便秘に悩む女性は多いですが、中には薬に頼らずに便秘を改善したいという方もいらっしゃることと思います。そこで今回は、マッサージによって便秘を改善する方法について紹介したいと思います。便秘薬のリスクも併せて解説します。
何日も便通がないと、身体的なストレスだけでなく、精神的なストレスも増大してしまいますよね。「便秘を解消したい」でも「なるべく薬には頼りたくない」というような場合、マッサージをして便秘を改善するという手があります。今回は、便秘をマッサージで改善する方法と、便秘薬のリスクについて紹介したと思います。
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便秘を改善するには腸の仕組みをしろう!
便秘を改善するマッサージ法について紹介する前に、まずは、食べたものを吸収する腸にはどのようは働きがあるのかについて知っておきましょう。腸の働きを知ることで、より根本的に便秘を改善することが可能となりますよ。
便の作られ方
私たちが口から食べたものは、胃で消化されて腸を通って便になるとなんとなくイメージされている方も多いことと思います。では、実際に便はどのようにして作られているのでしょうか。
私たちが食べたものは、まず口の中で咀嚼されます。唾液の中には消化酵素が含まれているので、しっかりと噛むことによって唾液と食べ物とを混ぜ合わせ、食道を通って胃の中へ送り、胃での消化がおこなわれるという訳なのです。
胃では、胃の収縮運動と胃酸との働きによって、咀嚼された食べ物がさらに消化され、ドロドロの状態になって十二指腸へと送られることとなります。胃に食べ物が留まる時間は、およそ3時間から4時間程度だとされています。
胃でドロドロに溶かされた食べ物は、十二指腸に送られて、膵液や胆汁、酵素などによってさらにドロドロとした状態に変化します。
その状態で食べたものは小腸へと送られるのです。小腸では、食べたものから栄養素を吸収するということがおこなわれます。食べ物が小腸を通過するのに要する時間は、およそ8時間だとされています。
便秘に関して私たちが「腸」といったとき、それは大腸のことを指していることが多いようです。腸内細菌などという場合も、大腸にいる細菌のことを意味していますが、小腸にも食べ物から栄養素を吸収するという大事な働きがあります。
腸の働き
便秘は腸の働きが低下することによって起こると言われますが、その場合の「腸」は大腸のことを指すケースがほとんどのように思われます。では、大腸や小腸にはどのような働きがあるのでしょうか。
蠕動(ぜんどう)
大腸には蠕動といって、胃や十二指腸でドロドロにされ、小腸で栄養素を吸収された食べ物を、肛門へと送る働きがあります。
蠕動は、腸の入り口の方が狭くなり、直腸や肛門の方が広くなるという運動を繰り返すことを意味しており、それによって少しずつ食べたものが肛門の方へと送られることとなります。
分節運動
腸には分節運動といって、食べたものと消化液とを混ぜ合わせる働きもあります。腸が収縮と弛緩を繰り返すことで腸の中にある食べ物を分解しやすくします。
振り子運動
振り子運動とは、腸管がアコーディオンの蛇腹のように伸び縮みすることによって、食べたものと消化液とを混ぜ合わせながら肛門の方へと送る運動のことを言います。
これらの運動によって、食べたものは肛門のすぐ手前にある直腸へと送られます。食べたものが直腸へと送られるのには、およそ24時間から72時間かかるとされています。
直腸に送られた食べ物は便となって、脳からの指令を待つこととなります。便意を感じると脳から「排便せよ」とのメッセージが送られ、排便することとなります。それまでは、肛門括約筋の働きによって、排便が制御されているのです。
便秘解消マッサージその1・「の」の字マッサージ
ここまでの説明で、簡単にではありますが、便の作られ方について理解して頂けたことと思います。それではいよいよ、便秘を改善するためのマッサージ法について見ていきたいと思います。まずは、基本のマッサージとも言える「の」の字マッサージからです。
「の」の字マッサージのやり方
「の」の字マッサージは、便秘を改善するマッサージとして基本とも言えるマッサージ法です。
- 仰向けに寝た状態で膝を立て、腰の下にクッションを入れましょう。
- その状態で、右手をグーにして左手で包み込むようにし、便の通り道をイメージして、時計回りにマッサージしましょう。
小腸から大腸へと送られた食べ物は、上行結腸から横行結腸、下行結腸からS状結腸を経て、直腸から肛門へと送られます。
便秘の場合、特に下行結腸からS状結腸、直腸にかけて便が詰まりやすいので、直腸にかけて便を送り出すようにマッサージすると良いでしょう。
ここでは寝た状態での「の」の字マッサージについて紹介しましたが、便座に腰かけた状態でおこなったり、経った状態でおこなったりすることも可能ですよ。
「の」の字マッサージ応用編
「の」の字マッサージになれたら、応用編のマッサージでさらに便秘の改善効果を高めましょう。便秘には直腸性の便秘と呼ばれるものがあります。
なんらかの原因によって便意を我慢したり、便秘薬を習慣的に用いたりすることによって、便意が現れにくくなるタイプの便秘を意味します。
直腸性の便秘になると便意が現れにくくなって、腸管内での便の滞在時間が長くなります。大腸には胃や十二指腸でドロドロにされた食べ物から、水分を吸収して便にする働きがあります。
ところが、食べたものが大腸内に長くとどまりすぎることによって、水分が吸収され過ぎてしまい、結果としてカチカチの便になってしまいます。
大腸は先程も述べたように、上行結腸から横行結腸、下行結腸からS状結腸を経て、直腸から肛門へと至ります。
特に、S状結腸という名前からも分かるように、S状結腸で大腸がカーブしているため、食べたものがつまりやすくなってしまいます。
そこで、S状結腸をマッサージすることによって、固くなった便の排出を促すことが可能になるという訳なのです。
おへその左側からやや下に行ったあたりにS状結腸があります。さきほどの「の」の字マッサージに加えて、両手の指先でS状結腸を左右に揺らすようにマッサージしてあげましょう。
便秘がひどい人の場合、溜まった便が確認できるかもしれませんが、くれぐれもあまりに強い力でマッサージすることは避けましょう。便を破壊するのではなく、あくまでも肛門の方へと送り届けるイメージでおこなうことが重要です。
「の」の字マッサージの応用編は、立った状態や座った状態ではなく、仰向けに寝て膝を立てた状態でおこなうのが効果的です。その際、お尻の下にクッションなどを入れて、腰を浮かせるとより効率よく便秘改善のマッサージをおこなうことが可能となります。
また、「の」の字マッサージの応用編をおこなう際に、テニスボールを腰の下に入れて仰向けになるのもおススメです。
腰骨と骨盤の境目には大腸愈というツボがあるので、仰向けになって刺激することによって、より効果的に便意を促すことが可能となります。
また、大腸愈には腰痛を改善したり、自律神経のバランスを整えたりする効果もあります。便秘だけでなく、腰痛に悩まされている方にもおススメですよ。
便秘解消マッサージその2・小腸のマッサージ
小腸のマッサージも、便秘解消に効果的です。小腸にはドロドロに消化された食べ物から栄養素を吸収し、大腸へと送りだす働きがあります。そのため、小腸をマッサージすることで、それらの機能を高める効果が期待できるのです。
小腸マッサージのやり方
小腸のマッサージをする際には、大腸のマッサージよりも上の位置をマッサージすることとなります。具体的にいうと、おへその周囲が小腸の位置となります。
- まず、おへその左右、指の幅2本分外側に行った両サイドを、息を吸いながら押圧(ゆっくりと押すこと)していきます。
- 人差し指から薬指の先端で押圧していきましょう。
- 次に、おへその上、指の幅1本分上に行った場所と、おへその下、指2本分下に行った場所を、息を吐きながら押圧していきます。
- 息を吸うときには5秒間かけて、息を吐くときには10秒間かけて押圧をおこないます。くれぐれも痛いほど押圧しないように気をつけてくださいね。
小腸マッサージ応用編
小腸マッサージの応用編は、簡単にいうとおへその周りを時計回りにマッサージすることを意味します。
おへその右下あたりからおへその右側、おへその右斜め上を通っておへその上部へ至り、そこからおへその左上から左側、おへその左下からおへその下部へとマッサージしていきます。
先程の小腸マッサージと同様、痛くない程度にリラックスしておこないましょう。マッサージをすることでリラックスすると、自律神経のうち副交感神経が優位になります。
副交感神経は私たちの身体のブレーキを司っており、副交感神経が優位になることで血管が拡張し、血液の循環が促進されます。
女性に便秘が多い理由の1つとして、血液の循環が悪いとい事があげられています。そのため、マッサージによって副交感神経が優位になると、便秘の解消にも効果的だという訳なのです。
便秘解消マッサージその3・大腸マッサージ
便秘解消のマッサージには、大腸マッサージという方法もあります。便秘とは大腸内に便が留まることですから、大腸マッサージをおこなうことは、まさに便秘の解消にうってつけと言えるのです。
大腸マッサージのやり方
大腸は先程も触れたように、上行結腸から横行結腸、下行結腸からS状結腸を経て、直腸から肛門へと至ります。
基本の「の」の字マッサージで腸の場所を理解したら、より効果的に便秘を解消できる大腸マッサージに取り組んでみましょう。
- まず、右肩を上にした状態で横になります。
- 小腸から送られた便はまず上行結腸を通って横行結腸へと送られるため、上行結腸をマッサージして、横行結腸へと送られやすくしてあげるのです。
- 右肩を上にして横になったら、右の骨盤辺りからわき腹にかけて、少しずつ場所をずらしながら手でつまむようにして上行結腸のマッサージをおこないましょう。
大腸マッサージ応用編
明らかに便の滞りが左の下腹部に感じられるような場合は、先程とは反対に左肩を下にして横向きになります。
その状態で、おへその左側のわき腹から、左の骨盤の方へ少しずつ移動しながら、手でつまむようにして下行結腸やS状結腸のマッサージをおこないましょう。
便秘薬のリスク
便秘の際には、生活習慣や食習慣の改善とともに、便秘薬を利用することも一般的です。ただ、便秘薬を常用することにはリスクも付きまといます。では、どのようなリスクがあるのでしょうか。
依存してしまう
便秘薬を常用するリスクとしては、便秘薬に依存してしまうということがあげられます。「便秘薬を飲めば便通が起こるからいいや」と思っていると、生活習慣や食習慣の改善をしようとしなくなってしまいます。
どのような薬もそうですが、あくまでも症状を抑えることを目的としており、症状の根本的な解決にはやはり自助努力が必要となります。
例えば、風邪を引いた時に風邪薬を飲むことはよくありますが、風邪薬には風邪を治す働きはありません。ウソだと思うなら風邪薬の箱の裏側を見てみましょう。
そこには、「風邪による諸症状の緩和」と書かれているはずです。風邪はほとんどがウィルスによって引き起こされるものであり、ウィルスに対する特効薬は現代にいたっても存在しないのです。
自然な便意がなくなる
便秘薬を常用するリスクとしては、自然な便意がなくなるということもあげられます。便秘薬を飲めばいいやと思っていると、自分で排便できるように努力しなくなってしまうという訳なのです。
下痢になる
便秘薬のリスクとしては、飲みすぎることによってかえって下痢になってしまうということもあげられます。便秘薬とは言葉を変えて言うと下剤という訳ですから、服用量をあやなると下痢をしてしまうのは必然的だということなのです。
痔になるリスクが高くなる
便秘薬を常用すると、徐々に身体に耐性ができて、便秘薬が効かなくなってきます。そのようなときに、トイレで無理にいきむことによって痔を発症するリスクが高くなってしまうのです。
意外に思われるかもしれませんが、痔を発症する女性の数は多いのです。ただ、恥ずかしがって病院を受診しない人もいるため、痔疾患を持っている女性の正確な数を把握するのは困難となっています。
便秘解消マッサージに取り組んで下さい
便秘を改善するマッサージについて紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。いずれもとても簡単なマッサージなので、お風呂上がりなどにぜひ取り組んで頂きたいものです。
便秘はありふれた現象であるため、あまり深刻に考えていない方も多いと思います。ただ、便秘の種類によっては重大な合併症を招く可能性もあります。あまり長く続くような場合には、一度、専門家に診てもらうようにしてくださいね。