股関節をストレッチすると、ダイエットしやすいなどと言われています。なぜそのようなことが可能なのでしょうか。また、ダイエットできるとすれば、どのような方法があるのでしょう。今回は、ダイエットとは何かということから紐解いて、股関節ストレッチの効果について解説します。
最近、ひそかな開脚ブームを迎えていることをご存知の方もいらっしゃるのではないでしょうか。「開脚の女王」なる女性も現れ、股関節のストレッチが注目されています。では、股関節のストレッチにはどんな効果があるのでしょう。また、ダイエットは可能なのでしょうか。今回は、股関節ストレッチの方法や効果を紹介します。
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そもそもダイエットとは?
股関節のストレッチでダイエットができるかどうかを解説する前に、そもそもダイエットとはどのようなことを意味するのかについて知っておきましょう。それによって、世間にはいかに意味のないダイエット法が氾濫しているのかについても分かると思いますよ。
ダイエット≠痩せる
ダイエットというと、どのようなことを想像するでしょうか。「食事制限によって痩せること」や「運動によって痩せること」をイメージされる方が多いのではないでしょうか。
そもそも、ダイエットには痩せるという意味がないことをご存じでしたか?なぜ日本では、ダイエット=痩せるという意味で捉えられるようになったのでしょう。
規定食
ダイエットの意味を英和辞典で調べてみると、そこには「規定食」と書かれています。規定食に関しては、生活習慣病などの患者さんのためにおこなう「食餌療法(食事療法)」をイメージしてもらうと分かりやすいのではないかと思います。
食餌療法をおこなっている人の食事は、管理栄養士さんなどによって厳しく制限されています。一般的には、カロリーの低い、栄養バランスのとれた食事であることがほとんどです。
そのような食事を継続することによって、病気の改善とともに自然と体重が減ってくることとなります。その現象面だけをみた場合、ダイエット=痩せると勘違いしてしまう訳なのです。
健康と美容のためにおこなうこと
世界保健機関(WHO)によると、ダイエットとは「健康と美容のために、食事の量をコントロールしたり、食事内容を見直したりすること」だとされています。どこにも痩せるという文言は出てきません。
食事制限によって体重が減ったとしても、それは理想体重に近づいたというだけのことです。仮に拒食症の人がダイエットをおこなえば、体重は増えることとなるのです。
そのことからも分かるように、ダイエットは原則として健康と美容のためにおこなうものです。無理な食事制限によって肌荒れを招いたり、便秘になったりするのはダイエットの本義からは外れているのです。
股関節をストレッチすることのメリット
今回のメインテーマは股関節のストレッチですが、では、股関節をストレッチすることには、どのようなメリットがあるのでしょうか。
可動域の向上
股関節のストレッチをおこなう際には、股関節周囲の筋肉の緊張を緩めることとなります。股関節は人体の中でも肩関節と並んでいろいろな方向へと動かすことのできる関節です。
そのため、股関節にはたくさんの筋肉がくっついています。それらの筋肉が緊張することによって、股関節がある方向へと動かしづらくなったり、ある方向へ動かすと痛みが生じたりすることがあります。
股関節を日頃からストレッチングしておくことによって、関節の可動域を確保することが可能となります。関節が柔らかい方が筋肉の収縮も大きくなるので、効果的にダイエットをすることが可能となります。
怪我の予防
股関節のストレッチには、怪我の予防効果もあります。スポーツ選手で股関節のストレッチをしない人はまずいません。それだけ、股関節の可動域は、パフォーマンスの向上にとって重要だからです。
股関節には、臀部の筋肉や腰とつながっている筋肉、太ももの筋肉などたくさんの筋肉が付着しています。また、さまざまな方向に動かすことが可能となっています。
ところが、股関節周囲の筋緊張によって、股関節の可動域が制限されることによって、股関節だけではなく、腰部や膝のケガをするリスクも高まってしまうのです。
柔軟性があるということは、衝撃を吸収してくれるということでもあります。下半身への衝撃を吸収する股関節のクッション機能が低下すれば、下半身を怪我するリスクが高くなってしまうのです。
姿勢改善効果
股関節のストレッチには、姿勢を改善する効果も期待できます。なぜなら、股関節は筋肉を介して腰や臀部とつながっているからです。
特に、腸腰筋という腰の骨と股関節をおなか側で結んでいる筋肉が緊張すると、上半身が前かがみになるように力が働くことで、猫背気味になってしまいます。
また、腸腰筋が緊張すると、付着している股関節を引っ張って、股関節が外旋してしまいます。その結果、足のラインがアルファベットの「O」のようになる、すなわちO脚になってしまうのです。
股関節のストレッチをおこなって腸腰筋を緩めておくことで、そのようなリスクを回避することが可能となります。
股関節のストレッチでダイエットは可能?
股関節のストレッチをおこなうことには、以上のようなさまざまなメリットがあります。では、皆さんが気になるところでもあると思いますが、股関節のストレッチによってダイエットは可能なのでしょうか。
みるみる痩せることはありません
先ほどダイエットには本来痩せるという意味がないと説明しましたが、便宜上、ここではダイエットを痩せるという意味で用いています。では、股関節のストレッチによってダイエットは可能なのでしょうか。
結論から言うと、股関節のストレッチをいくら頑張ったところで、体重が減るようなことはありません。なぜなら、ストレッチによって脂肪の燃焼は起こらないからです。
痩せる準備は整えられる
股関節のストレッチによって直接痩せるようなことはできませんが、ストレッチによって関節の可動域をアップさせておくことによって、運動効率を上げることは可能です。
また、ダイエットのために走ろうと思っても、腰痛があったら走れませんよね。そのようなときに股関節のストレッチをおこなうことで、走っても腰痛をでなくすることが可能となります。
つまり、ストレッチとはダイエットの直接的な手段ではなくて、ダイエットを補助するための手段だということが可能です。
新陳代謝の促進は可能
ストレッチに関するダイエット記事などを見ていると、ストレッチによって筋肉がゆるみ、それによって代謝が上がって痩せられると書かれていることがあります。
ただ、ストレッチによって血行がよくなることで上昇するのは新陳代謝です。体重減少に必要な基礎代謝や活動代謝が上がるようなことはありません。
新陳代謝とは古いものが新しいものへと生まれ変わることで、皮膚の生まれ変わり(ターンオーバー)や髪の毛の生まれ変わり、爪の生まれ変わりなどがそれにあたります。
ダイエットは健康と「美容」のためにおこなうものですから、その意味ではストレッチが効果的だということも可能です。
股関節ストレッチのやり方を教えて
股関節のストレッチによって体重が減ることはないと言っても、股関節の柔軟性を増しておけばさまざまな美容効果があります。では、股関節を柔らかくするのには、どのようなストレッチ方があるのでしょう。
開脚ストレッチ
最近はやりの股関節ストレッチが、開脚によるストレッチです。開脚の女王などという人も現れ、メディアを賑わせていることをご存知の方もいらっしゃることと思います。
開脚ストレッチのやり方はとても簡単で、床に座った状態で足を大きく開き、そのまま状態を前に倒して胸を床につけるだけです。ただ、その「だけ」が難しいんですよね。
いきなりペタッとつけられるような人はこの記事を読んでいないと思いますので、開脚ストレッチを成功させるための手順を紹介したいと思います。
まずは、いきなり床に座るのではなく、両足を大きく開いた状態で立ちます。ちょうど、お相撲さんが四股を踏むような姿勢で、両手を両膝の上におきます。
右手で右膝を押しながら、身体を左前方へとねじります。反対も同様におこないましょう。太ももの内側に張るような感じが見られればオーケーです。
次に、開脚交互屈伸運動をおこないます。四股を踏むようなポーズから、片方の膝を曲げて反対側の足をまっすぐ横に伸ばします。その際、つま先が上を向くようにしましょう。
それによってハムストリングス(太ももの裏側の筋肉)をストレッチングすることが可能となります。反対側も同様におこないましょう。
慣れてきたら、開脚交互屈伸運動をおこなう際に、お尻をペタンと床につけましょう。ここまで来れば、憧れの開脚運動ももうすぐできるようになりますよ。あとは床で実際に開脚運動をおこないましょう。
殿筋群のストレッチ
股関節には殿筋と呼ばれるお尻の筋肉がたくさんくっついています。そして、殿筋群が緊張することによって、股関節の可動域も小さくなってきてしまいます。
殿筋群を簡単にストレッチするには、まず仰向けに寝ます。その状態で右膝を両手で抱えるようにして胸の方へと引きつけます。その際、左肩をめがけて膝を引き付けることで、さらにストレッチ効果を増大させることが可能となります。
30秒ほどおこなったら、今度は左の膝を両手で抱えて、やはり胸の方へと引きつけましょう。3セットほどおこなうとよいでしょう。
大腿四頭筋のストレッチ
大腿四頭筋は、太ももの前側にある筋肉の総称です。ハムストリングスよりも筋力が強く、コリも出やすいので、積極的にストレッチングしておきましょう。
大腿四頭筋のストレッチをおこなうときは、まず床に足を投げ出すように座ります(長座)。その状態から片方の膝を曲げて、つま先をお尻の方へと持ってきます。
両手を後ろについて、ゆっくりと上体を後ろに傾けていきましょう。可能であれば、背中をベタッと床につけて構いません。太ももの前側にハリが感じられれば、上手にストレッチできている証拠です。
腸腰筋のストレッチ
腸腰筋のストレッチをおこなうと、O脚の改善や不良姿勢の改善、冷え症やむくみの改善、ウエストラインをキュッと細く見せる効果など、さまざまな効果が得られます。
まずは両足を軽く前後に開き、次に上体をまっすぐ下におろしていきます。その際に、上体が前後左右にぶれないように気をつけましょう。
前になった方の膝が90度、後ろになった方の膝が135度の位置で30秒停止します。前になった方の足と反対側のお腹にハリが感じられれば、上手にストレッチできている証拠です。反対側も同様におこないましょう。
股関節ストレッチの注意点
自分の可動域を意識してストレッチをすることが必要です。筋肉は伸び縮みするので伸ばしすぎたり、縮まりすぎるとケガしてしまうので実際に行う時には注意しながら行ってください。自分が心地よい、気持ち良いところで深呼吸して少しずつ可動域を広げていくことが重要です。
ダイエットの落とし穴
これからダイエットをおこなう人は、なるべく効率よく、しかも失敗しないようにダイエットをしてください。そのためには、以下のことに気をつけてくださいね。
筋力低下はリバウンドの元
痩せるためには、脂肪量の減少+筋肉量の増加(もしくは維持)が必要です。食事制限だけのダイエット法の場合、リバウンドの可能性が高くなってしまいます。筋力アップとまではいかなくても、現在ある筋肉量を維持するよう心がけましょう。
ダイエット法のウソを見抜こう!
巷にはたくさんのダイエット法が出回っていますが、その中には「トンデモダイエット法」とでもいうべきものもあります。
たとえば、めん棒を使って太ももやふくらはぎをマッサージして、脂肪燃焼やセルライトの除去をおこなうことができるなどというダイエット法があり、ご丁寧に動画で解説までしてくれています。
これなどはトンデモダイエット法の典型です。マッサージによって脂肪の燃焼など起こりませんし、そもそも医学的にセルライトなどという物質は存在しません。
情報化社会では、どの情報を選択するかという能力が要求されます。正しい情報の発信者を見つけて、効率よくダイエットしてくださいね。
股関節の柔軟性アップで痩せる準備
股関節のストレッチをおこなったからと言って、みるみる痩せるようなことはありません。ただ、股関節の柔軟性をアップさせれば、ケガの防止効果や冷え症の改善効果、姿勢の改善効果やO脚の改善効果など、さまざまなメリットが得られます。やっておいて損は全くないので、ぜひ気軽に取り組んでみてくださいね。