便秘が続くと、下腹がポッコリする以外に気になるのがおならの臭いです。会社やエレベーター、電車の中で「ヤバい…!」と冷や汗をかいたことがある方もいらっしゃるでしょう。でも、なかなか人に相談しにくい内容でもあります。
今回はそんな便秘中のおならが気になる方に向けて、なぜ臭いがきつくなるのか?どうしたら改善できるのか?に焦点をあててご紹介いたします。便秘以外のおならについて悩んでいる方は、お読みにならないでください。
CONTENTS
便秘とおならについて
まずは便秘とおならの関係について見てみましょう。
便秘とは
「最近便秘気味で…」などとよく言われますが、便秘にも定義があります。以下の2つの学会が、それぞれ便秘について定義を設けています。
日本内科学会での見解
日本内科学会の便秘の定義は以下のようになっております。
簡潔に定義すれば「排便回数の有意な減少 かつ・または 排便困難を呈する場合」と考えれば理解しやすい。前者の排便回数の減少は週3回未満の排便回数と定義される。後者の排便困難症譲渡は、「排便時の怒責」「残便感」「頻回便」「肛門の閉塞感(会陰部の違和感)」である。
日本消化器病学会の見解
日本消化器病学会の便秘の定義は以下のようになっております。
健常成人は通常1日1回の排便があるが、便秘症では排便が数日に1回程度に減少し、排便間隔不規則で便の水分含有量が低下している状態(硬便)を指しますが、明確な定義があるわけではありません。排便習慣は個人差が大きく、毎日排便があっても硬便や排便困難を感じる場合もあるし、排便が2〜3日に1回で、便が硬くても軟らかくても何の苦痛感を感じない場合もあります。
http://www.jsge.or.jp/citizens/yohgo/detail?type=zouki&pk=D57
これら2つの学会の定義をまとめると
- 毎日排便があるが残便感がある
- 以前に比べて排便の回数が減ってしまった
- 排便の間隔がばらばらで、便もコロコロしたうさぎのふんのようになっている
などが当てはまると便秘といえます。逆に2日に1回程度の排便ペースでも、便の状態が良くスッキリ感があるなら便秘とはなりません。
おならの構成
おならの具体的な構成を見てみましょう。お尻から出すガスをおならと言いますが、その約70%は窒素や炭酸ガス・酸素などの気体で、20%が血液中に合ったガスが腸壁を通って腸に出てきたものです。
そして最後の10%が、腸の中で食べ物を分解するときに発生した分解ガスです。腸内環境が悪いと、この10%に臭いの元であるインドールやスカトールといった悪臭成分が含まれるのです。
おならは誰でも出るものですから、おなら自体は悪くありません。ですが、臭いの少ない良いおならと悪臭を放つ悪いおならに分類され、便秘の時のおならは後者になります。おならは腸内環境のバロメーターの役割もありますので、臭いである程度測ることができます。
おならを我慢するとよくない
例えばエレベーターや狭い部屋の中などでおならが出そうになった時、我慢してしまう人も多いでしょう。「ぷっ」なんて音が出てしまったら…その場を凍り付かせるかもなんて思ってしまいます。我慢することでその一瞬はやり過ごせますが、実はおならを我慢するのは身体によくありません。
身体に悪いガスを排出することがおならの役割ですから、我慢し続けると有毒ガスとなって体内に溜まります。そしてそのガスは大腸におとなしく留まってくれず、血液に溶けだして再び身体に吸収されてしまうのです。
その結果、肌荒れや口臭・おならの臭いの悪化など美容や健康に悪影響を及ぼします。便秘の悪化にもつながり新陳代謝が落ち、太りやすい体質につながることさえあるのです。
便秘でおならが出る理由
便秘の時のおならは臭いのですからなるべく出したくないと思ってしまいますが、便秘になっているほうがおならが出やすいと感じたことはありませんか?実はこんな理由があるのです。
老廃物が長時間滞留=便が腐っている!?
当たり前ですが、便秘で排便がうまくいかないということは腸の中に老廃物が溜まっています。人の身体の温度によって、その老廃物はどんどん腐敗が進んでいきます。この腐敗こそが、悪臭の原因となるガスを発生させておならを増やすのです。
そしてもっと怖いことに、悪玉菌が増えると大腸がんの発症率も上がってしまいます。悪玉菌は発がん性物質さえも作ってしまうのです。
食物繊維もおならの理由
便秘解消と言えば食物繊維ですが、実はこの食物繊維もおならの原因になっています。イモ類や豆に含まれる水溶性食物繊維は、ビフィズス菌などが腸内で分解するときにガスを発生させます。ですが、このガスは二酸化炭素やメタンなどの臭いの少ないガスです。
一方で野菜などに含まれる不溶性食物繊維は、水分を吸収する働きがあり便のかさを増やす働きをしますが、摂りすぎは便秘につながることもあります。その結果、また便秘のおならに悩むことになります。
水溶性食物繊維と不溶性食物繊維は、2:1の割合で摂取することをおすすめします。そうすると、便秘解消に効果的と言えます。
便秘でのおならを改善したい
では、便秘の時のおならにどう対処したらよいのか具体的にご紹介していきます。
おならを止めるのは難しい
おならは生理現象であり誰でも出るものですから、おなら自体を止めることはほぼ無理だということをまずはご理解ください。おならは腸内のガスと思われがちですが、実は80%以上は食事などで口から入った空気なのです。
そのほか、炭酸飲料はおならを発生させやすくなります。おならが気になるときには飲まないことをおすすめします。
便秘を解消するべき
おなら自体をなくすことはできないのですから、臭いの原因となっている便秘を解消することでおならが気になりにくくなります。おならをはじめとする体臭は健康のバロメーターですから、腸内環境を整えることで臭いの元になっている悪玉菌が減少して、おならの臭いも改善します。
特に女性は腹筋が弱かったり、運動不足・女性ホルモンの影響があったりして便秘になりやすいです。次でご紹介する便秘の解消方法を参考にしてみてください。
便秘の解消方法
適度な運動
便秘の原因は、腸のぜん動運動(便を押し出す動き)の低下であることが多いです。ストレスや冷えで腸の動きが低下してしまっても、運動して外部から刺激を与えると腸の働きもよくなります。
息が上がるほど激しい運動は不要ですが、股関節周りをストレッチして筋肉をほぐしてあげたり、ヨガやウォーキングなどを取り入れてあげたりすると便秘解消に効果的です。
食生活を改善する
不規則な食生活や栄養の偏った食事は便秘を悪化させてしまいます。また、過度な食事制限をすると便そのものが作られないので、排便しにくくなります。
1日3回、野菜やフルーツも取り入れた栄養バランスの整った食事を摂ることも便秘解消に効果的です。
水分を摂る
人の身体の60%以上は水分でできていますので、水分不足はさまざまな身体の不調を引き起こします。また便秘で便が長い間腸に滞留すると、便の水分が再び体内に吸収されることでカチカチの便となり、腸の中を移動しにくくなります。
1日に1.5リットル~2リットル程度の水分を意識して摂りましょう。食事などから摂取する水分も含んでいますので、飲み物としてのむお水は1リットル程度でかまいません。こまめに摂取してみましょう。
お通じを我慢しない
会議中や人のお家にお邪魔しているとき、便意を感じてもトイレに行きにくいシーンではつい我慢してしまいますよね。ですが、お通じを我慢すると便秘が悪化してしまいます。
一定の量が溜まり排便の準備が整うと、脳から排便の信号が送られます。ですがお通じを我慢するという事はその信号を無視することになり、繰り返し我慢すると大腸は排便の信号を送らなくなってしまうのです。その結果、「直腸性便秘」という改善しにくい便秘に陥ってしまいます。
とはいっても、やはりお通じを我慢しなければならないことがあるのも事実ですよね。防ぐためには、排便のリズムを作ることがポイントです。
腸の動きが活発になる朝、寝起きにコップ1杯の水を飲み朝ご飯を食べると排便しやすくなります。朝に排便のリズムを作れたら、外出先で困ることもなくなるでしょう。
便秘でおならが溜まって苦しい時の解消法
おならが出ることも悩みですが、逆におならが出なくてお腹が張ってくるのも悩みの種です。自宅にいる時におならをまとめて出せたら、悩みも軽減しますね。以下の方法でおならを出してみてください
腸を刺激する
①ガス抜きのポーズ
-
- 仰向けになり、膝を顔に近づけて両膝を抱えます。
- 息をゆっくり吐きながら両腕の力で両膝を胸の方に引き上げ、上体も起こします。お尻を持ち上げながら太ももを下腹の方に押し付けて、ゆっくり5回ほど呼吸します。これを、何度か繰り返します。
- 両膝を抱えるのが難しい方は、片脚ずつでも効果があります。
②ガス抜き体操
-
- 両腕を組んでうつ伏せになり、腕の上にアゴを乗せます。
- 膝の下に座布団を敷いて膝は直角に曲げ、脚の裏と天井の角度が水平になるようにします。
- 1の状態から膝を曲げ、かかとでお尻を叩くようにして膝を曲げます。
- 5分~10分程度繰り返します。慣れない間は、かかとがお尻につかなくても構いません。
お腹や身体を温める
腸を始めとした内臓は、冷えれば冷えるほど機能が低下します。薄着になりやすい人は1枚カーディガンを羽織ったり、寒い時期は腹巻をしたりして身体を温めましょう。
入浴もシャワーで済ませず、なるべくゆっくりと湯船につかって身体を温めるようにします。すると腸の動きもよくなり、便秘も解消しやすくなります。
腹式呼吸
呼吸には、胸を動かす胸式(きょうしき)呼吸と、お腹部分の収縮を意識して行う腹式(ふくしき)呼吸の2種類あります。多くの女性は胸式呼吸になっていると言われていますが、健康にいいのは腹式呼吸のほうです。腸のぜん動運動を促す以外にも、自律神経を整えたりお腹周りの筋肉を鍛えたりする効果もあります。
息を吸う時にお腹を膨らませて、息を吐くときにお腹をへこませるようにします。イメージがなかなかつかめない時は、仰向けに寝ながら行うとイメージを掴みやすいです。
便秘でおならが出る時の注意点
おならを出すとき・便秘が続くときは以下の点に注意してください。
できるだけ我慢しない
便意もおならも、「出物腫れ物所嫌わず」で我慢しないに越したことはありません。ですが、ある程度対策を講じることは可能です。
まずは、会議室に入る前・人と密室でこもりきりになる直前におならを出せるだけ出しておくことです。一度腸からガスが抜けると、しばらくは波が起こりにくくなるものです。どうしても便秘が治らない場合は、前述したガス抜きポーズやガス抜き体操をして排出しておきましょう。
あとは、きつい服やベルトでお腹周りを締め付けないよう気を付けることです。腹圧(ふくあつ)を上げるとおならが出やすくなってしまいますので、ゆったりめの服がおすすめです。これらの対策をすると、精神的にも落ち着いて自律神経も整いますよ。
整腸薬などで様子を見る
便秘で悩んでいる場合はほぼ間違いなく腸内環境が悪化して、悪玉菌が大量発生しています。整腸薬には善玉菌を増やす働きがあるので、一度服用して様子を見てみましょう。
お腹のハリやガスをコントロールできるタイプのお薬がおすすめです。ですが、逆に服用することでおならの回数が増えてしまうこともあります。その人の腸内環境や体質によって効果に差がありますので、初めて飲むときはおならが出ても問題のない自宅にいる時などがおすすめです。
便秘はなるべく薬に頼らない
便秘薬は手軽に便秘を解消できるとして服用する人も多いですが、なるべく薬に頼らないほうがいいです。便秘薬には腸に無理やり刺激を与えることで強制的に腸を動かし排便を起こしますが、長く服用すると腸本来がもつ機能を低下させてしまうのです。
薬の作用に慣れて効果が出にくくなる状態を耐性(たいせい)と言いますが、刺激の強い便秘薬にはその耐性が現れてしまうのです。刺激の強い便秘薬は強烈な痛みを伴うこともあり、独断で便秘薬を服用するのは危険が伴います。
長引く場合は医師に相談を
生活習慣や食生活を改善しても、便秘がなかなか改善しない場合は早めに病院に行きましょう。恥ずかしいからと我慢する必要はありません。もしかしたら、腸がねじれたり腫瘍ができて便が通れなくなったりする「腸閉塞」の可能性もあります。
症状が重いと手術にいたる可能性もある病気です。特におならすら出なくなっている場合は、早めに内科や胃腸科・消化器科などを受診しましょう。
「おならを改善したいなら便秘対策から!」
便秘しているときのおならの原因・対策についてご紹介しました。便秘がひどくなると、おならの悪臭にも悩んでしまいますよね。悪臭の原因になっている便秘を解消することで、ある程度臭いが気にならなくできるものです。
おならは誰でも出すものですが、だからといってどこでも気にせず排出するのは気が引けてしまいますし、ふさわしくない場合もあります。日ごろの生活習慣や食生活で、少しでも腸のコントロールができるようになると、心の負担も軽くなることでしょう。この記事が参考になれば幸いです。