウスによる死亡の原因

女性がなくなった直接的な原因は、腹痛などからくるショック症状であったと考えられていますが、より重要なことは、女性が便秘薬を継続的に服用していたということです。

亡くなる1年以上も前から市販の便秘薬を服用していたということから、おそらく慢性的な便秘に悩まされていたのだと思われます。ただ、便秘薬を継続的に服用すると、身体に耐性ができてしまい、便秘薬が効かなくなってしまうのです。

便秘による死亡例その2・分娩時

妊娠中のお腹に優しく手を回す女性

便秘が引き金となって死亡した例としては、分娩時の便秘による死亡例があげられます。では、どのような事例があったのでしょうか。

便秘による分娩時の死亡事例

2016年の10月、イギリスはロンドンに住んでいた26歳の妊婦さんが、便秘が原因と思われる難産によって大量の出血をし、多臓器不全を起こして死亡するというニュースがありました。

腸内に大量に詰まった便によって産道が狭くなったため、赤ちゃんも子宮後口をなかなか抜けられず、酸欠状態に陥り、脳に重大なダメージを負ってしまったということです。

便秘による分娩時の死亡原因

病院では女性の死因を肺血栓症(血の塊が肺に詰まる疾患)だとしていますが、妊娠前の検査で大腸内に便が溜まっていることを確認していたにもかかわらず、適切な措置が講じられなかったことが問題だったのではないかとされています。

女性が巨大結腸症であったことを関係者が知っていれば、女性が死亡に至るようなことはなかったであろうと考えられています。

便秘による死亡例その3・心臓麻痺

急に心臓が苦しくなる

便秘による死亡例としては、心臓麻痺の事例もあります。では、どのような事例なのかについて見ていきましょう。

便秘による心臓麻痺の事例

2013年の2月に、イギリスのコーンウォール州トゥルーロ出身の、16歳の少女が、便秘が原因とみられる心臓麻痺によって死亡したということです。

便秘による心臓麻痺の原因

女性の直接の死因は心臓麻痺ですが、そこに至る原因として、深刻な便秘が関与していたと考えられています。

女性は小さい頃から慢性的な便秘に悩まされており、数週間に1度しか便通がなく、死亡した時には8週間に渡って便通がない状態だったということです。

8週間にも及ぶ便秘の結果として、腐った便から大量の有害ガスが発生し、それによって大腸を始め、臓器が尽く膨張し、結果として心臓麻痺に至ったと考えられているのです。

便秘を放置することによるリスク

お尻を手で押さえている女性

以上、便秘による死亡例について見てきましたが、便秘が原因となって死亡するのは極めてまれなケースではあります。ただ、便秘を放置することによって、場合によってはその他の疾患を併発することもあります。では、どのような疾患を併発する可能性があるのでしょうか。

リスク①痔

意外にも女性に多いのが痔疾患ですが、その理由の1つとして便秘があげられています。無理に便を出そうといきむことから、痔を発症するリスクが高くなるとされています。

また、痔を病院で見てもらうのが恥ずかしいからと病院の受診を躊躇しているうちに、痔が悪化してしまうケースもよく見られます。

リスク②腸穿孔

腸穿孔は簡単にいうと腸壁に穴が開くことを意味します。悪性腫瘍や外傷、虫垂炎によって発症するリスクが高まるほか、ひどい便秘の場合にみられることもあるということです。

腸穿孔を発症すると腹膜炎に移行する可能性が高くなり、のたうちまわるほどの激痛に襲われるということです。腹膜炎を発症した場合、原則として手術をおこなうこととなります。手術が遅れれば遅れるほど、死亡するリスクも高くなるということです。

リスク③逆流性食道炎

逆流性食道炎は、胃の内容物が逆流して食道へと送られる疾患のことを言います。食道には胃液をガードする働きがないため、食道に糜爛が見られたり、腫瘍が見られたりするようになります。

逆流性食道炎というと高齢者にみられる疾患のようなイメージがあるかもしれませんが、最近は若い人の逆流性食道炎も増えているということです。その原因として、便秘による腹圧の上昇があげられているのです。

便秘薬のリスクについて

Middleを指しているriskの針

便秘を治療する際には、食習慣や生活習慣の改善をおこなうほか、便秘薬の服用をおこなうのが一般的です。ただ、便秘薬も医薬品である以上、副作用のリスクは避けられません。以下に、主な便秘薬とその副作用について紹介しておきたいと思います。

浸透圧性下剤のリスク

浸透圧性下剤には、腸内での浸透圧を調整することで、便意を促したり、排便を容易にしたりする働きがあります。主な便秘薬としては、膨張性下剤、塩類下剤、糖類下剤、浸潤性下剤などがあります。

膨張性下剤

膨張性下剤はCMC(カルボキシメチルセルロースナトリウム)を主な成分として作られた便秘薬であり、直腸性便秘や弛緩性便秘、痔を持っている人の便秘の治療などに用いられます。

膨張性下剤にはその名の通り、腸管内で水分を吸収して膨張するという特徴があり、それによって便意を起こして排便を促すことを目的としています。

服用してから半日~1日程度で効果が現れるとされており、規則正しい排便リズムが身につくまで、服用を続けることが推奨されています。

浸透圧性下剤は消化管内で吸収されることがないため、習慣性になりにくいというメリットがあり、また、便を軟らかくする働きがあることから、痔疾患を有している人でも排便時の痛みをともなわずに排便できるというメリットもあります。

ただし、便が固くなりすぎている人や、腸の狭窄がある人の服用は禁止されています。また、副作用として、お腹が張った感じや胸やけ、嘔吐といったことがあげられています。

塩類下剤

塩類下剤は酸化マグネシウムや硫酸マグネシウムを主原料として配合しており、機能性便秘だけでなく、器質性の便秘や食中毒、薬物中毒などにともなう腸内の有害物質を排出する目的で利用されています。

塩類下剤は、腸管内にある便の水分を保つことによって便を排便しやすい状態にするとともに、腸の蠕動を活発にすることで、排便を促す働きを持っています。

塩類下剤をたくさんの水とともに服用することによって、極めて短い時間(1時間から2時間程度)で便意が起こるということです。また、塩類下剤は腸管に吸収されにくいため、習慣性になりにくいというメリットもあります。

副作用としては、胸やけや食欲の低下、吐き気などがあげられています。また、腎機能障害を持っている人は高マグネシウム血症になりやすいとされています。高マグネシウム血症になった場合、脱力感などがみられるということです。

糖類下剤

糖類は腸管に吸収されるという特徴があるのですが、糖類下剤は腸管に吸収されないタイプの下剤を用いて、浸透圧による下痢を起こさせることによって、便秘の解消を目指します。

糖類下剤にはD-ソルビトールやラクツロースなどを主原料として含む下剤があります。人工甘味料として用いられることもあることから、その名前を聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

D-ソルビトールは、胃の造影検査のときに服用するバリウムによる便秘を予防する目的で利用されますが、大量に服用した場合、下痢やおなら、お腹の張った感じや腹痛の現れることがあります。

ラクツロースはその浸透圧作用によって便を軟らかくし、排便しやすい状態にしてくれます。副作用としては、胸やけや吐き気、嘔吐や腹痛、食欲の低下やお腹が張るなどといったことがあげられています。

浸潤性下剤

浸潤性下剤に含まれているジオクチルソジウムスルホサクシネートには、便を軟らかくして、排便しやすい状態にしてくれる働きがあります。

また、浸潤性下剤に含まれているカサンスラノールには、腸の蠕動を活発にして、便意を促進させる働きがあります。

直腸性の便秘や弛緩性の便秘を解消する目的で用いられるほか、便を軟らかくしてくれることから、痔疾患を持っている人の便秘解消にも役立っています。

副作用としては、お腹の痛みや張り感、口の渇き、胸やけや吐き気などがあげられています。また、腸の通り道が狭くなっている人や授乳中の女性、便が固くなりすぎているタイプの便秘の人は服用が禁止されています。

刺激性下剤のリスク

刺激性下剤は、浸透圧性下剤とは異なり、腸管に刺激を与えて便意を起こすことによって、便秘の解消を目的としている便秘薬です。主な刺激性下剤には、小腸刺激剤、大腸刺激剤、直腸刺激剤があります。

小腸刺激剤

小腸刺激剤は、便を早く外に出したいときに用いられる便秘薬で、服用してから2時間程度で効果が現れるという特徴があります。ヒマシ油を原料としており、小腸の運動を活発にする働きがあるとされています。

副作用としては、胸やけや吐き気、腹痛や食欲の低下があるほか、連続して使用すると栄養失調になることがあるということです。

また、便秘にともなって腹膜炎を併発している人や、急性の虫垂炎がある人、便秘の中でもけいれん性便秘の人は使用が禁止されています。他にも、妊娠中や月経時に使用すると大量に出血する恐れがあることから、使用を控えた方がよいとされています。

大腸刺激剤

大腸刺激剤はその名の通り大腸に刺激を与える働きを持つ医薬品で、大きく分けるとジフェニール誘導体とアントラキノン誘導体に分類されます。

いずれも大腸の粘膜を刺激することによって蠕動を活発化させ、便意を起こさせることを目的としています。主に弛緩性便秘や直腸性便秘の改善を目的として用いられます。

ジフェニール誘導体は便秘の程度に応じて服用する量を加減できるため、習慣性になることが少なく、妊婦さんや赤ちゃんであっても安心して利用できるということです。

一方、アロエやセンナ、ダイオウなどを主原料とするアントラキノン誘導体の方には、続けて利用することによって、身体に耐性ができてしまい、徐々に効果が表れにくくなるという特徴があります。

また、アントラキノン誘導体の中でもアロエを妊婦さんが服用した場合、お腹の赤ちゃんが脱糞して子宮内を汚してしまう恐れがあることから、妊婦さんの服用は禁止されています。

直腸刺激剤

直腸刺激剤は、いわゆる「坐薬」と呼ばれるもので、炭酸水素ナトリウムを配合した坐薬や、ビサコジル坐薬などがあります。副作用としては、残便感や腹痛などがあげられています。

浣腸剤

便秘薬としては浣腸剤もあげられます。主に直腸性便秘や弛緩性便秘に用いられますが、頻繁に用いると習慣化してしまうため注意が必要とされています。

専門家にみてもらうことをおすすめします

今回の記事では、便秘による死亡例と便秘の危険性、また、便秘薬を服用するリスクについて解説してきました。便秘による死亡例はそれほど多くありませんが、便秘によってその他の疾患になるリスクが高くなるのは間違いありません。

また、便秘薬の種類によってはかえって便秘が悪化したり、その他の弊害が現れたりする可能性もあります。たかが便秘だと侮らず、まずは自分がどのタイプの便秘なのか、専門家に診てもらうことが大事だと言えそうです。