出産と肥満に危険性!肥満女性から出産に対して心配の声が

肥満になってしまうと、妊娠や出産に対するリスクも上昇します。では、肥満によってどのようなリスクがもたらされるのでしょう。また、肥満を改善するためにはどうしたらよいのでしょう。

これから出産を考えていらっしゃる方も多いと思いますが、実は、肥満は妊娠中や出産時にさまざまなリスクを生じる可能性があります。

今回の記事では、肥満によって妊娠中や出産時にどのようなリスクがもたらされるのかを解説するとともに、肥満の改善法についても紹介していきたいと思います。

肥満女性から出産に対して心配の声が

妊娠婦

「赤ちゃんの分もと思ってたくさん食べていたら肥満になってしまった!」という声はよく聞きますが、実は出産にとって肥満は多くの悪影響があります。痩せすぎも肥満も出産に影響があるので体重管理が難しいところですが、肥満になると出産が危ないものになるため病院からも厳しい指導が入ります。

肥満で出産すると陣痛が弱まるだけではなく、子宮口が十分開かずに赤ちゃんが出られなくなる危険があります。母子ともに危険になると、陣痛促進剤で無理に陣痛を起こしたり、帝王切開になったりします。

出産後の出血が止まりにくい「弛緩(しかん)出血」を起こす危険もありますし、会陰を切開した場合傷が治りにくくなります。このように、重大な症状や産後の症状など肥満が出産に与える影響は大きいです。

肥満による弊害

お腹

肥満とは単に太った状態を意味するものですが、肥満にともなってなんらかの健康上のトラブルが発生した場合、肥満症として病院で治療をおこなう必要が出てきます。では、肥満によってどのような弊害が現れるのでしょうか。

生活習慣病など

肥満の測定法は全世界で共通しており、BMI(ボディ・マス・インデックス)と呼ばれる指標を用いています。これは、体脂肪率の正確な測定が、医学的にも困難なことに由来しています。

BMIの数値は、[体重(kg)÷身長(m)の2乗]で求められます。この計算式によって求められた数値が25を超えると肥満、35を超えると重度の肥満に分類されます。

たとえば、身長が160cmの人が肥満と認定されるのは、[1.6×1.6×25]=「64」となることから、身長が160cmの人は、体重が64kg以上で肥満ということになります。

なぜBMIが25以上で肥満に認定されるかというと、日本人は体質的に、BMIが25を超えるあたり方生活習慣病などになるリスクが高くなるとされているからです。

肥満が原因として起こる可能性の高くなる生活習慣病としては、高血圧や脂質異常症(かつての高脂血症)、高尿酸血症や痛風などがあげられます。

その他にも、肥満による腎臓病や心筋梗塞、女性の月経異常や妊娠中の合併症、脳梗塞や脂肪肝、睡眠時無呼吸症候群や肥満低換気症候群を発症するリスクが高くなるということです。

整形外科的疾患

肥満によるリスクは、内科系の疾患の可能性が増大するだけではありません。肥満をすれば整形外科的な疾患を発症するリスクも増大します

肥満になると単純に考えて体重が重くなるわけですから、腰やひざ、股関節といった部分への負担が増大します。それによって、腰痛やひざ痛、股関節痛などの整形外科的疾患を発症するリスクも増大するのです。

肥満にともなう妊娠中のトラブル

妊娠婦が受診してる

これから出産を考えている女性は、なるべく早い段階から肥満の改善をおこなっておいた方がよいとされています。なぜなら、肥満をしていると出産時だけでなく、妊娠中にもさまざまなトラブルの起こるリスクがあるからです。では、肥満になると妊娠中にどのようなトラブルの起こる可能性があるのでしょう。

妊娠糖尿病

肥満にともなう妊娠中のトラブルとしては、妊娠糖尿病があげられます。妊娠糖尿病は、妊娠中に検査をして初めて発見された「糖代謝の異常」のことです。

元から糖尿病を抱えていた人が妊娠した場合は糖尿病合併妊娠と呼ばれ、妊娠糖尿病とは区別されます。糖尿病合併妊娠は妊娠糖尿病よりも重度の疾患なので、より慎重に対処する必要があります。

妊婦さんの胎盤には、血糖値を上げるホルモンを出しているので、もともと糖尿病になるリスクファクター(危険因子)を持っていた人が妊娠すると、血糖値の上昇を抑えきれず、妊娠糖尿病になってしまう可能性があるということです。

その他、妊娠糖尿病になるリスクファクターとしては、肥満をしていること、家族に糖尿病の人がいること、高齢出産であること、妊娠高血圧症を合併していることなどがあげられます。

妊娠糖尿病になると、早産や流産の可能性が高まるほか、胎児の血糖値も上昇するため、巨大児や奇形児の生まれる可能性が増すということです。

妊娠糖尿病の治療は、主に食事療法と運動療法を中心としておこなわれます。それでも血糖値が正常化しないような場合は、インスリン療法がおこなわれることもあります。

妊娠高血圧症候群

肥満にともなう妊娠中のトラブルとしては、妊娠高血圧症候群もあげられます。妊娠高血圧症候群はかつて「妊娠中毒」と呼ばれていましたが、胎児や赤ちゃんに重大な影響を及ぼすのは妊婦さんの高血圧であることが分かってきたため、妊娠高血圧症候群と呼ばれるようになってきています。

妊娠高血圧症候群になってしまう原因は、現代医学をもってしてもよく分かっていません。ただ、妊娠高血圧症候群になりやすい人としては、肥満のほか、高齢出産の人や初産の人、血縁者に妊娠高血圧症候群になったことがある人などがあげられています。

妊娠高血圧症候群を発症すると、子癇と呼ばれるけいれん発作が起きたり、出産の時期がきていないのに胎盤がはがれおちてしまったり、多臓器不全を起こしたりする可能性があります。

とは言うものの、妊娠高血圧症候群の原因は分かっていないので、効果的な予防法はないというのが現状です。少しでも異変を感じたら、ただちにかかりつけの医師に相談するようにしましょう。

流産・早産

およそ25,000人を対象とした統計によると、正常体重の人の流産率が10.7%だったのに対し、BMIが25から29の軽度肥満の場合、流産率が11.8%に、BMIが30以上の肥満の場合、流産率が13.6%に上昇したということです。また、100万人以上を対象とした統計から、早産率もやや上昇することが分かっているそうです。

肥満にともなう出産時のトラブル

妊娠婦

肥満の場合、妊娠中だけでなく、出産時にもトラブルの発生することがあります。では、どのようなトラブルが考えられるのでしょうか。

難産

肥満にともなって妊娠糖尿病を発症したような場合、お腹の赤ちゃんが大きくなる傾向があります。日本人の場合、4000g以上の赤ちゃんが生まれるのは全体の1%前後だといわれています。

赤ちゃんが大きくなりすぎてしまうと、肩甲難産といって、赤ちゃんの頭は産道から出るものの、肩のあたりで引っかかってしまうといった難産になるケースがあります。

緊急の帝王切開

肥満の場合、分娩時に陣痛促進剤を使用しなければならない確率が高くなるといわれています。また、先に述べたように、肩甲難産になる可能性もあります。

お産がなかなか進まないような場合、緊急に帝王切開に切り替えることもあります。また、重度の肥満の場合は、はじめから帝王切開で赤ちゃんをとり出すこともあります。

肥満にともなう出産後のトラブル

肥満だと、出産後にもトラブルに見舞われる確率が高くなります。では、出産後のトラブルについて見ていきましょう。

産後出血のリスクが増大

肥満をしていると、お産が済んだあとの出血量が増える可能性も高くなるということです。出血の量によっては命にかかわるため、細心の注意が必要となります。

母乳の出が悪くなる

肥満の女性の中には、おっぱいの出が悪くて授乳が上手にできない人もいます。おっぱいは血液から作られるため、肥満の場合、なかなか母乳が作られないことがあるのです。

育児中の身体への負担が増大

出産の経験がある女性ならご存知のことと思いますが、初めての育児は不慣れなこともあってとても大変です。

生まれたばかりの赤ちゃんには昼も夜もないので、おなかがすいては泣いておっぱいを求めます。そのため、お母さんは熟睡することもままなりません。

3ヶ月ほどして少しずつ朝晩のリズムが生まれてきたかなと思ったら、今度は後追いが始まります。お母さんの姿が少しでも見えなくなろうものなら、激しく泣いてお母さんに追いすがってきます。

最近では育メンなる言葉が使われるようになり、男性の中には積極的に育児に取り組んでいる人もいます。ただ、大部分の男性は育児を「手伝っている」という意識を捨てきれずにいます。

そのため、赤ちゃんと遊ぶのはお父さんの役目、大変なところだけお母さんの役目となるケースも多く、お母さんが肉体的にも精神的にも疲れてしまうこととなるのです。

それでなくても大変な育児なのに、肥満の人は、腰や膝などを痛めるリスクが高くなってしまいます。

出産するなら肥満を改善しよう!

はかり

ここまで、肥満をしている人が妊娠した場合や出産した場合のリスクについて取り上げてきました。どうやら肥満をしていて得をすることはあまりなさそうなので、出産を考えている人は、やはり肥満の改善の取り組んだ方がよさそうです。では、どのようにして肥満の改善を図ればよいのでしょう。

食習慣の見直し

肥満する原因の大部分は食習慣にあります。人間の身体は食べたものからできているのですから、あたり前といえばあたり前ですよね。

以前は、肥満の原因は食べすぎだと考えられていました。ところが、最近の研究によって、肥満の原因が「糖質の過剰摂取」であると考えられるようになってきているのです。

糖質とは炭水化物から食物繊維を抜いたもののことで、私たちの体内でインスリンによって分解され、身体や脳が活動する際のエネルギーになります。このことから、糖質(炭水化物)はエネルギー源だといわれるのです。

ところが、糖質の摂取量があまりにも多かったり、食後の血糖値が急激に上昇したりすると、インスリンによる糖質の分解が追い付かなくなってしまうのです。

インスリンによって分解しきれなかった糖質は、緊急時に使うための燃料として、細胞内にとどめ置かれることとなります。その正体こそが体脂肪であり、この一連の流れが肥満になってしまうメカニズムなのです。

糖質制限に関してはエネルギー不足になるという否定的な見解もありますが、現代人は一般的に、糖質を過剰に摂取している傾向があります。

糖質をまったく摂らないことはもちろん問題ですが、摂り過ぎている糖質の摂取量を減らす程度であれば特に問題はありません。

運動習慣の見直し

肥満だけど運動が大好きというのはまれなケースだと思います。肥満の人の多くは、運動不足であったり、身体を動かすことを面倒くさがったりする傾向があります。

それでなくても、私たちの基礎代謝は10代後半をピークに、減少の一途をたどります。学生のときは身体を動かしているからまだいいものの、社会人になるとよほど気をつけない限り運動不足になってしまいます。

肥満を改善するためには、なんと言っても体脂肪を減らさなければなりません。運動によって体脂肪を減らすのであれば、有酸素運動がもっとも効率的です。

有酸素運動とは、ウォーキングやジョギングのように、低負荷の運動を長時間おこなうタイプの運動のことを言います。

有酸素運動を介してから20分ほどすると、体脂肪の燃焼が始まるとされています。有酸素運動の効率を上げるには、身体のエネルギーがなくなりかけている夕方におこなうとよいでしょう。肥満の人がいきなり朝方に走ると、心筋梗塞を起こすリスクが高くなるので避けた方が賢明です。

考え方を変える

肥満を改善するためには、考え方を変えることも重要です。どのように考えるといいかというと、何ごとも「やらないよりはマシ」だと考えることです。

ひと駅分だけ歩いたところで意味がないとか、20分以上有酸素運動をしなければ意味がないなどと考える人もいますが、意味がないのと効果が低いのとでは意味が異なります。

確かに、有酸素運動は20分以上おこなわないと体脂肪の燃焼がおこらないとされています。ただ、1日に5分であろうが10分であろうが、歩いたのであればそれだけカロリーは消費されることとなります。

20分以上やらなければ意味がないと考えて1日に歩く時間が0分なのと、やらないよりはましだと考えて1日に5分でも10分でも歩くのと、1年間に換算すると膨大な消費カロリーの差となって表れてきます。

昨日は痩せていたのに、今朝起きてみたら肥満になっていたなどということはあり得ません。逆もまたしかりです。肥満を改善するためには、長期的な展望を持つことが重要なのです。

妊娠初期に気を付けたい葉酸の摂取

妊娠婦

体力をつけるためにやみくもに食べると肥満につながりますので、赤ちゃんの成長に欠かせない栄養を優先して摂る必要があります。

日本人の葉酸不足による先天異常は海外の8倍

葉酸とは、赤ちゃんの身体を作る大切な栄養です。葉酸の役割は細胞を増やしたり臓器を作ったりすることにあるため、「赤ちゃんのビタミン」とも呼ばれます。そのため妊娠中に葉酸が不足すると、胎児の身体を十分に形成することができず先天異常となって赤ちゃんに悪影響を与えます。

海外では葉酸の必要性が広く知られており、アメリカでは1998年に世界で初めて法律によってパンやパスタに葉酸を加えることが義務化されています。世界40か国以上でも同じように法律があります。

ですが、日本ではまだ葉酸の認知度が低いので、海外に比べて葉酸不足による先天異常が多いのが現状です。少しずつ葉酸が配合されたパンなども販売されるようになったので、これからもっと認知度は広まっていくことでしょう。

母子手帳にも書かれているくらい重要

ですが、日本でもまったく認知されていないわけではありません。徐々に葉酸を摂取する意識は高まってきており、厚生労働省も呼び掛けています。2002年から、母子手帳の「妊娠中と産後の食事」の項目には葉酸の必要性についてしっかりと明記されています。

葉酸が多く含まれる食品

野菜ならホウレンソウに多く含まれています。そのほかアスパラガスやブロッコリーなどの緑黄色野菜や、レバー・豆類・イチゴにも葉酸が含まれます。肥満になりやすいお菓子や炭水化物ではなく、これらの栄養がある食品を食べるようにしましょう。

葉酸の摂取量は、妊活中なら1日あたり400ナノグラム程度で、妊娠中なら440ナノグラムが目安となります。飲酒や避妊薬としてのピルを服用していた場合、葉酸が欠乏しやすいので積極的に摂るようにしましょう。

サプリメントで摂取することも

葉酸が足りていない妊婦さんが多いのが現状で、厚生労働省の調べによると1日に必要な葉酸の摂取量を満たしているのは妊婦さんの中でも13%程度だと言われています。ホウレンソウやレバーを積極的に食べても、実は葉酸はビタミンCなどと同じく水溶性で熱に弱いため、調理中に少しずつ失われてしまうのです。

葉酸をしっかり摂取するためには、サプリメントの力を借りることも有効な手段です。あくまでも補助として、食事で足りない葉酸を補うように摂取しましょう。

特に妊娠初期のつわりで食事をきちんと摂れない方もいらっしゃいますし、妊娠中ずっとつわりに苦しむ方もいます。これは体質によるものである程度は仕方ありませんが、食事が摂れないほどつわりがひどい人ほどサプリメントで葉酸を補って、赤ちゃんに必要な栄養が不足しないように対策する必要があります。

体内で余った葉酸は尿として排出されますが、過剰な葉酸の摂取も身体によくないので用量はしっかり守りましょう。

確実な目標を立てて肥満を改善しましょう

今回の記事では、肥満の場合の妊娠中や出産時のリスクや、肥満の改善法について解説しました。俗に「デブに至る道は楽しく、ヤセに至る道は険しい」などといわれますが、肥満の改善は一朝一夕でできるものではありません。

1ヶ月で5kg痩せるなどと無謀な目標を立てるのではなく、1ヶ月に1kg、1年間で6kg程度のダイエット目標を立てて、無理なく計画的に減量するようにしてくださいね。